まさかの連続! 終業式
「う〜ん」
「どうしたの?雅美ちゃん。」
「それがね、響彼さんが芸名を考えなさいって。」
雅美ちゃんは「何か良い名前ある〜?」と言いながら机に突っ伏した。
「爽夜くんとか凪くんも一緒に考えて貰ったら?」
「いや、あの2人は絶対ダメ!ネーミングセンスが無さ過ぎるから。」
「そうだ。今日、私の家に来る?色々本があるから芸名を付けるヒントがあるかもしれないし。」
「行きたい!」
そして終業式の為、体育館へ向かった。
校長先生の話が終わり、表彰状の授与が始まる。
「秋月優里さん。」
「はい!」
ユーリちゃんは元気の良い声で返事をして舞台に登った。
「全国スピーチ大会、中学生の部準優勝。秋月優里。貴方は全国スピーチ大会で素晴らしい成績を残した事をここに彰します。」
ユーリちゃんは礼をして表彰状を受け取った。
「続いて、ソングライタークラブの阿藤葉月さん。」
『葉月くんってソングライタークラブなの!?』
私がそう言うと背の順で隣の透くんが頷いた。
「阿藤は結構賞とか貰ってて凄えらしいよ。部員は凄え少ないのに賞取ってる奴がいるから廃部にはならないんだ。」
葉月くんは名前を呼ばれて舞台に上がった。
「作詞作曲コンクール優勝、阿藤葉月殿。貴方は当コンクールで素晴らしい成績を残した事をここに彰します。」
表彰状を受け取った葉月くんは嬉しそうにガッツポーズをした。
「阿藤さんの作った曲は心動かされる曲でした。コンクールのホームページに上がっているので皆さんも是非聞いて下さいね!」
校長先生は茶目っぽくそう言った。
そして更に何人かが表彰され、終業式も終わった。
教室に戻ると葉月くんの机の周りには人集りが出来てしまった。葉月くんは助けを求める様に手を伸ばして来た。すると朝葵ちゃんが立ち上がった。
「皆んな、葉月が困ってるよ。」
すると羽音ちゃんも言った。
「そうだよ。はづ、阿藤くんが困ってる。」
「はづ阿藤くん?」
羽音ちゃんの近くに居た男の子がそう聞いた。
「葉月って言いかけたのか?」
「いや、その……」
「お前ら仲良かったのか?」
そんな風に聞かれた羽音ちゃんはタジタジになってしまっている。すると朝葵ちゃんが遮った。
「名前呼びが何なの?私、葉月って呼んでるんだけど。」
「舞城と阿藤が幼馴染だからだろ。」
「それはっ、そうだけど……」
「眞木は小学校違うだろ。なのに下の名前で呼び合うなんて、やっぱり……」
私は見ていられずその男の子の前に出て言った。
「佐々野くん。私も葉月くんの事下の名前で呼んでるよ。凪くんも爽夜くんも透くんも千秋も。」
「っ恋咲さん。でも眞木が下の名前で呼んでるのなんて舞城と恋咲さんくらいでっ」
私はしどろもどろになっている佐々野くんを見て気が付いた。佐々野くんは単にからかっているわけじゃ無かった。好きな子が他の子と仲が良いのが悔しいんだ。
『羽音ちゃんの事、好きなのよね?そんな言い方だと羽音ちゃんに嫌な思いをさせてしまうわ。』
佐々野くんは驚いた顔をした後、軽く頷いた。
「眞木、悪かった。」
「全然気にしてないよ、佐々野くん。」
そしてやっと解放された葉月くんが私達の方にやって来た。
「恋咲、ありがとう。眞木を庇ってくれて。佐々野はずっと眞木に突っかかるんだよ。眞木は大人しいタイプだから強く言えなそうだし、俺が口を挟むと余計にややこしくなりそうだったし……」
「とにかくありがとな!」と葉月くんは言った。するとレイラちゃんが
「その言い方だと阿藤が眞木ちゃんの彼氏みたい。」
「ああ。」
「「「えっ!?」」」
「あ、悪い。今の忘れて。」
葉月くんは慌てて後ろを向いた。するとプルプルと震えている羽音ちゃんが居た。
「阿藤くん、ちょっと良いかな?」
普段大人しい羽音ちゃんから凄まじい気配を感じた。羽音ちゃんはポンと笑顔で葉月くんの肩を叩いた。
葉月くんはヒィッと声を出した。
「恋咲、助けて、」
「え、助けてって……」
私がどうしようと困っている間に葉月くんは羽音ちゃんに廊下に連れて行かれた。しばらくして戻って来た葉月くんはとても疲れた顔をしていた。
「えっと葉月くん?大丈夫?」
「あ、ああ。」
すると羽音ちゃんは私の耳元で言った。
『実は私、葉月くんと付き合ってるの。でもクラスの皆んなには隠すって約束したのに葉月くんが勝手にバラしちゃって、ちょっと怒っただけ。』
『そうなんだ。2人、お似合いだね。』
『ありがとう。姫野さん達には美乃梨ちゃんから説明してくれる?葉月くんに頼むと色々喋りそうだから。松岡くん達にも秘密にしてって約束してくれると嬉しい。』
『良いよ。』
そして羽音ちゃんは朝葵ちゃんの所へと戻った。私はレイラちゃん達に説明し、秘密にして貰えるよう言った。葉月くんは「絶対に周りには言うなよ。」と身震いをしながら言った。
「羽音ちゃんって怒ったら怖いの?」
「ああ。笑顔で問い詰めてくるからな。この前だって同じ部活の奴の前で下の名前で呼んだら凄え怒られたから。」
「羽音ちゃんがそんなに隠したがってるのって何か理由があるのかな?」
「さあ。単に恥ずかしいだけだと思うけど。」
私は気になり葉月くんに聞いたが、葉月くんも知らないそうだ。そして通知表が配られ、三日月先生に冬休みの過ごし方について説明されて終わった。
「くれぐれも怪我や事故に気をつけるように。」
そして帰ろうとした時、
「美乃梨、ちょっと良いか?」
「大丈夫だけど……どうしたの?」
私がそう聞くと透くんはレイラちゃん達に断り、屋上へ続く階段の踊り場に向かった。
「美乃梨、悪い。」
「何が?」
「俺さ、体育祭の時色別対抗リレーに立候補しただろう?」
「うん。」
「その理由、美乃梨の事気になってたからなんだ。正直言って一目惚れだった。でも、仲良くなってから世間知らずな所とか抜けてる所とか知って、何か普通の中学生だなって思ったりして、気付いた時には美乃梨の事ばっか見てたんだ。」
照れなのか暑さなのか私と透くんの顔は真っ赤に染まっている。
「……最近、思うの。私はどうしてこんなにも多くの人に好かれているのかなって。私は皆に何かしてあげてるわけでも無いのに皆に"好き"って思って貰って、私は皆に貰ってばかりで返せないのにって。」
「美乃梨……迷惑掛けてごめん。」
「……好かれるのはもちろん嬉しい。でも、これ以上友達が減るのは嫌なの。……私ね、恋愛に憧れていたの。」
私がそう言うと透くんは軽く目を見張った。
「でも、憧れていた恋愛が原因で友達が減るのは嫌なの。凪くんも景くんも真央くんも篤季も皆、やっぱりいつも通りじゃ無くなったの。私がこんな事言う資格無いのは分かってるけど……もう、皆と友達には戻れないの?」
透くんはバツが悪そうに顔を逸らして謝った。
「透くんは悪く無いよ。私の方こそ透くんに当たってごめんなさい。」
そして私は透くんに向き合い答えた。
「透くん、私には好きな人が居るから……ごめんなさい。」
透くんは困ったように笑って言った。
「ああ、知ってた。俺には応援出来ないけどな。一つだけ頼んで良いか?」
「何?」
「俺に他の好きな人が出来るまで美乃梨の事を好きでいさせてくれ。」
「それは私に断る権利が無いわ。」
「俺に他の好きな人が出来たら、美乃梨は応援してくれるか?」
「もちろん、その時は誰よりも応援するわ。それと、透くんに他に好きな人が出来たら私と本当の友達になってくれる?」
「ああ」と言いながら透くんは私の手を取って握手を交わした。
「その時には爽夜よりも仲が良い美乃梨の一番の親友になるよ。」
と、透くんはどこか吹っ切れたような表情で言った。
階段を降りると気配を感じた。まさかと思い急いで階段を降りると、
「何で皆居るのよ!」
レイラちゃん達も真央くんや景くん達も居た。透くんは焦ったように
「聞こえてないよな!?」
と言った。私も油断していた。
まさか聞かれているとは思わなかったから、京翠と貴翠も居るなんて気配で気付けなかった。
「さあ、どうだろうな?」
爽夜くんはニヤニヤとからかうように透くんに言ったが、篤季のひと言で透くんは固まった。
「美乃梨お嬢様、申し訳ありません!まさかあんなに迷惑をかけていたなんて……」
「!。聞こえてたのね。」
「あれが、美乃梨の本音なんだね。」
「美乃梨ちゃん、ごめんね。」
「美乃梨の友達を減らしてごめん。」
4人は私の発言を聞いて自分達が告白した事に対して罪悪感を感じたようだった。
「あれは、確かに本音ではあるけどいつも思っているわけじゃないわよ。人に好かれるのが嫌なわけじゃないから……」
私がそう言うと4人はほっとしたように息をついた。すると突然千秋が口を開いた。
「美乃梨の好きな人って誰なんだ?」
「え!?いや、その、それは……」
何故か皆んなに生温かい視線を注がれる。私は助けを求める様に貴翠と京翠の方を向いた。
「千秋さんは誰だと思うのですか?」
「俺は、貴翠さんかと思っていました。」
貴翠に聞かれた千秋はそう答えた。すると貴翠はすかさず否定した。
「違いますよ。確かに昔、美乃梨様の婚約者になりかけたり、婚約者候補に名が上がったりもしましたが、それは絶対的な信用からなるものですので。」
「美乃梨の婚約者候補に上がっていたんですか?」
「知りませんでしたか?」と貴翠は千秋に向かって言った。
「聞いた事ありませんでした。でも貴翠さんでないなら京翠さんですか。」
と千秋は納得したように言った。
レイラちゃん達は呆れたように溜息をついている。
京翠も貴翠同様否定すると千秋はわけの分からないことを言い出した。
「まさか……三日月先生か!?」
「何でそうなるの!?」
「美乃梨は三日月先生と仲が良いから。」
「それは三日月先生が担任であり部活の顧問の先生だからよ。」
そして爽夜くんが千秋に向かって言った。
「美乃梨の好きな奴は美乃梨の近くに居る奴だ。」
すると千秋は目を見開いた。
「爽夜は美乃梨の好きな人を知ってるのか?」
すると爽夜くんは「もうこれは駄目だ」と言い昇降口に向かって歩き出した。それに続いて皆で昇降口に向かった。
「じゃあみのりん、1時過ぎに行くね!またね!」
私は雅美ちゃん達に手を振り京駕さんの運転してくれる車に乗り込んだ。帰りの車は凄く静かだった。
家に着くと律ちゃんが出迎えてくれた。
「お帰り、美乃梨!京翠と貴翠と篤季も。ご飯食べてくよね?お母様が鰤を下さったの!架の希望で今日のお昼は鰤しゃぶよ!」
「そのような物、私達も頂いてよろしいのですか?」
「当たり前じゃん!先に4人とも着替えて来てね。」
そう言われて私達は着替えに行った。食堂に向かうと煌達と律ちゃんと響彼くんが座っていた。
「今日、1時過ぎに雅美ちゃんが来るの。芸名を決めるのに困ってるらしくて」
「そうか。出来るだけ早く決めて貰わないと困るからな。美乃梨アドバイスをしてやってくれ。」
「もちろんよ!」
そして鰤しゃぶを美味しく頂いた後、私は書斎に向かった。
「京翠、私が千秋の事を好きって本人には全く勘付かれて無かったわよね?」
「そうですね。」
「はあ、千秋の好きな人って誰なのかしら?」
「美乃梨様は誰だと思いますか?」
「分からないけど……私だと嬉しいな、なんてね。そんな訳ないよね。」
(美乃梨様が千秋様からの好意に気付いたのかと思いましたがそれはまだ先そうですね。)
しばらくしてノックの音が聞こえた。
「美乃梨、雅美ちゃんが来てるよ?」
「雅美ちゃん、いらっしゃい!」
そして律ちゃんが帰ろうとした時、雅美ちゃんが引き留めた。
「もし、時間があれば律さんもアドバイスをくれませんか?」
「良いよ!私、雅美ちゃんと仲良くなりたかったの!ネーミングセンスに自信は無いけどね。」
律ちゃんがそう言うと雅美ちゃんは嬉しそうに笑ったが、京翠が言った。
「律様、今日はお見合いの日ですよね?」
「そんなの知らないわ。」
「お見合い、ですよね?」
京翠の圧に負け、律ちゃんは溜息をつきながら事情を話した。
「私、まだ18なのよ。結婚するならちゃんと好きな人が良いわ。」
「もしかして律様、好意を寄せている相手が?」
「居るわよ!京翠には分からないと思うけどね。」
京翠は「そうだったんですか。」と驚いた顔をした。
そして雅美ちゃんは芸名を考えるために色々な資料を元にして考え始めた。
「翼とか飛って漢字を入れたいの。」
「飛翼はどう?」
「かっこいい!下の名前はどうしよう……」
「他に使いたい漢字は?」
「う〜ん、強いて言うなら"結"」
すると律ちゃんが「それなら良い名前知ってるよ!」と言った。
「結月ってのはどう?私の好きな本の主人公の名前なの。人と人を結び、月の光のように優しく照らすの。」
「凄く良いです!それにします!改めて、飛翼結月です。よろしくお願いします。」
「よろしくね、結月ちゃん。」
その時、ノックの音が響いた。
「美乃梨、居るか?」
「あ、響彼くん。丁度雅美ちゃんの芸名が決まったんだよ。」
「そうか。どんなのだ?」
雅美ちゃんは軽く咳払いをして言った。
「飛翼結月です。由来は翼を持って夢に向かって羽ばたきながら飛んでいく、人と人を結んで月光のように優しく照らすという意味です。」
「良いな。これからよろしくお願いします、飛翼結月さん。」
「はい!響彼さん!」
「これからは芸名に慣れる為に私は雅美さんの事を芸名で呼びますね。飛翼さん、明々後日のパーティーでは新人女優として紹介しても良いですか?」
「もちろんです!」
雅美ちゃんは元気良く返事をした。すると響彼くんは私の方を向いて言った。
「美乃梨も芸能界に入らないか?」
「嫌よ、興味無いもの。」
「まあ、気が向いたら言ってくれ。それと聞きたい事があったんだが……パーティーの会場までの車は何台出せば良い?」
「えっと、参加人数が私を合わせて13人。煌達は響彼くんと行くよね?」
「ああ。律も参加するんだよな?」
「もっちろん!」
「あと、貴翠と京翠と篤季。本堂家の車で一番大きいのって何人乗り?」
「26人乗りのマイクロバスですね。」
「ギリギリ全員乗れるわね。」
私がそう言うと響彼くんは首を横に振った。
「いや、門限もあると思うから分けた方が良いな。」
響彼くんにそう言われ、私はスマホで皆んなに門限の確認を取った。
「えっと、匡哉先輩はその日真央くんの家に泊まるそうだから千秋達も一緒で、和真くんと葉月くんとユーリちゃんとレイラちゃんは家が近いらしいし、門限も同じくらいだから5人乗りの車が二台。雅美ちゃんと凪くんと爽夜くんは4人乗り一台で良いよね?」
「うん!」
「後は、私と貴翠、京翠、篤季で分けて、響彼くんと律ちゃんと煌達、それと聡兄様もよね?」
「という事は、計五台だな。京翠、手が空いている運転手、足りるか?」
「大丈夫です。」
「では、手配してくる。」
響彼くんはそう言いながら部屋を出て行った。
「じゃあみのりん、私も帰るね。かっこいい芸名、凪達にも教えたいから。」
「うん。またね。」
とうとう明々後日はパーティー。私は年が明けるまでに千秋に告白すると決意してしまった。年明けまで残り1週間、そう思うだけで初めて魔法を使った時よりも緊張した。
次はパーティーです♪
時系列で言うとクリスマスの次の日です。




