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王子様は1人じゃないっ!  作者: 華咲果恋
本編1年生
45/123

文化祭初日 午後

開演ブザーと同時に幕が上がり、千秋は舞台へと出ていった。そしてナレーションが入る。


《これはとある少女の物語。その少女は継母の連れ子の義姉にきつく当たられていました。》


「まあ、シンデレラったら。こんな所で何をしているの?」


「そうよそうよ!」


因みに継母が仁科くんで義姉が向坂くんだ。


「……」


「何か喋りなさいよ!」


「貴女達こそここで何を?お掃除はいつなさるの?」


「何言ってるのよ?掃除はじゃんけんで決めるから貴女が掃除をする事になるかもしれないのよ?」


「ではいつも通りじゃんけんで決めましょう。」


「じゃんけん、ぽん。」


「やっぱり私が負ける筈ありません。」


シンデレラはそう言って笑った。義姉は悔しそうに


「くぅー!今度こそ勝って見せるわ。」


と言いながら掃除を始めた。


「頑張りなさい。」


継母は義姉に対してそう言った。


「お母様ったら酷いです。」


「シンデレラ、この子はお掃除があるので私とお茶会を致しましょう。」


「はい、お継母様。」


《シンデレラと継母は仲が良く、じゃんけんに弱く、きつく当たっている義姉は蚊帳の外です。》


そして場面は魔法使いとの出会いへ


「お母様、ジンデレラには舞踏会に行くドレスは無いわよね?」


《義姉は相変わらず意地悪をしたいようです。ですが継母はシンデレラと仲が良いので義姉の思いはガン無視です。》


「ええ、そうね。シンデレラ、舞踏会に行きたいのならドレスを自分で縫うか、それとも魔法使いに頼むかしなさい。」


「はい、お継母様。魔法使いに頼みます。魔法使いさん、出て来て下さい。」


シンデレラがそう言うと照明を当てられながら魔法使いが出て来た。


「お呼びでしょうか?シンデレラ。」


「私に似合うドレスを作って欲しいの。」


「わかりました。ついでにガラスの靴も用意致しましょう。ですが注意事項が一つ、魔法は12時の鐘が鳴り終わると同時に解けてしまいます。公の場で下着になりたくなくば12時の鐘が鳴る頃には帰って下さい。」


「魔法のドレスはこの服から作るんじゃないのでしょうか?」


「そんな事出来ませんよ。魔法で出来たドレスを渡しますのでそれに着替えて頂きます。」


「分かりました。公衆の面前で下着姿は嫌なので必ず時間は守ります。」


「ではかぼちゃの馬車と白馬も準備しましょう。早くしないと遅れてしまいますから。さあさあ、早く準備して下さい。」


そしてとうとう私の登場だ。場面転換の為一度舞台の照明が消える。そして私が舞台に立ち、照明が向く。


「ああ、妃探しの舞踏会だなんて、憂鬱だ。僕は結婚に興味がないと言うのに。」


「王子様、私を妃に!」


「いえ、私を妃に!」


「私の方が王子様と吊り合いますわ!」


「お嬢様方、申し訳ない。僕は少し席を外させて頂いても?」


「勿論です!」


そして私はバルコニーの方に移動した。


「はあ、疲れる。」


「主役が抜けてしまって良いのですか?」


「貴女は……?」


「私はシンデレラです。」


「シンデレラ、貴女はとても美しい。妃など興味は無かったがこれが恋という感情なのか?」


「王子様。私も一目で恋に落ちました。どうか私を妃に、」


そして私はシンデレラの口に人差し指を当て、手を取った。手の甲に軽く口付けを落として言った。


「それは僕から言わせて下さい。貴女に恋に落ちました。僕の妃になって下さい。」


その時、鐘が鳴り始めた。


《シンデレラは鳴り始めた鐘に焦り、逃げ帰ってしまいました。その時、ガラスの靴を片方、落としてしまったのです。王子は召使いに言われました。この靴がぴったりはまる者がシンデレラだろうと。それを聞き、王子は激怒しました。》


「このガラスの靴がピッタリな人がシンデレラだと?顔を見たら直ぐに分かるに決まってる!」


《王子は舞踏会に参加した女性を全員お城に集めました。そしてとうとう愛しいシンデレラを見つけました。》


「また会えて嬉しいよ、シンデレラ。僕の妃になってくれますか?」


「勿論です、王子様。」


ここからはレイラちゃんが付け足した部分だ。セリフは脚本係の子がわざわざ書いてくれた。私はシンデレラに抱き着いて言った。


「愛しいシンデレラ。これからもずっと愛し続けると君に誓おう。」


「私も誓いましょう。王子様を愛し続けると。」


《そしてシンデレラと王子様はいつまでも相思相愛で幸せに暮らしました。》


そして劇は終わった。

幕が降り、舞台袖に行くと雅美ちゃんが居た。


「雅美ちゃん、部活の方もうすぐなんじゃないの?」


「大丈夫。ちゃんとひと言言って来てるから。それに本番は体育館だから。みのりん、凄く良かったよ!九条くんも棒読みじゃなくなって感情が凄く篭ってた!」


「ありがとう。雅美ちゃん。」


「そうか。」


そして透くんもやって来て、


「美乃梨も千秋も凄いな。もう今日一日、その格好で居たらどうだ?」


と言って来た。


「それ、良いかも!今日の為にわざわざ作ってもらったからね。透くんもその衣装似合ってるから今日はそれで居たら?」


「そうするつもり。わざわざ作ってもらったのにたった20分くらいしか着ないなんて勿体無いからな。千秋は凄え嫌そうな顔してるけど。」


千秋はしばらくの間黙って考え、そして言った。


「今日くらいなら。明日は絶対着ないからな!」


明日は千夏さんが来るからどうしても見られたくないらしい。


「あ、私宣伝しないといけないの。ちょっと待ってくれる?」


「ああ、良いぞ。」


そして私はマイクを持って舞台へ行った。


《あと15分ほどでなんでも告白大会の午後の部が始まります。参加する方も応援する方も是非楽しんで来て下さい!》


そして舞台袖に戻った。雅美ちゃんの劇までは30分程時間がある。私はまず響彼くん達を探しに客席に向かった。客席は次の劇が始まるまで少し時間があるからか人は疎らだった。


「響彼くん達、どこだろう?」


「美乃梨、もしかしてあの人達じゃないか?」


と透くんは入り口付近の席を指した。


「響彼くん達だ!」


そこには凪くんと爽夜くんと和真くんも居た。


「お、皆んな劇のまんまだ。王子様とシンデレラと魔法使いだな。」


「千秋、シンデレラ凄え似合ってるよ。」


爽夜くんは少しからかいながら言った。千秋が睨むと爽夜くんは「悪かったって」と笑いながら言った。


「それよりどうして3人が居るんだ?」


「煌が席を取ってくれてさ。」


「煌って美乃梨の弟の?」


「ああ。な、煌?」


「はい。爽夜さんも観に来ると言っていたので。」


どうやら煌と爽夜くんも知らぬうちに物凄く仲良しになって居たらしい。


「皐月さん!お久しぶりです。」


響彼くんと律ちゃん、それに聡兄様と京駕さんは会うけれど、皐月さんと会えるのは私の誕生日のパーティーだけだ。


「美乃梨様、お久しぶりです。息子達がお世話になっております。」


「いえ、私の方が頼ってばかりです。特に貴翠と京翠には。」


「そうですか。ですが、篤季はご迷惑を掛けているでしょう?」


「あ、いえ。迷惑とまではいきませんよ。アプローチはありますが、篤季は本当に私が嫌がることはしませんから。」


「それなら良いのですが……」


と皐月さんは心配そうに眉を下げた。


「そういえば京翠はどこに?」


と皐月さんが言った。


「私にも分かりません。劇が始まるまでは側に居たのですが……」


私がそう言うと皐月さんも京駕さんも少し笑みが深まった。


「そうですか。ボディーガードなのにどこかへ」


「美乃梨様、家の愚息が申し訳ありません。京翠には然るべき罰を与えますので。」


安心して下さい、と言う京駕さんの笑顔は先程よりも更に深まっていてとても安心は出来ない。


「そんな、京翠にも少しくらい1人になりたい時だってあると思いますし、何か事情があるのかもしれませんし。」


私は京翠を庇ってそう言った。


「事情があるなら伝えてから行動するのが筋です。大丈夫です。罰と言っても少々面倒の掛かる調査を頼む程度ですから。」


その時、「何故ですか!」という声と共に京翠が現れた。


「公共の場では静かにと教えましたよね?17になってもまだ出来ないのですか?」


皐月さんの冷たい声が響いた。皐月さんは基本はおっとりと優しい性格だが、怒る時はとても冷たい雰囲気を醸し出す。


「申し訳ございません。美乃梨様、少々大変な事態になっておりますのでしばらくこちらで待機していて下さい。」


「大変な事態?」


するとその時、凪くんのスマホが鳴った。


「あ、姫野から。え!?」


「どうしたの?」


「いや、外にテレビとか取材が来てるって、」


「どうしてそんな事に?それに私がここに居なきゃいけない理由と関係ないんじゃないの?」


すると京翠も凪くんも首を横に振った。


「いえ、実は、どこからかは分かりませんが美乃梨様のお写真がマスコミへと送られてしまったそうです。そして世紀の美少女として取材を求める声が上がったそうです。」


「姫野と秋月も写真を見せられて『この子の事知らない?』って聞かれたらしい。今は教師陣がどうにか対処してるって。」


「私の写真?この学校に来てから写真を撮った事なんて……あ、体育祭の応援団と文化祭実行委員の写真は撮ったわ。確か、学校ホームページに載せるって言ってたけど。」


すると京翠のスマホに電話が掛かって来た。


「貴翠からです。もしかすると犯人の見当がついたのかもしれません。」


そう言いながら京翠はスピーカーにして電話に出た。


『兄さん、美乃梨様はご一緒ですか?』


「はい。何か分かりましたか?」


『分かるも何も、絶対に学校側の人間しかあり得ないですよ。』


「学校ホームページに載っているなら誰でも可能ですよね。」


『無理です。体育祭の応援団の写真をアップされたのは約1ヶ月前、文化祭実行委員の写真がアップされたのはたったの10分前です。誰がどう考えてもタイミングがおかし過ぎます。』


「そうですね。1ヶ月前に見つけて今日取材に来るのはおかしいですし、10分前に載ったばかりの画像を見つけてここに来るなんて、早過ぎますね。」


すると凪くんがスマホ越しの貴翠に言った。


「貴翠さん、美乃梨の写真をマスコミに流したのは誰なんですか?」


『これはあくまで私の想像にすぎません。美乃梨様のお写真をマスコミへ流した理由、犯人はどうして流したのでしょう。自分に得があるからでしょうか?違います。そんな事をしても得などありません。犯人は知りたかったのでしょう。混乱が起こった時点での美乃梨様とその周囲の行動を。名は伏せましょう。証拠があるわけではありませんから。』


そしてツー、ツー、という音と共に通話が終わった。貴翠は濁らせたけれど、私には分かった。多分、千秋と京翠と京駕さんも気付いただろう。貴翠が言う犯人とは"七倉先生"だと。


ここには凪くん達も居るし、それに、貴翠の言うように先生が犯人だという証拠も無い。私はあまり思いたくない。七倉先生が私の魔力を何かに使っているという痕跡があっても、会ってからたった数ヶ月の七倉先生は私の中では生徒思いの優しい先生だったから。


転校してから初めての授業の時、七倉先生は丁寧に説明してくれた。文化祭実行委員になった時も優しい先生だった。


「…………」


千秋は私の表情を見て言った。


『美乃梨、七倉先生は要注意人物とは思っていた方が良い。』


きっと千秋は私の感情を汲み取った上での発言だ。魔法使いにとって信用はとても重要だ。魔力を使った洗脳は信用している人に効きやすい。

私が七倉先生を信用している今、もし七倉先生が私に魔力を使った洗脳をしたら、私は容易に引っかかってしまう。


私は笑顔で頷いた。「心配しなくても大丈夫。」と。


しばらくしてまた凪くんのスマホが鳴った。


「マスコミの人達帰ったって。」


そして校内アナウンスが流れた。ユーリちゃんの声だった。


《お騒がせして申し訳ありません。マスコミの騒動は解決致しました。諸事情により演劇部の劇が20分程遅れますがご了承下さい。演劇部の劇は体育館で行います。本日最後のステージを飾られますので是非ご覧下さい。》


流石ユーリちゃんだ。落ち着いた声でアナウンスが終わった。そして景くんと篤季、真央くんと匡哉先輩が来た。


「あれ、山下先輩は?」


「太一は……な、匡哉。」


「あ、ああ。もうそろそろ解放されると思うけど。美乃梨ちゃん、太一の事なんて気にしなくて良いと思うよ。」


「そうですか?あ、紹介しますね。私の叔父の響彼くんと叔母の律ちゃんです。」


景くんと真央くん、そして挨拶のタイミングを窺っていた千秋が挨拶をした。


「初めまして。美乃梨の叔父の恋咲響彼です。」


「私は前に会ったよね?覚えてるかな?恋咲律です。私は京翠の一つ上だけど気兼ねなく話しかけてね。」


匡哉先輩は「どうも」と挨拶しているがその目は疑惑に満ちている。


『美乃梨ちゃん、律さんって本当に叔母なの?姉じゃなくて?』


「叔母ですよ。私の父の歳の離れた妹なんです。確か15歳差だった気がします。」


そうだよね?と律ちゃんと響彼くんを見ると2人とも頷いた。


「雅美ちゃんの劇が終わったら雅美ちゃんとユーリちゃんとレイラちゃんも紹介したい。」


「ああ。楽しみにしている。」


「私も美乃梨の女の子の友達なんて初めてだから凄く楽しみ!」


「2人とも、雅美ちゃんの劇は絶対観てね。多分観ないと後悔するよ。特に響彼くんは。」


私がそう言うと響彼くんが不敵な笑みを浮かべながら


「そうだな、演劇部の主役なら俳優の卵だからな。」


と言った。

そして演劇部の劇の開演時間が近づくにつれ観客席も賑わって来た。


《只今から演劇部の劇を始めます。》


アナウンスと同時に開演ブザーが鳴る。


そして演劇部の劇が始まった。この劇は完全オリジナルの脚本らしく、内容は恋愛が中心になっているが友情を感じさせるシーンもあるのでまさに青春というような感じだろう。流石は演劇部。皆んなとても演技が上手い。けれど……やはり雅美ちゃんだけ飛び抜けて演技が上手い。


お客さんは皆んな雅美ちゃんの演技に釘付けだろう。

他の子ももちろん凄く上手だ。でも、雅美ちゃんと並んで舞台に立つと見劣ってしまう。それ程までに彼女の演技は素晴らしいのだ。彼女は女優を目指していると言っていた。それは友人としての贔屓目をなしにしても可能だと言い切れてしまう。


「凄いわ……!」


ヒロインは好きな人が事故に遭い、亡くなってしまったため結ばれず、悲恋の道を辿った。そしてヒロインは亡くなってしまった好きな人に向かって静かに泣きながら想いを伝え、そして別れを伝えた。


そして劇が終わり幕は降りた。私は直様隣に居る響彼くんに言った。


「響彼くん、言ったでしょう?雅美ちゃんの演技は観ないと後悔するって。」


「あ、ああ。」


響彼くんはただ呆然として幕の降りた舞台を眺めている。余程感動したのだろう。あの演技を初めて観たなら普通はそうなると思うが。


「ねえ、響彼くん。雅美ちゃんは本物よね?」


「ああ。誰がどう観ても、な。今のうちに取り込んでおかないと他の事務所と取り合いになってしまうな。美乃梨、紹介してくれるんだよな?」


「ええ。ってまさかスカウトする気なの?」


「当たり前だ。あんなに才能を秘めた俳優をそう簡単に逃すわけないだろ。」


「雅美ちゃんの意思を優先してね。」


「それくらい分かっている。私は律とは違う。」


すると私の反対側の響彼くんの隣に座っていた律ちゃんが言った。


「私だって相手の意思は大事にするわよ。響彼兄様、馬鹿にしてるわよね?」


「本当の事を言っただけだ。美乃梨、早くあの子を紹介してくれ。」


響彼くんは仕事魂が刺激されたのか生き生きした顔で言ってくる。多分、今向かっても演劇部で盛り上がっているところだろう。私が頭を捻っていると、凪くんが提案した。


「美乃梨、爽夜と一緒に雅美を迎えに行ったらどう?美乃梨だけだとちょっと待ってって言われるかもだけど、今日公開告白で付き合い始めた爽夜が行けば、皆んな快く送り出してくれるよ。」


「それ、私は良いけど爽夜くんが……」


私がそう言いながら爽夜くんの方を見ると


「恥ずかしいけど、でも、雅美は女優になるのが夢だったからスカウトなんて聞いたら喜ぶと思う。多分恥ずかしいより嬉しいが勝つと思うから。俺は雅美が喜ぶならなんでも良いよ。」


と言った。


「もうすっかりかっこいい彼氏だね、爽夜。」


「黙れ、凪。雅美以外にかっこいいと思われても関係ない。」


「デレデレだな〜」


「うっせ。行くぞ、美乃梨。」


爽夜くんは赤くなった顔を隠しながら歩いていく。

私は爽夜くんの隣に立って言った。


「おめでとう、爽夜くん。」


「美乃梨、俺は本当に感謝してる。ありがとな。困った事があったら何でも相談に乗るから。」


「ありがとう。その時は是非雅美ちゃんと一緒に相談に乗ってもらう事にするよ。」


そして演劇部の控え室の扉をノックした。


「失礼します。雅美ちゃん居ますか?」


すると部長さんが出て来て雅美ちゃんを呼んだ。


「鳳〜、友達と彼氏、迎えに来てるぞ。」


雅美ちゃんは「えっ!?」と言いながらこっちにやって来た。


「どうしたの、爽夜もみのりんも。まだ反省会中なんだけど……」


「ごめんね、雅美ちゃん。」


『雅美にスカウトの話が出たから呼びに来たんだ。』


爽夜くんは雅美ちゃんの耳元でそう言った。雅美ちゃんは凄く驚いた顔をしながらも喜んだ。けれど反省会中だったのもあり渋った。すると他の部員達が背中を押した。


「行きな!彼氏が迎えに来てくれてるんだから。」


「そうだよ。付き合ったばっかなんだから待たせちゃ悪いよ。」


そして私達は響彼くんの所に向かった。


「レイラちゃん、ユーリちゃん!」


響彼くんの所には凪くんが連れてきてくれたらしく、レイラちゃんとユーリちゃんが居た。


「じゃあ皆、紹介するね。私の叔父の響彼くんとと叔母の律ちゃんです。」


3人とも「初めまして」と頭を下げ、挨拶をした。


そして響彼くんがジャケットから名刺を取り出して雅美ちゃんに渡した。


「改めまして、WAKABAプロダクション社長の恋咲響彼です。鳳雅美さん、是非うちの事務所に所属しませんか?」


「WAKABAプロってあの大手の!?そんな大手の社長さんがどうして私を……」


「雅美さん、貴方の演技はとても素晴らしいものでした。私自身このプロダクションの社長という立場から多くの芸能人を観てきましたが、雅美さんの演技には人を惹きつける力がありました。」


雅美ちゃんは口をパクパクさせて頑張って状況を飲み込もうとしている。


「スカウトとかさっすが雅美だね!」


「雅美、夢がグッと近づいたね。」


しばらくして落ち着いたのか雅美ちゃんは口を開いて響彼くんに言った。


「是非、所属させて頂きたいです!」


「雅美さんは未成年ですから親御さんの許可証も必要なのですが必要な書類と共にお渡ししますね。」


その時、後ろから「あの、」という声が聞こえた。


「お母さん!?」


「はい。雅美の母の鳳美瀬です。雅美は昔から俳優を夢見ていましたから私は反対など致しません。ですが雅斗が、雅美の父親はなんと言うか過保護でして。」


「お父さんは私の夢、反対すると思う?」


「無いとは言い切れないわね。」


美瀬さんがそう言った時、『反対などしないよ。』という声が聞こえてきた。声の聞こえた方を見ると凪くんのお母さん、桜さんがスマホの通話画面をスピーカーにしながら見せていた。


「お兄ちゃんからだよ。」


そして桜さんは雅美ちゃんにスマホを渡した。


『芸能界は僕にとっては未知の世界だ。どんな危険があるか分からない。でもね、雅美を、自分の子供の夢を応援しないわけないじゃないか。……折角のスカウトだ。雅美が後悔しない方を選びなさい。』


そして通話はすぐに切れた。


「あら、雅斗は本当に雅美のことを心配していたから反対すると思ってたわ。」


そして美瀬さんは響彼くんに契約に関しての話を詳しく聞きに席を外した。


「みのりん、私のほっぺつねってみて。」


雅美ちゃんはポツリとそう呟いた。

私はふにふにと雅美ちゃんの頬を摘んだ。


「痛くない。これ夢だ。」


すると爽夜くんが雅美ちゃんの頬を思い切り引っ張った。


「痛いっ!何すんのよ爽夜。」


「夢じゃ無いだろ?美乃梨が本当に雅美の頬をつねるわけないだろ。」


「何となく言ってみただけじゃんか。爽夜につねったなんて言ってない。あー、ほっぺ痛いー!」


雅美ちゃんは頬を撫でながら爽夜くんに向かってそう言った。爽夜くんは雅美ちゃんの頭を撫でて言った。


「雅美の実力が認められたんだよ。現実で。涙我慢しなくたって良いから泣け。嬉し涙はどんだけでも流して良いから。」


すると雅美ちゃんの瞳から大粒の涙が落ちていった。


「うん。これ、夢じゃ、無いんだ、よね?本当に夢じゃ無いんだ。私、女優、なれるんだ。爽夜、凪。昔から、応援、してくれててありがと。ユーリ、レイラ、みのりん。ありがと、大好きだよ。」


私とレイラちゃんとユーリちゃんは涙をこぼしている雅美ちゃんに抱き着いていた。


「青春だね〜!よし、皆んな。写真撮ってあげる。笑って〜!」


律ちゃんはそう言いながらスマホのカメラを向けた。


「聡兄も撮ってよ。いいカメラ持ってきてるんだからさ。いくよ、ハイチーズ!」



次回で楽しい文化祭も終わりです(◞‸◟)

でも来月にあるパーティーに向けてドレスの試着もあるんです!楽しみにしていて下さい!

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