文化祭初日 午前
今日は土曜日。文化祭の初日だ。私達の学校の文化祭は今日、明日と2日間ある。私は実行委員なので早めに行こうと思い、いつもより早く準備を終わらしてリビングに向かった。すると、麗華さんが居た。
「麗華さん、おはようございます。」
「おはよう、美乃梨ちゃん。」
「麗華さんは文化祭に来るんですか?」
「ええ、明日ね。今日は健診があって。」
「ご病気をされているんですか?」
私は心配になり、そう尋ねた。すると麗華さんはクスクスと笑いながら否定した。
「大丈夫、元気よ。そうね、3月か、遅くとも4月には分かると思うわ。それと明後日以降はしばらくは会えないかもしれないけれどごめんね。」
「そうですか。当主ですからお忙しいんですね。たまにお手紙を送っても良いですか?」
「もちろんよ。待ってるわ。」
そして朝食を食べ、麗華さんに見送られながら私は学校へと向かった。まだ実行委員や最終の準備のある人しか居ないので学校は比較的静かだった。
「貴翠と篤季はどうしてついて来たの?まだ大分時間が早いのに。」
「僕は美乃梨お嬢様と一緒に学校へ行きたかっただけです。」
「私は美乃梨様と共に学校へ向かいたかったというのもありますが、少し頼まれ事がありまして。」
「そう。じゃあ私は実行委員の集まりに向かうわ。京翠も今日くらいは私から離れても良いのよ?」
私がそう言うと京翠は笑顔で首を横に振った。
「いえ、私はそんな愚行を致しません。」
「愚行って……相変わらず大袈裟ね。」
「美乃梨様をお一人にするのは私には出来かねます。本当はこの学校への転入が決まった時点で私はボディーガードに立候補したんですがね……」
京翠は「はあ、」とため息をついて言った。
「薫様は賛成して下さいましたが、紫乃凛様に甘やかしすぎと叱られてしまいこうして先延ばしになってしまいました。」
「相変わらず紫乃凛様はお厳しいようでした。」と京翠は言った。
「私はお母様に賛成よ。そんなに守られなければならない程私はか弱くないわ。」
そうして話しているうちに集合場所である3年6組に着いた。
「あ、恋咲。早いな。」
「おはよう、葉月くん。」
「ああ、おはよ。京翠先生、おはようございます。」
少しして実行委員が揃い、担当別に別れた。
私は今日の"なんでも告白大会"の司会・進行役なのでグラウンドに作られたステージに向かった。
「恋咲、山下ペアは今日の午前の部の司会・進行だ。台本は2人で分けて読みなさい。佐藤は……」
と担当の先生が一人一人に指示を出す。私は2年生の山下先輩とのペアだった。
「よろしく〜、恋咲ちゃん!」
「山下先輩、よろしくお願いします。」
山下先輩は体育祭でもそこそこ目立っていた先輩だ。金色の髪は生え際が黒いので染めているらしい。耳にはピアスも付いていてよく先生に注意されている。
「ねえ、恋咲ちゃん。やっぱこの髪染め直した方がいいかな?俺、茶色の方が似合うって言われたんだ。」
「ねえ、どう思う?」と山下先輩は聞いてくる。
「その髪色も似合っていると思いますよ。それより先輩は髪の色もピアスも注意されているのにどうしてそのままなんですか?まあ、どちらも似合ってはいますが。」
「わあ、恋咲ちゃん嬉しい事言ってくれるね!俺がこの髪にしてるのは好きだからだよ。ピアスも同じ。好きな事を堂々とする、最っ高じゃね?先生達も校則上注意はしてくるけどさ、褒めてくれる先生も居るんだよ。」
「好きな事を貫けるってかっこいいですね。」
「そうだろ?」と山下先輩はニヤリと笑った。
「私もピアス開けてみようかしら?」
と私が聞くと山下先輩は親指を立てて言った。
「いいと思う!絶対似合うよ!」と山下先輩は言ってくれるので本気で検討した。
「そういえば恋咲ちゃんのクラスは劇だったっけ?」
「はい。午後からですが。」
「観に行くよ。神崎について行くから。」
「そうなんですか。少し恥ずかしいですが楽しみにしていて下さい。」
そして登校時間になり人が増えて来たので、私は一度教室に戻った。文化祭当日なのでまだ早いのに皆揃っていた。
「おはよう、美乃梨。」
「凪くん、おはよう。凪くんの家族は今日来るの?」
「うん。小学校は休みだからね。母さんと美瀬姉も来るよ。父さんと雅斗兄は明日来るんだ。美乃梨の所は稔達?」
「それが大所帯なの。今日は煌達と聡兄様と響彼くんと律ちゃん、京駕さんも来るわよね?」
と私は後ろに居る京翠に尋ねた。
「はい、美乃梨様の劇を見逃す訳には行かないと。篤季と貴翠の所には母さんが行くそうです。」
「皐月さんが?久しぶりに会えると嬉しいわ。」
「はい。母さんも美乃梨様の劇は観に行くと言っておりました。」
「それは、気合いを入れ直さないきゃね。」
すると凪くんがそういえば、と言った。
「響彼さんと律さんが美乃梨の叔父さんと叔母さんだっけ?」
「ええ。響彼くんには景くん達も会った事が無いから紹介するの。凪くんの事も2人にちゃんと紹介するわね。」
と私が言うと凪くんは悪戯そうに笑い、言った。
「美乃梨に告白した人って紹介?」
「ち、違うわよ。この学校に来て初めて出来た友人と紹介するの。」
「なんだ。告白した人って紹介してくれても良いんだけどね。でも美乃梨は好きな人が居るんだよね。しかも恋敵が多過ぎるし。」
そして三日月先生が教室に入って来て今日、明日の流れを軽く説明して皆で円陣を組んだ。
「絶対成功させるぞー!」
「「「おー!!」」」
そして私はなんでも告白大会の午前の部が始まる10時まで時間を潰す事にした。
「雅美ちゃんの劇は私達の劇よりも後だし、レイラちゃんもユーリちゃんも凪くんも部活の出し物が無いって言ってたものね。あ、景くん達のクラス行こう!」
「そうですね。篤季と景様は丁度この時間帯担当でしたね。」
そして景くんと篤季のクラスに行くと、千秋と透くんと凪くんにレイラちゃんとユーリちゃんも居た。
「まさかの大集合!?」
とユーリちゃんが言った。
「そうだね。」
「雅美と松岡はデートだけどね。」
そして景くんと篤季が出て来た。景くんはうさぎの耳のカチューシャに丸いしっぽがついている。篤季は犬の耳としっぽだ。
「美乃梨ちゃん、どれにする?」
「美乃梨お嬢様に似合うものをお探しします!」
篤季がそう言いながら持って来たものは……
「猫?」
「はい!必ず似合います!僕が保証致します!」
「そう。じゃあ猫にするわ。」
そして千秋が狐、透くんがライオン、凪くんが羊、ユーリちゃんがリスでレイラちゃんが熊になった。
「京翠も何かつけたら良いのに。」
「そうですね。美乃梨様が選んで下さったものであればやってみましょうかね。」
京翠がそう言うと皆が私の方を向いた。背が高く顔の整っている京翠は景くん達に負けず劣らずの人気ぶりなのだ。
「分かったわ。」
私は絶対に京翠に似合うものを見つけようと気合いを入れた。
「これ、京翠に似合いそう!」
私が手渡すと京翠は意外そうな顔で言った。
「狼ですか?」
「ええ。狼は強くてかっこいいもの。『それに、私のボディーガードにはぴったりでしょう?』」
「そうですね。ではこれにします。」
そして景くんと篤季も一緒に写って貰い、他の担当の子に写真を撮って貰った。
「みのりん、これからどうする?」
景くん達のクラスを離れて次の目的地に向かおうとしていた時、ユーリちゃんが聞いて来た。
「私、実行委員の仕事でなんでも告白大会の司会と進行があるからグラウンドに向かわないといけないの。2人も来る?」
「うん!参加しちゃおうかな?」
「レイラ、誰に告白するの?」
「冗談よ。九条達も一緒に行こうよ!みのりん司会するんだって!」
レイラちゃんはすぐ後ろに居る千秋と透くんと凪くんにそう言った。
「俺は特にする事も無いし構わない。」
「俺も。凪もどうせ暇だろ?」
「何だよその言い方〜、透こそ暇なくせに。行くけどさ。そういえば景から聞いたんだけど、和真も暇してるらしい。グラウンドに行くついでに探そうよ。」
「ごめんね、私は準備があるからもう行くね。皆んなも良かったら参加してね!」
さっき景くん達のクラスで参加者を集めておいたら良かったわ、と少しばかり後悔した。そしてステージに向かうと既に山下先輩が居た。
「よし、来たな。トップバッターは俺の知り合いを誘ってるから大丈夫だ。そういえば他の先輩達に頼まれたんだけど、恋咲ちゃん、客寄せ頼める?」
「えっと、今からですか?」
「いやいや、違うよ。恋咲ちゃんの劇が終わった後に丁度告白大会の午後の部が始まるからお昼に食べる所とか劇が終わった後ちょっとだけ。」
「良いですよ。実は先程景くんの、友人のクラスで参加者を集めておいたら良かったなと思ったばかりなので。」
私がそう言うと山下先輩は満足そうに頷いた。そして時間が来て私達はステージに上がった。
「10時スタート、なんでも告白大会が始まりました!トップバッターはこの人!」
と山下先輩は舞台の袖の方を指して言った。
「バスケ部副キャプテンでありバスケ部一背が高い!その名も山代颯!」
山下先輩の声に合わせて出て来た颯先輩は少し恥ずかしそうに頬をかいていた。そして山下先輩から私にバトンタッチだ。
「颯先輩の告白とは何でしょうか?まず名前とクラスと相手を教えて下さい。」
私はそう言って颯先輩にマイクを渡した。
《3年6組の山代颯です。相手は同じクラスの矢萩衛都です。》
「では告白まで3、2、1、どうぞ!」
《衛都ー!お前から貰った誕生日プレゼント、貰った次の日に無くしちまったー!マジでごめーん!》
そして颯先輩の告白に対し、会場でポカンとしている矢萩先輩に山下先輩はマイクを持って行った。
「告白に対しての返事をどうぞ!」
《また作ってやるよー!!》
《マジでありがとー!!》
「因みに、何をプレゼントされたんですか?」
と私が颯先輩に聞くと、颯先輩はとても嬉しそうな顔で言った。
「手作りのリストバンド。」
「凄いですね。それを翌日に無くしてしまったんですか?」
「ああ。気に入りすぎて使うのが勿体無くて、鞄に入れてたら無くしてたんだ。」
「そうなんですか。わざわざ手作りをくれるなんて、仲が良いんですね。それに、とても優しい人なんですね。矢萩先輩という方は。」
「ああ。俺の唯一の理解者だ。」
「羨ましいです。先輩方が。」
そして颯先輩はステージを降りて行った。
「飛び入り参加お待ちしておりまーす!」
私と山下先輩ははグラウンドに向かって行った。するとすぐに人が集まって来た。
「……では告白をどうぞ!」
《〜〜くん、好きです!付き合って下さい!》
《俺も、ずっと前から好きでした!》
「ヒュー!カップル成立だな。おめでとー!」
「おめでとうございます!」
そして話題が話題を呼び、次々と人が集まってくる。
「……どうぞ!」
《九条くん、好きです付き合って下さいー!!》
その告白を聞いてどしりと胸に重いものがのし掛かったように感じた。山下先輩は千秋の所へマイクを持って行った。
「返事をどうぞ!」
《すみません。俺には好きな人が居るので。》
千秋がそう言った事で私はホッと息を吐いた。千秋に告白した子は笑顔で言った。
《そうですか。応援してますね!》
そして午前の部も残る所4人。その中には予め誘っておいた爽夜くんが居た。そして他の3人も終わり、午前の部のラストを飾るのが爽夜くんだ。
「では、名前とクラス、相手を教えて下さい。」
《松岡爽夜、1年4組です。相手は……幼馴染の鳳雅美です!》
名指しされた雅美ちゃんは驚いたように目を見張って居たが、ユーリちゃんとレイラちゃんに肩を叩かれて居た。
《俺は、雅美の事が好きだ!》
雅美ちゃんの所へは山下先輩に頼んで私が雅美ちゃんにマイクを持って行った。
「雅美ちゃん、告白に対しての返事をどうぞ!」
雅美ちゃんは恥ずかしがりながらもレイラちゃんとユーリちゃんに背中を押されて言った。
《私も、いや、私はずっと前から爽夜の事好きだったよ!私の、彼氏になって下さい!》
《ああ。喜んで!》
すると少し後ろの方から聞き覚えのある声でのお祝いが聞こえて来た。
「爽夜ー!雅美ー!おめでとー!!」
「爽!みーちゃん泣かしたら許さないからー!」
「2人ともおめでとうー!!お兄ちゃんと霧くんと我緒くんにも早速報告するわね!」
私は隣で顔を両手で覆っている雅美ちゃんに代わって近くに居る凪くんに聞いた。
「あれって瀧くん達と茉夜さん達だよね?」
「そうだよ。1番右に居るのが母さんで、その隣に居るのが美瀬姉、雅美の母さんだよ。」
そして私はステージに戻り山下先輩と午後の部の説明をし、皆の所に向かった。
「改めて、雅美ちゃんも爽夜くんもおめでとう。」
私がそう言うと2人は照れ臭そうに笑った。そして私の耳元で言った。
『みのりんも頑張って!』
『美乃梨はずっと応援してくれてたからな。俺も応援してる。当たって砕けろ。』
「え、ええ。ありがとう、頑張るわ。」
私は少し先に居る千秋に目を向けながら言った。
そして凪くん達が揃っている所に向かうと
「みのりちゃ〜ん!」
「雫ちゃん!体育祭ぶりだね。」
「うん!たっくんもいっちゃんもなーくんもそーくんもいるよ!」
「皆で来たんだね。」
そして皆わざわざ挨拶をしに来てくれた。
「美乃梨さん、お久しぶりです!」
「司会姿かっこよかったです。」
「美乃梨さん劇するんですよね?」
「美乃梨ちゃん、久しぶり、です!」
「瀧くん、泉ちゃん、流くん、霜くん。皆体育祭ぶりだね。これからどこ回るの?」
と私が聞くと瀧くんが教えてくれた。
「2組に別れて回るんスよ。行きたい所も違うし。俺と流と雫、泉と霜と母さん達で別れるんです。」
「そうなんだ。私達は午後から劇があるから早めにお昼を食べないとなんだけど、一緒にどうかな?」
「良いんですか?」
「ええ。賑やかな方が楽しいと思うから。ユーリちゃん達も良い?」
私は振り返ってそう言うとユーリちゃんとレイラちゃんはもちろん!と頷いた。
「雅美ちゃんと爽夜くんは2人で回るんだよね?」
「ちょっとみのりん、野暮な事聞いちゃダメだよ?」
とユーリちゃんが言った。
すると雅美ちゃんは少しムッとしたような顔でユーリちゃんに言った。
「ユーリ、からかってるでしょ?」
「そんな事ないよ〜。皆んな、行こっ!」
そして私達は真央くんのクラスに向かった。まだお昼には少し早いので待ち時間は5分ほどだった。
丁度その時、私のスマートフォンが鳴った。
「もしもし、稔?」
『姉さん、着きました。聡兄達も劇には間に合うと思います。』
「そう。私達は今2年5組に居るけれど、稔達はどこか回る?」
『いえ、姉さん達の所に向かいます。』
そして少しして煌、稔、架が来た。それとほぼ同時に私達の順番が回って来た。
「丁度空きましたのでお好きな席にどうぞ。」
そう案内してくれた先輩もヴァンパイアの衣装と鋭い牙があった。
「あ、美乃梨。秋月さんと姫野さんも来てくれたんだね。瀧くん達と煌くん達も居る。」
「美乃梨ちゃん、久しぶり。知ってたらで良いんだけど、茉夜さん見なかった?」
教室に入ると同じくヴァンパイアの格好の真央くんと匡哉先輩が出迎えてくれた。
「さっきグラウンドに居ましたよ。」
「そっか。ここに来てくれると良いんだけど。」
匡哉先輩がそう言った時、ガラガラッと扉が開いた。
「やっほー、匡哉。元気?」
「茉夜、そんなに勢いよく扉を開けるな。」
茉夜さんと朔夜さんがやって来た。
「まーちゃん、さっくん!」
「雫達もここに居たんだ。美乃梨ちゃんも!」
「はい。あ、紹介しますね。私の弟達です。」
私がそう言うと3人は席を立ち挨拶をした。
「初めまして。恋咲煌と申します。」
「恋咲稔です。よろしくお願いします。」
「恋咲架です。姉さんのお知り合いの方ですか。」
「よろしくね、煌くん、稔くん、架くん。私は爽夜の姉の松岡茉夜です。それでこっちが」
「爽夜の兄の松岡朔夜です。よろしく。」
ひと通りの挨拶を終えた後、茉夜さんが煌達に聞いた。
「3人は結構顔似てるんだね。何歳なの?」
「11です。顔が似ているのは三つ子だからですよ。」
「ああ〜、やっぱり。雰囲気とか表情は全然違うけど顔自体は一緒だもんね。でも美乃梨ちゃんと稔くんが1番似てる気がする。」
茉夜さんは並んでみて、と言った。
「うん、横に並ぶと分かりやすいね。表情が似てるんだね。」
するとレイラちゃんとユーリちゃんも同調した。
「うんうん、みのりんを更にかっこよくした感じ。」
「稔くんとみのりんの笑顔、確かに似てる。」
するとしばらく口を開いたまま固まって居た匡哉先輩が声を出した。
「あ、あの!茉夜さんはどうしてここに?」
茉夜さんはきょとんとした顔で言った。
「匡哉がヴァンパイアの格好するって聞いて面白そうだなと思ったから?」
「そ、うですか。」
「来て欲しくなかったの?朔兄、帰ろ〜」
茉夜さんがくるり扉の方を向くと匡哉先輩は焦った様子で止めた。
「待って下さい!来てくれてとても嬉しいです!少し驚いただけで。」
すると朔夜さんが茉夜さんの頭をペシッと叩いた。
「後輩をいじめるな。匡哉、悪いな。」
「いえいえ。」
「冗談だって。匡哉、意外と似合ってるよ。」
「ありがとうございます。」
匡哉先輩は照れ臭そうにお礼を言った。
「朔夜さんと匡哉先輩って知り合いだったんですか?在学時期は被っていませんよね?」
「ああ。俺は匡哉の家庭教師だからな。」
「そうだったんですか?」
「丁度夏休みの終わり頃に図書館で宿題に潰されている奴を見つけたんだ。」
「それが匡哉先輩だったんですね。」
「そうだ。部活ばかりで勉強は出来ないらしく最初は基礎レベルでつまづいていたんだ。特に国語は。」
朔夜さんがそう言うと真央くんが「えっ!?」と声を上げた。
「匡哉の得意科目って国語じゃないの!?」
「いや、国語だよ。朔夜さんに教えてもらって国語が得意になったんだ。」
そして私達はカップケーキとジュースを注文した。
「そういえば、どうして混んでないんだろう。」
とユーリちゃんがポツリと溢した。
「確かに。神崎先輩のヴァンパイアの姿が見れるのに混んでないなんてね。」
レイラちゃんもそう言うと匡哉先輩が教えてくれた。
「美乃梨ちゃん達が来る前までは大行列だったんだけど、皆んな何も頼まないから担任に追い出されたんだよ。」
「追い出されたんですか?」
「ああ。真央の周りを囲んでたから、真央は当番のくせにずっと突っ立っつしか出来てなかったんだ。」
「それは、追い出されてしまいますね。」
そして真央くんがカップケーキを持って来て匡哉先輩に言った。
「口を動かしてないで手を動かしてよ。僕1人で人数分持って来れるわけないでしょ?」
「分かってるよ。てか、急がないと美乃梨ちゃんは劇があるもんね。」
「はい。」
「僕、美乃梨さんの劇楽しみです!」
流くんが目をキラキラさせて言った。
「ありがとう。でも演技なら雅美ちゃんの方が圧倒的に上手いと思うよ?」
「それはそうかも。でも、美乃梨さんは可愛いからどんな役でも似合いそうだと思って。」
「私に王子様役なんてって思ってたけど、自信ついて来たわ。ありがとう、流くん。」
そして私は衣装に着替えなければならないので先に向かう事にした。
「私は先に行くね。」
「うん。みのりん頑張ってね!」
「俺達も観に行きます。」
「みのりちゃんがんばって!」
私は皆んなに見送られて体育館に向かった。
「美乃梨、着替えは更衣室でだって。」
「ありがとう、透くん。衣装完璧ね。とても似合ってるわ。」
そして私は衣装に着替えて体育館の舞台袖に行った。
「あ、千秋。ウィッグも借りて来たんだね。あれ、メイクもしてるの?」
私がそう聞くと千秋は物凄く嫌そうに答えた。
「ああ。演劇部に行くと鳳が居て、いらないって言ったのにわざわざ先輩も呼んでメイクをして来たんだ。
……はあ、ベタベタする。」
「そうだ。私も髪を結わないと。」
私がコームとゴムを用意して自分で結おうとすると
「美乃梨、僕がしてあげるよ。」
「凪くん!?」
「千秋の髪をセットしたの僕なんだ。いつも泉と雫の髪の毛いじってるから出来るよ。」
「あ、ありがとう。」
そして凪くんは慣れた手つきで髪をポニーテールに結ってくれた。
「よし、これで大丈夫だよ。じゃあ僕は観客席で見てるね。」
そう言って凪くんは観客席に言った。あと少しで開演だ。
「緊張するな、って美乃梨と千秋は普通そうだな。」
「そうかな?」
「人前は慣れてるからな。」
そして開演ブザーが鳴り、千秋は舞台へ出て行った。
とうとう雅美ちゃん&爽夜くんカップル誕生です!
次は文化祭初日の午後。
お楽しみに⭐︎




