衣装合わせと買い出し!
今日は久しぶりに真央くん達と屋上で集まってお昼を食べる。私は千秋と京翠と一緒に屋上に向かった。
「美乃梨、機嫌良いな。」
「え、そうかな?でも、久しぶりに皆と屋上で食べるの楽しみ。」
そして屋上に行くと他の皆は揃って居た。
どうやら何かの話で盛り上がっているようだった。
「遅くなってごめんね。」
「良いよ。それより、貴翠さん達も揃って屋上で食べるのは初めてだよね?」
「そうだね。屋上では初めてかも。」
私達3人は空いている所に座り、持って来たお弁当を開けた。
「そういえば、さっき何を話してたの?」
私がそう聞くと真央くんが答えてくれた。
「実は昨日アルバムを観てて、小さい頃を思い出して昔話をしてたんだよ。そうだ、美乃梨の昔話も聞かせてよ。」
「私の昔話?」
京翠の方を見上げながら言うと京翠は私のサインに気付いたように笑顔で頷いた。
「私が代わりに話しましょう。美乃梨様は自身の話をするのがお恥ずかしいようなので。幼い頃の美乃梨様は他の子と比べると大人びて居ました。勿論、今でも大人顔負けな部分もありますが。幼いながらによく我慢をされて居ました。」
すると景くんは微笑みながら言った。
「美乃梨ちゃんらしい。」と。
「御両親に甘えたいお年頃の時は、叔父である響彼様のお部屋に着くまでは涙を我慢しながらつくり笑顔を浮かべ、お部屋に着くと泣き出して居たそうです。」
「何でそこまで言っちゃうの!?ただでさえ煌達の前で言われたばかりなのに……」
私がそう言いながら俯くと真央くんが私の肩を叩いて言った。
「美乃梨、全く気にしなくて良いよ。可愛いから。」
「可愛くなんて無いわよ。素直に甘えられる子の方が余程可愛いわ。」
「そんな事ないと思うけど。そういえば美乃梨の泣き顔なんて見た事無いね。」
「それはそうよ?私が泣き顔を見せるなんて、シャルルか響彼くんか聡兄様か京駕さんの前だけだったもの。」
私がそう言うと真央くんは悪戯に笑いながら言った。
「美乃梨の泣き顔、想像つかないな?いつか見てみたい。もちろん、嬉し涙でね。」
「人前で泣いたりしないわよ。それより真央くんの昔話も聞かせてよ。」
私がそう言うと真央くんは恥ずかしそうに頬をかきながら話した。
「昔の僕は今より少しだけやんちゃだっただけだよ。イタズラをしたり、部屋を抜け出したり。」
「え、真央が!?」
「意外……!景くんは昔話とか無いの?」
景くんはうーんと頭を捻りながら考えて言った。
「昔は引っ込み思案で身長も低かったからよく女の子に間違えられていたかも。」
「そうなんだ。私は初対面の時から景くんはかっこいい子だと思ってたけれど。千秋は?」
自分が聞かれると思って居なかったようで千秋は少し戸惑っていた。
「お、俺は今とあまり変わらない。姉上によると今よりも表情が分かりづらかったそうだが。」
「確かに僕達と一緒に婚約者候補として美乃梨に会った時の千秋はなんて言うか、無愛想だったよね。」
「私も千秋と初めて会った時、凄くクールな子だなって思ったわ。」
「そんな事無いと思うが。」
そして話は文化祭の話へと移って行った。
「美乃梨ちゃんのクラスは劇だっけ?」
「うん。シンデレラだよ。配役は、」
と言おうとすると隣の千秋から凄まじい視線を感じたので誤魔化した。
「ほ、本番のお楽しみで!」
「そうだね。絶対に観に行くよ。」
千秋は険しい表情で景くんに言った。
「別に観に来なくて良い。それより景のクラスは何をするんだ?」
「僕は動物写真館だよ。」
「何それ?」
「動物の手袋とか耳とか尻尾をつけて写真を撮るんだよ。もちろん僕達も動物の格好をしてるんだけど。」
「楽しそう!遊びに行くね。真央くんのクラスは何をするの?」
真央くんはニコニコしながら言った。
「コンセプトカフェだよ。ヴァンパイアのね。」
「真央くんがヴァンパイア!?」
「真央なら案外似合いそう。」
と景くんが言うので想像してみると……
「似合いすぎて失神者が出そう。」
「……え?」
「だって真央くんはただでさえかっこよくて大人っぽいのに……その所為で何度ドキドキさせられた事か。絶対大繁盛するよ。」
と私が言うと真央くんは驚いた表情をして固まった。
「美乃梨、ちゃんと僕の事意識してくれてたの?」
「当たり前じゃない。真央くんみたいなかっこいい人に、か、可愛いとか言われてドキドキしない方が可笑しいわよ。」
「美乃梨お嬢様、僕の事は?」
と篤季は悲しそうな目で聞いて来た。
「……意識、してるわよ。断ってもアピールし続けて来るんだから。」
私は赤くなったであろう顔を隠す為に横を向いた。すると貴翠が言った。
「美乃梨様、顔を背けてもお耳が赤くなっているので分かりますよ。」
「どれだけ表情を取り繕っても顔の赤さは取り繕えないもの。それよりも貴翠のクラスは文化祭、何をするの?」
私はやや強引に話題を戻した。
「私のクラスは屋台です。チュロスとポップコーンの販売をします。まあ、何故か私は客寄せ係に推薦されてしまいましたけどね。」
貴翠は美形なので客寄せ係にはピッタリだろう。本人は自覚していないようだけど。
「そうなのね、何故かではないけれど。あ、忘れる前に伝えておかなきゃ。景くん、千秋、真央くん。来月に響彼くんの会社のパーティーがあるの。3人にも参加して貰うのだけれど、もう聞いた?」
「ああ。父さんと母さんから聞いた。」
「僕も昨日聞いたよ。」
「僕は初耳だよ。最近父さん達忙しくてあまり話していないからね。」
「それで、響彼くんがパーティーだから友達も呼んで良いって言っていたの。景くんの方から和真くんの事誘ってくれる?」
私がそう聞くと景くんは笑顔で頷いた。
「もちろん良いよ。他は誰を誘うつもりなの?」
「えっと、凪くんと爽夜くんと雅美ちゃんとレイラちゃんとユーリちゃん、透くんと葉月くん、あと朝葵ちゃんと羽音ちゃんも。」
「大分と大人数だね。僕も他に誘って良い?」
と真央くんが聞いて来た。私は頷き返して聞いた。
「因みに誰を誘うの?」
「匡哉だよ。パーティーとか好きだから。」
そして昼休み終わりの15分前、まだ早いけれど教室に戻る事にした。教室にはさっきパーティーに誘うと言ったメンバーが運良く全員揃っていた。
「葉月くん、ちょっとこっち来て!」
「どうした?恋咲。」
そしてユーリちゃん達と凪くん達にも集まって貰って説明した。
「……て事なんだけど、パーティーとか興味ある?実は私、芸能人にあまり詳しくないから教えてくれると嬉しいです。」
すると雅美ちゃんが声を上げた。
「Ririさんに会えるの!?絶対に行くよ!」
「良かった。他の皆は?」
「私も芸能人に会いたい!」
「私も!握手して貰いたい!」
ユーリちゃんとレイラちゃんは行く気満々な様だ。
「凪くん達は?」
「僕は如月界莉に会いたい!」
「俺も、パーティーなら美味いご飯食えそうだし。」
「爽夜くんらしいね。透くんと葉月くんは?」
「俺はもちろん行く。芸能人に会う機会なんてそうそう無い事だからな。」
「俺も良いのか?」
葉月くんは不安そうに聞いた。
「友達なんだから当たり前じゃないの?」
「そうか。藍の奴羨ましいがるだろうな。」
「藍先輩?」
「ああ。文化祭が終わると受験が目の前だからな。」
文化祭は11月だけど、3年生も勿論参加している。でも、中高一貫校だから受験勉強は必要ないんじゃ?と思い、私は葉月くんに聞いた。
「ああ、うちの学校は学力別に高等部のクラスが分類されるんだ。中等部3年生は得意なものと苦手なものを分けた特別カリキュラムを用意されるんだけど、その結果を見て、進学せずに受験する人が毎年出て来るんだ。今年は10人くらい居るそうだ。」
「凄いね。」
葉月くんから聞いて初めてこの学校の仕組みを知った。
そして私は教室の端の方に2人並んで外を眺めている朝葵ちゃん達の方に向かった。
「朝葵ちゃん、羽音ちゃん。実は来月パーティーがあるんだけど来ない?」
「パーティー?」
「うん。響彼くん、私の叔父様の会社のパーティーなの。」
「ごめんね。来月はクリスマスがあるから被服部のファッションショーがあって忙しいの。」
「また機会があったら誘ってね。」
「そっか。残念だけど頑張ってね。」
そして皆が集まっている方へ戻った。すると葉月が話しかけて来た。
「舞城と眞木も誘ったのか?」
「うん。でも断られちゃった。来月は被服部のファッションショーがあるんだって。」
「ああ、あれか。結構大規模らしいぞ。何でもこの学校卒で元被服部部員のデザイナーが居るからその人が審査に来てアドバイスとかをくれるらしい。」
「詳しいね。」
と私が葉月くんに言うと、葉月くんはあまりにもサラッと言った。
「好きな奴が被服部なんだ。」
「え!?誰!?」
「さっき恋咲が話してた奴だよ。」
『朝葵ちゃん!?羽音ちゃん!?』
「さあな。」
と葉月くんはスルーした。
「2人とも可愛いものね。応援してる!」
と私が言うと葉月くんは私の耳元で言った。
『恋咲の好きな奴は九条だろ?』
『……!』
『何で知ってるかって?恋咲が分かりやすいからだ。気付いてない奴は鈍感な奴くらいだろ。』
『嘘、ポーカーフェイスは完璧な筈なのに。』
『表情じゃなくて雰囲気だよ。恋咲さ、九条と話す時だけ周りにピンクが見えるくらい変わるんだよ。』
『そうなの?そんなつもりないけれど。』
『とにかく頑張れよ。』
そして5限目も終わり6限目。今日は衣装合わせだ。
「配役がある人は着替えて来てくれ。被服部の子が細かいサイズ調整をしたいんだとよ。」
そして私は王子様の服に着替えた。白いパンツに白いワイシャツ。金色の刺繍の入った白いジャケットに金色の肩章が付いている。おとぎ話に出てくる王子様そのものの服だ。最後に髪はポニーテールで一つにまとめて銀色の髪留めを付ける。
「「完成〜!!」」
「美乃梨ちゃん、前回の採寸と全く変わってないからサイズ調整も必要ないね。」
「完璧だね。本物の王子様だよ。」
「朝葵ちゃん、羽音ちゃん、ありがとう!」
そして教室に向かった。私は少し緊張しながらドアを開けた。そしてドアを開けて教室に入ると、
「「「…………」」」
(あれ、誰も反応しない。)
私が少し戸惑いながら教室内を見回すと京翠と目が合った。京翠は笑顔で言ってくれた。
「美乃梨、似合ってますね。本物の王子様みたいですよ。」
「ありがとうございます。」
そして三日月先生も褒めて下さった。
「恋咲、流石だな。よく似合ってる。」
そしてしばらく動かなかった雅美ちゃんやレイラちゃん、ユーリちゃん達が褒めてくれた。
「みのりん似合ってる!」
「マジ美人!」
「かっこいい!惚れるよ!」
「ふふ、ありがとう。少し照れるわね。」
するとユーリちゃんが思いついたように言った。
「みのりん、絵本の王子様っぽい事言って!」
「誰に?」
「うーん、」
ユーリちゃんがそう言って考えだした時、ガラッとドアが開いた。立っていたのはお姫様の衣装を着た千秋だった。
「千秋!凄く似合ってる!可愛い!」
「……そうか。」
「どうしたの?あ、透くん。魔法使いの姿似合ってるよ。」
「ありがとう。美乃梨も王子様姿、似合いすぎてちょっとビビった。千秋は着替えてウィッグをつけた姿を見た時、惚れるかと思った。」
「そうだよね。千秋、物凄く可愛い。羨ましいくらいよ。私のドレス着てみて欲しい!絶対似合うわ!」
私が透くんとそんな事を話しているとユーリちゃんが言った。
「みのりん、さっき言った事、九条くんにしてみて!絶対お似合いだから。」
私は言われた通り絵本の王子様らしいセリフを考え、千秋を呼んで跪いた。
「千秋、こっちに来て。」
「?ああ。」
そっと手の甲に口付けを落とすフリをして千秋の方を向いて言った。
「貴方を愛しています。」
「……」
何も説明せずに急にしてしまったので千秋は固まってしまった。
「ごめんなさい。驚いたよね?やっぱり私は王子様って柄じゃないわよね。」
私がそう言うとユーリちゃんが言った。
「何言ってるの!皆本物の王子様だと思って固まってるんだよ。みのりん世界一かっこよかった!」
「あ、ありがとう。でもそんなに素直に褒めないで。恥ずかしい……」
私はそう言いながら顔を隠した。すると今度はレイラちゃんが言った。
「何それ可愛い!ギャップ!」
「私、みのりんに告白されたら即答でOKしちゃいそうなんだけど。」
「何言ってんの雅美。みのりんに告られる訳ないでしょ?まあ、気持ちは分かるけど。」
そして盛り上がって来た時、三日月先生が言った。
「盛り上がっているところ悪いがそろそろ練習しないと時間が過ぎて行くぞ。」
そして今日の練習は衣装を着てするので動きも細かく雅美ちゃんに指示された。千秋は相変わらず棒読みになってしまう部分を指摘されていた。すると雅美ちゃんは千秋にアドバイスをした。
「九条くん、詰まってる所いつも同じだよね。これは私からのちょっとしたアドバイス。ただのセリフじゃなくてその役自身になって、本当に相手の事をを好きになってみて。(まあ、九条くんはみのりんの事好きだから恥ずかしいのかもしれないけど。)」
そしてもう一度通しで練習し、放課後は自主練習と部活がある人は部活に赴いた。私は着替え終わると、千秋と透くんと一緒に三日月先生の所へ向かった。
「3人とも来たか。これで1年は全員居るな。」
三日月先生の所には爽夜くんが居た。
「4人にはこれから重要なミッションを与える。」
「ミッション?」
と透くんと千秋は首を傾げたが、私と爽夜くんは気付いた。
「はあ、買い出しですよね?」
「流石松岡だ。」
「じゃあ予算は多めに出しておくから。買い物のリストはこれだ。最終下校までには間に合うと思うが、万が一間に合わなければ俺が家まで車で送ってやる。」
そして私達は買い出しをしに近くの大型スーパーまで向かった。
「ふふ、なんか楽しいね。」
「そうか?面倒臭いだけだと思うけど。それより美乃梨、スーパーって行った事あるか?」
「え?ショッピングモールと何か違うの?」
「違うっつーか、なあ、透?」
「ああ。何か説明しづらいな。千秋は行った事あるのか?」
「多分無いな。」
そして歩いて10分程でスーパーに着いた。スーパーは入り口から賑やかだった。
「凄く賑やかだね。何かイベントでもあるの?」
「イベントっていうか、タイムセールだ。」
「タイムセール……千秋は分かる?」
「いや、人集りが出来ている事しか。」
そして人混みを避けながらラッピングの売ってある雑貨コーナーへと向かうと、見覚えのある人が居た。
「美瀬さんと霧くん!?」
と爽夜くんが声を上げた。この2人は雅美ちゃんのお母さまと凪くんのお父さまだ。
「爽夜か。透くんに美乃梨ちゃんに千秋くん。久しぶりだね。」
「お久しぶりです。」
「ところで皆はどうしてここに?」
と美瀬さんは聞いて来た。
「部活の買い出し。霧くん達は夕飯の買い物?」
「ああ。爽夜も久しぶりに食べに来るか?今日は鍋だからな。」
「マジで!?絶対行く!兄貴と姉貴も誘って良い?」
「2人は招待済みだよ。我緒と伊月は今日も遅いと言っていたからな。」
我緒さんと伊月さんとは誰だろうと私が思っていると透くんが教えてくれた。
「我緒さんは爽夜の父さんで伊月さんは爽夜の母さんなんだ。2人ともモデル並みのスタイルをしてるから授業参観の時、凄え目立ってたんだよな。」
「そうなんだ。」
「それと、めちゃくちゃ明るい爽夜って感じで顔そっくりなんだ。」
透くんは「マジで驚くぞ。」と言いながら爽夜くんに写真を見せてと言った。爽夜くんはすんなり見せてくれた。透くんの言った通り本当にそっくりだった。
「大人版爽夜くんだ……!」
「爽夜と似てるな。」
千秋も凄く驚いた様子だった。すると美瀬さんと霧さんもクスクス笑いながら言った。
「確かに爽夜はどっちにも似てるな。」
「そうね、小さい頃は伊月似だったけどね。」
「じゃあ僕達はそろそろ行くね。皆、文化祭の準備頑張ってね。」
霧さんと美瀬さんが行った後、私達は二手に別れて買い物をする事にした。
「よし、ならじゃんけんで別れるぞ。」
そして私と爽夜くん、透くんと千秋のペアに別れることになった。
「えーと、必要なものはリボンとミサンガ用の小さい紙袋、か。」
「リボンって何色が良いのかな?」
「何色か買ってこうぜ。俺、青と赤に決めた。美乃梨も2色決めろよ。計4色あれば十分だろうし。」
「じゃあ、ピンクと黄色。」
「良いな。可愛い。」
そして小さい紙袋を選ぶ事にした。
「こっちも種類が多いね。紙袋も2種類くらい選べば良いかな?」
「そうだな。これとかこれ、どうだ?」
「良いね。じゃあ透くん達と合流しようか。」
私がそう言って透くん達を探しに行こうとした時、
「美乃梨、ちょっと待ってくれ。」
と爽夜くんが私の肩を掴んで止めた。
そして少し端の方に寄って私の耳元で言った。
『実は雅美に文化祭一緒に回ろうって誘われて。これって文化祭デートって奴か!?』
『うんうん。そうだと思う!(雅美ちゃん、ちょっとムキになりながら爽夜くんをデートに誘うって言ってたもんね。)』
『どうしよう、美乃梨!』
『告白……は雰囲気があればしやすいらしいよ!文化祭はカップルが出来やすいらしいから。とにかく楽しめば良いんじゃないかな?』
『そ、そうか。何かノリノリだな。美乃梨も千秋を誘えば良いのに。』
爽夜くんは面白がるような目で言って来た。
『む、無理!もし振られたらこれから少なくとも2年は婚約者候補として過ごすのに……!』
『美乃梨も苦労するな。(まあ、誰がどう見ても2人は両思いだけどな。)決めた。俺、文化祭で雅美に告白する!振られたらカラオケ、付き合ってくれ。』
『もちろんだよ!(雅美ちゃんと爽夜くんは両思いだけどね。)もし私が千秋に告白して振られてもカラオケに付き合ってね。』
そして「約束」と言って小指と小指を絡めた。
すると背後から気配を感じて2人して振り返ると、
「透!?千秋!?居たなら声掛けろよ!」
「2人が盛り上がってるようだったから。」
「何話してたんだ?」
「な、何でも無いよ。ね、爽夜くん。」
「あ、ああ。文化祭の準備面倒臭いな〜って。」
2人は納得していない顔だったが、時間が過ぎていくのでレジに向かった。会計後、帰り道にて……
「爽夜、本当に何でも無かったのか?」
「ああ。仮に何かあったとして、千秋には関係ないだろ?(嫉妬してんのか?美乃梨に聞けば良いのに)」
爽夜くんに少しキツく言われた千秋は少しの間黙ってから口を開いた。
「……そうだな。爽夜と美乃梨が何を話していても俺には関係ないな。」
千秋の言葉は私の胸に深く刺さった。もちろんこれ以上追及されないのは良いことだけど……
(関係ない、か。何でだろう。モヤモヤする。)
そして私は少し暗い気持ちを隠す為にわざと明るい笑顔を作った。買った物の入った袋を持って三日月先生の所へ向かった。
「おお、帰って来たか。早かったな。」
「はい。近かったので。」
「今は丁度休憩だから4人とも休憩して良いぞ。」
「はい。ありがとうございます。」
そして私は中庭の木の下にあるベンチに座った。すぐに足音が聞こえた。
「美乃梨様、よくぞご無事で。」
「大袈裟過ぎるわよ。けれど、京翠は無理を言ってでも着いてくるものだと思っていたわ。」
「そうですね。そうしたかったのは山々でしたが、少し用事があり、貴翠に頼みました。」
「そうなの!?全く気付かなかったわ。私もまだまだね。」
「いえ、貴翠の尾行に気付くことはそう簡単な事ではないので美乃梨様がまだまだという事はありません。寧ろ貴翠が凄いだけでしょう。」
京翠は「貴翠の努力と才能を超えるのはなかなか難しいと思います。」と優しく微笑んだ。貴翠はただでさえ才能の塊と言われるくらいなのに架に負けず劣らずの努力家なのだ。
「そうね。簡単に比較する存在では無いわね。」
「それより美乃梨様。どうされました?お久しぶりのつくり笑顔ですね。」
「流石京翠ね。実は、会話の流れでとはいえ、千秋に関係ないって言われて。」
「関係ない、とは?」
「私と爽夜くんで話してたの。千秋はその話を爽夜くんに聞いてたんだけど、爽夜くんに関係ないだろって言われて肯定したの。もちろん秘密にしないといけない事だったから、それ以上聞かれないのは良い事なんだけど、何故かモヤモヤして……」
「可笑しいよね。」と私が笑いながら言うと京翠は否定してくれた。
「そんな事無いと思います。正直、私には恋愛経験がございませんのではっきりとは分かりませんが、その感情も含めて"恋"と言うものなんじゃないでしょうか?」
「恋って忙しいのね。」
「そうですね。美乃梨様を見ているとそう思います。恋は人を変えるそうですから。」
そして私はもう一つ不安なことを京翠に聞いた。
「それで気付いたんだけど、私がこうしてモヤモヤしているように、篤季も凪くんも真央くんも私に対して同じ気持ちなのかな?」
「全く同じでは無いと思いますが、嫉妬する事はあるのではないでしょうか?」
「波多さんの時と違って3人の事ははっきりと振っていないから余計に嫌な思いをさせてしまいそう。3人とも返事はまだで良いと言うけれど、いつ返事をすれば良いのか分からないわ。」
「そうですね。美乃梨様が千秋様に告白される決意をしてから返事をしたらどうでしょう?まあ、あの3人はその程度では諦めないでしょうがね。」
そして私は決意した。
「京翠、私決めたわ。千秋に告白する。」
京翠は優しく微笑んで言ってくれた。
「応援、しております。因みにですが、いつ告白するつもりなんですか?」
「いつだろう。タイミングって大切よね?」
私がそう言うと京翠は少し驚いたように目を開けて言った。
「美乃梨様なら細かく計画を立てそうですが、何も考えていないのですか?」
「告白は経験が無いから計画を立てようにも無理よ。経験者から聞こうと思っても流石に篤季や真央くんからは聞けないから。」
「それなら素晴らしいお手本がいらっしゃいますよ。美乃梨様のお近くに。」
「誰よ?」
「薫様ですよ。薫様は紫乃凛様にそれはそれは熱烈な愛の告白をされたそうですから。他の婚約者候補の方が引いてしまうくらいに。」
「お父様が!?」
お父様とお母様は仲が良いけれど、それは幼馴染だからだと今まで思っていた。まさかお父様がそんなにお母様を愛していたなんて……
「……お母様が羨ましいわ。」
「そうですね。私は恋をしませんが誰かに愛されることはとても素晴らしいことだと思います。」
「恋をしない?どういう事?」
「恋愛は私の仕事上、支障をきたしてしまいますので出来るだけ避けて通りたい道ですね。勿論、婚約者が決まれば婚姻はしますがね。」
そして京翠は私の目を見て言った。
「私の主人は一生美乃梨様、貴方だけです。たとえ婚約者が決まり、婚姻したとしても、私にとって妻よりも一番大切な方は美乃梨様です。」
「ありがとう、京翠。気持ちは嬉しいけれど、奥さんが出来たら奥さんを優先して。」
「それは出来かねます。何が何でも美乃梨様が最優先でございますから。私と婚姻するならそこの所を理解していただける方でなければ。」
「……京翠、一生結婚出来なそうね。婚約者の方に引かれてしまうわよ。」
すると京翠は首を横に振った。
「それがですね、この条件に全て当てはまる方が私の知る限りで十数人程居ます。勿論、皆様木野家や本堂家の方々ですが。皆様口を揃えて美乃梨様の側でお仕えしたいと仰います。」
「それは、私が跡取りだからでしょう?」
「いえ、美乃梨様は分家の方にも分け隔てなく接していますから皆様憧れておられるのです。」
「それならお父様も煌達も変わらないわよ?」
「そうですね。ですが美乃梨様は本家の方の中で一番人気なんです。私の婚約者候補として上がって来ている方は美乃梨様のファンの方が多いですから。」
木野家の人は聡兄様や聡兄様の両親くらいしか親しい人が居ないのに、私に憧れてくれる人が居るというのはとても嬉しい事だった。
「もうお見合いはしたの?」
「何度かは。ですが私はまだ17ですので軽く会って話す程度でしたが。勿論会話の内容は美乃梨様のお話だけでございますよ。」
私は変わらない幼馴染に少し安堵を覚えながらも本当に良いのかしらと思った。
京翠が17という事を忘れかけていました〜(-。-;
次回はとうとう文化祭です!
お楽しみに⭐︎




