祖父母の家と凪くんとのデート
「律ちゃんって運転免許持ってたんだね。」
「うん。まあ、私有地だから持ってなくても運転して良いんだけど、薫お兄様と響彼兄様が免許無しで美乃梨達を乗せるなって言って来たから。」
律ちゃんはそう言いながらお祖父様達のお屋敷に車を停めた。律ちゃんが玄関の扉を開いたので私達も後ろについて行った。
「お父様、お母様、先程ぶりです。可愛い孫達を連れて来ましたよ!」
律ちゃんがそう言うと京駕さんの父、つまりは京翠達のお祖父さんである隆篤さんが出迎えてくれた。
「皆様、いらっしゃいませ。京翠、久しぶり。さあさあ皆様お部屋にお入り下さい。」
そう言って隆篤さんはお祖父様達の居るお部屋に案内してくれた。お部屋に入るとお祖父様とお祖母様が居て、お祖父様はこちらに向かって駆け出して来た、と思えば私達を抱きしめていた。
「お、お祖父様?急にどうしたのです?」
「美乃梨、煌、稔、久しぶりだな。架以外中々会ってくれないのでお祖父様は寂しいぞ!」
「ごめんなさい。最近は忙しくてろくに顔を出せていませんでした。架はよく来ているのですか?」
「ああ。週に数回、魔法の練習と弓の稽古をつけて欲しいと、」
お祖父様がそう言うと架は慌てて遮った。
「お祖父様!秘密にして下さいと言いましたのに!」
「すまん、すまん。」
架は恥ずかしそうに俯いている。私は架の頭にそっと手を置いて言った。
「架は見えないところでも努力しているのね。そんなかっこいい事、恥ずかしがる必要無いわ。」
「かっこいい事?」
「ええ。煌と稔もそう思うわよね?」
「はい。俺は正直勉強以外は努力と呼べるような事をしていないから。架は凄いと思う。」
「僕も。架は一度出来るようになったら辞めてしまう僕と違って、出来るようになったら更に磨こうとするのがかっこいいと思ってた。」
「ありがとう。それでも煌と稔の方が僕よりも凄い事には変わらないけど。」
「だから架の方が凄いって言ってるだろ?」
「そうだよ!」
と3人は褒め争い始めた。私はどう止めて良いか分からず律ちゃんに託した。
「はいはい、ストップね。皆凄いよ!煌も稔も架も美乃梨も、ね!」
「えっ、私?」
「当たり前じゃない。美乃梨は最年少魔法使いなんだから。」
「煌達も10歳で受けたんだから変わらないわよ?」
「一年は大分と変わると思うけど。まあ、とにかく、私の甥姪は凄いって事!」
律ちゃんがそう言うとお祖父様も乗って来て、
「私の孫達は優秀で可愛いって事か?」
と言って来た。お祖母様は止めてくれるのかと思えばお祖父様と同じように、
「私の孫達は世界、いえ、宇宙一ですわ。」
と言った。
収集がつかなくなったタイミングで隆篤さんがお茶を持って来て下さった。
「さあ、皆様。お茶が入りましたよ。少し落ち着いて下さいね。」
「ありがとうございます。この紅茶凄く美味しいですね!」
「その茶葉は律様からのお土産でございます。」
「美乃梨、私が居たのはイギリスだよ?」
「そうだったね。忘れてた。」
「薫お兄様にも渡しているから家でも飲めるわよ?」
「律ちゃん、ありがとう!」
ひと段落するとお祖母様が話しかけて来た。
「美乃梨、一般の学校での生活はどうかしら?」
「楽しいですよ。友人もいて充実していますわ。」
「婚約者候補達とはどうなのかしら?」
「ど、どうと言われましても、普通に仲良くしてますわよ?」
「あら、好きな方でも出来たようですね。」
お祖母様は穏やかに笑いながらそう言った。すると律ちゃんもお祖父様も煌達までも問い詰めて来た。
「美乃梨に好きな人!?」
「美乃梨、紹介しなさい。美乃梨に合う者かどうか見定めてやる。」
「姉さん、好きな人が!?」
「誰です!?」
「婚約者候補の誰かですか?」
「ま、まあ。」
「姉さんが告白されたのは知っていましたが。」
「何で稔が知ってるの!?」
「え、体育祭の時呼び出されていましたよね?まさか他にもあるんですか?」
稔は私では無く京翠に尋ねた。
「私の知る所では美乃梨様は真央様、凪さん、篤季に告白されていますね。」
すると煌達3人は言った。
「姉さん、何かあったら教えて下さい。」
「困った事があったら僕が対処します。」
「姉さんの事は僕達が守りますから。」
「ありがとう。でも告白されただけだから大丈夫。」
「そうですよ。美乃梨様には私がついているので煌様達は心配なさらなくて大丈夫ですよ?」
3人は京翠に向かって
「「「京翠ばかりずるい。」」」
と言った。
「何がずるいの?」
と私が聞くと最初に答えてくれたのは煌だった。
「姉さんは貴翠や京翠ばかりを頼ります。姉さんにとって俺達は2つ歳下の弟です。でも俺達は姉さんに頼ってばかりで頼られた事が無いんです。」
煌に続いて稔と架も答えた。
「僕も、姉さんには相談に乗ってもらってばかり。だからたまには姉さんの相談に乗りたいです。」
「僕は完璧な姉さんばかり見ていましたが景さん達や学校のご友人達といる時の姉さんは今まで見た中で一番本来の姉さんに近いのかなと思いました。だからもっと本来の姉さんを見たいです!完璧に何でもこなしてしまう姉さんはかっこよくて憧れで、でもどこか無理してるようで。」
「架の言いたい事は俺も分かる。前までの姉さんよりも今の姉さんの方が自然体な気がします。」
私は弟達には"かっこいい姉さん"で居たかったから、ずっと完璧な自分を作っていた。でも弟達に気付かれているとは思わなかった。
「ごめんね。無理してたわけでは無いの。煌と稔と架にはかっこいい私だけ見て欲しかったのよ。ずっと自慢の姉で居たかったから。」
私がそう言うとお祖父様とお祖母様と律ちゃんが揃って笑った。
「美乃梨と薫は似てるな。」
「ええ。血は争えないと言いますか。」
「今の美乃梨、薫お兄様にそっくりよ!隆篤さんもそう思うよね?」
私が隆篤さんの方を見ると微笑みながら言った。
「そうですね。薫様の場合は、歳の離れた弟妹相手に今の美乃梨様と同じような事を語っていましたね。それも、茅紘様がお止めになるまで延々と、でしたがね。」
「お祖父様が?」
「ええ、でも茅紘様も混ざる時もありましたので最終的には椿様がお止めになられる事もしばしばでしたね。」
「やはりそうですよね。お父様とお祖父様は気性がとてもよく似ておりますから。」
私がそう言った時、お祖母様が穏やかに微笑みながら言った。
「美乃梨は薫と紫乃凛ちゃんを足して割ったと言うくらいどちらにも似ていますからね。」
「そうですか?」
「ええ。それより私が聞きたいのは美乃梨の好きな方についてです。どんな方なのです?」
「お母様ナイス質問ですわ!私も気になる!」
「どんな方と言われると……さりげなく優しくて、たまに幼い笑顔を見せてくれる、人です。」
「何、惚気?」
「律ちゃん達から聞いて来たんでしょう!?」
「美乃梨、告白はまだしていないの?」
「まだです。他の方に告白されて自分の告白どころでは無かったので。」
「流石私の孫ね。私も美乃梨くらいの頃はモテモテだったわよ?」
「そうなんですか?凄いですわ、お祖母様!」
「美乃梨はファンクラブがあると聞きましたが、そちらは大丈夫なのですか?」
「美乃梨、ファンクラブなんてあるの!?ちょっと負けた気分なんだけど。」
「何の勝ち負けなの?」
律ちゃんは「分からない。」と言いながら笑った。
「ねえ、他には?」
「実は婚約者候補では無い人とデートをする事になって。」
「どうしてそんな事に?」
「ちょっとした流れで。あと……何でも無いです。」
「何それ気になるんだけど。」
律ちゃんがそう言った時、稔が律ちゃんを手招きして何やら耳元で話していた。
『律姉、姉さんのデート、心配なんですけど一緒に着いて行きませんか?』
『良いね!私、しばらくは日本に居るつもりだから。煌達はどうするの?』
『流石に4人も着いて行けばバレてしまいますよ。煌達には後で報告します。』
『OK!楽しみだね。』
2人は話が終わったようでなにやらご機嫌な顔をしていた。
「どうしたの?2人とも。ご機嫌そうね。」
「何も無いですよ。」
「そう。あ、もうこんな時間!」
時計を見ると既に7時を回っていたのでそろそろ帰る事にした。
「お祖父様、お祖母様、時間も遅いですし、そろそろお暇させて頂きます。」
「そう、またいつでも遊びに来てね。」
「架以外も顔を出してくれないと寂しくて、お祖父様は自分から会いに行くぞ。」
「はい。」
そして律ちゃんの運転する車で帰った。
家に帰ると篤季が居た。響彼くんと貴翠も話が終わっていたようでリビングで待機していた。
「あ、お帰り皆。」
「ただいま、響彼兄様。」
「響彼くん、貴翠との話は終わったの?」
「ああ。兄上と義姉上が待って居るからそろそろ食堂に向かおう。」
「うん。」
そして食堂に向かうとお父様とお母様が待って下さって居た。私はお父様の耳元で言った。
『お父様、後で少しだけお時間頂けますか?』
『ん?ああ、構わないが。』
『ありがとうございます。』
そして今日のディナーは律ちゃんと響彼くんが居るのでいつもよりも更に豪華だった。ディナーを楽しんだ後、私はお父様と2人でバルコニーに向かった。
「して、美乃梨。何の用だ?」
「じ、実はですね、婚約者候補以外の方とデートをする事になって、約束してしまったのですけれど、念の為、お許し願おうかと思いまして。」
「別に構わないが?」
「え?良いんですか?」
「ああ。規定など特に無いからな。反対されると思ったのか?」
「いえ、驚かれると思いまして。」
「前も言ったように美乃梨にはまだ年相応で居て欲しいからな。もし、仮にその人とお付き合いする事になっても婚約者候補は選ぶ年が来るまではそのままだがな。でもお付き合いを始めたら紹介してくれ。」
「お付き合いだなんて。ちょっと流れでデートをする事になっただけですよ。」
「そうか。楽しんで来なさい。」
「はい!」
そしてお父様はお部屋に戻られた。私も戻ろうとした時、プルルルと電話の音が鳴った。
「もしもし、凪くん?」
『あ、美乃梨。今大丈夫?』
「うん。どうしたの?」
『デートで行きたい所見つけて。一緒に水族館行かない?実は父さんからペアチケット貰って。』
「良いの?楽しそう!実は私、水族館に行った事無いの。」
『喜んで貰えて良かったよ。ちょっと強制的にデートの約束取り付けた事謝らないとって思ってたから。』
「そんな事思ってくれてたの?でもそれなら私も謝らないと。私、凪くんのデートOKしたの好きな人に嫉妬して貰う為だから。凪くんの事利用して本当にごめんね。」
『どっちもどっちだったね。でも美乃梨は嫉妬して貰う為かもしれないけど、僕は美乃梨を振り向かせる覚悟で頑張るから!』
「私、そんなに簡単に落ちないから。」
『分かってるよ。デートは次の土曜日の10時頃駅前集合で良い?』
「うん!良いよ。」
『じゃ、おやすみ。』
「おやすみ、凪くん。」
電話が終わり部屋に入ると京翠が立っていた。
「美乃梨様、デートの時に関してですが、私はボディーガードとして美乃梨様から離れるわけにはなりませんのでついて行くつもりですが……」
「堂々とついて行くかこっそりついて行くかは凪くんに聞くから後で教えるわ。」
「美乃梨様、楽しそうですね。」
「ええ!水族館に行くの!少女漫画でしか見た事が無かった所に自ら足を踏み入れるのよ!」
「落ち着いて下さい。美乃梨様、薫様は美乃梨様くらいの頃、よく勉強から抜け出して色々な所へ遊びに行っていたそうですよ。」
「お父様らしいですね。」
「なので美乃梨様ももっと色々な所に遊びに行って下さい。昔は勉強ばかりしていらして、やっと同年代の友人が出来たと言うのに。」
「確かに皆と一緒に色々な所に遊びに行くのは楽しそうね!」
そしてリビングに戻ると響彼くんと篤季が私に話しかけて来た。
「美乃梨、デートに行くんだって?」
「美乃梨様、相手は誰ですか?」
「どうして2人が知ってるのよ?」
と私が聞くと2人は顔を見合わせて答えた。
「律から聞いた。」
「律様に教えて頂きました。」
「律ちゃんからか。相手は凪くんよ。」
「凪ですか。どうしてそんな事に?」
「ちょっと……色々あって。」
私がそう言うと響彼くんは聞いて来た。
「凪って誰だ?」
「私のクラスメイトで隣の席の柄灯凪くん。転入して初めて出来た友達なの。」
「美乃梨、何かあれば叔父である私に頼ってくれて構わないからね。」
「うん。ありがとう、響彼くん。って何かさっきも同じような事言われた気がする。」
「そうか。それは、美乃梨は愛されてるからだ。」
「愛されてる?」
「ああ。愛されている者程周りからの好意に疎いからな。」
そう言って響彼くんは私の頭を撫でた。
私は照れ隠しで笑って誤魔化した。
そして土曜日。
今日はデート当日だ。
「美乃梨様、その服で向かわれるのですか?」
シャルルがそう聞いて来た。
「これじゃダメなの?」
「構いませんがデートですよ?前の遊園地と違ってワンピースなどを着られてみては?確か紫乃凛様に送られてまだ一度も袖を通していないのがあった筈ですから。ヘアメイクとアクセサリーは私が選びますので着替えて来て下さい。」
「分かったわ。」
私はシャルルに言われた通りにお母様に贈られた白い生地に花が散らばっている柄でウエストの辺りに白いベルトの付いているワンピースに着替えた。
髪型は両サイドの三つ編みを一つに束ねたハーフアップのような髪型をシャルルがしてくれた。
そして煌達から貰った木の実をモチーフにした赤いイヤリングをつけた。
「はい、これで完成ですよ。楽しんで来て下さい。」
「ありがとう、シャルル。」
私はシャルルにそう言って部屋を出て玄関で靴を履こうとしていると律ちゃんと稔が来た。
「美乃梨、今からデートに行くの?」
「はい。水族館に。」
「姉さん、行ってらっしゃい。」
「行って来ます。」
そして駅まで京駕さんに送って貰った。
「京駕さん、ありがとうございます。じゃあ京翠、行くわよ。」
「はい。柄灯くんとの待ち合わせまでまだ10分ありますが、柄灯くんは来てるのでしょうか?」
「分からない。とにかく探してみないと……あ、居たよ、京翠。」
「本当ですね。では行きましょうか。」
「ええ!凪くん、おはよう。」
凪くんは私の声に気付いて振り返った。
「美乃梨、いつもと雰囲気違うね。」
「ワンピースだからね。変かな?」
「いや、大人っぽくてよく似合ってると思う。そのイヤリングも可愛いね。」
「ありがとう。このイヤリングは煌達から貰った宝物なの。」
「イヤリングもだけど美乃梨も可愛いよ。」
「な、何言ってるのかしら凪くん。」
凪くんはストレートに褒められて戸惑っている私に
笑いながら「ストレートな言葉の効果抜群!」と言った。そして京翠の方を向いて挨拶をした。
「おはようございます、京翠先生。」
「おはようございます、柄灯くん。先程の様子を見る限り、私は今日は影に徹した方が良さそうですね。」
「ありがとうございます。そうしてくれると嬉しいです。」
そして話終わり私の手を握って歩き出した。
「じゃあ、美乃梨。行こう!」
「凪くん、手!」
「今日はデートだから許して。」
許してと言われても、仮にも告白された男の子と手を繋いで意識するなと言われる方が無理だ。(他に好きな人が居るのに、私って実は惚れやすいのかしら?)
そしてバスに乗ること20分、水族館に着いた。
「本物だ……!」
「いや、美乃梨?まだ水族館の中にすら入ってないから。」
「違うの、凪くん。この水族館の前っていう所から漫画には載っているの!」
「まあ、楽しんでいるようだから良いけど。」
入場受け付けの所で凪くんが係の人にチケットを見せた。係の人はチケットのバーコードを読み取って私達に向かってウインクして見せた。
「カップルでデート、良いね!今日はイベントもあるから楽しんで行ってね!」
「僕達はカップルじゃ無いですよ。……いつかはそうなりたいですけど。」
「そうなの?頑張ってね!」
そして水族館の中に入った。
「凪くん、イベントって何だろうね。」
「僕知ってるよ。でも、また後でね。先に色々見て回ろうよ。」
「うん。」
歩いて行くと周りに水槽が沢山あって小さい海の生物が居た。
「可愛い!これはカクレクマノミね。」
「そうだよ。僕、この水族館には昔から何回も来た事あるんだ。」
「そうなんだ。じゃあ凪くんのおすすめの所教えて!行ってみたい。」
「いいよ。じゃあ行こうか。」
そう言って凪くんが連れて来てくれたのは……
「ペンギンが沢山!可愛い!」
「美乃梨、ここ、ペンギンと触れ合えるよ。」
「凄い!ここは天国なの!?」
ペンギンと触れ合える所に行くと聞き覚えのある声が聞こえて来た。
「キャー!!可愛すぎる!どうしよう、私一生動きたく無いよ。」
「流石にそれは止めて。帰れなくなるよ?」
「環奈先輩と藍先輩!?」
「あ、恋咲とえっと、葉月と同じクラスの?」
「柄灯凪です。副会長と藍先輩はどうしてここに?」
「デートだよ。そっちは……同じか。恋咲に彼氏が居たとならばファンクラブが面倒くさそうだね。」
「彼氏じゃ無いですよ。ちょっと色々あってデートする事になっただけです。」
環奈先輩はペンギンに夢中で私達には気付いていないみたいだった。
「ほら、環奈。後ろの人が支えてる。また後で来ようよ。」
「分かった。あれ、恋咲さんと柄灯くん?」
「やっと気付いたんだね。さっきから俺は恋咲達と話してたのに。」
「そうなの?恋咲さん、柄灯くん、またね。藍くん、次はどこ行く?」
「クラゲ観に行かない?」
「良いね!」
と、2人は歩いて行った。係の人の指示で私達はペンギンを抱っこしたり膝に乗せたりした。
「か、可愛すぎる。ふわふわ。」
私がそんな事を言いながらペンギンを撫でていると
カシャ、カシャとシャッター音が聞こえた。
「凪くん?」
「美乃梨もペンギンも可愛いからつい撮っちゃった。後で美乃梨にも送るね。」
「凪くんも抱っこしてみたら?私、写真撮るよ?」
「じゃあお願い。瀧達、羨ましがるだろうな。」
そう言って凪くんはペンギンを抱っこした。
「お!めちゃくちゃ可愛い!泉と雫の次に。」
「妹思いだね。写真撮れたよ。」
「じゃあ次は、」
と凪くんが言いかけた時、アナウンスが流れた。
『只今より、スタンプラリーを開始致します。スタンプカードは近くに居る店員か、フードコートで貰えます。スタンプを貰う為には謎を解かなければなりません。スタンプカードがいっぱいになったらサービスセンターへ持って来て下さい。先着20名様には素敵なプレゼントがございます。では、皆様引き続きお楽しみ下さい。』
「スタンプラリー、楽しそうだね。」
「美乃梨もそう思った?」
「先着20名様だって。」
「カード、貰いに行こう!」
私達はすぐに近くに居た店員さんに声を掛けた。店員さんは「頑張ってね。」とスタンプカードを2枚渡してくれた。
「謎解き?僕、これ全然無理だ。」
「私、多分これ全部解けるよ。」
同じような問題を昔煌と解いた事があった。私と煌は一時期謎解きにハマりお祖父様達から数え切れない程の謎解きの本を貰った。全ての謎を解き終わり、私達はスタンプを集めて回った。サービスセンターに向かうと、店員さんは驚いていた。
「こんな短時間で解ける程簡単な問題じゃない筈なんだけどな。」
「糸口が見つかれば案外簡単に解けますよ。」
「君達が最初だ。はい、これがプレゼントだ。」
と言い店員さんはラッピングされたプレゼントを渡してくれた。中を開けてみると……
「お土産屋さんの2万円分の商品券だ!」
「商品券って、商品と引き換えが出来るの?」
「そうだよ。僕、これで弟達にも一つずつお土産買えるよ。」
その時、気配を感じた。嫌な気配では無く……ある意味嫌な気配かもしれない。私は直ぐに京翠にメッセージを送った。
【律ちゃんと稔の気配がする。他にも魔力の気配がするけど離れているのか誰かまでは分からない。誰か分かったら教えて。】
【分かりました。】
そして私達は他の所を観に行った。
「そういえば凪くん、受け付けの係員さんが言ってたイベントってスタンプラリーの事だったの?」
「いや、違うよ。スタンプラリーはさっきの店員さんがサプライズイベントだって言ってた。」
「じゃあ、イベントって?」
「まだ秘密。先にお昼にしよ!確かキッチンカーが何台か停まってた筈。」
凪くんはそう言って水族館の中の広場のような所に連れて行ってくれた。
「どれにしよう。美乃梨は?」
「私はカレーにする。」
「カレーなら座れる方が良いよね?僕、先に席取っておくね。」
凪くんはそう言って席を探しに行ってくれた。
私はカレーを売っているキッチンカーで注文した。
店員さんはインド人らしく不慣れな日本語で対応してくれた。
「イラッシャイマセ、ナニニシマス?」
「インドカレー下さい。」
「オオ!カライデスヨ?カクゴシテクダサイ。」
「はい!」
そして、店員さんは奥に行った。
「キミ、カライノトクイ?」
「はい!大好きです!」
「ハイ、デキアガリ。800エンデス。」
そして私はお金を支払った。
「アリガトウゴザイマシタ。」
そして凪くんはどこだろうと探して歩いていると、スマートフォンの通知が鳴った。京翠からだった。
【美乃梨様、魔力の気配の正体は景様と千秋様と真央様と篤季と貴翠でした。ご安心下さい。】
【教えてくれてありがとう京翠。】
【どういたしまして。】
何となく勘で景くん達は居る気がしていた。でも、まさか貴翠まで来てるとは驚いた。そして凪くんを探す為、しばらく歩いていると人混みが出来ていた。とにかく見つからないので凪くんにメッセージを送った。
【凪くん、今どこ?】
【ごめんね、美乃梨。僕の席、人混みの中なんだよ。さっきね、TVの撮影で芸能人が来て急に人が集まって来ちゃったんだよ。】
【そうなんだ。】
【人混みの中に入って来れそうに無いなら僕がそっちに向かうけど?】
【大丈夫。直ぐに向かうね。】
そう言って私は人混みの中で時空間魔法を使った。
もちろん、人に見られないように自分を隠す魔法も掛けて。そして人気が無いところで魔法を解いて凪くんの座っていた席に行った。
「美乃梨、よくあの人混みの中、それ持ちながら来られたね。」
「ちょっと裏技使ってね。凪くん、お昼は?」
「僕は席を探してる間にホットドックとタコス買ったんだ。美味しそうでしょ?」
「うん。私はインドカレー。インド人の店員さんが作ってて凄く辛いらしい!楽しみ!」
「美乃梨ってそんなに辛いの好きだったんだ。」
「うん。流石に激辛は食べられないけど。」
「じゃあ食べよう。いただきます!」
「いただきます。」
そして昼食を食べ終わり、私達はゴミを片付けてようとゴミ箱に向かった。
「美乃梨、こんなに混んでたらゴミ箱まで辿り着けないよ?」
もちろん凪くんの前で魔法を使うわけにいかないので普通に集まっている人達に避けてもらいながらゴミ箱まで歩いて行った。
「すみません、通らせて下さい。」
私はそう言って凪くんと一緒に人混みの外に出た。
「美乃梨、凄いね。」
「え、何が?」
「無意識なの!?美乃梨が通らせて下さいってひと声掛けるだけでほとんどの人が避けて行ったじゃん!」
「優しい人達だったね。」
「いや、普通はあり得ないよ。僕が言ってもあんなに綺麗に避けてくれないと思うよ。」
「そうなの?」
と私が聞くと凪くんは「そうなの!」と言った。そしてやっとイベントに連れて行ってくれる事になった。
「美乃梨、ここだよ!」
「ここってイルカショーの水槽?」
「うん!ここに居るイルカのララちゃんはね、占いが出来るらしい。それで3ヶ月に一度、ララちゃんの占いショーがあるんだ。」
「面白そう!でも占いってどうやってするの?」
「記号の書かれたカードだよ。観客参加型でね、観客がララちゃんに質問したら、ララちゃんがいくつかあるカードのついたフラフープを選んで、ジャンプして潜るんだよ。」
「そうなんだ。少しずつ人が増えて来たね。こんなに後ろの方でいいの?」
「うん。イルカショーって前に行くと濡れるから。ほら、前にいる人達はレインコート被ってるでしょ?」
「本当だ。」
そして十数分程でララちゃんの占いショーが始まった。初めは高校生くらいの女の子が質問をした。
「私、好きな人に告白したんです。返事は要らないって言って。でも、好きな人には好きな人がいて、諦めた方が良いですかね?」
そしてドルフィントレーナーの人がララちゃんに指示を出した。
『ララ、占いよろしくね!』
ドルフィントレーナーの人の掛け声に合わせてララちゃんは8つあるフラフープのうち、一番端のフラフープを通った。記号はハートだ。
『ハートは上手くいくという事でしょうか?』
トレーナーさんがそう言った時、ララちゃんは通ったフラフープとは反対側の観客席に向かい、上手に?尾ひれで水を掛けた。丁度、観にくい席だったようで人は数人と少なかった。しかし、その中の1人がずぶ濡れになってしまった。
『ごめんなさい!ララ!』
トレーナーさんはララちゃんを叱ったけれどララちゃんは嬉しそうにトレーナーさんの元に戻った。そしてスタッフさんがマイクとカメラを持ってずぶ濡れになった人の所に向かった。カメラで前に映された瞬間、先程質問していた女の子が
「愁斗くん!」
と近くに居たマイクを持ったスタッフさんに向かって言った。
「お知り合いですか?」
「さっきララちゃんに占って貰った好きな人です。」
そしてララちゃんに水を掛けられた愁斗さんの方をカメラは映した。
「彼女の告白を聞いてどう思ったんですか?」
そう聞かれた愁斗さんは恥ずかしいそうに頬をかきながら答えた。
「実は僕の好きな人って彼女なんです。」
「なんと両思いだったんですね!」
「はい。でも彼女が返事は要らないと強く言って来たのでこちらから告白出来るタイミングを見計らって居たんです。妃彩、僕も好きでした!こんな僕とでも付き合ってくれますか?」
とカメラ越しに告白した。彼女の方も、妃彩さんもカメラ越しに答えた。
「はい以外無いでしょ!よろしくお願いします!」
途端に拍手が起こった。
「おめでとー!!」
「幸せになれよー!」
そして2人は幸せそうな顔でショーの会場から出て行った。
「凪くん、ララちゃんの占い凄いね。」
「そうだよね。あ、次の質問者はさっき人が集まってた芸能人だよ。一ノ瀬玲音。」
「誰?」
「元アイドルだよ。大分有名だけど見た事無い?」
「うん。TVを観るようになったのは結構最近だから。稔達の影響でね。」
「雅美があの人の奥さんのRiri•Kisaragiの大ファンなんだよ。僕はRiri•Kisaragiの弟の如月界莉っていう歌手の方が好きなんだけどね。」
「如月界莉って……」
とても中途半端な終わり方になってしまいました、
すみません!
実はカレー屋さん、私の行ったカレー屋さんをモデルにしていまして、カタコトな日本語で一生懸命対応してくれました。時々通じなくても何度も確認してくれながら注文をとってくれました。(かっこよかった……!)
私が英語を話せれば良かったんですけどね。
次回はデート続編です!




