まさかの男女逆転劇!?
私達のクラスは無事、第一希望の劇に決定したのでロングホームルームに細かい設定を決めていく事になった。
「私、みのりんにロミオして欲しい!」
「ユーリちゃん!?突然何を言い出すの!それに、配役はもう決まってるし。」
「でも、皆んなもみのりんのロミオ、見たいよね?」
ユーリちゃんが周りに同意を求めた。
「私、恋咲さんのロミオ見てみたい。」
「俺も。」
と何人かが同意し始めた時、何人かが言った。
「でも、ロミジュリって悲劇だよね。私、恋咲さんにはハッピーエンドの劇をして欲しい。」
「そんな事言っても劇の名目と配役は決まってるんだよ?」
「劇の名目って今から変えちゃダメなのかな?」
「阿藤くん、劇の名目って変えられる?」
質問された葉月くんは軽く頷き答えた。
「ああ、他の劇をするクラスは創作劇らしいから被らないだろうし。鳳、演劇部も脚本は担当の奴が一から作るんだよな?」
「え、うん。」
「じゃあ別に変えても良いよ。配役決めをもう一度しないといけなくなるけど、配役決まってた奴でやりたい奴居るなら手挙げて〜。」
葉月くんがそう言うと2人の子が手を挙げた。
「向坂と仁科か、了解。2人は新しく決める劇で希望の役を教えてくれたら便宜を図るから。」
葉月がそう言うと2人は納得したように頷いた。
「では、劇の名目はロミオとジュリエットから何に変えますか?希望がある人は挙手して下さい。」
「白雪姫が良いと思いまーす!」
「私は眠れる森の美女がいいと思う!」
「シンデレラは?」
「他に候補が無いようなので多数決で決めます。白雪姫がいい人、眠れる森の美女がいい人、シンデレラがいい人。」
そして多数決の結果一番人気だったのは……
「では一番票の多いシンデレラに決定します。」
「普通でも良いんだけど、秋月が言ってたように男女逆転劇にしてみないか?台本も少しアレンジして。」
葉月くんがそう言った。ユーリちゃんはブンブンと頷いて
「賛成!!みのりん、王子様してくれる?」
と聞いて来た。
「私、王子様って柄じゃないと思うよ?男女逆転劇だとしても、もっとかっこいい子の方が良いと思う。」
私がそう言うとユーリちゃんとレイラちゃんが
「みのりんはかっこいいよ!」
「そうだよ!リレーの時、危うく惚れそうになっちゃったんだから!」
と言ってくれた。葉月くんは私の方を向き、
「恋咲、どうする?」
と聞いて来た。
「じゃあ、します。」
私がそう言うとユーリちゃんが
「それならお姫様役はやっぱり……」
と言いながら千秋の方を向いた。視線に気付いたらしい千秋は勢いよく首を横に振った。
「体育祭で女装は懲り懲りだ。」
「じゃあ、僕がシンデレラ役に立候補しようかな。美乃梨に求婚されるんだし。」
と凪くんが言った。事情を知らない他の人は頭を捻っているけど、レイラちゃん達は少し驚いたように凪くんを見た。
「な、何言ってるのよ凪くん。私にじゃなくて私が演じる王子様に、の間違いでしょう?」
私がそう言うと先程まで頭を捻っていた人達も納得したような表情を見せた。そして、葉月くんが
「じゃあシンデレラ役は柄灯で良いか?」
とクラスの皆んなに聞いた。その時、ガタッと椅子が倒れる音がしたかと思うと千秋が立っていた。
「どうした九条?」
と葉月くんは面白がるような顔で聞いた。
「俺がやる。」
「何を?」
「……シンデレラ。」
「良いのか?女装する事になるんだぞ?」
「分かってる。」
そうして千秋と凪くんで投票が行われ、千秋の方が票が多かった為、シンデレラ役は千秋に決定した。
凪くんは
「千秋と投票で競うとか、勝ち目無いよ。」
と言った。
そして演技指導は雅美ちゃん、監督はレイラちゃんに決まった。そして三日月先生が
「では、今日の6時限目から練習を開始する。放課後残っても良いが下校時間は守れよ〜。」
と言った。
「「「はーい!!」」」
そして今日はとうとう全てのテストが返される。昨日で3教科返され、今日は2教科返って来るので計5教科が返却される。私は今のところ、全て満点で問題無いのだけれど……
「美乃梨、僕、本当に380点取れそう!」
「でも、凪くんの苦手な英語は返って来るの今日だよね?」
「うん。でも、今日返って来る2教科の合計が150点を超えたら380点取れるから!」
凪くんはそう言った後、私の耳元で言った。
『忘れてないよね?380点取れたら本当にデートしてくれるんだよね?』
『380点超えたら、ね。でも凪くん今まで合計点で300点超えた事無いって言ってなかった?』
『実は勉強会のある日も家に返ってからは部屋に篭って勉強してたんだ。美乃梨や千秋が一生懸命教えてくれたから、僕も頑張らないとって思って。』
『そうなんだ。』
私と凪くんがコソコソと話していると前の席の千秋が怪訝そうな顔で言った。
「何話してるんだ?もう授業始まるぞ?」
「え、何でもないよ。」
そして授業が始まり、テスト返しだ。私は予想通り満点だった。凪くんの方を向くとVサインをして見せてくれた。
「94点!!国語は得意なんだよね。って美乃梨と千秋は相変わらずの満点か。流石だね、2人とも。」
「凪くんも凄いよ!でも誤字脱字が少し目立つかな。焦らず見直しをしていたら満点取ってたかもしれないわ!」
私がそう言うと凪くんは驚いたような顔をした。
「美乃梨、僕とデートする事になるんだよ?なのに、何でそんなに喜んでくれるの?」
「そんな事言ったら凪くんだって。私に他に好きな人が居るのを知ってるのに、どうして良い点取ったらデートするなんて言ったの?」
「それは僕が美乃梨に好きになって貰う為。僕は美乃梨の事が好きだから。」
「す、好きとかそんな真顔で言わないで。」
「やっぱり京翠先生の言う通り美乃梨にはストレートに伝える方が聞くんだね。」
凪くんはそう言うと後ろに立っている京翠の方を向いて「的確なアドバイス、ありがとうございました。」と言った。
「お役に立てて何よりです。」
「京翠の所為で凪くんが手強くなったじゃない!別に私はそんな簡単に揺らがないけれど。」
「美乃梨様、表情はポーカーフェイスは保てていますが、お耳が赤くなってますよ。」
私は急いで耳を両手で隠した。素直に好きと言われる事は身内以外では無かったので赤くなってしまうのは仕方がない事だと思う。それを的確に狙ってくる凪くんはとても手強い相手だ。
「ほ、ほら。早く前に向かないとテストの解説が始まるわよ。」
「そうですね。」
京翠は微笑みながら言った。
「どうしたのよ京翠?」
「何がです?」
「何と言うか、凄く嬉しそうな顔だから。」
「美乃梨様が年相応の表情をされているのが凄く新鮮でして。昔は同年代の子の前では作り笑顔が多いようでしたが、今は心の底から笑っているように見えますので。」
「そうかしら?でも今の友達の前では素の自分で居られる気がするわ。初等教育の頃はいつも自分を出せなかった。特に跡取りになってからは隙を作らないようにね。」
「美乃梨様……」
京翠はそう呟いた後、「気心の知れる友人が出来て良かったですね。」と言ってくれた。私は笑顔で頷いて「ありがとう、京翠。」と返した。
そして授業は滞りなく進み5時限目、とうとう最後の英語が返される。三日月先生はテストの入っている封筒を持って教室に入って来た。
「出席番号順に呼ぶから取りに来てくれ。秋月。」
ユーリちゃんはテストを受け取ってガッツポーズをしていたのできっと良い点を取ったのだろう。
「阿藤、結構頑張ったな。」
葉月くんも良い点らしい。そして順番に呼ばれて
「柄灯!前回から大分伸びたな。どうした、英語の楽しさに気付いたのか?」
凪くんは三日月先生にそう言われて席に帰って来た。
「凪くん、何点だったの?」
私が聞くと凪くんは嬉しさを噛み締めるようなの笑顔で教えてくれた。
「62点!今回のテスト、全部の教科が今までの最高点なんだよ!本当に美乃梨と千秋のお陰だよ!」
「凄いね!けど、私達は手助けしただけでその点数は努力した凪くんの成果だよ。ね、千秋?」
「ああ。凪が努力している所、俺は見ていたからな。勉強会の時もペンの芯が無くなるくらいに勉強していたから。」
「美乃梨、千秋。2人の言ってくれる事も嬉しいけどさ、今までの僕なら絶対に勉強なんてして無かったから。だからお礼は言わせて。ありがとう!」
「「どういたしまして。」」
喜んでいるのも束の間、凪くんは言って来た。
「これで美乃梨とデート出来るね!」
『ちょっと凪くん!大声で言わないでよ。皆、注目してるじゃない。』
凪くんが大声で言った所為で近くの席の人達に注目されてしまった。千秋は何故か腑に落ちないというような顔をしながら見て来たが。
『ごめん、ごめん。嬉しすぎてつい。で、いつにするの?』
『それは後でも良いでしょう?』
『じゃあまた後で言うからね。』
私達がそうしていると三日月先生が
「恋咲で最後だから、dateの相談は後にして早くテスト取りに来なさい。」
と言って来た。
「す、すみません。あと、デートの相談なんてしてませんよ!」
「そうか?それより満点取られるとはな。俺のテストで満点取る奴初めてなのに4人も居るんだが。」
「私と千秋と景くんと、……篤季、ですか?」
「いや、違う。本堂は惜しかった。もう1人は……」
三日月先生の視線の先を見るとレイラちゃんが居た。レイラちゃんは私に気付いてVサインをしてテストを前に出してくれた。
「レイラちゃんですか。」
「ああ。姫野には毎回ギリギリ満点取られていなかったのに今回は取られてしまったよ。」
「皆で勉強会をしたので。」
「そうか。次はもっと難しくしようかな。」
「私は構いませんが、他の子に合わせないと平均点が落ちますよ?」
「そうだな。」
私が席に着くと三日月先生は平均点を発表した。
「今回の平均点はなんと……69点だ。」
「ええー!!」
「マジで!?」
「平均たっか!」
「何しろ満点が4人出たからな。」
三日月先生がそう言うとクラスの多くは誰だろうと模索し始めた。爽夜くんとユーリちゃんと雅美ちゃんは私と千秋の方を向いている。レイラちゃんの方を向くと口の動きで『何で皆んな私の方は見ないの!』と憤慨している。
5時限目も終わり、いよいよ6時限目。本格的に文化祭準備が始まる。爽夜くんとユーリちゃんは大道具なので外に行くそうだ。私は衣装の採寸をされた。何でも一から作る訳ではないが、衣装は手作りするらしい。
採寸は空き教室でしたのだけれど……
「どうしよう、私なんかが恋咲さんに触れても良いのかな?」
「マジでそれ。私が触れると恋咲さんを汚しそう。」
「えっと、そんな事ありませんよ?」
「「キャー!恋咲さんが眩しい!」」
「あの、採寸は……?」
「す、すみません!すぐにしますね。」
そう言いながらメジャーを持った2人の子が採寸を始めた。
「恋咲さんって凄く細くてスタイル良いですよね。」
「うんうん。肌も白くてスベスベで。顔もちっちゃくて背も高くて。」
「ありがとう。でも、同い年なので敬語で無くても。私の事は美乃梨と呼んで下さい。舞城さん、眞木さん。」
「分かった。じゃあ、美乃梨ちゃんも私達の事下の名前で呼んで。」
「ええ。朝葵ちゃん、羽音ちゃん。」
舞城朝葵ちゃんは背は平均くらいでグレーの丸眼鏡を掛けたお団子の女の子。
眞木羽音ちゃんは背は140センチ前後の両サイドに編み込みの入った大人しめの女の子。
2人ともどちらかと言うと大人しめであまり話した事は無かった。2人は被服部らしく衣装を作る事は容易いそうだ。今回は作る衣装が多いので元々作っていた物をアレンジしてサイズを調整するらしい。
「衣装を作れるなんて凄いね!私、ドレスは毎年お父様から頂くけれど複雑なデザインばかりでとても作れそうには無いわ。」
「美乃梨ちゃんドレス持ってるの!?見てみたい!」
「ごめんね、美乃梨ちゃん。朝葵ちゃんはドレスとかを作るのが大好きだから。でも私も気になる。」
「全然良いわよ?」
私はそう言いスマートフォンを取り出した。この学校は文化祭準備や体育祭準備などの学校行事の時だけスマートフォンの使用が許されるらしい。
「生まれてからだから。13着はあるわね。私が着ている写真だからドレスだけでは無いけれど……良い?」
「勿論だよ!昔の美乃梨ちゃんも見たいしね!」
朝葵ちゃんがそう言ってくれたので私は13枚の写真をスクロールしながら見せた。
「美乃梨ちゃん可愛い!」
「うん。どのドレスも似合うなんて羨ましいよ。」
「ありがとう。でも写真で良かったの?実物じゃなくて?」
「うん。凄く参考になったよ。」
「それなら良かった。」
「じゃあ採寸も終わったし教室帰ろう。男子の採寸もあるからね。」
教室に戻るとレイラちゃんが「遅いよ、みのりん!」と言って来た。これから台詞を覚えなければならないんだけれど……何と三日月先生がコピーをし忘れたそうでスマートフォンに台本が送られて来た。
「じゃあみのりん。台本暗記出来たら言ってね。」
レイラちゃんがそう言った時、朝葵ちゃんが
「レイラ、そんな直ぐに暗記出来ないでしょ!?」
とレイラちゃんに向かって言った。レイラちゃんは困った顔で言い返した。
「うん。普通はそうだよね。それが……みのりんには出来ちゃうの。ね、みのりん。」
「まあ、このくらいの量なら。」
私がそう言うと朝葵ちゃんと羽音ちゃんは
「「ええっ!」」と声を上げた。
いや、2人だけじゃ無い。教室に居る人達が驚いた。
「レイラちゃん、何、この雰囲気?」
「みのりん。普通は数分で台本丸暗記は無理なの。」
この空気をどうにかしようと思ったが、とにかく台本を言われた通りに丸暗記した。
「レイラちゃん、ほぼ全部覚えたよ。自分の台詞以外は微妙かもだけれど。」
「みのりん、普通は自分の覚えたら十分だと思うよ。他の人のは完璧に覚えなくても良いよ。」
「そうなの!?」
「私は逆に他の人のも瞬時に覚えちゃう方が驚きなんだけど。そろそろ男子も来る頃かな?みのりん、ちょっと呼んで来てくれる?」
「うん。」
そして先程私が採寸をした空き教室に向かいドアをノックした。
「皆、採寸終わった?」
ドアが開き透くんが出て来た。透くんは魔法使いの役だ。何だか親近感が湧いてくる。
「終わったぞ。美乃梨王子様?」
「魔法使いさん、他の皆は?」
「美乃梨ってノリ良いな〜。全員終わった。教室戻るぞ!」
「うん!」
教室に戻ると三日月先生と演技指導をしてくれる雅美ちゃんも居た。
「台本の印刷やっと終わった。はい、これ台本だ。」
「あの、三日月先生?私もう覚えました。」
「へえー、そうか。……って早っ!?」
千秋もやって来て
「俺も、女子が採寸してる間に覚えました。」
と言った。
「流石だな。じゃあ皆んな、練習始めるぞ!」
「「「おー!!」」」
最初は雅美ちゃんから発声練習の指導があってその後はレイラちゃんと並んで指示を出してくれる。
「まず最初のシンデレラが継母と義姉と対峙するシーンから!」
レイラちゃんの合図で継母役の男の子が台詞を言い始めた。
「まあ、シンデレラったら。こんな所で何をしているの?」
「そうよそうよ。」
「……」
「何か喋りなさいよ!」
「貴女達こそここで何を?お掃除はいつなさるの?」
「何言ってるのよ?掃除はじゃんけんで決めるから貴女が掃除をする事になるかもしれないのよ?」
「ではいつも通りじゃんけんで決めましょう。」
「じゃんけん、ぽん。」
「やっぱり私が負ける筈ありません。」
シンデレラ役の千秋はそう言って笑った。案外楽しんでるようで良かった。実はこのシンデレラは脚本担当の子がちょっとアレンジするつもだったらしいが人格が変わってしまったらしい。勿論私の王子様もだ。
「くぅー!今度こそ勝って見せるわ。」
「頑張りなさい。」
継母も義姉に対してそう言うのだ。
「お母様ったら酷いです。」
「シンデレラ、この子はお掃除があるので私とお茶会を致しましょう。」
「はい、お継母様。」
「カット!OK!じゃあ次は魔法使いが出てくるシーンね。」
レイラちゃんがそう言うとまた、演技が始まった。
「お母様、シンデレラには舞踏会に行くドレスは無いわよね?」
「ええ、そうね。シンデレラ、舞踏会に行きたいのならドレスを自分で縫うか、それとも魔法使いに頼むかしなさい。」
「はい、お継母様。魔法使いに頼みます。魔法使いさん、出て来て下さい。」
「お呼びでしょうか?シンデレラ。」
「私に似合うドレスを作って欲しいの。」
「わかりました。ついでにガラスの靴も用意致しましょう。ですが注意事項が一つ、魔法は12時の鐘が鳴り終わると同時に解けてしまいます。公の場で下着になりたくなくば12時の鐘が鳴る頃には帰って下さい。」
「魔法のドレスはこの服から作るんじゃないのでしょうか?」
「そんな事出来ませんよ。魔法で出来たドレスを渡しますのでそれに着替えて頂きます。」
「分かりました。公衆の面前で下着姿は嫌なので必ず時間は守ります。」
「ではかぼちゃの馬車と白馬も準備しましょう。早くしないと遅れてしまいますから。さあさあ、早く準備して下さい。」
「カット!次は舞踏会にて!」
レイラちゃんは私を向いて頷いた。
「ああ、妃探しの舞踏会だなんて、憂鬱だ。僕は結婚に興味がないと言うのに。」
「王子様、私を妃に!」
「いえ、私を妃に!」
「私の方が王子様と吊り合いますわ!」
「お嬢様方、すみません。僕は少し席を外させて頂いても?」
「勿論です!」
私は少し離れてバルコニー(本番は用意されている)の方で休憩した。
「はあ、疲れる。」
「主役が抜けてしまって良いのですか?」
「貴女は……?」
「私はシンデレラです。」
「シンデレラ、貴女はとても美しい。妃など興味は無かったがこれが恋という感情なのか?」
「王子様。私も一目で恋に落ちました。どうか私を妃、」
私は千秋の唇に人差し指を当ててから手の甲に口付けをする。
「それは僕から言わせて下さい。貴女に恋に落ちました。僕の妃になって下さい。」
その時、鐘が鳴り始めた。シンデレラ(千秋)は会場から逃げ帰った。ガラスの靴を片方だけ落として。
「このガラスの靴がピッタリな人がシンデレラだと?顔を見たら直ぐに分かるに決まってる!」
そして昨日の舞踏会に参加していたメンバーが揃う。全員で8人。その時、レイラちゃんからカットが掛かった。
「みのりん、ちょっとこっち来て。」
私がレイラちゃんの方に寄ると耳元で言われた。
『ねえ、みのりん。シンデレラを見つけたら抱き着いてくれる?』
『だ、抱き着く!?』
『うん。その方が盛り上がるし雰囲気が出ると思うから。』
『わ、分かった。』
そしてレイラちゃんは合図を出した。
「また会えて嬉しいよ。シンデレラ。僕の妃になってくれますか?」
「勿論です、王子様。」
その後私はシンデレラ(千秋)に抱き着いた。
「これからは夫婦として一緒に人生を歩もう。」
急な事に周りは驚き騒然としているが千秋はアドリブで続けてくれた。
「はい。一緒に歩んでいきましょう。」
聞こえてくる鼓動は私のものか千秋のものか分からない。
「カット!みのりん、九条。凄く良いよ!では演技指導の雅美さん、コメントをどうぞ!」
「ちょっとレイラ、変にハードル上げないでよ。みのりんはほぼ完璧なんだけど、もう少し声出して。他の人は羞恥心が残ってる。笹木くんはみのりんと同じで声もっと出して。本番はもっと広い所だから。あと九条くん!若干棒読みの所あるから気を付けて。表情は完璧だったよ。」
そして三日月先生が「そろそろチャイム鳴るけど放課後練習続けても良いぞ。部活の準備もある奴はひと段落したら手伝いに行けよ〜。」と言った。
「「「はーい!」」」
「じゃあ一旦休憩ね。」とレイラちゃんが言った。
休憩に入り私が風に当たりにベランダに出ると透くんと千秋がやって来た。
「よっ、美乃梨。さっき美乃梨が急に千秋に抱き着いたのは凄えびっくりした。」
「あれは、レイラちゃんから言われて。千秋もアドリブで合わせてくれてありがとう。」
「別に構わない。」
「やっぱり姫野か。急過ぎて周りの奴ら皆びびってたよ。」
「驚かしてごめんね。千秋もごめん。」
「だから別に良いよ。」
と千秋は眉を下げながら笑った。
不覚にもドキッとしてしまい頑張って表情を隠した。
「そろそろ休憩終了〜!最後通しで練習したら部活の準備もあると思うし終わりにするね!」
「うん!」
そして練習が終わり、部活の方に向かうと颯先輩が居た。颯先輩は
「今日は部活の準備は要らないそうだ。クラスのが終わったならもう帰って良いぞ?」
と言った。
「では、お先に。」
私は千秋と京翠と一緒に昇降口へ行った。真央くんと景くんの教室にも寄ったのだけれど、2人はまだ時間が掛かりそうなので別で迎えに来て貰うらしい。
京駕さんの車に乗り込むと貴翠は既に居て、篤季は景くんと一緒に帰ると聞いた。
「ねえ、貴翠のクラスは何をするの?」
「私のクラスですか?喫茶店をしますよ。メイド執事喫茶です。」
「そうなのね。楽しそう!」
「是非、遊びに来て下さい。」
「美乃梨様は劇ですよね。美乃梨様が王子様で千秋さんがシンデレラ役と聞きました。必ず最前列を取りますね。」
「別に良いわよ。身内に見られるのは少し恥ずかしいから。」
「恥ずかしい?兄さん、何かあるんですか?」
「貴翠、それは本番の楽しみに取っておいた方が良いと思いますが?」
「そう言われると余計に気になりますね。少し考えさせて下さい。」
と言い貴翠は考え始めた。
「ちょっと、そんなに真剣に考えなくて良いわよ!」
「"ハグ"等でしょうか?」
私は無言を貫いたが、京翠が感心したように言った。
「流石、貴翠ですね。ヒント無しで当ててしまうのは少々驚きですが。」
「兄さん、ヒント無しではありませんよ。シンデレラという事は恋愛要素もあるでしょうから。もし、キスシーン等であれば美乃梨様はポーカーフェイスが崩れるでしょうから。あとは勘です。」
「何で勘で当たるのよ。」
「美乃梨様、私の勘の良さは知りませんか?」
「そうね。貴翠の勘は昔から鋭かったわ。」
そんな事を話している内に千秋の家に着いた。
「千秋、また明日。」
「ああ。また明日。」
そしてすぐに私の家にも着いた。
「京駕さん、ありがとうございます。」
私が玄関の扉を開けると、煌と稔と架が待っていてくれた。
「3人とも揃ってどうしたの?」
「姉さん、貴翠さん、京翠さん。サプライズです。」
煌達はそう言ってリビングに向かった。私達はそれについて行く。リビングの扉を開けると……
「律ちゃん!?響彼くん!?」
お父様の妹と弟、つまり私の叔母と叔父が居た。
貴翠と京翠は穏やかな笑みを浮かべて挨拶をした。
「律様、響彼様、お久しぶりです。」
「お2人ともこちらにお戻りになられていたのならご連絡下さってもよろしいのに。」
「美乃梨、貴翠、京翠、久しぶり!」
「サプライズにする事になってな。2人とも元気そうだな。京駕さんから話は聞いていたが。」
「父さんとは連絡を取っていたんですね。」
「ええ。京駕さんにはお世話になりましたから。」
律ちゃんと響彼くんと会ったのは何年振りだろう?
「律ちゃんも響彼くんも元気そうですね。」
「美乃梨〜!可愛く成長したね!今13だっけ?」
「はい。律ちゃんは18歳ですよね?」
「うん。響彼兄様は今年で26だよ。」
「そうなんですね。あれ、そう言えば響彼くんと貴翠どこに行ったのかしら?」
私が辺りを見回すと京翠が教えてくれた。
「美乃梨様、2人は積もる話があるそうで、少し席を外しましたよ。」
「そう。」
「ねえ、美乃梨。今日お母様とお父様に会ったのよ。2人とも美乃梨達に会いたいって言っていたわ。良ければ今から一緒に会いに行かないかしら?」
「お祖母様とお祖父様が?」
そして私は煌達とボディーガードである京翠と一緒に敷地内にあるお祖母様のお屋敷まで律ちゃんが運転してくれる車で向かった。
文化祭が近づいて来ました。
文化祭って準備が一番楽しかったりしません!?
私はテストと文化祭が近かったのでテスト勉強と文化祭準備が被ってしまい文化祭前日に何とか準備が終わったという思い出があります。
次回はお祖父様とお祖母様が出て来ます。
家は同じ敷地内だけど広すぎて移動は車でします。
因みに年齢は共に54歳です。




