テスト本番と懐かしい思い出
明日に迫ったテストに向けて私達は2日に一度、私の家に集まって勉強していた。
今日は最後の勉強会なので皆気合いいっぱいだ。
「明日、明後日が本番だね。」
「私、自信ない〜!」
「大丈夫よ。ユーリちゃん、ここまで頑張って来たんだから自信持って。」
「みのり〜ん!!テスト終わったら絶対皆んなで遊びに行こうね!」
ユーリちゃんは私に抱き着きながら言った。
「ええ。そうする為に皆で頑張ろうね!」
「「「おー!」」」
そして皆が帰った後、私も明日に備えて早く寝る為に溜まっている仕事を片付けた。仕事と言っても真央くんから得た巫女の情報をまとめてお父様に書類を提出するだけだけど。
「美乃梨様、夕食はどうなさいますか?」
「ここで食べるわ。京翠の分もお願い。」
「かしこまりました。」
昨日に引き続き、今日も京翠に相談に乗って貰うことになっている。
「京翠、その、私の友人の話なんだけど、好きな人にどうやって告白したら良いか分からないらしいの。どうしたら良いと思う?」
「美乃梨様、分かりきっていますのでわざわざ隠さなくて良いですよ。」
「気付いてたなら昨日言ってよ。」
「すみません。千秋様に告白ですか……どうして悩むのか分かりませんが、私は応援しますよ。イベントは恋人が出来やすいと言いますし、文化祭で告白してみてはどうでしょう?」
「それ、良いわね!頑張るわ!……3人の告白にはどう答えたらいいと思う?」
「篤季と真央様は答えを欲していなそうですし、柄灯くんは告白するつもりが無かったそうなのですぐに断る必要はないかと思います。」
「そう。ねえ、京翠?千秋には好きな人が居るらしいの。振り向かせるにはその人よりも魅力がないといけないわよね?」
私がそう言うと京翠は一度黙って目を瞑り、息を吐いて独り言のように何か言った。
『どうして美乃梨様は自分自身とはお考えにならないのでしょう。』
「ごめん、京翠。聞こえなかったわ。」
「いえ、独り言ですので。そこの所は大丈夫です。美乃梨様は十分魅力的なですからね。私が保証致しましょう。」
その頃丁度、シャルルが夕食を持って入って来た。
「美乃梨様、お待たせ致しました。」
「ありがとう、シャルル。」
そして夕食を食べ終わり、お風呂に入って、その日はもう寝ることにした。
そしてまだ太陽が昇りきっていない頃、
「美乃梨様、おはようございます。」
とシャルルが声を掛けてきた。
「おはよう、シャルル。今日と明日はテストで帰るのが早いからお昼を準備していて欲しいのだけれど……お願い出来るかしら?」
「はい。その事ならシェフに頼んでおりますので、美乃梨様は安心してテストを受けて来て下さい。」
「ありがとう、シャルル。」
部屋を出ると、扉の前に待機していたらしい京翠が立っていた。
「おはよう、京翠。私は今から朝食なのだけれど、京翠はもう食べたの?」
「はい、勿論です。今日は真央様と景様はもう来ているそうですよ。」
「えっ!?早過ぎるわよ?」
シャルルに時間を確認しても、まだ6時だ。
とにかく2人の居る待合室に向かった。
コンコンッとノックをして扉を開いた。
「美乃梨ちゃん!おはよう。」
「おはよう、美乃梨。」
「景くん、真央くん、おはよう。2人揃って早過ぎるわ。何かあったの?」
「いや、特に何も。ただ、僕が早く美乃梨の顔を見たかっただけだよ。」
「な、何言ってるの。それで、景くんは?」
「美乃梨ちゃんは最近、真央と篤季ばかりと喋ってたから、早く来たら美乃梨ちゃんとゆっくり喋れるかなと思ったのに……まさか真央も居るなんてね。」
「確かに最近は景くんとあまり喋っていなかったわ。でも、私、今から朝食だから食べ終わったらまた来るからその時話そうよ!」
「分かった。」
私が朝食を食べようと食堂に向かう途中、京翠が話しかけて来た。
「おや、少し残念そうな顔をしておりすね。」
「そんな事、ないわよ。」
「千秋様ならいつもは最初に来ていますから、美乃梨様が朝食を終えた頃には来ると思いますよ。」
「そ、そう。……教えてくれてありがとう。」
食堂に着くとお父様とお母様と何故か聡くんも居た。
「おはよう、美乃梨。」
「おはようございます、お父様。お母様と聡兄様もおはようございます。」
私がそう言うとお父様が優しい笑みで
「美乃梨が聡への呼び方を元に戻したと聞いたが、呼び方を変えた原因は私達大人の所為だったんだな。すまない。でも、元通りになったようで何よりだ。」
と言った。お母様も
「気付いてあげられなくてごめんなさい。」
と言った。私は全てを話したらしい聡くんを軽くキッと睨んだから2人に向かって言った。
「気にしないで下さい。確かに影口はありましたが、特に弊害もありませんでしたから。」
私が2人を安心させようとそう言うと2人は驚いた顔で言って来た。
「影口を言われてたのか!?」
「何故それを早く言わないの!?」
「影口なんて気にしたら負けだと思っていましたし、自分が人にどう思われるか、あの頃は本当に興味が無かったので。」
私がそう言うと2人は溜息をついた。
「変な所で強いわね、美乃梨は。」
「いつからそんなに逞しくなっていたんだ。つい先日までは小さい子供だと思っていたのに。お願いだからもう少しゆっくり成長してくれ。私を追い抜くのはもう少し待ってく、」
「薫、長い話は後にして頂戴。それに美乃梨にはもう追い抜かれているでしょう?」
「紫乃凛……私の父親としての威厳はもう無いと思っているのか?」
「美乃梨と煌は頭の良さでは貴方を超えてるんじゃないかしら?」
お母様はお父様にズバッと言ってしまった。
私と煌は勉強が好きな方で暇さえあれば勉強をしているので勉強嫌いなお父様より頭が良くなっても別におかしくはない、はず。
「お父様、当主としてはお父様の方が大先輩です!お父様は私の憧れなので、いつかお父様のような、いえ、お父様よりも素晴らしい当主を目指して頑張ります!」
「そうか、憧れか。では美乃梨に先輩としてアドバイスしよう。今は年相応に恋愛、友情に悩みなさい。これは煌にも言える事だけどな。美乃梨と煌は勉強ばかりしていた所為か精神年齢が高いんだろうけど、今は年相応の生活をしなさい。2人ともまだ子供でいて良いんだ。」
「分かりました、お父様。」
「煌にも伝えてあげなきゃいけないわね。幸い、稔と架は子供らしい所がありますからね。」
「ああ。今日は私が煌を起こしに行くよ。これからは少しずつ親子の時間を増やしたいと思っていたからな。勿論、美乃梨ともだからな。」
そう言うとお父様は食堂を出て行った。
お母様も
「私も美乃梨と親子の時間を作りたいわ。お姉様とお茶会を開くそうですね。私ともこれからは沢山開きましょうね。」
と言って下さった。
聡兄様もにこりとしながら言って来た。
「美乃梨、僕とも兄妹の時間を作って欲しいな。例えば一緒に図書館巡りとかはどうかな?」
「えっ!楽しそう!」
「おー、意外な反応。そんなに食い付いてくれるとはね。何となく叔父様と叔母様に勝った気分。」
「何言ってるの、聡。美乃梨、私とのお茶会も楽しみよね?」
「ええ。勿論です。お母様とのお茶会は凄く貴重なので楽しみですわ。」
お母様は聡兄様に勝ち誇った顔を見せて笑った。反対に聡兄様は負けて悔しがるような表情を見せた。
「ごちそうさまでした。では、私は景くん達が待っているのでもう行きますね。」
「美乃梨、」
とお母様が言った。
「どうしたんですか?」
「頑張っていらっしゃい。」
「はい!」
そして私は待合室に向かった。
軽くノックをして扉を開いた。
「景くん、真央くん、待たせてごめんね!」
「美乃梨、おはよう。」
「美乃梨お嬢様!おはようございます!」
「千秋、篤季、おはよう。2人とももう来てたんだ。全然気付かなかったわ。」
「僕が来た時とほぼ同時に千秋が来たので父さんが開けてくれたんです。」
「そうなのね。じゃあ、景くん。庭に行こ?」
「うん、そうだね。」
私と景くんが向かおうとすると
「ちょっと待って下さい!」
と篤季に引き留められた。
「どうしたのよ、篤季?」
「2人で庭に行くんですか?」
「そ、そうだけど?え、何かおかしい?」
「いえ、おかしくはありません。ですが、僕が告白した所も庭だと言う事を忘れないで下さいね?」
「わ、忘れるわけ無いじゃない!思い出しちゃうからやっぱり別の場所にしよう!」
「う、うん。どこにするの?」
「それは、着いてからのお楽しみで!」
そう言いながら私は景くんを連れて(勿論、ボディーガードの京翠もついて)バルコニーに行って置いてある椅子に座った。
「こうして景くんと話すのは初めてだね。」
「確かに考えてみればそうだね。……ねえ、美乃梨ちゃん。美乃梨ちゃんは篤季や真央、凪に告白されてどう思ったの?」
「千秋にも同じような事を聞かれたわ。同じ日に3人に告白されるなんて驚いた。しかも篤季と真央くんは返事はまだ要らないらしいから、余計にどう接していいか分からない。凪くんのは断ろうと思ってるけど、波多さんのような告白の仕方じゃなかったからどう断っていいか分からない。」
「美乃梨ちゃん。仮定の話なんだけどね、もし、他に美乃梨ちゃんの事を好きっていう人が出て来たらどう思う?迷惑?」
景くんは首を傾げながら聞いて来た。
「人に好かれる事は嬉しいから迷惑とは思わないよ。でも、今まで通りに接するのは少し難しくなるかもしれないかな。」
「そっか、迷惑じゃないんだ。……良かった。」
「え、今なんて?」
「何でもない。皆の所に戻ろっか。」
「う、うん。」
皆の居る待合室に戻ると篤季と真央くんが詰め寄って来た。
「美乃梨!2人で何話してたの?」
「美乃梨お嬢様、まさか告白とか……?」
「何言ってるのよ、篤季。真央くん、普通に話してただけだよ。ね、景くん。」
「そうだね。"普通に"話しただけだよ?」
景くんはいつにも増したキラキラスマイルで2人にそう言った。その後、景くんは篤季と真央くんに囲まれた。
「景、どう言う意味かな?」
「真央と篤季は美乃梨ちゃんに避けられたり、話せてもよそよそしい感じでしょ?その点、僕は普通に話せるけど。」
「景、それは皮肉ですか?存外に図太い精神してるんですね。」
「恋敵だからね。容赦はしないよ。」
「景、一番の恋敵に気付いてないの?」
「流石に気付いてるよ。だから僕は告白する前にもっと頑張ろうと思って。千秋よりも僕の方がいいと思ってもらいたいし。」
「意外にも強気なんだね。まあ、僕も絶対に負けたくないけどね。」
「僕も絶対に負けたくありません!」
急に篤季が大きい声を出した。
「あ、篤季!?どうしたのよ、急に。」
「すみません、お嬢様!何でもありません。」
「そう。篤季、今日のテスト大丈夫なの?」
「はい!勉強は普段からしていますから。」
そしていつも通り、京駕さんに車で送ってもらい学校に行った。教室に行くといつもよりも人が多かった。何でも、皆テストに向けて早めに学校に来て勉強をしているらしい。雅美ちゃんと凪くんと爽夜くんが凪くんの机に集まって勉強していた。
「おはよう、皆。」
「あ、みのりん!おはよう。みのりんのお陰で結構いける気がするんだけど、実は私、いつもテストが本当に赤点ギリギリなの。だから不安で。」
「大丈夫だよ。この前渡した問題集も半分以上解けてたから低くても60点くらいだと思うよ。」
「本当!?」
「え、ええ。いつもの調子で解いたらそのくらいだと思う。いや、それ以上かもしれない。」
「ありがとう、みのりん!自信出てきた!」
「どういたしまして。」
凪くんは苦手な英語をずっと勉強している。
爽夜くんは社会の世界地理が苦手らしくずっと暗記帳と睨めっこだ。
「凪くんも最初に比べて文法も凄く覚えてると思う。英単語もひと通り書けてたから緊張しすぎないようにテストに臨んだら大丈夫だと思うよ!」
「美乃梨〜!ありがとう!頑張るね!」
「うん。応援してる!」
「じゃあ美乃梨、全教科で380点超えたら一つお願い聞いてくれる?」
「うん、いいよ。それで、お願いって?」
「僕とデートして!」
「で、デートって2人きりで?」
「うん、そうだよ。」
「……380点とれたら、ね。」
「え、本当にいいの!?僕、テスト頑張れるよ。」
そして凪くんが勉強に戻った後、爽夜くんがコソッと私に耳打ちして来た。
『美乃梨、本当に安請け合いして良いのか?』
『良いの。爽夜くんも前に言っていたように千秋が嫉妬してくれたらなって、少しだけ、本当に少しだけだけど期待したの。』
『そうか。美乃梨がいいなら良いんだ。』
そしてホームルームの予鈴が鳴り、三日月先生が入って来た。
「皆、今日と明日はテストだ。俺的には英語を頑張って欲しいけど、全教科頑張れよ。」
そして1限目が社会、2限目が英語、3限目が理科の順でテストは終わり、気付くと放課後になっていた。
「私、みのりんのお陰で結構いけた気がする!」
「それはユーリちゃんの実力だよ。」
「僕も凄い自信ある!」
「おー、柄灯にしては英語があったのに明るいね。珍しー。英語のテストの時は小テストでさえ暗そうな顔してるのに。」
「フフン、良い点とったら美乃梨がお願い叶えてくれるからね。」
「みのりんに何のお願いしたのよ?」
「秘密〜!」
と凪くんは言ったけど、雅美ちゃんがサラッと教えた。
「みのりんとデートするんだって〜!」
「え!?柄灯くんだけずる〜い!私もみのりんとデートしたい!」
「それなら私もみのりんとデートしたい!」
「ちょっと、レイラ。レイラは彼氏がいるでしょう?浮気じゃないの?」
「彼女は居ないからセーフ!」
とか何とか皆の言い合いが始まった。
「そう言う雅美は松岡をデートに誘ったらどうなのよ?」
「何言ってるのよ、レイラ!」
「そうだよ、姫野。雅美は爽夜に対してだけはシャイなんだから、誘ったり出来ないよ。」
「出来るわよ!」
「あれ〜?そんな事言っちゃっていいの〜?」
「何よ、凪。その目は。」
と雅美ちゃんが凪くんを思い切り睨んだ。
「な〜んでもないよ?」
私達がそんな事を話していると鞄を持った爽夜くんがこちらに向かって叫んだ。
「おーい、凪ー!雅美ー!帰るぞ!」
「今行くー!」
そう言って凪くんと雅美ちゃんは帰った。
ユーリちゃんとレイラちゃんも透くんと同じ方向だそうで一緒に帰った。
「千秋、京翠、私達もそろそろ帰ろう!」
「ああ。そうだな。」
昇降口に行くと景くんと篤季と貴翠が居た。
「3人とも、テストはどうだった?って聞くまでも無いわね。」
「そうだね。僕は多分満点の自信あるから。」
「凄いですね、景は。僕は満点は無理かもしれないです。記述問題は教師によって変わるらしいので。」
「私は……まあ、言うまでもありません。」
「そうね。貴翠は私よりも頭がいいものね。」
私がそう言うと貴翠は「恐れ入ります。」と笑ったが、京翠以外の反応は違った。
「貴翠さんって美乃梨よりも頭が良いのか!?」
「ええ、そうよ?」
「美乃梨ちゃんよりも頭が良いってどのくらいの頭の良さなの!?」
「多分だけど、五家当主全員よりは賢いんじゃないかしら?」
「貴翠兄さんが……!?」
「ちょっと待って、千秋と景くんは分かるわ。けど篤季は兄弟でしょう?今まで気付かなかったの!?」
篤季は「はい、初耳です。」と言った。
私は確認の為に貴翠と京翠の方を振り返った。
「篤季は今まで美乃梨様ばかり見ていたので、私の事など気に留めていなかったのでは?」
「貴翠も頭の良さを見せびらかす事が無かったので余計に鈍感な篤季は気付かなかったのでは?」
と2人して言ったので、この兄弟は仲が良いのか、悪いのか、と思った。そして真央くんがやって来たので待機していてくれた京駕さんの車に乗り込んだ。
「皆様、今日のお昼は皆様の御両親から頼まれておりますのである所にお連れ致しますね。」
「ある所って何処ですか?」
「それは着いてからのお楽しみです。」
と京駕さんは悪戯そうに笑った。
笑った顔は貴翠にそっくりだった。
「京駕さんって貴翠と似てますよね。あ、勿論京翠と篤季とも似てますが。」
と私が言うと京駕さんは優しく笑って言った。
「そうですね。昔は京翠の方が似てると言われる事が多かったんですが、今の貴翠は昔の私と一番似ている気がしますね。篤季は母親似と言われる事が多いですが、妻には目元は私と似ていると言われますね。」
「確かに、篤季は皐月さんと似ている気がします。」
「美乃梨様は薫様とも紫乃凛様ともよく似ていらっしゃる。特に、昔の薫様とそっくりです。」
「そうなんですか?そういえば、京駕さんはお父様の事をいつから知っているんですか?」
私がそう言うと京駕さんは快く教えて下さった。
「薫様が生まれた頃からですよ。薫様がお生まれになったのは私が15の頃ですから。紫乃凛様と薫様は幼馴染でいらしたので、紫乃凛様と知り合ったのも私が19で紫乃凛様が4歳になられる頃ですね。」
「そんなに昔から……そういえばお父様もお母様も京駕さんの事を兄のように慕っていますね。私的な場では。」
「実際、美乃梨様にとっての聡様のような立ち位置ですから。」
「皐月さんは木野家出身ですよね?皐月さんとは幼馴染だったんですか?」
「はい。私が5歳の頃からの幼馴染ですね。」
京駕さんがそう言うと意外な所から「そうだったんですか!?」という声が聞こえた。
「篤季、さっきもだけど、驚きすぎじゃない?」
「初耳でしたので。兄さん達も初めて聞きましたよね!?」
篤季は貴翠と京翠に助けを求めるように言ったが、
「私は母さんから聞いた事がありますよ。篤季が美乃梨様の事で頭がいっぱいだった頃に。」
「私は小さい頃、貴翠が生まれているか生まれていないかという頃に聞いた事があります。」
と2人は答えた。
「あ、京駕さん。確かそろそろ誕生日ですよね。」
「そうですね。10月の29日で、48になります。」
「お祝いしなくちゃですね。」
「お気持ちだけでとても嬉しいです。そろそろ着きますね。」
そう言いながら、京駕さんは車を停めた。
私は車から降りると驚いた。
「ここって……」
「覚えていますか、皆様。」
「皆様って……?」
着いた所は私が昔、篤季と貴翠と京翠と来た丘だった。
「俺、昔ここに来たことがある。」
「僕も、凄く昔に来たことがある気がする。」
「千秋と景も?僕も来たことある。」
「京駕さんどういう事ですか?」
私が首を傾げながら京駕さんの方を向くと
「美乃梨様、皆様。ここは、皆様が初めてお会いになられた場所でございます。」
と京駕さんは教えてくれた。
「覚えていなくても仕方ありません。あの頃は2、3歳でしたから。でも、皆様、とても仲がよろしい様子でしたよ。京翠と貴翠は覚えていますね?」
「はい。私は当時4歳頃でしたが覚えています。皆様大変仲がよろしいようでした。」
「私も当時6歳でしたので、鮮明に覚えています。皆様仲良しでしたね。何より、美乃梨様が次はいつ会えるのかと楽しみにしていらしたので。」
と貴翠と京翠は言った。
「私は貴翠と京翠と篤季が居た事は覚えているわ。」
「それは、美乃梨様が4歳頃の事でしょう。」
京翠達の話を聞いて私が思い出そうと頭を捻っていると、千秋が声を上げた。
「俺、何となく覚えているかもしれません。鮮明にとはいきませんが、ここに来た事があるという事は覚えていましたし、その時に誰かが居た気がする、という程度ですが。」
「えっ、千秋凄い!僕は全然思い出せない。」
「僕は言われてみればってくらいだけど、思い出して来た気がするよ。」
「真央くんも?ていうか、私達、本当に幼馴染だったの!?今まで皆に言って来た事は嘘じゃなくなったんだね。」
「美乃梨ちゃんと会った時、初めましてじゃなかったんだね。確かに、美乃梨ちゃんもだけど、千秋と真央ともすぐに打ち解けたからね。」
「そう言えばそうだったね。出会ったその日に仲良くなるなんて中々無いことだよね。」
「そうだね。」
しばらく丘の上に聳え立つ大木を眺めていた篤季がこちらを振り返り、言った。
「僕も、千秋や景、真央さんと会った事があるんですか?」
「篤季はずっと美乃梨様しか見ていなかったので記憶に残っていないだけでは?」
「そんな事、無いとは言い切れませんが。」
「言い切れないの!?」
「流石、美乃梨様。素晴らしいツッコミです!」
「ツッコミたくてツッコんだ訳じゃ無いわよ。」
はあ、と私がため息を吐くと京駕さんが車からあるものを持って来た。
「あの頃の皆様がよく食べられていたお弁当をそれぞれの御両親からお預かりしています。」
「ありがとうございます、京駕さん。ですが、何故今になってそんな事を私達に伝えたんですか?」
「実は皆様の御両親は皆様が再会すると思い出すと思っていたらしく、中々思い出さないのでこういう機会を設けようと考えたらしいのです。」
「お父様とお母様らしいわ。」
「確かに、俺の両親も似たようなものだと思う。」
そして大木の木陰に座ってお弁当を開いた。
「懐かしいわ!よくシェフに頼んで入れて貰っていただし巻き卵が入ってるわ!」
「俺も、昔、料理人に頼んでいたきんぴられんこんが入ってる。」
「僕はハンバーグだ。懐かしいな。」
「僕は鯛飯が入ってる。」
食べてみると、味も昔のままで記憶が蘇って来た。
お弁当を食べ終わり、木にもたれ掛かって軽く目蓋を閉じると、さっきまでのぼんやりした景色と違い、まるで映画のように鮮明に記憶が蘇った。
「えっ!?」
「美乃梨ちゃん?どうしたの?」
「いや、この木にもたれ掛かると昔の記憶がついさっき体験したように鮮明に蘇って来て。」
「僕もやってみる。」
と言い、景くんは目蓋を閉じて木に手を当てた。
「……美乃梨ちゃん、僕も思い出した。」
「景くんもなんだ。やっぱりこの木に秘密があるとしか思えないわよね。」
「そうだよね。真央と千秋と篤季にもやってみて貰おうよ。」
「うん。」
そして3人にも確認して貰うと同じ現象が起こった。
「どういう仕組みなんだろう。やっぱり魔法使い関係だよね。」
「うん、それしか考えられないよね。」
「父上達に伝えた方が良いよな?」
「そうだね。多分危険とかは無いと思うけど、僕も両親と麗華には伝えておくよ。」
「なら、私もお父様とお母様に伝えるわ。」
「じゃあ、僕は叔父上と叔母上、父上と母上に伝えておくよ。」
そして篤季が貴翠と京翠と京駕さんに報告しに行った。篤季からの報告を聞いた3人はこちらにやって来て、木の確認をした。しばらくして、京駕さんが言った。
「美乃梨様、この木には魔力が篭っております。」
「やっぱりそうなんですね。」
「そして、その魔力なんですが……はっきりと断言出来ませんが、美乃梨様の魔力と類似しているように思います。」
「私のと?」
「はい。しかし魔力は歳を重ねるごとに変化がございますので、この木に魔力が篭められたのは随分と前の事のようですし。」
京駕さんがそう言うと、貴翠が付け足して教えてくれた。
「この木に篭っているのは1人だけの魔力ではありません。一つは美乃梨様の魔力と似たもので、もう一つは私達の通う中学の美術教師、七倉蓮介という者から感じとった魔力と類似どころか一致します。」
「七倉先生と?」
「はい。これはあくまで私の仮説ですが、大きい方の魔力は美乃梨様のもので間違いないかと。しかし、昔の美乃梨様の魔力だと思います。そして比較的最近に感じる方の魔力は七倉蓮介でしょう。七倉蓮介はどのような方法でかは分かりませんが、美乃梨様の魔力を利用していると思います。」
「私の魔力を利用って何に?」
「そこまでは分かりませんが、美乃梨様の魔力を操作した痕跡がありますので。」
「前に話していたの、七倉先生は巫女に関係しているかもって。その事に私の魔力も関係しているかもしれないって事よね?」
「そういう事になりますね。」
貴翠はそう言って怖い笑顔を見せた。
「美乃梨様、心配なさらないでください。七倉蓮介に関しては私が責任を持って対処致しますので。美乃梨様には指一本触れさせませんから。」
「ありがとう、貴翠。でも程々にしてね。」
「はい、勿論です。」
貴翠がそう言うと京翠も
「美乃梨様のボディーガードは私ですので、"私が"美乃梨様をお護り致します。」
と言ってくれた。
「期待してるわ、京翠。でも、私は護られないといけない程弱くは無いけれど。」
「それでも、私が美乃梨様を護りたいだけなので、自己満足と思っておいて下さい。」
「そう。でも、本当にありがとう、2人とも。」
爽夜くんが美乃梨ちゃんの事をそっと応援してくれるの、羨ましい限りです!最高の友達ですね。
実は景くん、こっそりアプローチを仕掛けるつもりだったのですが真央くんはその作戦に勘付いて阻止しようとわざわざ朝早くから来たんです。
因みに、聡くんと紫乃凛さん、薫さんは凄く仲良しです。聡くんのお父さんが薫さんの従兄弟なんですけど、その2人が仲良しなので、薫さんや薫さんの幼馴染だった紫乃凛さんから弟のような存在なので。
次回もお楽しみに⭐︎




