中間テスト勉強会!
「みのり〜ん、お願い!勉強教えて!」
1限目の美術が終わりユーリちゃんが泣きついて来た。
「別に構わないわ。そうだ、今日から部活も休みだから、皆で私の家で勉強会しない?」
「良いの!?楽しみー!」
「京翠、シャルルかアーチーに連絡してくれる?」
「はい。分かりました。」
京翠が電話の為、席を離れると私を呼ぶ声が聞こえて来た。
「おーい、恋咲ー!忘れ物だぞー!」
「七倉先生!ありがとうございます。」
七倉先生は私が忘れていたペンを持って来てくれた。
「どうして、このペンが私の物だって分かったんですか?」
「どうしてと言われても……強いて言えば勘だな。」
「凄いですね!」
『そういえば恋咲、あの実習生とはどういう関係なんだ?やけに親そうだったが……』
と七倉先生は先程より声を潜めて言った。
「実は幼馴染何ですよ。それだけです。」
「……そうなのか?」
七倉先生は授業中も京翠を気にしている様子を見せていたので、私も気になっていた。
「それよりどうしてそんな事を聞くのですか?」
「いや、特に深い意味は無い。」
そう言って七倉先生は美術室に戻って行った。私はユーリちゃん達に断って千秋の所へ急いで行った。
「千秋!」
「美乃梨?どうしたんだ?そんなに焦って。」
「ちょっと来て!」
私はそう言って千秋の腕を掴んで人気のない所に行った。
「いきなりどうした?」
千秋は私の顔を覗き込むように聞いて来た。
「ちょっ、近い……」
「悪い。それで、どうした?」
「七倉先生の事。七倉先生、もしかしたらこちら側の人間かもしれない。」
「こちら側って魔法使いって事か?」
「ちょっと違うかな。魔法使いの血を引く者って感じの気配が。今まであまり関わってなかったから気付かなかったんだと思う。でもさっき色々聞かれていつもより長い時間近くにいると何となくそうなんじゃ無いかって思ったの。」
「七倉先生、か……もしそうだとしても関わらなければ良いんじゃないのか?」
千秋がそう言って私が反論しようとすると
「美乃梨様!探しましたよ。」
と言う京翠の声が聞こえた。
「京翠は気付いた?七倉先生の事。」
「職員室で会った時に気付きましたよ。まさかすぐに会うとは思いませんでしたけど。ですが美乃梨様こそ気付かれたんですね。あの人、隠蔽魔法が上手そうですけど。」
「今の今まで気付かなかったわ。さっき少し気配を感じて京翠の事も気にしていたようだから気付けたけどね。それより千秋!関わらないなんて無理よ!」
「巫女に関連してるだろ?」
「何でその事……!?」
「貴翠さんに聞いた。何も全く関わらなとは言ってない。出来る限り関わらない方が良いと思うだけだ。」
「そういう事なら気を付ける。じゃあ、そろそろ教室に戻ろっか。」
「ああ。だがそれよりも先に……腕を、」
千秋にそう言われて私は視線を自分の手に落とした。
何と今までずっと千秋の腕を掴んだまま話していたらしい。
「ごめん!でももっと早く教えてよ。」
「悪い。つい、魔が差して。」
「何に?」
「いや、何でも無い。」
2限目の予鈴が鳴ったので急いで教室まで戻った。
教室に着くと先生はまだ居なくてひと安心して席に着いた。隣の席の凪くんが
「さっき千秋連れてどこ行ってたの?もしかして、告白?な訳ないよね。」
と聞いて来た。
「告白……」
「えっ、まさか本当に告白だったの!?」
「ち、違う違う。千秋には告白されて無いよ。」
「千秋には?"には"ってどういう意味!?」
「ほら先生来たから準備しなきゃ。」
「後で絶対に聞くからね!」
と凪くんに念押しされてしまった。
そして滞りなく授業は進み、お昼休み。
「美乃梨、誰に告白されたの?」
やはり覚えていたらしい凪くんが聞いて来た。
「えっと、その、私部活のお昼練習行ってくるね!行こう、千秋、京翠!」
「あ、ああ。爽夜、透、昼練行くぞ!」
「おう!」
「分かった。お弁当も持ってくよ!」
そしてお昼練習に向かった。
(凪くんには悪いけど今言うのは止めておこう。)
そして体育館に向かうと真央くんも居て、爽夜くんは真央くんの方に走って行った。
「真央先輩!来てたんですね。今日から部活休みなのに練習熱心ですね!」
「いや、ここに来たら美乃梨と会える気がして。思った通り来てるね。美乃梨ー!」
今朝の事で真央くんと会うのはやはり恥ずかしいけど爽夜くん達の前でよそよそしくするのはなと思い出来るだけ普通に返した。
「どうしたの?真央くん。」
「いや、美乃梨と話したかっただけ。」
「な、何言ってるのよ!」
「あれ、美乃梨顔赤くなってるよ?」
何も知らない風に真央くんは言って来た。爽夜くんはやはり勘が良いのか気付かれた。
『もしかして真央先輩に告られた?』
私が頷くと爽夜くんはニヤニヤしながら
『千秋に嫉妬して貰えたか?』
と聞いて来た。
「な、そんな事は……」
「どうしたんだ、美乃梨?」
透くんが心配そうな顔で見て来た。
「だ、大丈夫だよ。お昼食べよう。」
ご飯を食べ終わった頃、三日月先生がやって来てお昼練習は禁止になった。
「やっぱりテスト期間に部活はダメかー!」
「テストが終わったら嫌と言うほどあるけどな!」
「ほら、教室戻るぞ。」
真央くんと階段で別れて教室に戻る帰り、爽夜くんが京翠の肩を叩いた。
「京翠さん、話があります。」
「良いですよ。美乃梨様、大変心苦しいお願いですが話が終わるまで私の目の届く範囲でお待ち下さい。」
「大袈裟ね。分かったわ。あ、千秋と透くんは先帰って良いわよ?」
「いや、俺も一緒に待つ。帰っても特にする事は無いしな。」
「俺も。爽夜の話も気になるし。」
一方その頃の爽夜くん達……
「それで、松岡くん、話とは?」
「美乃梨、告白されたんですよね。」
「その様ですね。」
「あの、実は、凪と透も美乃梨の事が好きで告白したと言う事を聞いたら2人とも告白して美乃梨が困るんじゃ無いかと思って。」
「松岡くんは美乃梨様の事が好きなのですか?」
「いや、俺は友達なので美乃梨の恋を応援したいんです。透や凪も友達ですけど、こればかりは諦めて貰うしかありませんから。」
「そうですか。正直、こちらとしては恋愛に悩むのも青春のうちだと思いますから特に止めるという選択肢は無いんですよね。」
「そうなんですか?」
「はい。美乃梨様も困っているというよりは混乱している状態でしょうから、千秋様の事が好きなのにどう断れば……と言った所でしょうか。」
「成程。なら、俺が手を貸すまでもありませんね。京翠さん、ありがとうございます。」
しばらく話していた京翠と爽夜くんがこちらにやって来て、教室に帰った。
「ねえ、京翠。爽夜くんと何の話をしていたの?」
「詳しくは話しませんが、松岡くんは美乃梨様の事を本当に大切な友人だと思っているのですね。」
「ええ。私も爽夜くんはとても大切な友人よ!」
教室に着くと凪くんにまた聞かれた。
「ねえ、美乃梨。告白って誰にされたの?」
すると隣に居た雅美ちゃんも一緒になって聞いて来た。
「みのりんが告白!?九条くん?有栖川くん?神崎先輩?あ、本堂先輩か本堂くんもあるかー。で、誰なの?」
丁度そのタイミングでユーリちゃんとレイラちゃんも教室に入って来た事で更に広まった。
「告白って、流石みのりん!」
「相手気になるー!あ、九条くん?」
「千秋じゃないよ。僕が確認したから。」
何故か騒ぎが大きくなったのでどうしようかと千秋の方を見ると
「別にあの2人なら言って良いだろ。逆に喜ぶんじゃないか?」
と言って来たので言う事にした。
「今日の朝、その……真央くんと篤季に。」
「え!2人も!?」
「……真央先輩も美乃梨が好きだったんだ。」
凪くんがそう言うと、爽夜くんはニヤニヤしながら凪くんに言った。
「"も"って事は他にも知ってるって事だよなあ?うちのクラスだと何人いるんだろうなあ?」
「ふふ、何言ってるの、爽夜くん。私の事を好きな人がそんなに何人も居るわけないじゃない。」
私が笑いながらそう言うと全員頭を抱えたり固まったりした。
「俺、美乃梨のその鈍感さはある意味一種の才能だと思う。逆に凄い的な?」
「どういう意味?」
私が振り返って京翠に聞くとにこりと笑って教えてくれた。
「美乃梨様は類稀なる鈍感さをお持ちという意味でしょう。」
「褒めてる?」
「褒めて、はないんじゃないでしょうか?」
「そう。」
もう一度前を向くと雅美ちゃん達が詰め寄って来ていた。
「それで、返事は?」
「うんうん、1番重要な所だよね。」
「断るつもり、だけど。好きな人居るし。」
「キャー!みのりんの好きな人だって!」
「な、何!?3人とも知ってるじゃない!」
「違うよ。みのりんの口から『好きな人』なんて直接聞いたのが感動なの!」
「そうそう。好きかもしれないじゃなくて、『好きな人』ってね。」
しばらく沈黙していた千秋が口を開き私の顔を覗き込みながら聞いて来た。
「美乃梨の好きな人って誰だ?」
「教えない!」
貴方ですよ。といつか言えたら良いな。
「千秋の方こそ好きな人とか居ないの?」
「居るが?」
ちょっと、いや、大分ショックだった。
今までは千秋に好きな人が居ないと思っていたから振り向かせるだけで良かったけど、もう好きな人が居るならどうしようもない。
「そ、そう。どんな子なの?」
「教えない。」
「ちょっと、さっきの仕返し?」
「さあな。」
そこから少しずつ恋愛話に広がって行った。
「レイラちゃんは彼氏居るんだったね。雅美ちゃんも好きな人聞いた事あるけど、ユーリちゃんは?」
「実は私、好きな人出来たこと無いんだよね。」
「そうなんだ。ちょっと意外かも。透くんと凪くんは好きな人居るの?」
「……居るけど。」
「僕も居るよ。同じクラスにね。」
「えっ!?誰!?気になる!」
私がそう言うと凪くんはニヤリと笑って
「美乃梨の好きな人教えてくれたら教えてあげる。」
と言った。
「遠慮しておきます。私の好きな人、当てれるものなら当ててみて。私も凪くんの好きな人当てるから。」
「じゃあ、ヒント!僕と席が近くて可愛くて優しい子かな。」
「凪くんと席が近くて可愛くて優しい子?誰だろ。あ、分かったかも!」
「えっ、本当に?」
「ユーリちゃんだ!」
何故か皆んなしてがくりとした。
「あ、ごめんね!ユーリちゃんの前なのに。」
「僕、正解って言ってないんだけど。僕の好きな人は秋月じゃ無いよ。」
「えっ!そうなの?もう一個ヒント!」
「じゃあ、背が高い。」
「あ〜、何だそうなら早く言ってよ。」
「本当に分かってるの?」
凪くんは疑うような顔をしながら言ってくる。
「今度こそ大丈夫!雅美ちゃんだよね?」
「はあ、違うよ。だーかーらー。僕の好きな人は美乃梨だよ!」
「へ?」
「あ、」
私が顔を赤くして照れていると爽夜くんが
「まあ、途中からこうなると思ってたよ。」
と言い、雅美ちゃんやレイラちゃんも
「うんうん、なるよね。」
「柄灯だもんね。」
と言った。
私が混乱していると凪くんが声を上げて言った。
「うわぁ〜、言っちゃった。美乃梨が鈍感過ぎて何かポロッと。何言っちゃってんの僕!」
「落ち着け凪、美乃梨の方がもっと混乱してる。」
「凪くんが私を好き?いやいやいやいや有り得ないよね。だってただでさえ真央くんと篤季に今朝告白されたのに1日3回とか少女漫画のヒロイン?いやいやいやいや私がヒロインなんて有り得ない。」
私が1人でそう言ってるとユーリちゃんは私の肩を掴んで言った。
「みのりん、そろそろ自覚してね。みのりんはモテモテだから。少女漫画のヒロインに負けず劣らず。」
「モテモテ?成程、これは少女漫画で見た"モテ期"というやつなのね?」
「うん!でもみのりんのモテ期は一生だと思うよ。」
「一生続く事は無いと思うわ。確か一定期間人に好かれるんじゃなかったかしら?」
「何故か解釈が斜め上だけど、とにかくモテモテな事は自覚したね?」
「うん。今が私のモテ期だって事は自覚したよ。」
「まあ、いっか。お昼休みもそろそろ終わるし、今日は5時限だしね。みのりんの家での勉強会もあるし、その時に色々聞くね。」
ユーリちゃんは悪戯そうに笑ってレイラちゃんと自分の席に行った。そして透くんが
「勉強会するのか?」
と聞いて来た。
「うん。今日、私の家でね。あ、良かったら透くんも来る?」
「良いのか!?行きたい!」
「良いよ。」
「俺も行って良いか?」
爽夜くんも聞いて来たので頷いた。
「勿論だよ。」
「僕も行きたい!良いよね、美乃梨?」
「ぜ、全然良いよ。」
「あ、もしかしてちょっと意識してくれてる?」
「そ、んな事無いけど?」
「嘘だ。耳、赤いよ?」
と凪くんに指摘されたので急いで耳を両手で塞いだ。
「千秋も来る?」
「俺、勉強は苦手じゃないけど?」
「いや、勉強する側じゃなくて、教える側。」
「ああ、分かった。」
と千秋は優しく微笑んだ。
(心臓が持たないからその顔止めてください!)と私は心の中で叫んだ。爽夜くんにはバレたようで
「頑張れよ」と口の動きで応援された。
そして放課後。
勉強会参加メンバーは1年4組の8人と篤季と貴翠になった。真央くんは匡哉先輩と、景くんは和真くんとクラスのお友達の家に行って勉強を教えるみたい。
私、千秋、篤季、貴翠は一度私の家に行き、他の皆は歩いて来るらしい。本堂さんも車を出すと言っていたが、一度来た事があるし距離もそこまでではないと言い6人で待ち合わせをして一緒に歩いてくるらしい。
家に着くとシャルルは千秋の使い魔であるレオと一緒にお部屋の準備を手伝ってくれていたみたい。
「シャルル、レオくん。ありがとう。」
「美乃梨様、私の事もレオと呼び捨てでお呼び下さい。」
「ええ。ありがとう、レオ。」
「遅れてしまいましたが……美乃梨様、お帰りなさいませ。」
「ただいま、シャルル。」
「千秋様、篤季さん、貴翠さん、京翠さん。いらっしゃいませ。」
「お邪魔します。シャルル、レオ。急だったのにわざわざ準備してくれてありがとう。」
「いえいえ、美乃梨様が急なのはいつもの事ですから構いません。」
「私も、案外楽しかったので良かったです。」
レオが千秋にそう言った事で千秋は少し驚いたような表情をして固まった。
「どうしたの千秋?」
「いや、レオのこんな顔、初めて見て……」
「本当に主従って似るのね。千秋とレオはそっくりだよ。千秋だって初めの頃は笑顔が少なかったわ。」
私がそう言うと貴翠が思い出したように言った。
「そういえば、使い魔は主人に影響されると言いますね。」
「初めて聞いたわ。私とシャルルは似てるかしら?」
「そうですね。頭の良い所は似てると思いますよ。それに少し人見知りだったとか。」
「今はもう人見知りなんてしてないわ。」
「そうですね。本当に成長なさいましたから。」
「4つ上の京翠に言われるならまだしも、2つしか変わらない貴翠に言われてもね。」
「そうですか?私は2歳差は結構離れているように感じますが?」
「私にとって貴翠は年の近いお兄ちゃんみたいだったから。まあ、一番兄らしかったのは聡くんだけど。」
「そうでしたね。」
ずっと入り口の前で話しているとシャルルに「入らないんですか!」と怒られてしまった。
そして準備されていた席に着き、また話し始めた。
「貴翠や篤季、京翠にとっても聡くんは兄のような存在だったの?」
「私にとって聡様は……美乃梨様のお兄様、でしょうか。」
「貴翠と聡くん仲が良かったのに?」
「ええ、よく話していましたよ。美乃梨様の話を。」
「私の話?篤季は?」
「僕にとっては……好きな人のお兄さん?」
篤季は平然とそう答えた。
「……そう。京翠は?」
「聡様ですか。那央の御友人で美乃梨様のお兄様。私自身とはある程度仲の良い幼馴染ですね。」
「えっ!幼馴染だったの!?」
私が驚いてそう言うと後ろから「そうだよ。」と言う声が聞こえて来た。
「聡くん!?」
「「「聡様!?」」」
「聡さん!?」
「久しぶり皆。美乃梨と千秋くんはそこまででも無いか。篤季、貴翠、京翠。元気だった?」
「はい!元気です!」
「篤季は相変わらずだなあ。そういえばさっき僕の名前が聞こえたけど何の話をしてたの?」
「皆んなにとって聡くんがどんな存在か。そういえばまだ千秋には聞いてなかった。」
急に名前を出された千秋は珍しく動揺しながら教えてくれた。
「お、俺は、姉上しか居なかったから、兄が居たら聡さんのような兄が欲しかったなと思った。」
「そんな風に思ってくれてたんだ。ありがとう、千秋くん。」
「さっき気付いたんだけど……貴翠達に聡くんがどんな存在か聞くと全てに私の兄だって出てきたわ。」
私がそう言うと聡くんはニコニコしながら言った。
「それはそうだろうね。美乃梨は昔『聡くん』じゃなくて『聡お兄様』って呼んでたからね。」
「……そういえばそうだったわね。」
「僕は美乃梨にお兄様って言われて嬉しかったよ。本当は分家の僕と美乃梨が同等に接する事は許されないから。幸い僕は本家の血を濃く受け継いでて魔法も使えたから特別に恋咲家と同じ教育を受けさせて貰えたけどね。」
「まあ、普通の再従兄弟はそんなに仲良く無いかもしれないけど、私にとっては聡くんはずっとお兄様だったから。」
「じゃあまたお兄様って呼んでくれて良いのに。」
「煌達に呼ばれてるから十分でしょ?」
「確かに煌達に呼ばれるのは嬉しいけど3人とも美乃梨くらいになると呼んでくれなくなるだろうし。」
「私がお兄様って呼ぶのを止めたのは年齢の所為じゃないわよ?」
私がそう言うと聡くんは心底驚いたというような顔をして固まった。
「中等部教育を受ける時に恋咲家の他の子達とも会うじゃない?その時に言われたの。分家の人間を兄と呼んでいては相手に迷惑が掛かるって。」
「そんな事ないのに。多分だけど、その子は親に言われたんじゃないのかな?分家の僕と跡取りの美乃梨が仲良くする事をよく思わない人達が一部いるから。」
「そうなの?迷惑掛るのは本当だと思うけど?」
「僕が美乃梨にお兄様と呼ばれて迷惑だと思うわけがないでしょ?迷惑を掛けているのはそんな事を美乃梨に言って美乃梨が僕の呼び方を変える原因になった人だよ。」
「聡くんが迷惑じゃないなら良いわ。」
「あれ、呼び方は戻してくれないの?」
「今になって戻すのは恥ずかしいのよ!……勉強会するんだけど手伝ってくれる、聡兄様?」
「可愛い美乃梨の頼みなら任せてよ!」
聡くん、いや、聡兄様は張り切ってお菓子の準備をしに調理場に行った。丁度その頃インターホンが鳴ったので、私は玄関に行った。何故か家の中なのにボディーガードをしている京翠とボディーガード候補だと言い張る貴翠もついて。インターホンの通話ボタンをオンにする。
「はい、恋咲です。」
『みのりん?来たよ!』
「ユーリちゃん!皆も揃ってるね。待って、門を開けてもらうから。」
京翠を振り返ると軽く頷いてから門の閉開ボタンを押した。一般のお客様が来た時は魔法で開けたりはしない。ちゃんと自動ドアになるのだ。玄関の扉を開けると初めて来た3人はそれぞれ驚いていた。
「美乃梨、この家あの別荘よりも凄えデカいな!」
「本邸なんだから当たり前よ?」
「僕も別荘の大きさで十分驚いたのにまさかこんなに大きいとは思わなかった。」
「あちらの別荘はそんなに人が行かないから小さいのよ。」
「俺はまず初めてだから大きさにビビった。別荘が小さいって……美乃梨の小さいは信用出来ないな。」
「もう良いから3人とも部屋に向かうよ!」
部屋に案内するとレイラちゃんが
「今日は前の所とは違うの?」
と聞いて来た。
「うん、人数が多いから少し大きい部屋を準備して貰ったんだ。」
「そうなんだ。」
「着いたよ。ここが今日使う私と煌達用の書斎!恋咲家用の書斎を使う程でもないしこのくらいの大きさでも良いよね?」
私がそう聞いても中々返事が返って来ない。
「皆、どうしたの?」
「どこが"このくらい"なの!?」
「そうだよ。あとみのりん達兄弟用って何!?」
「何で驚いてるの?みたいな顔しないで!」
「何で雅美ちゃん心読めるの!?」
「心じゃなくて表情だよ。あれ、九条くんは?」
雅美ちゃんに言われて見回しても千秋の姿が見当たらなかった。
「地下に行ったのかな?」
「地下もあるの!?」
「うん。京翠、確認できる?」
「はい。」
京翠は雅美ちゃん達から少し離れてから魔力の感知で確認した。
「美乃梨様の言うように地下だと思いますよ。」
「そう。私、呼んで来るわね。」
地下への階段を降りると本を読んでいる千秋が居た。つい横顔に見惚れてずっと見ていたいと思ってしまったけど、皆が待っているのでと思い気持ちを立て直した。
「千秋、皆揃ったよ。」
「悪い、美乃梨。つい本が面白くて。」
「千秋、本好きなんだね。千夏さんも本が好きって言ってた。」
「ああ、うちの家系の人間は本が好きな人が多いと思う。」
「良かったら貸すよ?地下の本は殆ど私と煌が買って貰った本だから。」
「良いのか!?じゃあ、これ借りていいか?」
「うん!じゃあ皆も待ってるし、そろそろ行こう。」
そして階段を登ると待機していたらしい雅美ちゃん達が問い詰めて来た。
「呼びに行くだけにしては遅くない?」
「2人で何してたのよー?」
「みのりん、進展あった?」
「そんなすぐに進展するわけないじゃない!」
「冗談、冗談。勉強教えて!」
私はユーリちゃんに軽く並んだ後頷いて席に着いた。
「みのりん、ここ分からないよ〜!」
「これはこの公式を当てはめれば簡単だよ。」
「……本当だ!解けた!」
「みのりん、私にも教えて〜!」
「これはこことここを覚えておいたら大丈夫だと思うよ。」
そして勉強を始めて1時間。皆の集中力が切れて来た所で聡くん、聡兄様がお菓子を持って来てくれた。
「あ、聡兄様、ありがとう。」
「フィナンシェだ!これ、俺の好物なんです。聡さん、ありがとうございます!」
「どういたしまして、爽夜くん。」
聡兄様はそう言ってにこりと笑った。するとレイラちゃんが
「何でみのりんのお兄さんと松岡が知り合いなのよ。確か体育祭に来ていた人よね。」
と言った。聡兄様はレイラちゃんに向かって
「僕は美乃梨の再従兄弟なんですよ。爽夜くんとは軽井沢で知り合ったんです。」
と言った。
「そうだったんですか?本当のお兄さんかと思いました。」
「よく間違えられます。でも、本当に昔から兄妹のように育って来たので間違いとも言い切れませんが。」
「私は覚えてますよ!確か借り人競争の時、みのりんが連れて来てた気がする。」
「はい、そうですよ。」
聡兄様がそう言った時、篤季が声を上げた。
「聡様、美乃梨お嬢様の体育祭に行ったんですか!?僕も誘って頂きたかったです!」
「ごめんね、篤季。篤季を誘うと貴翠と京翠も来るだろうと京駕さんに言われて。」
聡兄様にそう言われて貴翠と京翠は全力で頷いた。
「当たり前じゃないですか!美乃梨様の勇姿を見逃すわけにはなりませんから!」
「そうですね、薫様の為にもカメラマンは10人ほど雇わなければなりませんね。」
「何言ってるのよ、2人とも。もう体育祭は終わったわよ?」
「大丈夫です、来年もありますから!私は卒業してしまいますが。」
「それに、文化祭がありますからね。ジュリエットの美乃梨様のお姿は薫様や紫乃凛様だけでなく、茉乃凛様も欲しがるでしょうし。」
京翠はそう言いながらフィナンシェを頬張った。
「それはテストが終わってからの話。皆、テスト勉強再開しよう。」
「「「「は〜い!」」」」
そしてまた1時間ほど勉強をした。
聡兄様が呼びに来て、
「皆、もう5時過ぎてるけど大丈夫?」
と言った。透くんとレイラちゃんはまだ大丈夫らしいけど、ユーリちゃんや雅美ちゃん、凪くんと爽夜くんはそろそろ帰らないと行けないらしく、結局全員変える事になった。
私は玄関まで見送りに行った。
「また明日。」
「うん!またね、みのりん!」
「じゃーな、美乃梨、千秋。」
「ああ。またな。」
そして皆が帰った少し後、千秋も迎えの車が来て帰った。私も夕食までは時間があるので部屋に戻ることにした。
「ねえ、京翠。ボディーガードって部屋まで来るの?家の中は安全でしょう?」
「いえ、安全だとは思いますが薫様からの御命令ですので、私は居ないものだと考えて下さい。」
「別に居て構わないわ、と言うより呼ぼうと思っていたのよ。ボディーガードとしてではなく、頼れる幼馴染として。」
「では、幼馴染として、美乃梨様のご相談に乗りましょう。」
テスト勉強、実は私テスト直前に体調崩して全然出来ないままテストぶっつけ本番だったんです!本当に問題が暗号にしか見えませんでした。
(前々からの勉強って大切ですね。)
えー、今回から美乃梨ちゃんの聡くんへの呼び方が聡兄様へと変わりました。
実は煌くん達の「姉さん」呼びにも裏話があって、
初めは姉様、姉上だったんですけど、美乃梨ちゃんが距離を感じてしまうから姉さんと呼んでもらう事になったんですよ。良いですね、可愛い弟。




