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王子様は1人じゃないっ!  作者: 華咲果恋
本編1年生
33/123

1人目のボディーガード

時刻は過ぎ、午前6時。

さっきまで色々な事があったので少し頭の整理をするため私は朝食を食べることにした。

昨日のビュッフェとは違い、一気に大人数で食べる事は出来ないのでシャルルに部屋まで運んできて貰った。


「美乃梨様、本日もシェフはとても張り切っていましたよ。特にコンソメは昨晩から煮込んでいると言ってました。」


「そうなのね。楽しみだわ。シャルルは食べないのかしら?」


「はい、私は食べなくとも平気な身体ですから。」


「でも、味は感じるでしょう?」


「はい。」


「では食べなさい。これはお願いではなく主としての命令です。……私だけ美味しいものを食べるなんて無理だわ。」


「相変わらず、美乃梨様は命令を使うのがお下手ですね。」


そう言いながらシャルルは私が準備した椅子に座って一緒に食べ始めた。私はテーブルの真ん中に置かれたワッフルにフランボワーズのソースを乗せて食べ始めた。


「美味しいわ、シェフにも伝えておいてくれる?」


「はい、勿論です。あ、そういえば薫様が美乃梨様にお話があると仰っておりました。」


「話、何かしら?」


「詳しくは聞いておりませんが朝食を食べ終わったらと言ってましたので至急の要件かもしれません。」


「そう。では少し急ぎましょう。」


私は少しだけ食べるペースを早めた。もちろんシェフ自慢のコンソメスープはしっかり味わって。


「じゃあ、私はお父様のところに行ってくるわね。」


シャルルにそう言い私は部屋を出た。

お父様の部屋につきノックをすると穏やかな顔をしたアーチーが迎えてくれた。


「美乃梨様、いらっしゃいませ。薫様は奥のお部屋にいらっしゃいますので呼んできます。その間こちらのソファでお待ち下さい。」


アーチーはお父様を呼びに行ってる間、私は机の上に置いてある書類を見ていた。間も無くしてお父様がいらっしゃったので書類を机に戻して顔を上げた。


「お父様、お話とは?」


「美乃梨、貴翠からボディーガードについての話は聞いているな?」


「ええ、聞きました。」


「5人ほどつけるつもりなんだが中々人選が終わらなくてな、やっと1人決まったんだ。安心しなさい、美乃梨の知っている人だからな。」


「知ってる人、ですか?」


アーチーがもう一度奥の部屋に行き人を呼んで来た。

連れて来られたのは私よりも大分背が高く、お父様より少し低いくらいの若い男の人。顔をしっかり確認すると私は驚いた。


「ボディーガードって……京翠(きょうすい)?」


京翠は本堂さん、京駕さんの息子で篤季と貴翠のお兄さんだ。


「覚えて下さったとは……嬉しく存じます。これからは私が美乃梨様に傷一つつけさせません。」


「流石に忘れないわよ。それより待って、京翠ってまだ17よね?本堂家は高校に通っている人が殆どではなくて?」


「私は聡様と同じように恋咲家の高等部教育で去年の4月から12月の間3年間の勉強を済ませましたので。」


「聡くんの例は珍しいのよ?そう簡単に……」


「父さんにも薫様にも頼み倒しましたよ。父さんは少し鈍っていましたが流石は薫様、すぐに許可を下さいました。」


「……ボディーガードはいつからなの?」


「もちろん本日からですよ。学校側にも許可を頂きましたから。」


と京翠は当たり前のような顔で答えた。


「今日から!?しかも学校でも私のボディーガードをするの!?」


私がそう言うとお父様が私に向かって言った。


「当たり前じゃないか。大事な娘を1人で危険なところへ放り込む奴がどこにいるんだ。」


「危険って……ボディーガードがついた方が疑われますわよ。」


「それもそうかもしれないが、これだけは譲れない。私は美乃梨が本当に心配なんだ。ボディーガードがついていると少し心配しなくなる。私の為にも受け入れて欲しい。」


「分かりました。でも授業中はどうするんですか?」


「それは大丈夫だ。多少の年齢詐称で教育実習生として入る事になっているから、な、京翠。」


お父様は京翠の方に顔を向けた。

京翠は頷いて


「はい。私が美乃梨様のボディーガードと知っているのは校長先生と教頭先生、後美乃梨様の担任である三日月先生だけですから。」


と言った。私が内心(年齢詐称って大丈夫なの?)と思ったのは秘密だ。


「お父様、京翠が17で私のボディーガードだということが私の友人にバレる可能性は大いにあると思うのですけど……」


私がそう言うとお父様は首を傾げながら


「別にバレても良いんじゃないか?」


と言った。


「良いの!?」


「ただし秘密にしてくれる気のおける友人以外に秘密にするならな。」


「それなら良かったわ。実は篤季達が転入して来た時にレイラちゃん達に話しちゃったの。もう1人は4つ上だって。」


「そうか。ただし口外ご法度と伝えなさい。」


「はい。」


「では私はそろそろ他の方達を呼んできますね。学校の準備が必要でしょうから。」


そう言い京翠は部屋を出て行った。


「では私もそろそろお暇します。」


そして私もお父様の部屋をあとにした。

自室に戻るとシャルルがため息をついて椅子に座っていた。


「どうしたのよシャルル、ため息なんてついて。」


私がそう聞くとシャルルは一度私を見て答えた。


「どうしたもこうしたもありません。美乃梨様はどれほど人気者なんですか!?」


「そんな事ないと思うけど、ありがとう。」


「褒めてません!まさか篤季さんがあんな所で告白するなんて……しかも、婚約者候補の方々よりも先にですよ!?おかしいじゃないですか!」


「あ、篤季の告白は私も意外だったわ。……真央くんの方がもっと意外だったけど。」


私がコソッと言うとシャルルはこちらを凝視し軽く頷いた。


「真央様も告白なさっていたなら構いませんね。」


「待ってシャルル、今のは聞こえてたの?それとも唇を読んだの?」


「両方ですね。音だけの情報では頼りなさそうなほどの声でしたので。」


私は改めてシャルルの前では心の声を洩らさないようにしなければと誓った。


「美乃梨様、真央様にはいつの間に告白されていたんですか?」


「私が篤季から離れた後よ。真央くんがついて来ていたみたいで。」


「それで、返事はどうするんですか?多分真央様の性格的には諦めなさそうですけど……千秋様の事が好きだということも景様と真央様にはバレてもおかしくはありませんしね。」


「返事は保留。でも断るつもりよ。私は千秋が好きなんだから。」


自分で言っておいて紅くなってしまった私にシャルルはニヤニヤとした笑みで


「御自分で言われて紅くなるなんて、美乃梨様はまだまだ恋愛初心者ですね。」


と言って来た。まだ恋愛を経験していないと思っていた使い魔は実は結婚の申請の結果待ちというのは思ったより手強い。


「ねえ、シャルル。私も告白した方がいいと思う?」


「美乃梨様の自由ですよ。私から告白した方がいいなんて言いません。でも、美乃梨様の事ですからつい伝えてしまう、という事がありそうですね。」


シャルルの言った事がやけに容易く想像できる。


「そんな事が無いように気を付けるわよ。それよりそろそろ学校の準備をしなければならないわ。」


「そうですね。」


そしていつも通り準備してリビングに向かった。リビングには煌と架がいるのに稔は居なかった。


「おはよう、煌、架。」


「「おはようございます、姉さん。」」


「朝から元気ね。稔はどうしたの?まだ起きて来ていないみたいだけど……」


私がそう尋ねると煌が答えてくれた。


「稔は昨日、夜遅くまで試験の勉強をしていたみたいでまだ起きて来ないんです。もしかしたらまた勉強しているのかも……」


「そうなの?それならまだ時間もあるし、私が起こしてくるわね。」


そういえば前は逆に稔しか起きていなくて煌と架を起こしに行ったな、と思いながら稔の部屋に向かった。

ノックをすると少し困った顔のノアがドアを開けてくれた。


「ノア、どうしたの?」


「実は稔様が机から離れてくれず朝食もとってくれないのです。」


「どうしてそんな事に。」


「実は一昨日は稔様の昇級試験でした。」


私達魔法使いにとって昇級は将来の地位が決まる事があるくらい大切なものだ。稔は先日の試験で落ちはしなかったもののギリギリの合格だったようで2次試験に向けて追い詰めているらしい。


「そう。朝食は私が必ず食べてと言っておくから安心して。最悪の場合お母様も呼びますし。」


私はずっと机に向かって私が来た事にも気付いていない稔の方に向かった。軽く肩を叩いて名前を呼んだが聞こえていないらしい。


「稔、稔、勉強も昇級ももちろん大切だけど一番大切なのは稔自身よ!」


私が少し大きな声でそう叫ぶと稔はバッと振り返った。私は軽く頭を撫でながら稔に言った。


「稔、勉強頑張って偉いわね。でもノアを心配させてはダメよ。私もね、早く昇級したくて今の稔と同じような事をした事があるの。その時聡くんにね物凄く叱られたんだよ。」


「聡兄さんに?」


「そうよ。普段は全く叱らないのにね、私が朝も昼もご飯を抜いている事を聞いてわざわざ部屋まで来てね『美乃梨ご飯を食べなさい!昇給なんかより美乃梨の身体の方がよっぽど大切なんだ!』てね。なんだかお母様よりもお母様だった。ご飯もね美味しいから食べなって自分で作って来てくれたんだよ。」


「わざわざ?」


「ええ。それまで料理なんてした事無かったくせに聡くんったらシェフに作り方を教えて貰いながら作ったんだって。それをシャルルから聞いて、やっと私はそんなに心配と迷惑をかけたんだなって気付いたんだ。聡くんだけじゃなくてお父様なんて仕事の前に寝ている私の顔を毎日見に行っていたとお母様からも聞いてね。お母様も私の好きなお花を花瓶にさしていてくれたりしていたの。ねえ、稔。」


「何ですか?」


「稔は一生懸命頑張って将来に活かしたかったというよりもお母様とお父様に見て貰いたかったんじゃ無いの?」


私がそう言うと稔は一粒ぽろりと涙を溢した。

私は稔を抱きしめて続けた。


「あの時の私は丁度今の稔達より少し小さいくらいだったわ。でもその当時とても忙しい時期でね、お父様もお母様もあまり家にいらっしゃらなかったの。唯一話せるのは試験の結果を話す時だけ時間を開けてくれた。だからずっと試験を受け続けた。もっと2人に見て欲しかったから、もっと2人と話したかったから。……今の稔を見ているとね、あの時の私と似て見えるんだ。違うかな?」


稔は軽く首を横に振り抱きしめ返してくれた。


「僕ももっとお母様とお父様と姉さんに見て欲しかった。煌は頭が凄く良いからお父様にもお母様にも凄く気に入られている。架は才能自体は飛び出ていないけど誰にも負けない努力家だから気付いたらすぐに遠くの存在になってる。姉さんは昔から何でも出来て完璧にこなしてしまう。それに比べて僕は、僕の得意な事なんてって考えてしまって、このままだとお父様にもお母様にも見放されてしまうと思ってせめて試験は頑張って褒めて貰いたかったんです。」


「私は稔の事、ちゃんと見てるよ。稔は初めて会った人ともすぐに仲良くなっちゃうよね。秘密にしてたんだけどね、今の学校で友達に話しかける時は稔の雰囲気を意識しながら話してるんだよ。稔との会話が楽しく続くのは何でだろうと思っていたけど稔の相槌があるとついつい話したくなるんだよね。だから見てないどころか普段の学校生活では参考にさせて貰ってるから。」


私がそう言うと稔は顔を上げて「本当に?」と聞いて来た。


「ええ、本当よ。お父様とお母様もパーティーの時によく呼ぶのは稔ばかりじゃない。跡取りは私なのにって嫉妬した事もあるんだよ。稔の高い社交性は絶対将来役立つよ。お父様とお母様も期待してると思うわ。」


「僕自信持っても良いんだよね。」


「もちろんよ!その社交性、分けて欲しいほど羨ましいもの。」


「ありがとう、姉さん。お陰でもっと頑張れそうだよ。もちろんご飯はちゃんと食べるから安心して下さい。」


「そう、良かった。ノアも心配してたのよ?」


私がそう言うと稔はノアの方へ歩いて行って


「ノア、心配かけてごめん。これからはちゃんとご飯を食べるから。姉さんにも言われたからね!」


と言った。ノアも頷いて良かったと言った。


「じゃあ稔、ノア、私はそろそろお暇するね。」


「はい。姉さん、学校頑張って下さい!」


稔は笑顔で見送ってくれた。リビングに戻り、煌達にも報告すると(泣いた事は無しで)


「稔がそんな事を?俺よりも優れているくせにな。」


「何言ってるの!?僕より煌と稔の方が圧倒的に凄いのに!」


と2人して言っていた。後から聞くと2人とも自分以外の2人にコンプレックスを抱いていたみたいだ。そしてそろそろ本当にギリギリの時間なので玄関に向かうともう皆揃っていた。


「美乃梨、遅いよ。」


「ごめんなさい、ちょっと色々あって。」


今日は朝から本当に色々あったと思う。会議に告白に稔の事。まだ朝なのに気分は放課後だ。


「色々って何があったんだ?」


千秋が私の顔を覗くように見て来た。私はスイと目線を逸らして何でもないよと言った。(千秋と目線を合わせるとダメな気がする。……直感的に。)

今日から7人なので車も更に大きいものに変わった。


「本堂さん、いや、京駕さん、今日もよろしくお願いします。」


「美乃梨様から名前で呼ばれるのは新鮮ですね。勿論安全運転で行きますね。」


そうして車は動き始めた。皆は知ってるかもしれないけどと思いつつも京翠の紹介をした。


「こちらは今日から私のボディーガードになる京翠です。」


「初めまして、本堂京翠です。貴翠と篤季の兄で美乃梨様の4つ上の17歳です。」


「俺は九条、」


京翠の紹介につられて千秋も自己紹介をしようとすると京翠が止めた。


「大丈夫です。こちらは一方的に調べておりますので全て把握しております。」


京翠の自己紹介が終わると貴翠が


「兄さん、ボディーガードになるならもっと早く教えてくれても良かったんじゃないですか?」


と言った。


「いえ、貴翠に教えると絶対と言って良いほどの確率で自分もと言うでしょう?」


「当たり前じゃないですか?」


「はあ、それに、教えなくとも気付いていたでしょうし。実際教えたのは今が初めてなのに全く驚いていない様子ですしね?」


「勿論ですよ。私的に調べておりますので。美乃梨様に関する情報収集をこの私が怠るとでも?」


「思っていないので教えていない、それだけだ。」


しばらくして真央くんが京翠に話しかけた。


「京翠さんってもしかして兄さんの友人の京翠さんですか?」


「はい。那央様とはプライベートでは友人として仲良くさせて頂いてますよ。」


「やっぱり。一度7歳ごろの京翠さんと兄さんの写った写真を見た事があったので。」


「それは出会った当初の頃でしょう。私が那央と出会ったのは私が7歳、那央が11歳の頃ですから。」


「確かに神崎家の友人が出来たと聞いた事はありましたが……」


と貴翠が言った。


「意外な繋がりがあったのね。」


「おや、美乃梨様はお忘れですか?私と美乃梨様で出掛けた事があったでしょう?あの時、那央も居たんですよ?」


「えっ!嘘!?……確かにもう1人男の子が居たような?」


「那央は覚えていましたよ。」


「でも遊園地で会った時の挨拶は初対面ぽかったわよ?」


「それはわざとですよ。あれは那央が勉強を抜け出して来て居た時の事ですから。」


「そうなの!?」


私が真央くんの方を見ると真央くんは首を横に振って知らないという仕草を見せている。


「ええ。那央は授業を抜ける常習犯だったようです。まあ、魔法で使い魔を使って先生達に気付かせない程優秀な様でしたけど。」


そう言った後、京翠は真央くんに向かって


「弟さんの前でする話ではなかったですね。忘れて下さった結構ですよ。」


と言った。真央くんは首を横に振り


「いえ、兄さんのそんな話聞いた事が無かったので面白かったです。また、他の話も聞かせて下さい。」


と言った。

学校の門の前に着き、私達は車から降りた。

京翠は皆んなに向かって


「では、私は先に職員室へ向かわなければならないのでその間、美乃梨様を頼みますね。」


とだけ言い職員室に向かって歩いて行った。

私達はいつも通り昇降口まで一緒に行ってそこからそれぞれのクラスに近い階段を上っていく。

今朝色々あり過ぎて千秋と並んで階段を上る沈黙が重い、気がする。


「美乃梨。」


「は、はい!」


「何で敬語なんだよ。……真央から聞いた。告白したって。その、告白されて美乃梨はどう思ったんだ?嫌なら無理に答える必要はないが。」


「どうって、分からない。まだ頭が混乱してるし、しかも篤季と真央くんにほぼ同時に告白されたから。2人の事をどう思っているかっていう意味なら今は少し意識してるかもしれない。」


「……そうか。」


そしてまた沈黙が訪れる。

(だからなんか雰囲気が重いよ!)

教室に行くと爽夜くんと透くんが居た。


「おはよう、爽夜くん、透くん!」


「おー、美乃梨、千秋、はよ〜。」


「あ、聞いたか2人とも。今日からうちのクラスに教育実習生が来るらしい。名前は確か……」


「本堂京翠、でしょ?」


私がそう言うと透くんは


「あ〜そうだ。美乃梨も誰かから聞いたのか?」


と言って来た。爽夜くんは名前を聞いて気付いたようで聞いて来た。


「篤季と貴翠先輩のお兄さん?」


「ええ、そう。」


「でも、この前4つ上って言ってなかったか?」


「そうなの。4つ上の17歳、今日から教育実習生としてこのクラスに来る京翠は20歳。」


「年齢詐称、か。」


「そうなの。私のボディーガードだから仕方がないらしいけど……爽夜くん、透くん。凪くんや雅美ちゃん達以外には秘密にしておいてくれる?」


「おう、任せろ!」


「俺も。秘密は絶対守るよ!」


しばらくして凪くんと雅美ちゃん、そしてレイラちゃんとユーリちゃんも来たので説明をして秘密にする事を約束して貰った。(ただでさえ魔法使いという秘密を抱えているのにこれ以上秘密を増やしたくない。)


生徒も少しずつ揃って来た教室は賑わっていて教育実習生の話で持ちきりだった。凪くん達に


「美乃梨はボディーガードが必要な程危ないの?」


と聞かれたが私はお父様が過保護だからと答えておいた。(嘘ではないので良いだろう。)と自分に言い聞かせながら。予鈴が鳴り、席に着くと三日月先生が教室に入って来た。


「知っている者も居るかもしれないが今日からうちのクラスには教育実習生の先生が来てくれる事になりました。本堂先生、入って来て下さい。」


三日月先生に呼ばれて京翠は入って来た。


「初めまして、本堂京翠です。1年と3年に弟が居ますので気安く下の名で呼んで下さって構いません。これからよろしくお願いします。」


京翠が挨拶を終えると「キャー!!」と黄色い声援が上がった。スーツ姿できちんとネクタイを締めている京翠を改めて見ると背はスラっと高く顔立ちは御父様である本堂さんに似て整っているので騒がれてもおかしくはないと思う。目が合いにこりと笑いかけて来たので私も笑みを返した。中々収まらない騒がしさに、三日月先生が「静かにしなさい!」と言った事で収まった。


「皆、忘れているようだが今日からテスト1週間前。テスト範囲表も配られて自習室も混み始めるだろうから利用したい者は先に予約をしておいた方が良いと思うぞ。因みにテストが終わったらお楽しみの文化祭が待ってるからな。」


そう言い先生は何か黒板に書き出した。


「テスト前ですまないが文化祭実行委員会を決めさせて貰う。立候補でも推薦でも何でもありだ。」


先生がそう言った後クラスはまたざわつき始めた。私も近くの席の凪くんと千秋と相談した。


「凪くんと千秋は実行委員会やるつもり?」


「僕はパス。まず体育祭の実行委員会やってたから無理なんだよね。」


「俺もパスだ。爽夜と透から聞いたが、バスケ部での出し物もあるそうだしクラスでの出し物もあるのに実行委員なんて器用じゃないから出来ない。」


「そっか。楽しそうだと思ったんだけどな。」


「じゃあ、美乃梨は立候補したら良いんじゃないか?別に俺達に合わせる必要は無いと思う。」


「確かにそうだね。先生、私立候補します!」


私はそう言い手を挙げた。


「そうか。恋咲ならクラスの中心として申し分無さそうだな。じゃあ前に立って進めてくれるか?」


「はい!」


そう言い教卓に立つと京翠はチョークを持って「私も手伝いますね。」と言った。


『ありがとう、京翠。』


私は小声でお礼を言って進めた。


「実行委員はもう1人決めないといけないので立候補者でなくとも推薦でも良いので誰か居ませんか?」


そうすると数人の男の子が手を挙げて立候補してくれた。


「生憎もう1人までなのでじゃんけんで決めて貰っても良いですか?」


そしてじゃんけんに勝った阿藤葉月(あとうはづき)くんに決まった。


「では文化祭の出し物を決めていきたいと思います。先生、どのような規定がありますか?」


「そうだな。食べ物系の屋台は生モノ禁止。飲食店は基本人気で3年優先だから1年は劇か合唱、展示が多いんじゃないか?」


「そうなんですね。」


私が飲食店は無理なのかと思っていると阿藤くんが声をかけてくれた。


「優先なだけで回って来ないわけじゃないからさ、第一志望から順番に決めて行こうぜ。」


「うん、そうだね。何かやりたい事がある人は居ますか?」


私がクラス全体を見回しながら言うと爽夜くんが手を挙げて


「俺、劇が良い。あの裏方の大道具?あれ作るの好きなんだよな。」


と言った。ユーリちゃんも手を挙げ発言してくれた。


「私は断然飲食店!普通のカフェだとお客さんが来ないと思うからコスプレカフェとか??」


「ユーリちゃん、こすぷれって何?」


私が聞くとユーリちゃんは驚いた顔をした。いや、ユーリちゃんだけじゃなくてクラスの殆どが。千秋は知ってるのかな、と思い千秋の方を見たが知らないようで頭に?が浮かんでいた。


「えーと、コスプレは何かになりきったりする感じかな?ちょっと説明は難しいけど例えばメイド喫茶とか執事喫茶はメイドさんとか執事さんになって接客するの!」


「楽しそう!それなら時期的にハロウィン喫茶とかは?」


「良いねえ!ナイスアイディア、みのりん!」


「ふふ、ありがとう。」


そしてどんどん候補が増えていき最終20候補出来てしまったので多数決で3つまで絞る事になった。


「多数決の結果……1番は劇!えー、2番はハロウィン喫茶で3番はファッションショーです。」


「阿藤くん。3番のファッションショーって何?ファッションショーは分かるんだけどモデルを呼ぶって事かな?」


「違うよ。モデルはクラスの中でオーデションをして決めるらしいよ。劇と合わせられそうだな。」


「じゃあ劇の内容を決めていきたいと思います。」


「私、ロミオとジュリエットが良いと思う!」


レイラちゃんが声を上げた。


「確かに良いね。主役はどうする?」


私がそう言うと皆一斉に雅美ちゃんを振り返った。


「私!?私は無理よ。演劇部の方の劇で主役を貰えたから。」


「えっ!?凄い!雅美ちゃん!」


「あ、ありがとう。それより皆、主役なら私よりも目立つ子が居るじゃない!2人もね!」


雅美ちゃんがそう言った後雅美ちゃんに向かっていた視線が私と千秋に別れた。


「私、演技なんてあまりした事が無いのだけれど。」


「俺も、全くの未経験だ。」


「大丈夫よ。私が指導してあげる!」


雅美ちゃんは大きく胸を張ってみせた。


「頼もしい!それなら私やります!」


「九条はどうするんだ?」


阿藤くんが千秋に聞いた。


「俺は……」


「九条がやらないなら俺がやろうかな。俺なら恋咲と恋人役しても身長差が良い感じだからな。」


「いや、俺がやる。」


という事で主役のロミオ役とジュリエット役は決まった。他の配役も推薦や立候補で決まって行き私達は1限目の行われる美術室に向かう事になった。

勿論背後には京翠がついて来ている。ユーリちゃんは相変わらずのフレンドリーさで京翠に話しかけた。


「京翠先生って本当は17何ですよねー?普通に20歳くらい大人っぽいですね!」


「ありがとうございます。確かによく大学生と間違えられますね。」


レイラちゃんと雅美ちゃんも色々質問したり話しかけたりしながら美術室まで向かったので美術室に着いた頃にはもうすっかり仲良しになっていた。


「美乃梨様は素晴らしい御友人をお持ちですね。」


「ふふ、そうでしょ?」


京翠が美術室に入ると美術の七倉蓮介(ななくられんすけ)先生は驚いた顔をしつつも席へ着くよう促した。

ここでおさらい⭐︎

本堂家名前

父  本堂京駕 48歳 

長男 本堂京翠 17歳(年齢詐称20歳)

次男 本堂貴翠 15歳

三男 本堂篤季 13歳


本堂家は魔法使いと巫女の両方の血を継いでいて魔力は扱える人と扱えない人がいる。一応全員使い魔達を目視出来る程度の魔力は持っている。


後書きをプロフィールに使わせて頂きました。

次回はテスト勉強会です。

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