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王子様は1人じゃないっ!  作者: 華咲果恋
本編1年生
32/123

巫女の話と恋の話

前半が巫女、後半が恋の話です。

「美乃梨、俺は……美乃梨にはあまり巫女に関わって欲しくない。」


千秋は真剣な表情でそう言った。


「どうして?さっき言ったように危険なのは景くんも千秋も同じじゃない。」


「とにかく、美乃梨はあまり関わらないで欲しい。これは俺からのお願いだ。」


「そんなこと言うなら私だって千秋に関わらないで欲しい。ううん、千秋だけじゃなくて、真央くんにも、景くんにも、篤季にも、貴翠にも、煌にも、稔にも、架にも。危ないことだと分かっていても同じ学校だったら、特に真央くんは隣の席だから関わらないのは無理だと思う。それに、試練の事もあるし。」


「その事だけど、」と真央くんが声をかけてきた。


「薫さんは今回の件で試練を免除しても良いと仰っていた。これは五家当主の会談で決定した事だそうだよ。」


「……真央くんはそれに賛成しているの?」


「そんな訳ないよ。でも、僕も千秋と同じで美乃梨にはあまり関わって欲しくはないからね。きっと景も同じように思ってると思うよ。」


「どうして私の心配ばかりするの!?自分の身を一番に考えてよ!真央くんは気付かないうちに体力を消耗していたんでしょ!?」


私が声を荒げて言うと真央くんが少し驚いた顔をした後、クスッと笑った。


「美乃梨、僕の事そんなに心配してくれるんだね。」


「当たり前でしょ?真央くんが一番危険な立ち位置なんだから、自覚して。」


私達の話を聞いていた貴翠がこちらに向いて言ってきた。


「やはり、私、ボディーガードに立候補します。幸い薫様曰くまだ人選中だそうなので。」


「私にボディーガードが付くのは決定事項なの!?」


「はい。薫様と紫乃凛様と茉乃凛様がとても厳しい人選をしている最中ですけど。」


「お父様とお母様は分かりますが伯母様まで!?」


「ええ。可愛い姪の為にと張り切っているそうです。私も頑張らないと落とされてしまいます。」


「お、伯母様……」


私は変わっていらっしゃらない伯母様に少し伯母様らしさと安堵を覚えた。


「そのボディーガード、俺も立候補出来るか?」


千秋がそんなことを言った。貴翠は笑顔で頷き


「ええ、出来ると思いますよ。でも人数は限られますので人選で競う事になりましたら私は容赦は致しませんよ。」


と宣戦布告をした。負けず嫌いの千秋は当たり前のように頷き返し


「はい。俺も容赦はしません。」


と言い放った。

真央くんは私に向かって残念そうに


「僕も立候補したいところなんだけどね。僕はクラスメイトとして巫女の調査をしないといけないから。」


と言った。


「いや、立候補しなくて良いよ?千秋も伯母様とお母様が揃うと大分と厳しい人選になるわよ?」


「それでも構わない。俺が美乃梨を護りたいだけだから。」


千秋がそんなことを言うから少し顔が紅くなってしまう。千秋に続いて貴翠と真央くんも同じように言ってきた。


「私だって美乃梨様を護りたい一心でボディーガードに立候補してますからね。」


「僕だって、直接護る訳ではないけど情報を集めることで美乃梨への危険を減らすから。美乃梨は安心して学校に通ってね!」


「3人とも、ありがとう。私にも出来ることがあったら言ってね。」


時刻も夜遅く、ビュッフェは終了した。

景くんは終始、篤季と煌達と居たそうだ。

そして私達は一度、部屋に戻った。


「お帰りなさいませ、美乃梨様。時間も遅いことですしお風呂になさいましょう。」


シャルルはお風呂の準備をして待っていてくれた。


「ただいまシャルル。そうね、お風呂に向かいましょう。」


シャワーを終えて湯船に浸かった。今日は1日で沢山の事があったから少し、疲れてしまっていた。


「はあ。ねえ、シャルル、私の心臓、無事かしら?」


「率直に申し上げます。美乃梨様、馬鹿になったんですか?」


「私だってそう思うわよ。でも、何故か千秋と話すと心臓が破裂しそうなくらい速くなるのよ!」


「本当、美乃梨様は様々な経験を得ていらっしゃるのに恋愛は初心者ですね。」


「仕方ないでしょ!そう言うシャルルだって恋愛した事無いんじゃないの?」


「いえ、私の初恋はノアです。」


「ノア!?初耳よ。」


ノアとは稔の使い魔兼お世話係さんの事だ。

シャルルとノアは年齢、と言うか人間界(こちら)に来た時間の差は2年だ。年齢差と言っても特に無いらしい。


「でも私、シャルルとノアが話しているところ、見た事ないわよ?」


「それは私が公私を分けているからです。」


「ノアに告白したの?」


「ええ、しましたよ。」


シャルルは何とも無いように言った。


「それで、どうなったの?」


「どうなったも何も、終わりですよ?」


「その、告白したら恋人になるんじゃ……」


「人間はそうかもしれませんが、私達は告白したら基本はそれで終わりです。付き合うと言うよりは両思いだった場合は上へ申請して、契約により夫婦になるだけです。」


「シャルルとノアは夫婦なの!?」


「いえ、まだ申請中です。」


衝撃の事実だった。シャルルとは結構仲が良いと思っていたし、稔とも仲が良いのでノアともよく話す。なのに私は今まで知らなかった。


「何故教えてくれなかったの?」


「公私を分けたかったので、申請が通れば私的にお話しするつもりでした。」


「申請は厳しいの?」


「……そうですね。半年程は掛かるでしょう。」


シャルルは少し眉を下げながら、私に笑顔をつくって見せた。


「申請が通ることを祈っているわ。」


「ありがとうございます。では美乃梨様がお湯で火照っているようですしそろそろ上がりましょう。」


お風呂から上がると丁度、稔とノアが居た。


「ノア、シャルルから聞いたのですけど、」


「申請の事ですか?」


ノアは分かっていたように私の言葉を遮り、そう言った。すかさずシャルルと稔が口を挟んだ。


「ノア、美乃梨様のお言葉を遮ってはいけません。」


「シャルルの言う通りです。ノア、姉さんの言葉は最後まで聞いて下さい。」


2人に叱られてしまったノアは少し気落ちした顔で謝った。


「申し訳ありません、美乃梨様。シャルルがやっと美乃梨様にお話ししたのかと思うと……」


「大丈夫よ、ノア。私は怒っておりませんから。私は祝福しようと思い声をかけただけですから。」


「ありがとう存じます。」


そしてそろそろ私は部屋に戻る事にした。稔によると景くん達と煌と架はまだお風呂だそうだ。


「稔、お休みなさい。」


「お休みなさい、姉さん。」


そうして部屋に戻った。



翌日、午前3時。

私はシャルルに起こされた。


「おはようございます、美乃梨様。」


「本当に早いわね。会議室だったかしら?」


「はい。制服に着替えますか?」


「……そうね、まだ早いから私服でいいわ。」


そして着替え会議室に向かった。煌達は今の所関わらない方針だそうだ。私が一番最後で会議室に揃っていたのは奥からお父様、壱さん、伯母様、千歳さん、麗華さんの五家当主。それから入り口側に、千秋、景くん、真央くん、篤季、貴翠、本堂さんだった。私が空いている一番手前の席に座るとお父様が咳払いをして話し始めた。


「さて美乃梨も来た事だし情報交換を始める。まず京駕(きょうが)さんからお願いする。」


そう言われて本堂さんが話し始めた。いつもはお父様も本堂さんと呼んでいるが今回は篤季と貴翠もいるので下の名で呼んでいる。


「はい、薫様。私は近くの神社の神主からお話を伺いました。どうやら他の神社の方は本物の巫女の存在自体知らないようでした。」


「存在を知らない?」


私がそう問うと本堂さんは軽く頷いて言った。


「はい。何分小さい神社でございましたので、知らなくても特におかしくは無いです。可能性だけで言いますと早瀬神宮の神主が巫女の存在を隠しているのかもしれませんが。」


「ありがとう、では次は直接調査しに行ってくれた景くん達だな。」


お父様の言葉に5人は顔を見合わせ頷き、貴翠を筆頭に話し始めた。


「薫様、私から報告させて頂きます。先日報告した際にいらっしゃらなかった方も居ますので最初から報告致します。私達の調査で分かった事は学校よりもやはり気配が分かりやすかった事です。しかも早瀬神宮は現在、パワースポットとして多くの人々が訪れております。パワースポットとして有名になったのは昨年度からだそうです。早瀬環奈さんと瑠奈さんは巫女の姉妹としてテレビに出た事もしばしばあったそうで、神社巡りをしている人の中では有名だそうです。」


私は貴翠に向かい手を挙げ、質問した。


「貴翠、学校よりも気配が分かりやすいのは当たり前ではなくて?」


「ええ、ですが違いが大き過ぎます。真央さん達3人にも確認して頂いたところ、3人とも本人達と直接会った事がある筈なのに気配の強さが比べものにならないと。」


「それは、神社の何処かに秘密があるという事?」


「仮説ですがそうなります。そしてもう一つ、実は真央さんが巫女のうちの1人、瑠奈さんと接触したそうです。幸い、こちらを不審がる様子は無かったようですが、とある事が判明しました。本人と会っても僅かな気配しか感じる事はないという事です。」


貴翠がそう言った事で詳しく知らなかったお父様以外の当主様達と私は驚いた。そして壱さんが貴翠に言った。


「どういう事だ?報告では2人とも本物の巫女だと聞いたが。」


「ええ、ここからが本題です。真央さんが瑠奈さんから離れようとした時、姉の環奈さんがやって来たそうです。ここからは真央さんに説明を変わって頂きましょう。」


「早瀬先輩が来て早瀬さん、いえ、瑠奈さんと2人揃う事で気配が物凄く強くなりました。初めは早瀬先輩の気配が強いのかと思い、瑠奈さんと距離を取り、早瀬先輩と2人になりました。ですが感じとれる気配は瑠奈さんと変わりません。ここで僕達は仮説を立てました。貴翠さんのお陰で2人が本物の巫女だと分かりましたがそれぞれが巫女である訳ではなくて2人で1人の巫女なのでは、と。」


成程、と私は頷く。真央くんの説明を聞いて、伯母様が話し始めた。


「その巫女はそれぞれでは弱いとして2人一緒だと強いのよね?どのくらいなのかしら?」


真央くんは少し黙ってから真っ直ぐ伯母様の方を見て言った。


「五家の当主程の魔力があってしても無装備では体調を崩してしまうかもしれないです。実際、治癒魔法が得意な僕は雛菊さんの調合薬を使ってもなお、2人と別れた後、倒れてしまいましたから。」


真央くんがそう言った後、壱さんが声を上げた。


「雛菊の薬があってもか!?」


「はい。ですが薬も治癒魔法を使いましたがそれでも2人から離れるまで耐えるのが精一杯でした。」


伯母様は感心したように言った。


「雛菊さんの薬でさえ効かないなんてその巫女達はさぞ凄いのでしょうね。確かに私の力では張り合えないでしょう。」


「私も張り合えないだろう。」


とお父様が言った。伯母様とお父様に続き壱さんも千歳さんも麗華さんも無理だろうと言った。

今回は無理に手出しはせず、情報を集める、という方針で会議が終わった。私は遅れて来て挨拶がまだ出来ていないので当主様達に挨拶に行った。


「有栖川家当主、有栖川壱さん。ご無沙汰しております。」


「美乃梨ちゃん、久しぶりだね。いつも景がお世話になっています。」


壱さんとは何度か会った事がある程度だ。

次は隣に居たお父様に挨拶した。


「おはようございます、お父様。遅れてしまい、申し訳ありません。」


「いや、他の者が早く揃っていただけで、美乃梨が来たのは予定の15分前だ。遅れてなどいない。」


「そうですか。」


お父様がそう言ってくれて私はそっと胸を撫で下ろした。次は千秋の御父様である千歳さんに挨拶した。


「ご無沙汰しております。九条家当主、九条千歳さん。」


「美乃梨さん。いつも千秋が面倒を掛けています。」


「いえ、こちらこそ、千秋には同じクラスなのでよく面倒を掛けてしまいますから。」


千歳さんはそうですか、とにこやかに笑った。


「ご無沙汰しております。倉津木家当主、倉津木茉乃凛さん。」


「いつものように伯母様と呼んで頂戴。」


「お久しぶりです、伯母様。お元気そうでなによりです!」


「美乃梨こそ元気そうですね。碧依から聞きました。久しぶりに会った、と。私、羨ましくて初めて碧依を妬みましたよ。美乃梨は中々遊びに来てくれませんからね。」


「すみません、伯母様。でも私も久しぶりにお会いしたいと思っておりました。碧依くんとは会えましたけど、紅音(あかね)くんとは暫く会ってませんから。」


「確かにそうね。では今度、紅音も誘ってお茶会でも開きましょうか。」


「はい。楽しみにしております。」


そして最後に麗華さんに挨拶をした。


「3日ぶりですね、麗華さん。」


「そうね、この前お茶会をしたばかりだからね。」


麗華さんとの話を聞いていた伯母様が会話に混ざって来て


「あら、麗華さんとお茶会したの?私は千夏さんはよく会いますけど他の方は年齢層が被らないとあまりお会いしませんね。」


と私に言った。伯母様の発言を聞いて、麗華さんは


「当主として先輩である茉乃凛さんや紫乃凛さんも呼んで今度お茶会を開きましょう。茉乃凛さんと紫乃凛さんが良ければですけれど。」


と伯母様に向かって言った。

伯母様は目をキラキラ輝かせ


「楽しみにしていますわ。」


と言った。なんとなくだけれど伯母様と花央さんは気が合いそうな気がする。

そしてまだ4時半過ぎなのでお父様以外の五家当主様方が帰った今私達は手持ち無沙汰になった。

(お父様も早々に自室に戻ってしまわれたわ。)


一度会議室を閉めるため、私達も部屋を出た。

すると朝から元気な声で篤季が話しかけて来た。


「美乃梨お嬢様!今から何か予定がありますか?」


「別に無いわよ。どうして?」


「実はお話があって……」


「良いわよ。って、会議室は閉めてしまったわね。私の部屋で良いかしら?」


私がそう聞くと篤季は顔を真っ赤にして大慌てで断った。


「ぜ、絶対にダメです!」


篤季に続いてシャルルも景くん達も言ってきた。


「美乃梨様、流石に美乃梨様のお部屋に入らせるわけにはなりません。」


「シャルルさんの言う通りだよ。美乃梨ちゃん、2人きりで美乃梨ちゃんの部屋は……ずるいよ」


「そうだよ!美乃梨は篤季に気を許し過ぎだよ。」


「ああ。……そういえば気になっていたんだが、美乃梨は歳の近しい男友達は居なかったんじゃないか?」


「それはね……」


私がどう説明しようかと迷っていると貴翠が代わりに答えてくれた。


「それは私達本堂家と美乃梨様方恋咲家の間には昔からの深い事情がございまして、その事情の所為で友達という同等の立場になる事が出来ず、従者という立場でいるのです。ですから美乃梨様と私共は幼馴染ではございますが、友達ではないのです。」


「そうなのか。俺もお手伝いさんとかは居るけど姉上は歳の近しい者とは普通に友人として接しているからつい、恋咲家もそうなんだろうと思い込んでしまっていた。すまない。」


「良いんだよ。たとえ公的には友達でなくとも本堂家の皆さんは家族のようなものだから。」


少ししんみりした空気を打ち払うように篤季がいつもより更に元気の良い声を出した。


「では、美乃梨お嬢様、外の東屋はどうですか?」


「東屋、良いわね。シャルルは付いて来るの?」


「ええ、勿論ですよ。私は美乃梨様の使い魔ですからね。良いですよね、篤季さん?」


「……構いません。」


何故かシャルルと篤季の雰囲気は悪そうだけれど私と篤季とシャルルで東屋に向かった。もう10月も半ばなので空はまだ起きていなかった。


「少し肌寒いですけど過ごしやすい季節ですね。」


「美乃梨お嬢様、僕の上着、」


「そんな事だろうと思って上着は私が用意して来ましたよ。」


「ありがとう、シャルル。篤季、何か言いかけていたけどどうしたの?」


「いえ、なんでも、ないです。」


少し歩いて東屋に着き、ベンチに座った。


「篤季はすぐ我慢するんだから。」


私はそう言いながら煌達にするように頭を撫でた。


「本当に、大丈夫です。」


「そう?なら良いわ。ねえ、ここに来ると皆でピクニックをした時の事を思い出さないかしら?」


「そうですね。確か、架様がお菓子ばかり食べていらっしゃったから美乃梨様が野菜も食べなさいと怒っていましたね。」


「何を他人事のように……はあ、野菜を食べていなかったのは貴方もでしょう、篤季?今はちゃんと食べているの?」


私がそう言うと篤季は顔を逸らした。


「やっぱり食べていないのね。やっぱり篤季は昔から変わらないわね。煌達と、特に架とそっくりなんだから。本当、弟みたい。」


「弟、ですか。今も弟だと思っていますか?」


「昔は私よりも頭一つ分小さかったけれど今は篤季の方が大きいものね、弟よりも兄かしら?」


「そういう意味では無かったんですけど……」


私の発言に篤季は落胆し、シャルルはクスクスと笑った。


「僕はお嬢様を妹とも姉とも思ったことありませんでした。僕にとって昔からお嬢様は好きな子だったんです。意味わかってますか?僕は昔からお嬢様の事が好きだったんです!」


篤季の急な告白に私は固まってしまい、シャルルの方を振り向くと頭を抱えていて私が振り向いた事に気付いていないようだった。


「好きというのはlike or love?」


テンパっている私はついそんな質問をしてしまった。


「LOVE一択です!」


篤季は真剣にそう答えた。私は今、少しどころかトマトくらい顔が赤い気がする。


「僕、美乃梨様に婚約者候補が3人も出来る事、5歳の頃から知っていたんです。だから僕が選ばれようと頑張ったんですが、恋咲家と本堂家の関係を聞いてしまい、本堂家である僕には無理だと悟りました。それでも恋咲家と本堂家の人間が結婚した例は僅かながらにありました。養子縁組です。」


「何、言ってるのよ。本堂さんとあんなに仲が良いのに。」


「そうですね。兄さん達にも止められました。ただ、貴翠兄さんは少し違う止め方でした。『婚約者候補は所詮候補だ。私も薫様も紫乃凛様も美乃梨様が本当に好いている方と結婚して欲しいと考えている。だから父さんや兄さんや私に反対されて諦めるような奴は絶対に美乃梨様に好かれる事は無いだろう。奇跡的に好かれたとして幸せに出来ないに決まっている。』と。僕には遠回しに諦めるなというように聞こえて、美乃梨様が婚約者をお決めになる年齢になられるまでに美乃梨様に好きになってもらう事が出来たら恋咲家の養子にして貰えるよう、薫様に頼み込みました。薫様は驚く程簡単に許可をくれたのでそこから頑張ってアプローチを続けたんですが……」


篤季はそこで一度ため息を吐きまた、話し始めた。


「お嬢様は驚く程アプローチに気付いてくれませんでした。薔薇の花束を贈っても綺麗ですね、ですませてしまいますし。薫様があんなに容易く許可を下さった理由が明快でしたよ。」


「薔薇の花束は綺麗でしたから綺麗ですね、というののどこが間違ってるのよ!」


「それだけじゃありませんよ。読書家なお嬢様に合わせた告白をした事があったんですよ!『月が綺麗ですね』と。」


「あの日は本当に月が綺麗だったわ!」


「そうですね、でもあの時は月が見えにくい屋内で言った筈なんですが。」


「天窓から見えたけど?」


「僕はやはりタイミングが悪いんですね。」


「それだけじゃなくて篤季が私を好きだなんて考えた事も無かったから。」


「じゃあこれからは考えてくれますね!もっと僕のことを考えて意識して下さい。僕、美乃梨お嬢様の好きな人を知ってますけど、それでも諦めたく無いですから!」


と篤季は笑顔で言った。


「それより、何で私の好きな人を知ってるの!?」


「それは、好きな人だからずっと見ていたら嫌でも分かってしまいますよ。」

『千秋ですよね?』


篤季は声を潜めて私の耳元で言った。私の反応の所為か篤季は正解ですね、と言い少し悲しそうな顔をして笑った。少しして篤季が思い出したように言った。


「あ、そうだ。お嬢様、頭を撫でるとかあまりしない方が良いですよ!お嬢様にされるとこの世の全員すぐに惚れてしまいますから。」


「それは流石に不可能よ。魅了の魔法をマスターすれば可能かもしれないけど。」


「そういう意味では無いです。とにかく、もっとボディータッチを減らして下さい。」


「ボディータッチなんて煌達か貴翠と篤季くらいにしかしないわよ?」


「僕だけなら嬉しいですけど煌様達とも兄さんとも同等の扱いは嫌ですね。でも意識して下さってるみたいなのでもう大丈夫そうですね。」


そう言ってから篤季は私の手を取ってそっと唇を落とした。


「な、なな、何、してるの、よ!」


私が動揺してると後ろの方から声が聞こえて来た。


「篤季、抜け駆けしてるね!」

「一番最初に告白して……」

「美乃梨の好きな奴って誰だ……」

「篤季は直接的なアプローチを始めたようですね。」


ヒョコッと後ろの方の木の間から4人が顔を出した。


「いつから聞いてたの!?」


私がそう言うと真央くんが答えた。


「最初からついて来てたんだけど話が聞こえたのは美乃梨が篤季の頭を撫でながら『篤季はすぐ我慢するんだから』って言ってた所。」


「ほぼ序盤じゃない!しかもそんなに詳しく見られてたなんて……もう、恥ずかしい。私ちょっと散歩して来る!」


居た堪れなくなり、私はその場を後にした。

しばらくして気配を感じて振り返ると


「真央くん!?」


そこにはついて来ていたらしい真央くんが居た。

またついて来たの?と私が軽く睨むと真央くんは手を挙げて


「そんな顔しないでよ。まあ睨んでも可愛いだけで迫力はないけどね。」


と言ってきた。


「からかってるの?」


「からかってないよ。本音だから。ねえ、美乃梨。篤季が美乃梨の事を好きって本当に少しも思わなかったの?」


「それは、たまに距離が近いかなって思う事があっても私にとって篤季は家族と同等の存在だったから気にならなかった。流石に月が綺麗ですねって言われた時はドキッとしたけど上を見たら、本当に綺麗な月が見えたからそう言うことにしておこうと思って。」


「やっぱり気付かないふりしてたんだね。」


「篤季のお兄ちゃん、あ、貴翠じゃない方よ?が半年くらい前に教えてくれたんだよ。私はあんまり真に受けていなかったけど、そこから少しは意識したよ。でも、幼馴染として篤季とこれからもいる事は無理かもって思うと目を逸らしたくなったんだ。」


「……もしかして、そのお兄さんに聞くまで本当に気付かなかったの?」


真央くんは意外そうな顔で言って来た。


「気付かなかったと言うか全く考えたことがなかっただけ。」


「そんなにはっきり言っちゃうと篤季が不憫だね。」


「どうしよう、真央くん。篤季と今まで通りでいる事はもう、無理だよね……」


「そうかな?篤季は本当に今までの関係を崩そうとしているかな?美乃梨は告白されて意識して避けちゃうと思うんでしょ?じゃあ篤季からとったら嬉しい事だと思うよ。」


「どうして真央くんにはそんな事が分かるの?」


「だって僕も好きな子が居るから。」


真央くんはなんでも無いように言った。


「僕も好きな子が中々意識してくれなくてすぐ僕以外の男子の話をして来るんだよ。」


「そうなんだ。その子、意識していないなら仕方ないかもしれないけど真央くんの前で他の子の話ばかりするなんてちょっとタイミング合わないのかな。あ、真央くんの好きな子を悪く言っているわけじゃないからね。」


私がそう言うと真央くんは急にお腹を抱えて笑い出した。


「何で笑うの!?」


「ふ、ふふ、ごめん、無理、あはは、はは」


「だから、笑い過ぎだって!」


「本当、ごめん、ふ、はは、ちょっとツボに入っちゃって。」


「何もそんなに笑うこと無かったでしょ?」


私がそう言うとやっと笑いが収まったのか真央くんが私の方を見て真面目な顔になった。


「……本当はまだ言うつもり無かったんだけどね。」


「何を?」


「僕の好きな人は、美乃梨なんだよ。」


「えっ……」


「そうなると、困らせると思ったからもう少し後に言うつもりだったけど篤季は告白しちゃったしもう良いかってね。」


真央くんは私の頭に手を乗せて少し強めに撫でた。


「返事はまだ良いよ。でも、一つだけお願いするね。篤季よりも僕を意識して欲しい。後千秋よりもね。」


「えっ!?ち、千秋?」


「やっぱり千秋だよね、美乃梨の好きな人。」


私は軽くコクンと頷いた。


「……今の僕には応援出来ないけどね。僕も篤季と同じように美乃梨の目を僕に向けさせたいから、応援なんてしてる場合じゃない。ライバルは多いから。」


「ライバル?」


「ううん、こっちの話。」


真央くんはにっこり笑った。

どうでしたか?

これから篤季くんと真央くんのアプローチが凄くなりそうですね。

千秋くんはもう美乃梨ちゃん並の鈍感なので気付かないでしょうけど果たして景くんはどうかな?

今回出て来なかった透くんと凪くんも美乃梨ちゃんへ「好き」の気持ちは伝えるのでしょうか!?

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