体育祭の振替休日
今回はお疲れ様パーティーと巫女関係です!
今日は振替休日の月曜日。
昨日の今日、いや、一昨日の今日で雅美ちゃんと会うのは少し気恥ずかしいけれど。
茉夜さんは何も要らないと言ってくれたけど流石に参加するからにはお菓子くらいは、と思い昨日、花央さんにオススメのパティスリーを教えてもらい買いに行った。花央さんのオススメは凄く見た目が綺麗で私も一つ食べたけれど凄く美味しかった。
そのお菓子と私の好きな紅茶を持って爽夜くんの家に向かった。本当は景くん達も一緒に来れたら良かったけれど……3人は今日、篤季と貴翠とお出かけするらしい。私も誘ってくれたら良かったのにと今朝会った貴翠に言うと「本日の集まりは男子会ですから」と断られてしまった。まあ、仕方ないけれど。
そして爽夜くんの家に着いた。
しっかり表札が【松岡】である事を確認してからインターホンを押した。
「恋咲美乃梨です。」
『はーい。ちょっと待ってね。』
ガチャという音が聞こえて扉が開いた。
「久しぶり〜!美乃梨ちゃん!」
「あの、これLunaっていうパティスリーで買ったケーキなんですけど、美味しかったのでお土産にと持って来ました。」
「えっ!?あのLunaのケーキ!?そんなの全然良かったのに。でもありがとう。美味しく頂くね。」
「あ、私の好きな紅茶も入っているので合わせて飲むととても合いましたよ。」
「そうなの!?じゃあ紅茶も淹れるね。」
そう言い茉夜さんは部屋へ案内してくれた。
リビングには爽夜くんと朔夜さんと凪くんが居た。
「3人とも、美乃梨ちゃん来たよ!」
「「おはよう、美乃梨。」」
「おはよう。爽夜くん、凪くん。朔夜さん、おはようございます。」
「美乃梨ちゃん、おはよう。美乃梨ちゃんが来た事だし雅美も呼んで来ようか?」
「あ、私行って来るね!」
「そういえば千秋達は?」
凪くんが疑問に思ったようで聞いて来た。
「それが、今日は貴翠と篤季と一緒に男子会をするって言いながらお出かけに行っちゃったの。」
「そっか。僕もそっちに混ざってみたかったな。」
「男子会をするなら俺も誘ってくれたら良かったのにな。」
2人とも少し残念そうにそう返した。
でも、多分だけど内容が巫女関係の事だったら皆んなは混ざらないよね、と思いながら曖昧に頷いた。
そして雅美ちゃんも来てお疲れ様パーティーの始まりだ。
「そういえば瀧くん達は学校?」
「うん、そうだよ。雫も今日は保育園だから。」
「体育祭のあった日は平日だったのに学校は無かったの?」
「うん。確か創立記念日だったかな?雫は普通に休んだけどね。」
「へえ〜、そんな偶然あるんだね。」
今は午前11時過ぎなのでケーキは3時のおやつの時にね、と茉夜さんが言った。お昼はデリバリーでハンバーガーを頼むそうだ。私もお金を払うと言ったのに茉夜さんに「ケーキを貰ったから受け取れない」と言われてしまった。雅美ちゃんも「Lunaのケーキ!?全員分のハンバーガーのセットより高いんじゃ……」と言っていた。
「ねえ、雅美ちゃん。ハンバーガーってどれがオススメなの?」
「う〜ん。私はミートソースバーガーが好きだけど、やっぱりみのりんは初めてだから王道のハンバーガーで良いんじゃない?」
「うん。それにしてみる。」
後ろの方で凪くん達も朔夜さんに注文するメニューを言っていた。
「俺、タルタルチキンバーガー。」
「僕はフィッシュバーガー。」
「了解。じゃ、頼むぞ。」
そう言い、朔夜さんはスマートフォンでピピッと操作して注文した。
「12時に届くようにしたからそれまではご自由に。」
朔夜さんの声で3人は元気な声で「は〜い!」と言った。その後雅美ちゃんと凪くんに連れられて、爽夜くんの部屋に行った。
「ねえ、ゲームしようよ!」
「どんなゲーム?」
「えっとね、爽夜が最近4人プレイのクエストゲームを買ったんだって。」
「楽しそう!」
そんな事を話しながら階段を登って行った。
爽夜くんの部屋は2階の奥で入ってみたらベッドの他にテレビやパソコン、それに本棚には漫画がズラッと並んでいた。
「爽夜くんも漫画、好きなんだね。」
「もって事は美乃梨も読むのか?」
「うん!少女漫画は結構沢山持ってるよ。最近は架が少年漫画を読み始めたから結構知ってるの多い気がする。少年漫画読み始めたら中々止まらなくてたまに困るよ。」
「あー、分かる。夕飯の前とか読んでたら、腹は減っても続きが気になりすぎて夕飯後回しにしそうになる時とかあるな。まあ、そんな事しても姉貴に引きずり出されるけどな。」
「あ、そういえば、茉夜さんと朔夜さんは高校生じゃなかった?学校は大丈夫なの?」
「あ〜、姉貴と兄貴、頭良いからさ私立の学校で試験は受けてるけど学校に行くのは気まぐれなんだよな。学校の授業が簡単過ぎてつまらないらしい。海外の学校からの推薦もあるってのに面倒臭いからって断るしさ。」
「そうなんだ。まあ、授業が簡単過ぎたら何して時間潰そうか迷う事、私もよくあるから分かるよ。」
「そうなのか?」
「うん。前の学校の方が凄く進んでたみたいで、もう試験も終わった内容ばっかり今の学校で習ってるからね。」
私の行っていた前の学校とは専門的に魔法を教えてくれる為、最初の3ヶ月で3年間の中学生の分の試験を全て受けないといけない。小学校の頃は3ヶ月で1年分だったし、簡単だったけれど中学では勉強せずには受けられない。偏差値で換算すると76だとお母様は言っていた。魔法使いの家系に頭が良い人が多いのはこういう理由がある。
「偏差値で言うと76だったから。」
「みのりん、何でうちの中学に来たの?」
「勉強はもう十分だったから、普通の中学生になりたかった。確かに学校の授業は私にとっては簡単。でも前の学校では悲しい事に皆私に友達として接してくれなかったんだ。私が恋咲家跡取りだと知っていたからね。だから友達が欲しかった。」
私は試練の事は隠して訳を説明した。
最初は試練だから行かなきゃいけないという意思だったが徐々に少女漫画の中でしか見た事のない友人関係に憧れて、この試練にとても感謝した。
「そうだったんだ。じゃあ、僕は美乃梨の友達1号だね!」
「ええ。私、転入初日に凪くんから話しかけられて、凄く安心したよ。隣の子が凪くんで良かったって。」
「私、凪よりも後なの!?」
「確かに雅美ちゃんと仲良くなったのは凪くんよりは後だけど、レイラちゃん達と一緒に話しかけてくれたの凄く嬉しかったよ。」
「俺は更に後だけどな。」
「ふふっ、確かにそうね。爽夜くんとは千秋くんを通してリレーの練習から話すようになったね。まさか同じ部活に入るとは思ってなかったけどね。」
それから皆んなでゲームをしようとしたけど気付くと12時になっており、私達はリビングに戻った。
「おお、丁度今届いたぞ。」
ハンバーガーを朔夜さんに渡されて包みを開ける。
「これはどう食べれば……?」
「そのまま両手で持ってかぶりつく!」
雅美ちゃんはノリノリで教えてくれた。
言われた通りにバクッと食べると、ジューシーなパティとふわふわのパン、シャキシャキのキャベツと濃厚なソースの味が口全体に広がり凄く美味しかった。
そのまま勢いでパクパクと食べてしまった。
「これ凄く美味しい!景くん達に自慢しよう!」
「特に千秋は結構食べたがってたから凄え羨ましがるだろうな。」
「うん、容易に想像出来るね。」
爽夜くんと凪くんは想像したようで笑い合ってる。
そして雅美ちゃん達がポテトとナゲットを「美味しいよ。」と言いながら分けてくれた。
私と爽夜くんはもう食べ終わったので先に爽夜くんの部屋に向かった。
部屋の扉を閉めて、爽夜くんが気まずそうに頬を掻きかながら聞いて来た。
「体育祭の時、告白されてただろ?あの時に言ってた好きな人ってもしかして、千秋か?」
「え……何で知って、」
「ごめん、ちょっと前から何となくそうだろうなって思ってたんだ。俺だけ美乃梨の好きな人知ってるなんてフェアじゃねえよな。代わりにと言っては何だけど俺の気になってる奴、美乃梨には教えとく。」
そう言いながら爽夜くんは私の耳元に近づいた。
『俺の気になってる奴は雅美だ。』
『……!』
『美乃梨にしか言ってねえから凪にも千秋にも言うなよ!もちろん雅美にもな。』
『うん。千秋の事も本人もだけどまだ雅美ちゃん達にしか言ってないから秘密にしててね!』
『おう!』
そして秘密を共有した事で、前より更に爽夜くんとの友情が深まった気がする。凪くん達が来るまで爽夜くんにアルバムを見せて貰った。
「あ、これ凪くん?」
「ああ。女子みたいだろ?」
「うん。雫ちゃんとそっくりだね。この時何歳くらいなの?」
「確か、3歳だったかな。」
「あ、この赤ちゃんが爽夜くん?」
「おう。可愛いだろ?」
「それ、自分で言っちゃうの?」
その時ガチャッと扉が開いた。
「2人とも、何してんの?」
「アルバムを見せて貰ってるんだよ。」
そう言うと雅美ちゃんと凪くんも覗き込んで来た。
「うわー、懐かしい!」
「瀧もいるじゃん。あ、泉と流も。」
「この1番小さい子が流くん?」
「うん。そうだよ。」
「私、みのりんの小さい頃の写真見てみたい!」
突然、雅美ちゃんがそう言った。
凪くんと爽夜くんも便乗して来る。
「別に構わないけれど……何も面白くないよ?」
「良いから良いから。」
確か誕生日の時撮った写真をこの前お父様が13年分一気に送って来た筈だ。スクロールしながら探す。
「あ、あった。これが0歳の頃。」
「何これ天使!?っ可愛い!」
「この頃から顔整ってるんだな!」
「美乃梨、可愛い!」
順番に1歳、2歳……とスクロールしていった。
「No. 1みのりん決定戦!」
雅美ちゃんがよく分からない事を言い始めた。
「何歳のみのりんが1番可愛かった?私は5歳!あのピンクのドレス凄く似合ってた!」
「俺は9歳の奴かな。今の美乃梨程じゃないけどちょっと大人っぽい感じがなんか良かった。」
「僕は断然11歳。カーキーのドレス凄い似合ってたからね。」
よく分からないが選択は全員バラバラだった。
「みのりんはどの写真が1番好き?」
「ドレスで言うなら1番最近のドレスかな。」
「見事に別れるね。」
そして昼食前にする筈だったゲームを皆んなで楽しんだ。
「みのりん、あんまりした事ないって言ってたのに上手過ぎない?」
「実はね、旅行の時に聡くんにコツを教えて貰ってたんだ。」
「そうなの!?良いなあー!」
「聡さんゲーム上手かったから俺も教えて貰いたかった。羨ましい!」
「僕も。また、聡さんとゲームしたい!」
「聡くんに伝えとくね。」
そして気が付いたら3時前で朔夜さんが呼びに来てくれていた。
「そろそろ3時だぞー。美乃梨ちゃんの持って来てくれたケーキ食べないのか?」
「食べるよ!」
「僕も絶対食べたい!」
「俺も!食べねえ訳ねえだろ!」
3人は元気良く返事をし、リビングに降りて行った。
「私、紅茶淹れるの手伝います!」
「ありがとう。実は私、紅茶はパックでしか淹れた事無いんだ。ママは茶葉からなんだけどね。」
「私も最近まではシャルル、私のお世話係さんにして貰っていたんですけど、お茶会の度に呼ぶ訳にはいかないので淹れ方を教えて貰ったんです。」
そして私が紅茶を淹れている間、爽夜くんはお皿を、朔夜さんと凪くんはフォークを、雅美ちゃんと茉夜さんはどれを食べようかときゃあきゃあと盛り上がっていた。私はお茶を淹れ終わりダイニングに持って行った。ミルクとお砂糖はセルフだ。
「紅茶、淹れ終わりました〜!」
「わあ、いい香り!」
「私、ミルクと砂糖両方にしよっ!」
「あ、そーだ。ケーキ、私とみいちゃんは決めたんだけど美乃梨ちゃんどれが食べたい?」
「私は前に一度食べましたから余ってるものでいいですよ。」
「じゃあ3人の好みと外れてるコレね。朔兄も爽も凪も勝手に選んでね!」
「じゃ、食べよっか。」と言い茉夜さんは私に、席に着くように促した。
「「「いただきます。」」」
私のケーキはレモンとゆずの香る爽やかなケーキだ。
さっぱりとしたゆずの香りに爽やかなレモンクリームがとても美味しい!少し削ってかけられているホワイトチョコも甘くて美味しかった。
雅美ちゃんのケーキは甘酸っぱいフランボワーズの乗った見た目がとても華やかなケーキ。
茉夜さんが食べているのは濃厚なチョコレートテリーヌにさっぱりとしたベリーソースがかかっているケーキだ。私が前に食べたケーキもこのケーキでチョコは濃厚なのにベリーソースのお陰でとても食べやすかった。
「美乃梨ちゃん、この紅茶凄く美味しいよ!」
「ありがとうございます。そのケーキと凄く合うんですよ。」
「確かにそうだね。このケーキを食べた後に甘い物は流石に少し重いからね。」
私達が食べ終わった時、凪くんと爽夜くんはまだケーキを決めていなかった。朔夜さんは、お店の人気メニューNo.1のほろ苦いティラミスを選んで食べていた。
因みに爽夜くんと凪くんが迷っているのは色とりどりの様々なフルーツの乗ったフルーツタルトと、期間限定の洋栗と和栗がドカンと乗ったモンブランケーキとで迷っているらしい。
その後、皆んなで英単語しりとりをした。
雅美ちゃんと凪くんは英語が苦手みたいだったけど、爽夜くんは得意だそうで結構長く続いた。
最後は私、茉夜さん、朔夜さんの3人対決が続き全く終わりが見えないので止める事になった。
そして気が付いたらもう日が暮れかかっていた。
私は本堂さんにお迎えに来てもらった。
車に乗り込むと雅美ちゃん達も茉夜さん達も見送りに来てくれた。
「美乃梨ちゃん、また来てね。」
「はい。今日は凄く楽しかったです。茉夜さんが誘ってくれたお陰ですね。」
「美乃梨ちゃん、英単語しりとりの決着、次はつけような。」
「朔夜さんって意外と負けず嫌いらいなんですね。」
「みのりん、また明日。」
「じゃーな。美乃梨。」
「美乃梨、バイバイ!」
「皆、また明日ね。茉夜さん、朔夜さん、また誘って下さい!」
私がそう言った後、本堂さんは車を運転し始めた。
雅美ちゃん達は見えなくなるまで手を振ってくれていた。
家に帰ると玄関には煌が居て
「姉さん、景さん達が来てますよ。」
と教えてくれたので、私は景くん達の居る客間に向かった。軽くノックをするとドアを開けた。
「美乃梨お嬢様!?」
「何で篤季達も居るのよ?」
私が聞くと、篤季の代わりに貴翠が答えてくれた。
「実は私達、今日は本家に泊まる事になったので。」
「そうなの?煌達も、特に架は喜ぶわね。」
私の言葉に続いて景くんが教えてくれた。
「僕達も泊まる事になったんだよ。」
「えっ!?」
思わず声をあげてしまった。
「どうしてそんな事になったの?」
「それは……後で薫さんから話があると思うよ。」
「分かった。そういえば、男子会はどうだった?」
「楽しかったよ。美乃梨ちゃんは?」
「私も楽しかったわ!そうだ、ハンバーガーも食べたんだよ!」
私が良いでしょう、というように自慢してみせると、真央くんが笑顔で
「僕達もハンバーガーショップでテイクアウトをして公園で食べたんだよ。」
と言った。
「そうなの、自慢出来ると思ったのに。」
「今度は美乃梨と一緒に食べたいな。その方がもっと美味しそうだから。」
「?私と食べても味は変わらないと思うけど。」
「そういう事じゃ無いんだよな。」
真央くんは少し残念そうに言った。
「男子会ってどんな事話すの?」
「それは、多分女子会と変わらないと思うよ。」
「女子会で私達が話した内容なんて、恋愛話ばかりだよ?」
私がそう言うと真央くんの横に立っていた貴翠が
「私達もその恋バナをしたんです。」
と言った。
「皆、好きな人がいるの?」
「いえ、正確には私以外は、ですね。」
「そうなの?少し意外。貴翠が1番好きな人がいそうなのに。」
「私は好きという感情とは別でとても尊く思っている方はいますよ。どちらかと言うと尊敬、憧れに近いですね。」
そして夕食の時間が来た。今日は人数が多いのでホールを使ったビュッフェ形式にするそうだ。シェフが腕を振るった様々な料理が置かれていく。私はお父様からのお話があるので自分で取りに行けない。だから、私の代わりにシャルルが取って来てくれるそうだ。
「美乃梨、景くん達から聞いたかもしれないが話というのは巫女についてだ。今日、5人には巫女の調査を依頼した。」
「え、今日は男子会じゃ……」
「男子会をしていたのは昨日だったと思うが?いや、まあそれは良いとして、巫女の調査の結果、2人とも本物の巫女だった。」
「でも、真央くんがいくら治癒魔法が得意だと言っても限度があるんじゃないですか?」
「ああ。まだ転入して1ヶ月と少し程しか経っていないが、きっと真央くんは無意識に治癒魔法を使っていたんだろう。昨日、神崎家当主に確認したところ、最近の睡眠時間は平均13時間程だそうだ。当主も本人もまだ学校に慣れていないから疲れているだけだろうと思っていたらしいがな。当主は今回の巫女の件で少し違和感を持ったらしい。」
「違和感、ですか?」
「ああ、そうだ。身近に居た巫女の力を何故気付かなかったのか、と。神崎家当主が言うには、巫女達自身は特に力を隠す必要が無い。だが、今まで、美乃梨が巫女という噂を聞くまで誰も気付かなかったのは……あまり考えたくは無いが第三者の力が働いているのでは、という事だ。それも魔法使い側の人間が、な。」
私は考えてもいなかった。巫女の力を隠蔽出来るのは同じ巫女と我々魔法使いぐらいだろう。巫女側の者でないなら、消去法で魔法使い側の人間になる。
「お父様は五家の人間だと思いますか?」
「いや、それはおそらく有り得ないな。五家の人間だったら我々当主が気付けないところで巫女の力を隠蔽する事は出来ないだろう。」
「ですよね。そうなれば疑わしいのはやはり出て行った者達、その子孫ですよね?」
「そ、そうだ。」
お父様が珍しく少し吃った。
「お父様、どうしたんですか?」
「いや、美乃梨の理解が早過ぎて少し驚いてしまっただけだ。つい最近まではこのくらいだったのに。」
お父様はそう言い親指と人差し指を開いて見せた。
「そんなに小さくありませんでした!私は体格が大きい方なので産まれた時でもその2.5倍くらいの大きさでしょう。」
「すまない、冗談だ。けれど本当に子の成長は早いものだ。まだまだ子供だと気付いた頃には私よりも素晴らしい者に掻っ攫われてしまうのだろうな。」
「お父様、気が早いですわ!まだ5年後ですよ?」
「5年なんて、私が紫乃凛と出会ってからの時を考えれば瞬き程だ。美乃梨には昔から跡取りとして無理をさせ過ぎている。本当にすまない。だから少しくらいは私に頼ってくれないか?我が儘を言いたいだろう年齢の頃にはもう美乃梨は1人で本を読んでいたな。それは私も紫乃凛も忙しくして優しい美乃梨は私達を気遣って困らせないように唇を噛み締めて我慢していたな。」
私は気持ちを見透かされ、少し恥ずかしかった。
「それよりどうしてお父様はそこまで詳しくお知りになっているのです?」
「シャルルから報告が来ていた。シャルルが少し怒りを見せながら『これ以上は美乃梨様の唇が綺麗な桜色から真っ赤に染まってしまいます!』と言って来たんだよ。その後一度家族全員でお茶会をしただろう。覚えているか?」
「はい。あの時はとても嬉しくて、でも初めてのお茶会に緊張してしまって最近読んだ本の話ばかりでしたね。」
「ああ、まだ5歳だというのに私達大人と変わらない本ばかり読んでいて、あの時は私も紫乃凛も驚かされたよ。それに、申し訳なくなった。」
「何故ですか?」
「あの様な本が読める程成長しているのを初めて知ったからだ。親ならその過程も見守ってやりたかった、とな。」
そう言いながらお父様は私の頭の上にポンと手を置いた。存外しっかりした手で重みがあった。お父様にこういう風に褒めて頂いた事は片手で数えられる程しか無いので少し緊張してしまう。
「美乃梨の事もあったからか煌達には出来るだけ構うようにしたんだ。まあ、煌は美乃梨に似て甘え下手だけどな。稔と架は想像以上の甘え上手になってしまった。昔はついつい強請られると叶えてしまってよく紫乃凛に怒られたな。」
「覚えてますわ。確か、稔にオーダーメイドの着物を5着、架に黒鷲の弓を18本も買っていましたね。」
「怒られた時、紫乃凛が何と言っていたか分かるか?『稔よりも架よりも美乃梨に何かプレゼントしましょうね。あの子が1番甘え下手何ですから。美乃梨が何も要らないと言って、それが本心だと思うのでしたら父親失格ですよ。』と笑顔で言われてしまった。煌にも何か贈った方が良いか?と聞いても煌は要らないと言っていたからと言うんだ。」
確かに煌は物欲があまりない。
「でも、父親失格だなんて……素直でない私が悪いのに。」
「いや、紫乃凛の言う事は尤もだ。それに気付いてやるのが親だからな。美乃梨は我慢して何も要らないと言い、煌は欲しい物が無くて何も要らないと言ったんだ。私にはその違いが分からなかった。」
お父様は相変わらずマシンガントークだけれど今まで聞いたことが無かった事やお父様の思っていたことをちゃんと聞いたのは初めてな気がする。
「私もこれからは少し甘えてみます。」
「ああ、私は待っているからな。きっと美乃梨が甘えたら紫乃凛も喜ぶだろうな。」
そしてビュッフェを楽しんだ。とは言ってもシャルルは私の好みを知っているから、私はもう食べたい物は殆ど無いけれど。夕食はもう満足なのでデザートを探しに行った。スイーツの置いているところには貴翠と千秋が居た。
「美乃梨様!薫様のお話は終わりましたか?」
「ええ。途中から話が変わり少し長かったですけど、お父様の気持ちを初めて知りました。」
「詳しくは存じませんが何か良い事があったようですね。表情がいつにも増して輝かしいです。」
「そうかしら?そういえばお父様から聞きましたわ。男子会をしたのは今日ではなくて昨日だったんでしょう?今日は巫女の調査を依頼したと聞きました。どうして私に嘘をついたのよ?巫女の調査なら私も手伝ったのに。」
貴翠は少し沈黙してにこりと笑って見せた。
「美乃梨様ならそう言うと思いましたので敢えて嘘をつきました。もし、本物の巫女なら治癒魔法が苦手な美乃梨様は危険かと思いまして。」
「私だけじゃなくて千秋と景くんも苦手でしょう?それに篤季と貴翠の方が魔力の量的に危ないんじゃ。」
「お忘れですか?美乃梨様。私達本堂家は魔法使いと巫女の2つの血が流れております。」
「そうだったわね。篤季と貴翠は良いとして千秋と景くんは危険じゃない!」
「はい。ですのでお2人には有栖川家当主夫人の薬を使って頂きました。」
「それを使えば私だって!……私は足手纏いなの?」
貴翠はスンとした顔をして言った。
「いえ。本音を言うと、美乃梨様にはあの神社に近付かないで欲しかっただけです。」
「はい?」
「あの神社は縁結びが有名だとかでナンパが物凄く多いそうなのです。薫様にそれを説明しますと、美乃梨様を連れて行くのは断固拒否だと仰られました。」
私は一つ息を吸い、今だにスイーツと睨めっこをしている千秋に確認した。
「千秋、貴翠が言ってる事って本当なの?」
千秋はパッと顔を上げ、少し目線を下げてから話し始めた。
「ああ。俺達はまず、あの神社を調べた。その時ナンパが多いと知り、篤季と貴翠さんが一目散に薫さんに説明しに行ったんだ。それで薫さんが許可する訳も無く、美乃梨には秘密にしたんだ。」
「そうだったんだ。でも、私ナンパなんてされないと思うけど?」
「何言ってるんだ?前の旅行で美乃梨が中学生だと知るまでナンパしてた奴らが居ただろ?」
「蓮さん達の事?蓮さん達とはお話しただけよ?」
「それは美乃梨が中学生だと知ったからだ。」
千秋がそう言うと怖い顔をした貴翠が
「美乃梨様をナンパする不当な輩が……」
と言い、いつにも増して溢れんばかりの笑顔で
「やはり、美乃梨様にはボディーガードが必要です。前々から思ってたんですけど私がそのボディーガードに立候補してもよろしいでしょうか?」
と言ってきた。
「私、武道もそこそこ出来るからボディーガードなんて必要ないわよ?」
「それは不審者等に襲われた時のことでしょう?私が言っているのは変に絡まれた時、社会経験が乏しく、お優しい美乃梨様はどう断れば相手が傷付かないか悩み、結局流されて連絡先など交換してしまうのでしょう。」
貴翠の言ったことは妙にリアルで否定が出来ない。
「でも、学校では学年も違うじゃない。」
「それは不徳の致すところでございます。私がもう2年遅く生まれていましたら。」
「それじゃ篤季と同い年になるじゃない。私は貴翠が年上で嬉しいわよ?何より頼り甲斐があるしね。」
「美乃梨様に頼られていたなんて……!至福の極みでございます。」
「大袈裟ね。」
「大袈裟だな。」
千秋と私の声が揃い2人で顔を見合わせて笑ってしまった。大袈裟と言われた当の本人は真顔で
「大袈裟ではありません。美乃梨様に褒めて頂く事は史上最高の名誉でございますから。」
と言ってくる。(だからそれが大袈裟なんだよ。)
「美乃梨、貴翠さんってこんな感じだったのか?少し意外だな。」
「貴翠は昔から変わらないわ。寧ろ篤季の方が変わったんじゃないかしら。」
「変わったってどこがだ?」
「昔は私とよりも煌達とよく遊んでいたわ。でも私が跡取りとして決まった9歳頃からだと思うんだけど、そこから急によく一緒にいるようになったわ。」
「急に?何かあったんだろ?」
特に何も無かった気がするけれど9歳頃から変わった事といえば……
「私の婚約者候補を選び始めた時期かしら?確か、周りの人達が是非自分の子を婚約者に、と勧めていた気がするわ。」
貴翠は頷きながら
「実は私も薫様からお声を掛けて頂いておりました。ですが私などが美乃梨様に釣り合う訳がございませんし、何より、美乃梨様は王子様に憧れていらっしゃったのでお断りさせて頂きましたがね。」
と、とんでも発言をしてきた。
「初耳ですけど!?」
「お断りしましたからね。」
「でも、貴翠なら、あの頃私が憧れていた王子様に一番近いじゃない!」
「それは口調でしょう。出会い方が幼馴染では美乃梨様の思い描く王子様の登場とは程遠いではありませんか。それに……」
貴翠は少し口を噤んでまた、話し始めた。
「それに、今は素敵な王子様が沢山居ますからね。」
「景くんの事?」
「美乃梨様の思い人は景様なんですか?私は……」
と言い貴翠は千秋に目線を向けた。いきなり目線を向けられた千秋は戸惑っている様子だけどバレていないかハラハラする。私は貴翠の腕を引っ張り耳元で言った。
『ちょっと貴翠。貴翠にはバレてると思っていたから知っている事に対しては文句無いわ。でもあんな事したらバレるかもしれないじゃない!』
『大丈夫ですよ、美乃梨様。千秋様は気付いていないご様子ですから。それよりやはり千秋様でしたんですね。』
『とにかく、これからそんなバレそうな行動は控えてね。私だって隠してるんだから。』
千秋が少し困ったように聞いてきた。
「俺、離れた方が良いか?」
「いや、大丈夫だよ。もう話は終わったから。」
「そうか。……美乃梨、俺、」
千秋が何か言おうとした時、
「美乃梨!ここに居たんだ。」
と真央くんが来た。
「あれ、千秋と貴翠さんも居る。僕も呼んでくれたら良かったのに。」
「真央くんごめんね。今ちょっと千秋と話してて。」
「そうなんだ、続けて良いよ。」
と何故か悔しそうな表情の真央くんが言ってくれたので私は千秋に続きを促した。
「千秋、さっきなんて言おうとしてたの?」
「俺は、」
「俺は、」の続きは次回のお楽しみで!
因みに真央くんが悔しそうな表情をしているのは本当は美乃梨と千秋が進展するのを阻止するのを失敗したからです。貴翠くんの一人称は「私」です。女の子と区別がつきにくいかと思いますが知っておいてください!
ブクマ、⭐︎マークも是非お願いします!




