いよいよ今日は体育祭! 前編
高い秋空にポコポコと浮いている白い雲。
今日はいよいよ体育祭だ!
「美乃梨、本当にごめんなさいね。今日は外せない用事があって。」
「私は外せない用事があろうとすぐ終わらして向かいたいがな。」
申し訳なさそうに仰るお母様と違い、お父様は行く気満々だった。
「お父様が来て下さらなくても代わりに煌達も本堂さんも聡くんも観に来てくださるから私は全然寂しくないですよ?」
私がそう言うとお父様は「仕事にはちゃんと行くからそんな事言わないでくれ。」と言った。
私はにっこり笑って「お仕事頑張って下さいませ。」
と言った。
いつも通り景くん達が家に来るのを待ってから本堂さんの運転する車に乗って行こうとした時、煌達に呼び止められた。
「姉さん、頑張って下さい!」
「姉さん応援してます!」
「姉さんなら絶対大丈夫です!」
学校に着くといつもとは違い駐車場に停めさせてもらう。何故か運動会でも歩いて来る人が多いらしい。
いつも通り昇降口で景くん達と別れ私は千秋と教室へ向かう。
「体操服で登校って何か変な感じするね。」
「ああ、非日常感は否めない。」
教室に入るといつもは私達しか居ない時間なのにざわざわと人で賑わっていた。
「あ、ユーリちゃん、透くん、おはよう!」
「おっはー、みのりん!九条くん!」
「おはよう。美乃梨。千秋。」
「おはよう、秋月さん、透。」
私達が来たすぐ後に雅美ちゃんと爽夜くんが少し疲れた様子でやって来た。
「おはよ、って2人ともどうしたの?」
「聞いてよみのりん!瀧ってば手ぶらで家出ちゃうんだから。私と泉だけじゃ重いから爽夜に荷物と瀧達の見張りを頼んだんだよ。」
「お疲れ様、2人とも。」
そしていつもより10分程早いホームルームの時間が来た。凪くんとレイラちゃんは委員の最終確認があって早めに来ていたそうだ。
「本日は天気にも恵まれ無事体育祭を決行出来る。皆んな怪我をしないように気をつけて競技に出るようにな。体調が悪くなった場合はすぐに近くの先生方や救護室のテントに行くように。後水分補給はマメに取っておけよ。注意事項はここまでだ。円陣組むぞ!」
私は円陣が分からず千秋と顔を見合わせたが取り敢えず皆んなの真似をする事にした。
「白組、優勝するぞー!」
「「「おー!!」」」
そしてぞろぞろとグラウンドに出て行く。
開会式も終わりユーリちゃんは放送席へ、雅美ちゃんと爽夜くんと透くんは応援席へ、凪くんとレイラちゃんは委員の仕事で駆り出されて私と千秋は着替えに行った。
しばらくして種目の放送が流れて来た。
ユーリちゃんの声だ。
「プログラム1番、謎解き競争!スタートの合図でトラックの中心に置いてある席まで行き机の上に置いてある謎を解きその紙を持ってゴールまで走ります!これは足の速さだけでなく知能や頭の回転が必要となってくる競技です!栄えある1位に輝くのは果たして何組でしょうか!?ご来場の皆様、温かい拍手でお迎えください!」
私は急いで着替えて旗を持って千秋と応援に行った。
案の定千秋は学ランだった。もちろん私も学ランだ。
長いハチマキをつけてタスキをつけた。
「千秋、似合ってるね!」
「美乃梨も悪くないぞ。」
「じゃあ行こうか?」と言い私達はグラウンドの中心へ行き旗を振って応援する。
「白組優勝・白組・ファイト」
三笠先輩も学ラン姿で応援をしている。
因みに私が学ランを選んだ理由は体操服を着たまま上から着れるからだ。チアの衣装だと中に体操服を着たままでは無理だからだ。
私は3組目まで応援して着替えに行った。
次は私の出る借り人競争だ。私は何と1組目だった。「よーい、スタート!」と同時にパンッと音が鳴り走り始める。お題は5箇所に分けてありクジ形式で引いていく。私は3レーン目の箱に手を入れた。
出たお題は何と「超難関!あなたの事を好きな人!」
しかも(5人以上という人数まで。)
私の事を好きな人なんてその人を呼びに行って相手が私の事好きじゃなかったら傷つくんですけど!?
私がその場に固まってると放送をしていたユーリちゃんがマイクを持ってこっちに向かって来た。
「みのりんのお題は何だった?」
ユーリちゃんは私のお題を見るとすぐにマイクをオンにして
「先程トップでクジを引いた1年4組、今大注目な恋咲美乃梨さんが引いたお題はなんと、超難関!あなたの事を好きな人!しかも5人以上という人数。果たして集まるのでしょうか!?」
と大々的に言ってしまった。
すると赤組の応援席から「私、美乃梨さんのこと大好きです!走って下さい!」という声が聞こえた。
「音さん!?ありがとうございます!では今から可能性のある人の所へ向かうので着いて来てくれますか?」
「もちろんです!美乃梨さんのいる所ならたとえ火の中水の中!宇宙だって構いません!」
こう言ってくれてる事は冗談だと思っておこう。
……冗談だよね?私は心の中でそう思いながら客席にいる煌達の所に行った。
「煌、稔、架。私の事好き?」
「「「もちろん、当たり前ですよ!」」」
「ありがとう!一緒に走ってくれない?」
「「「姉さんの頼みを断る訳がありません!」」」
後1人だ。本堂さんは客席のここを離れられないし誰に頼もうかと迷っていたら丁度良いタイミングで聡くんがやって来た。
「聡くん!お願い!一緒に走って。」
「どうしたの?美乃梨。」
「実は私の事を好きな人っていうお題で5人以上連れて行かないといけないの。」
「そういう事なら任せて!僕は美乃梨の事、大好きだからね。」
「ありがとう!聡くん!」
そして私は、音さん、煌、稔、架、聡くんを連れてゴールに向かった。他の人はまだゴールしていなかったみたいで1着だった。
「では恋咲さん、お題の確認をさせて頂きますね。皆様は恋咲さんの事を好きですか?」
「はい!嫌いと言う訳がないでしょう?どこへ居ても必ずついて行きたいくらいには大好きです!」
「俺が姉さんを嫌う訳がない。姉さんは世界一だ。」
「姉さんを好きじゃないなどと言う奴は潰す他ないね。」
「姉さんは女神ですよ?女神を嫌う人間が何処にいますか?」
「美乃梨は僕の妹の様な存在というか妹そのものですね。好き以外の選択肢は最初からありませんよ?」
皆んなの答えにお題との判断をする人が固まってしまいユーリちゃんがアドリブで繋いでくれた。
「えーと、恋咲さんは皆さんに物凄く愛されている様ですね、お題は合格です!因みに関係性を聴いてもよろしいですか?」
「俺達は3つ子の弟です。」
「私は美乃梨さんの大ファンです。」
「僕は美乃梨の再従兄弟で実質兄かな?」
私は皆んなのお陰で無事1位でゴール出来た。
「皆、本当にありがとう!好きじゃないって言われたらどうしようかと思ったよ。」
「好きじゃないなんて選択肢最初からこの世に存在しませんよ?」
音さんが笑顔で言ってくる。煌達も何故か真顔で頷いている。
「美乃梨はもう少し自分に自信を持っていいと思う。今回だってファンクラブの子に頼んだら数十人くらいすぐに集まっただろうしね?」
「まあ、私は謙虚な美乃梨さんも好きという言葉では言い表せない程の感情を持っていますが女王様になった美乃梨さんも是非拝見したく存じます!」
「お、音さん?私、そんな気が強くはなりたくないです。」
「そうですか?それは残念です。」
そして2組目が走り始めて皆んなは元の場所に戻って行った。3組目は景くんの番だった。実は景くん、補欠だったんだけど出るはずだった子が足を怪我してしまったらしい。景くんのお題はそうだが何故か景くんは私を呼んでくる。
景くんのお題は「弱点を知っている人」
なんだかなあ、と思ってしまったが一応競技なので一生懸命走る。判定する係の人に「弱点知られてるんですか?」と聞かれて頷くのは凄く複雑な気分だった。
そして1年の部が終わり退場したら私待ってくれていた千秋とまたすぐに着替えに行った。景くんも応援団として着替えに行くそうだ。
しかし衣装を見に行くとチアの衣装しか残ってなかった。仕方なく私はチアの衣装に着替えたけれど千秋は私が着替え終わった時もまだ着替えていなかった。
「千秋、衣装がコレしかないんだから仕方ないよ。」
「……流石にこれは。」
すると着替え終わった景くんもやって来て千秋に
「大丈夫。千秋なら絶対似合うよ。ウィッグを着けたら千秋って気付かれないと思うよ。ほら、早くしないと2年生の借り人競争始まるよ?」
と言った。千秋は顔を顰めてから大きい溜息を吐いて着替えに行った。
「千秋、凄い嫌そうな顔だったね。」
「そうだね。景くんは何て言うか凄いね。」
「そう?ありがとう。じゃあ僕先に行くね。千秋の姿は見たいけど応援終わってから見る事にするよ。」
しばらくして着替えた千秋がやって来た。
「千秋、ウィッグはどれが良い?」
「出来れば俺だとバレない奴で。」
「じゃあ黒髪ロングのこれとか良いと思う。」
「……じゃあ、それで。」
私は(ウィッグを着けた)千秋の髪をチアらしくポニーテールに結んだ。
「まあ、凄く美少女になっているわ。この学校で1番じゃないかしら?では行きましょう。あ、何と呼べば良いのかしら?千秋じゃバレてしまうし。」
「何でも良い。」
「じゃあ、あきこちゃんとか?」
千秋は凄く嫌そうな顔で頷いた。
そして2年生の部のアナウンスが入ったので応援の為に私達は走って行った。
「行こっ!あきこちゃん!」
千秋、いや、あきこちゃんは嫌々という様子でグラウンドの中心まで行った。私達がスタート前の気合入れというか応援的な感じでポンポンを使って踊っていると客席や応援席から
「キャー!!」
という黄色い声援が聞こえて来た。
きっと皆んな初めて見た『あきこちゃん』の可愛さに驚いてるんだな、と思い私は1人で勝手に納得した。
レースは滞りなく進み4組目、真央くんの番だった。
真央くんはスタートの合図と同時に走り出してトップでクジを引くと私達のいる方へとやって来た。
「美乃梨っ、ついて来てくれる?ってその子……千秋だよね?何、学ラン残ってなかったの?」
「何で分かるんだよ。」
「顔でしょ。多分千秋のファンの子達は気付いてるんじゃない?」
「いや、気付いてない事を祈る。」
「そんな事話してる場合じゃないよ。」
と言い真央くんは私を抱き上げた。
しかもお姫様抱っこというやつで、だった。
「ちょっと真央くん。私、走れるよ?」
「良いの。僕がこうしたいだけだから。」
「でも、私重いし。」
「何言ってるの?身長高い方なのに軽すぎるよ。」
そして真央くんはすぐにゴールに辿り着いた。
そしてまたしてもユーリちゃんがやって来て真央くんのお題を読み上げた。
「学校のアイドル!優しく大人っぽい2年生!神崎真央先輩!連れて来られたのは……またまた人気な恋咲美乃梨さん!お題はなんと学校1可愛いと思う人です!これはお題合格ですよね!?審判さんどうですか?」
審判の人はグッドポーズを出して「もちろんです。」と言った。
「では、恋咲さん。お姫様抱っこで連れて来られたのはどうしてですか?」
「私にも良く分かりません。」
「秋月さん、それは僕が美乃梨を運びたかったからだよ。」
「そうなんですか!?有栖川くんの時も合わせて恋咲さんは2度も選ばれています!これは伝説になりそうですね。」
そして2着の人が到着した。なんと連れて来られていたのは「あきこちゃん!?」だった。
その先輩のお題は
「推しor好きな人(グッズでも可)」だった。
あきこちゃんはお題を読み上げられて驚いていたけれど私はあきこちゃんを連れて来た先輩に見覚えがあるので多分毎朝昇降口の前までの花道みたいな所にいるうちの1人かなと思った。
審判にどちらかと聞かれた先輩は
「推し一択です!」
とマイクの前で堂々宣言。
ユーリちゃんは千秋だという事に気付いたみたいだけど審判の3年生は「そんなに美人な子いたっけ?」と首を傾げていた。
案の定ユーリちゃんは先輩とあきこちゃんにインタビューをする。
「先輩のお名前を伺っても良いですか?」
「私は龍田帆波です。」
「どうして九条く、あきこちゃんを連れて来たんですか?」
「どんな姿をしていようとも推しを見間違えるファンなんて居ないよ?」
「そうですか。じゃあ、あきこちゃんはどうでしたか?」
「俺、いや、私は気付いたら連れて来られていたので特に何も。」
ユーリちゃんが千秋にコソッと
『九条くんってバレない方が良いよね?』
と言った。
「この学校にこれ程の美少女が居たなんて……!まさか借り人競争で発見される事があるなんて聞いたこともありません。今日1日でいくつの伝説が出来るのでしょうか!?」
そして2年生の部も終わり私は3年生の部を応援する為にその場に留まった。千秋は次の競技が控えているので体操服に着替えに行く。
(凄く嬉しそうな顔だったな。)
そして3年生の部が終わった頃。
次の競技のアナウンスが鳴った。次は計算競争。
千秋は1年の部、真央くんは2年の部で出場する。
応援団は私と三笠先輩しか居なかった。
私は先輩とできるだけ声を振り絞って応援した。
先輩の吹く笛に合わせて私は旗を振った。
そしてスタートの合図で1組目が走り始めた。
「さあ、始まりました。計算競争!尚、この競技で解く問題は数学の先生方が頭を捻って考えた超激ムズ問題です!問題は20問で早さと正確さが求められます。全問正解だともうすぐ始まる中間考査で90点は確実だそうですよ!皆さん頑張ってください。」
1組目のトップの人は赤組で20点満点中15点と中々の高得点だった。2番目の人は白組で17点だった。3番、4番……と続いて行き集計の結果勝ったのは赤組だった。
2組目、3組目……と進んで行き、とうとう千秋の出るアンカーがスタートした。千秋はスラスラと問題を解いていき自信満々に先生に提出して採点をして貰っていた。点数は満点!
応援席から「流石九条くん!」「すげーな、千秋!」という声が聞こえて来た。
そして2年生の部が始まった。真央くんは3組目で待機している。もちろん2年生の方が難しい問題だ。
満点どころか半分取るのが精一杯の人が多いらしい。
真央くんの番が来た。真央くんは少し頭を捻りながらもトップで解き終えた。先生方は物凄く驚いていた。
採点が終了して放送部の人が読み上げる。
「神崎真央さんの点数は……な、なんと20点満点。このテストは3年の僕でも解けるか分からない問題なのにトップで満点です!凄い!凄すぎます!」
そう言いながら放送部の先輩は問題を作った先生方にインタビューをした。
「この問題を作った先生方、これは満点を取られると予想されてなかった様な難易度ですが今のお気持ちはどうですか?」
そう聞かれた先生方は口々に答えていった。
「そうですね。まさかこれ程の問題を解く生徒が居るとは思わないな。」
「これを解けたら中間考査は簡単すぎるだろうな。」
「もう少し応用を効かせておけば良かったな。」
「もっと難しい問題を出してみたくなりますね。」
「先程の九条といい神崎といい転入生、優秀過ぎやしませんかね。」
「一度対決をしてみたいですね。」
そして3年生の部も応援しきった私はやっと自分のクラスの応援席に帰る事が出来た。午後のチャンバラ合戦の応援もあるので着替えはしなかったけど。
「おっかえりー!みのりん!チアの衣装凄く似合ってるね。」
「レイラちゃん、ありがとう。そういえば係は?」
「私は午前の係だけど先輩が後は二人三脚だけだから応援席に戻って良いって言ってくれたの。」
「そうなんだ。凪くんは?」
「松岡達と一緒に前の方に居るよ。」
私とレイラちゃんも雅美ちゃん達ペアを応援する為、前に行った。
「よう、美乃梨。応援凄かったな。ここからでもはっきり見えたしな。」
「その衣装凄く似合ってる。」
「爽夜くんも透くんもありがとう。」
すると千秋は顰めっ面でムスッとしていた。
「ねえ、千秋どうしたの?」
私が聞くと爽夜くんと透くんが代わりに答えてくれた。
「あのポニーテールの超絶美少女、千秋だろ?って言ったら何で分ったんだって言って来てさ。」
「千秋、バレてないつもりだったらしいけど普通に考えてあんな美人いなかったんだから皆んな転入生の誰かって分かるのにな。特にファンは千秋だってすぐに分ったんじゃね?」
千秋はバレてないと思って応援席に帰ると殆ど全員にバレていた事が不服だったらしい。
まあ、何はともあれ二人三脚が始まったので皆んなで応援する事になった。今回は応援団に10人近く人が居た。真央くんも学ランで旗を振って応援している。
雅美ちゃんとユーリちゃんの番が来た。
「2人ともー!頑張れー!」
雅美ちゃんとユーリちゃんは最初のスタートに失敗して1番後ろだったが「1、2、1、2!」と声を合わせてどんどん巻き上げて行く。
「ユリー!雅美ー!」
「雅美!秋月!行けー!!」
最後の最後に雅美ちゃんとユーリちゃんは追い上げギリギリで1位ゴールだった。
「凄い!」
「な!まさかあそこまで追い上げるなんてな。」
「おーい、千秋。ちゃんと見てたか?」
「ああ、秋月さんも鳳も早かったな。」
「ユリも雅美も遅くまで練習してたからね。」
最後の組に景くんと和真くんのペアが居た。
2人はスタート時から凄い速さで楽々ゴールだった。
そして2年生、3年生の部も終わりお昼休憩のアナウンスが入った。
「御来場の皆様と生徒の皆さん、これより1時間のお昼休憩です。生徒の皆さんはお弁当を食べる前にはしっかり手を洗いましょう。1時間後各係や応援席に戻って下さい。」
私と千秋はまず本堂さん達のいる観客席に向かった。
観客席に着くと本堂さんに煌達と聡くん、花央さん達と見覚えのある人が2人居た。
近付いて行くと驚いた。
「「碧依くん!?」」
「久しぶりだね。美乃梨、千秋くん。」
「なんで美乃梨と知り合い何ですか?」
「どうして千秋くんと知り合いなの?」
「息ぴったりだね。千秋くん、僕と美乃梨は従兄弟同士なんだよ。美乃梨、僕は千夏の婚約者なんだよ。」
「そうだったんですね。」
「そうだったんだ。」
私はもう1人の人にも挨拶をした。
「ご無沙汰しております。神崎家当主夫君、神崎冬真さん。」
「久しぶりですね。恋咲家跡取り、美乃梨さん。」
私に続き千秋も挨拶をした。
「お初にお目にかかります。神崎家当主夫君、神崎冬真さん。以後お見知り置きを。」
「2人とも、午後も頑張ってくださいね。」
そして挨拶が終わる頃、景くんと真央くんもやって来た。今日のお昼は聡くん特製のお弁当だ。せっかくだからレイラちゃん達も誘おうと思い呼びに行った。
皆んなで探しながら歩き回っているとユーリちゃんの声が聞こえて来た。
「ユーリちゃん!ってあれその人達は……レンさんにヤマさんにトモさん!?」
「えっ、みのりん?4人揃ってどうしたの?てかお兄ちゃ達と知り合い?」
「お兄ちゃん!?」
私が驚いて固まっているとレンさん達が話し始めた。
「改めて、秋月蓮。誰かと思えば美乃梨ちゃんだったんだね。チアの服、似合ってるよ!」
「僕は秋月大和。優里達とは従兄弟だよ。久しぶり、美乃梨ちゃん。」
「俺は秋月誠、優里の兄だ。優里、みのりんって美乃梨ちゃんの事だったんだな。」
トモさんがユーリちゃんにそう言うとユーリちゃんは3人に向かって、
「だーかーらー!どうしてお兄ちゃん達がみのりんと知り合いなの!?」
と言った。
3人が中々答えないので呆れたユーリちゃんが私に聞いて来た。
「前、軽井沢に行った時の帰りにサービスエリアで会ったの。」
私が言うと景くんが「思い出した!」と言った。
「美乃梨ちゃんにナンパしてた人達ですよね?」
それを聞いたユーリちゃんはレンさんの胸ぐらを掴んで声を荒げて言った。
「何みのりんをナンパしてんの!?分ってる!?お兄ちゃん達私と同い年の子をナンパしてんだよ?」
レンさんは両手を挙げて
「最初はナンパ目的だったけど流石に美乃梨ちゃんが中1って言ったからお話しただけだから。」
と言った。ユーリちゃんが私の方を見て「本当なの?みのりん?」と聞いて来たので頷くとレンさんの服を掴んでいた手をパッと話した。
「まず、お兄ちゃんもヤマもトモくんもナンパなんてしてるんだね。やば……。」
「ちょっと優里、そんな事言わないでよ。っていうか軽蔑した目、やめて。お兄ちゃん傷つく!」
「は?軽蔑されるような事をしたのはそっちじゃないの?」
「俺はしてない。可愛い子だな、って思って話しかけただけだから。」
「トモくん、それナンパと変わらないよ。芸能人のスカウトマンじゃないんだからさ。っていうかトモくんまだ高校生じゃん?」
「僕もしてな、」
「ヤマはナンパしてるの意外じゃないし、なんなら見かけたら事あるから。」
「美乃梨ちゃん、優里が虐めるんだけど。」
何故かヤマさんは私に助けを求めて来た。
「えっと、現行犯を見られていては言い逃れ出来ないのでは?」
「美乃梨ちゃんの純粋な正論が心に刺さる……。」
ユーリちゃんは「あっ!」と声を上げた。
「みのりんの用事って何?」
「そうだった。皆んなでお弁当食べない?」
「良いね!お兄ちゃん、お弁当取って。」
「行ってらっしゃーい!」
と言いながらレンさん達は手を振っていた。
次は爽夜くん達の所に向かった。
「爽夜くん、雅美ちゃん、凪くん!一緒にお弁当食べない?」
「良いよ!でも、」
と凪くんが言いかけた時、
「みのりちゃんだー!」
と言う元気な声が聞こえて来た。
「久しぶり、雫ちゃん。」
「そのふくかわいい!あいたかった!ねえねえ、わたしもいっしょにおべんとたべたい!」
雫ちゃんがそう言うと霜くんや流くんも「一緒が良い」と言い出した。
「私は構わないんだけど……こんなに大人数で食べられる場所、ある?」
「どうだろう?」
「先に姫野誘わなくて良いのか?」
千秋に聞かれたので私はレイラちゃんを探しに行く事にした。レイラちゃんは中庭の方に居た。
「レイラちゃん、一緒にお弁当食べない?」
「えっ、良いの?」
いつにもなく弱気な返事が聞こえて来た。
「どうしたの?」
「私、日本の学校に来てから初めての体育祭で張り切り過ぎたみたい。」
ハハッと弱々しく笑う私はレイラちゃんに違和感を覚えた。
レイラちゃんに一体何が……!
長くなりそうだったので前編と後編に分けました。
皆さんは体育祭に思い出はありますか?
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