一つ目の試練
〜王子様〜それは漫画の中だけのことだと思っていた
私の名前は恋咲美乃梨実は私の家には秘密があるの。それは私たち恋咲家は代々魔法使いの家系ということ。私は恋咲家の跡取りなの。恋咲家では13歳の誕生日からいくつかの試練が始まるの。
ピピピピッ、ピピピピッ、
眠たい頭に響く電子音。
午前0:00私の13歳の誕生日。
これから試練の内容が発表される。
(ふわぁ〜、眠いわ。何故こんな時間に試練の発表をするのかしら)
私は正装のコスモス色のローブを被るとお父様達のいるホールへ向かう。
「美乃梨様、心の準備は大丈夫ですか?」
使い魔兼お世話係のシャルルが話しかけて来た。シャルルは人の姿だけれど魔力から形を保っているから妖精のような存在かしら。
「ええ、大丈夫よ。少し眠たいだけよ。」
私は伸びをしながら返事をする。
ホールにはすでに多くの人が集まっていた。
誕生祭も兼ねているので一族で集まっていた。
(私が跡取りだからって一族みんな集まる必要なんてないのに)
私は申し訳なさと重い気分を隠しながら笑顔で挨拶をする。
「皆様、こんばんは。今日は私のために集まっていただきありがとうございます。今日で私は13になりますので試練の発表が行われます。皆様もご一緒に見届けて頂くこと大変嬉しく思っています。今日はパーティーでもあるのでぜひ楽しんでいってくださいね。」
長い挨拶の後、お父様とお母様からお祝いの言葉を頂いた。
「美乃梨誕生日おめでとう。今日でもう13になるのだな。お前が生まれた頃はとても小さくて本当によくここまで……」
「あなた、昔話は後にして頂戴。」
お母様がお父様のマシンガントークを止めてくれた。相変わらずお父様のお話は長い。他にも挨拶に回らないといけない為、お母様には感謝しなければならない。
「美乃梨、試練の発表もありますが、誕生日なのですから気を詰めすぎずにね。」
「ありがとうございます。お母様。」
お父様とお母様のお祝いの挨拶が終わった後、三つ子の弟達がお祝いに来てくれた。弟達は私より2つ下の11歳。
長男の煌はクールでとても頭が良くしっかり者。
次男の稔は優しくておっとりしていて人当たりが良い。
三男の架は努力家でとても真っ直ぐ自分の意志を持っている。
「「「姉さんお誕生日おめでとう」」」
そして3人ともとても可愛い自慢の弟!
「3人とも、ありがとう!あなた達の試練ももう2年後ね。お手本になれるように頑張るわね。」
午前1:00マイクを持ったお父様がホールの中央へ行った。鼓動が速くなる。いよいよ試練の発表だ。
「試練の内容を発表する。美乃梨の一つ目の試練は、魔法使いとバレずに普通の学校を卒業すること、だ。」
(えっ!?)
心の中で叫んだ。なぜなら私たち魔法使いは魔法を専門的に習うことのできる特別な学校に通っているから。
(普通の学校なんて行ったことがないし、なにより魔法使いとバレずに過ごすなんてもっと無理!)
弟達やシャルルが心配そうな顔でこちらを見ている。
落ち込んでいる場合ではない。弟達には見本をみせたいし、シャルルにも心配かけられない。
「分かりました、お父様。私、恋咲美乃梨はこの度13の歳を迎え一つ目の試練をお受けいたします。」
大きなホールに収まりきらないほどの歓声や拍手が起こった。