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王子様は1人じゃないっ!  作者: 華咲果恋
本編2年生
108/123

番外編 弟の誕生日

いつもよりも少し早い時間に起きてきた弟は、基本的に朝が弱いため眠たそうに欠伸をしている。


「おはよう、真央。それと、誕生日おめでとう。」


「兄さん、おはよう。ありがとう。」


今日で弟も15歳だ。試練は今年か来年くらいのものが最後になるだろう。弟の真央は一つ目の試練の難易度が他の者よりも難しいものだった。

その為、残りの試練はそれ程難しいものは残っていないはずだ。


真央は少し落ち着かない様子を見せる。起きてから時間が早かったのも緊張しているからだろう。


「そんなに緊張しなくても良い。今回が最後の試練とは限らないからな。人によっては試練が7つあることもある。肩の力を抜け。」


「兄さんは試練の発表の時、緊張しなかったの?」


「そうだな。自分の実力には自信があったし、私の場合は2つだけだったからな。」


「良いな、兄さん。」


真央は私を羨んでいるが、私は真央の方が何倍も羨ましい。魔法使いとは関係のない普通の学校に通えている事が。普通の魔法使いにとって、それがどれ程憧れることか、真央は分かっていないらしい。


勿論、今までの環境とのギャップを感じる事も多いだろうし、魔法使いという秘密を抱えて過ごすという罪悪感もあるかもしれない。それでも、魔法使い以外の友人が居ない私としては、どうしても羨んでしまう環境だ。


「そんな事ない。それより、美乃梨さんとの事については確実に聞かれるだろうが、答え方は考えてるのか?」


婚約者候補という立場はとても不安定なもので、縁談を持ち掛けられる事もある。その為、婚約者に選ばれないと悟られると今度は縁談の対処に追われる事となる。


「どうにかはぐらかすよ。」


「そうか。で、実際はどうなんだ?美乃梨さんと。」


「分かっているのに聞いてこないでよ。美乃梨はきっと千秋と婚約するよ。両思いなんだから。僕より兄さんの方が縁談を持ち掛けられるんじゃない?お見合いだっていつも断っているし。」


真央の言う通りだ。

私の周りで一番に候補として上がっているのは律だ。だが、律には片思いの相手がいる為本人が嫌がっている。私としてもあまり気乗りはしない。


1人、私と同い年の者が九条家にいる。が、彼女はフランスに居る為10年以上会っていない。


「そうだな。だが、今日の主役は真央だ。実際真央は美乃梨さんの事が好きなのか?」


「今はもう失恋して吹っ切れたって感じかな。」


「そうか。今日の誕生会の招待者は神崎家と分家だけだと聞いたが、美乃梨さん達は招待しないのか?」


「また今度学校の友達と一緒に皆んなでお祝いしてくれるんだって。お祝いのメッセージは今朝来ていたし。それに、公式の場では会話に気を付けないとつい美乃梨と千秋の2人をからかってしまいそうだからね。」


真央は首をかきながら笑った。

本当に吹っ切れているようなので心配の必要は無さそうだな。


***

誕生会が始まり、真央がマイクを持って挨拶をした。真央の挨拶が終わると、早速美乃梨さんとの関係について探る者が出てくる。


少々不憫に思い、私が身代わりになる事にした。


「真央は本日誕生日なので質問はその程度に済ませてくれ。」


質問の相手を私に代えると、真央にはこの場を離れるように伝えた。


「那央様はご結婚はどうなさるのですか?」


「いずれは、するつもりだがまだ相手が見つかっていなくてな。」


「そうですか!では、うちの娘はどうでしょう?年齢は那央様より4つ程下ですが、」


そう聞いて来た者は話に上げた娘を呼び、戻って来た。


「初めまして。花野(めぐみ)です。」


「我が娘ながら顔は整っていると思います。どうですか?」


「すまないが、席を外して貰えないか?」


私の言葉に期待したのだろう。

父親はすぐに私達の側から離れていった。


「恵さん、は、他に思っている方がいらっしゃるんですよね?」


私の言葉に目の前の女性はバツが悪そうに目を逸らした。


「父から、那央様に気に入られるようにと言われておりました。ですが、私はその、矢城さんの事がずっと前から……」


「別に相手を聞いている訳ではありません。」


「すみません。」


「謝罪を求めている訳でもありません。ただ、貴方が私を断ったとなると後々の貴方の立場が悪くなると思います。ですから、御父上には私に忘れられない人がいるとでも伝えておいて下さい。」


「っ、はい!ご配慮頂き、ありがとうございます。」


彼女が私の側から離れると、近くのグラスを手に取った。


「忘れない人、つくっておかないとな。」


そんなひとり言は誰にも聞かれないはずだったが、何故か私の後ろに居た者に聞かれてしまった。


「忘れない人をつくるって、何それ?」


笑いながら聞いてくるこの男は物心がついた時からの幼馴染だ。


「どうして居るんだ、(あき)?」


「どうしてって、これでも僕は真央くんの義兄(あに)なんだよ?僕の義弟でもあるし、可愛い奥さんの弟の誕生日なんだから祝いに来るに決まってるでしょ?」


「私の前で姉上のことを可愛い奥さんなんて惚気ないでくれ。聡が結婚して幸せなのは良い事だが、姉上との惚気は弟として友人として複雑すぎて、聞きたくない。」


私が耳を塞ぎながらそう言うと、聡が肩を叩いた。


「那央って、本当に優しいよね。で、さっきの忘れられない人って?」


私は聡に、先ほどの事を話した。


「私に忘れられない人が居れば、周りから結婚の催促をされることも無くなると思ったんだ。」


「で、相手に困ってるのか。じゃあ千弦(ちづる)で良いじゃん。那央の初恋なんだし。」


最後のひと言は口にしなくて良いと思いながらも、聡の案は候補の一つとして持っておこう。そう考えていると、


「千弦ちゃん!懐かしいわね〜!」


「そうね。元気にして居るかしら?」


また盗み聞きをする者が出た。

この会場は魔法使い以外居ないため、気配が混ざり合い、読むのが難しい。


「姉上も麗華も盗み聞きは辞めて下さい。」


「あら、盗み聞きなんて失礼ね。」


「そうよ。真央の試練の発表をするから呼びに来てあげたのよ。」


とうとう真央の試練が発表された。


「試練の内容を発表します。真央の三つめの試練は攻撃系魔法の取得です。今後重要になって来ると考えられる為、設ける期間は1ヶ月とします。また、この試練の合格をもって、試練を終了とします。」


麗華による発表が終わり、真央が受諾して試練の発表が終わる。


「僕、神崎真央は三つ目の試練を受ける事をここに宣言します。」


最後の試練という事もあり、真央の顔は引き締まっていた。


そして夕方にはパーティーも終わり、自室へ帰ろうとしていると、


「那央、さっきの話詳しく聞かせて頂戴!」


と楽しそうな表情をした麗華に捕まった。

麗華に連れられ、向かったのはお茶会室だった。


室内には既に、姉上と聡と冬真の弟である晶太(しょうた)が居た。


「何故、晶太(しょうた)も居るんだ?」


「兄さんの代わりだから気にしないで。」


「冬真はどうしたんだ?」


と聞くと、麗華が答えた。


桜樹(おうき)桃弥(とうや)のところよ。久しぶりの公式の場に出たんだから休んで来てって追い払われたの。」


「我が兄ながら良い夫だよねー」


「そうだな。」


「冬真が良い夫なのは前からよ。って、それよりもどうしてさっき千弦の名前が出ていたの?」


麗華にも聡と同じようにことの成り行きを話した。


「へえ、それで。」


「確かに千弦ちゃんだったら周りも口出ししにくいわね。」


「ねえ、千弦って誰の事なの?」


麗華と花央の会話を聞いていた真央がそう聞いて来た。千弦が日本に居たのは真央も晶太も小さい頃だったし、数回しか会っていないから覚えていないらしい。


「彼女は九条家当主の姪で、私や麗華達の幼馴染なんだ。12年前にフランスに行って以来会っていないがな。」


「12年間会っていないのは那央だけよ。私は何度か麗華と会いに行ったもの。ね、麗華?」


「ええ。最後に会ったのは冬真と花央と千夏と一緒に5年くらい前に会いに行った時かしら?丁度お父様達もフランスに居た時だから。まあ、千夏は2年に一度家族で会いに行っているみたいだけど。」


「そう言えば、行っていたような気もするな。」


私の発言に姉上は溜息をついた。


「那央も誘ったわよ?それなのに貴方、"会いに行く理由がない"なんて意味の分からない事言って断るし。」


「那央は初恋だったから仕方ないわよね。」


麗華が姉上に続いてそう言った。


「兄さんの初恋!?」


「何でそんなに面白い事黙ってたの!?」


麗華の発言に、真央と晶太が食い付いた。


「聡も麗華も、人の初恋をそんなに誰かに言いたいのか?」


「僕は麗華さんとは違うから!純粋に懐かしんでるだけ。」


「私は面白がっているだけよ。那央ったら告白もしなかったんだから。もしかして本当はまだ好きなの?」


「違う。10年以上会っていないのにそんな感情が残っている訳ないだろう。」


私がそう言うと、麗華は不敵な笑みを浮かべた。


「……楽しみね。」


音としては届かなかったその発言は、京翠に教えて貰った読唇術のお陰で難なく理解出来た。


「何が楽しみなんだ?」


「答え合わせよ!那央のさっきの発言の、ね!」


微笑みながらそう言った麗華に、何やら嫌な予感が私の中に生まれた。

遅くなりました!今回は真央くんの誕生日ですが、主役は兄である那央さんです!



次回もお楽しみに!

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