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王子様は1人じゃないっ!  作者: 華咲果恋
本編2年生
107/123

慧星くんの誕生祭 後編

「おはようございます、音さん。」


「おはようございます、貴翠さん。」


本日は慧星さんの誕生祭。

私は、音さんの恋人として招かれている為、朝食を終えるとすぐに音さんのお宅へと伺った。


「貴翠くん、お久しぶりね。お母様が何か言って来た場合は無視して良いからね?」


「貴翠くん、音の事をよろしくお願いします。」


「承知致しました。」


音さんのご両親である、奏歌さんと想真(そうま)さんにご挨拶をした後、本堂家の車に乗り会場へと向かった。


「貴翠さん、本日の美乃梨さんの装いはどうしでした?」


「今お伝えしても構いませんが、音さんはそれでよろしいのですか?」


「いえ、やっぱりやめておきます。美乃梨さんにお会いするのが更に楽しみになりますから!」


音さんは明るく笑った。


「そう言うと思っていました。」


「貴翠さん、お祖母様は結婚などの話をし出すと思いますが、本当にスルーしてくださって構いませんので……」


「音さんは、お祖母様との仲は良好では無いのですか?」


私の質問に、音さんは少し困ったように答えた。


「仲が悪い訳ではありません。ただ、お祖母様とは考え方があまり合わないんです。心配してくれている事は分かっていますが、結婚なんて、まだ早い話なのに……」


「そうでしょうか?美乃梨様がご結婚なさるのはあと4年後です。もしかすると、音さんも成人後すぐに結婚するかもしれませんよ。」


音さんは私の冗談めかした発言に、意外にも真面目な顔をして答えた。


「そうですね。貴翠さんとなら、高校卒業後すぐにでも。」


「音さん、私は構いませんが本当によろしいのですか?今後、恋愛感情を持つ相手に出会うかもしれませんよ?」


私が少し眉を顰めてそう聞くと、音さんはまた困ったような表情を見せた。


「私にとって、最も大きな感情を持つ相手は美乃梨さん以外居ませんから。例え、他の誰かに恋愛感情を持つことがあったとしても、美乃梨さんへの感情を上回ることはないでしょう。」


「音さんは、私と同じですね。」


美乃梨様に対して抱いている私の感情は敬愛や尊愛、恋愛など、様々な感情が入り混じった複雑なものであり、簡単に一言で表すことは難しい。

音さんもきっと、私と同じように複雑な感情を抱いているのだろう。


「貴翠さんは私の1番の理解者だと思っています。もし、恋人という関係が無かったとしても、貴翠さんとは仲良くなれていたと思います。」


「私も同感です。」



 音さんの家を出て、1時間程度で慧星さんの誕生祭の会場へと到着した。


「では、参りましょう、音さん。」


「はい。エスコートよろしくお願いします、貴翠さん。」


会場に足を踏み入れると、参加者は揃って私達に注目した。音さんから、少し難しい立場にある事は聞いていたが、これほど注目されるとは思って居なかった。


「美乃梨さん、見当たりませんね。」


堂々とした姿勢で凛と澄ました表情を浮かべながらも、いつも通りの言葉を発する音さんに、彼女の強さを感じた。


「美乃梨様なら慧星さん達といらっしゃると思いますよ。ご挨拶に伺いますか?」


「美乃梨さんにご挨拶したいのは山々ですが、そうするとお祖母様への挨拶がとても面倒くさくなってしまうので、お楽しみに置いておきます。」


そして、音さんと共に会場の中心地に向かい、始めに慧星さんのご両親へご挨拶に向かった。


「お久しぶりです、飛鷹伯父様、向日葵伯母様。ご存知かとは思いますが、こちらは現在お付き合いをしている本堂貴翠さんです。」


「久しぶりだな、音。貴翠くん、まさか音の恋人が君だったとは!とても驚いたよ。」


飛鷹さんは面白そうにそう仰った。


「貴方、冗談はそのくらいに。貴翠くん、美乃梨ちゃんから聞いています。音の事を今後もよろしくお願いしますね。」


「はい。」


お二人へのご挨拶を終え、とうとう音さんのおばあさまへのご挨拶へと伺った。


「お久しぶりですね、音さん。中々顔を見せてくれませんがお元気でしたか?」


「はい。お祖母様こそ、お元気そうで何よりです。」


「そちらの方は?本日は貴方に婚約者の話をしようと思っていましたが……」


「その必要はございません。こちらは現在お付き合いさせて頂いている、本堂貴翠さんです。」


私は音さんに紹介して頂き、一歩前へ進み、挨拶をした。


「初めまして。本堂貴翠です。昨年から音さんとお付き合いさせて頂いております。」


「初めまして。私は二条文乃です。本堂、と言えば"本堂家"の方かしら?」


「はい。」


「なら、このような場は初めてでは無さそうですね。本堂家ですか。隆篤さんをご存知ですか?」


「勿論です。私の祖父ですから。」


私がそう返答すると、先程までの少し心配そうな表情から安堵するような優しい顔付きへと変化した。


「そうですか。隆篤さんからはよく孫の自慢話を聞いていました。武術に優れている長男、類を見ない程聡明な次男、洞察力の鋭い三男。3人のうち、2人の孫は同じ方を主人としていると。」


「祖父がそんな事を……」


思わぬ場所で、お祖父様からの評価を知ることが出来、私は柄にもなく内心では悦ばしく思っていた。


「貴翠さん、音とお付き合いするという事は将来の事を見据えてでしょうか?」


「お祖母様、流石に時期尚早ですよ。」


文乃さんの発言に言い返すように音さんが仰った。


「何が時期尚早なんです。音さんの場合は少しでも早く身を固めるべきなんですよ。貴方の将来のためにも。あの子のような苦労は、」


「私の将来って、何ですか?自分の事は自分で決められます。お祖母様に決めて貰わなくても大丈夫です。」


「そうですか。ですが中学卒業後、二条家(こちら)に入るのは既に決まっている事ですよ。」


「分かっています。お祖母様が心配してくださっている事も、母が結婚後苦労した事も。分かっていますから口出しされなくても大丈夫です。」


音さんはそう言うと私の手を引き、何か話そうとしている文乃さんの元から離れようとなさった。


「音さん、よろしいのですか?」


私がそう尋ねると、音さんはその場に立ち止まって仰った。


「お祖母様、再来年からお世話になります。お祖母様に心配されなければいけない程、私は弱くありませんのでご安心なさって下さい。」


「分かりました。音さん、慧星さんへ挨拶に行って構いません。貴翠さんは少しお話良いですか?」


「はい。」


私がその場に残ると、音さんも私の側に留まり、文乃さんと私の話を聞いていた。


「貴翠さんなら分かって頂けると思いますが、二条家に関わるという事は身の危険は高まります。それでも、本当に音さんとのお付き合いを続けて頂けますか?」


「はい。ご安心下さい。音さんほど気の合う方はいらっしゃいませんので。」


「そうですか。では、音さんの事をよろしくお願いします。」


文乃さんはそう仰ると私達の元から離れられた。



 「私が想像していたような方ではありませんでした。」


文乃さんが離れられた後、私が音さんにそう伝えると音さんは首を横に振った。


「どんな方を想像していたんですか?」


「そうですね、音さんのお相手や将来の仕事について全て決められるような方かと。」


私がそう言うと、音さんが感心したように仰った。


「流石は貴翠さんですね。お祖母様は本来そういう方なんですよ。ですが、現在の当主は飛鷹伯父様ですから、あまり口出し出来ないだけなんです。実際、飛鷹伯父様が当主になられるまでの間は私にも慧星にも、生まれたばかりの茉莉花にも許婚がいたくらいですから。」


音さんは疲れきった表情で近くに置いて居たグラスを手に取った。


「音さん、美乃梨様から音さんにお会いしたいと連絡が来ましたが、どうされますか?疲れているようでしたら少し休憩しても構いませんが。」


「分かりきったことを聞かないで下さい、貴翠さん。美乃梨さんはどこですか?」


「そう言うと思っていました。」


私達はすぐに美乃梨様の元へと向かった。


「美乃梨さん!おはようございます!いつにも増してお美しいです!」


「ありがとう、音さん。文乃さんの事大丈夫だった?遠くからしか見えなかったから何があったのかは分からないけれど。」


「大丈夫です!ご心配お掛けしてすみません。少し面倒臭い人と挨拶しただけですから。あ、慧星誕生日おめでとう。」


美乃梨様の隣にいらっしゃった慧星さんは少し呆れたような顔をされた。


「主役をついでみたいに扱うなよ。」


「実際ついでみたいなものなんだから仕方ないでしょ?それより、隣の方は彼女?」


「ああ。」


「初めまして。高橋涼香です。二条先輩とは少し前からお付き合いさせて頂いています。」


「初めまして。星川音です。慧星とは従兄弟です。高橋さん、慧星で良いんですか?よければ誰か紹介しましょうか?」


「いえ、二条先輩は私には勿体無いくらいの素敵な方です。」


御二方がひと通り挨拶を終え、私も続いて挨拶をした。少しの間談笑していると美乃梨様が少し周りを気にする様子をされた。


「千秋様なら先程いらしていましたよ。景様と真央様もご一緒に。」


「貴翠!私、何も言っていないけど……?」


「そうですね。ですが表情には出ておりますので。心配されなくとも、主役の慧星さんへの挨拶のためにこちらにいらっしゃると思いますよ。」


美乃梨様は少し赤くなりながら、頷かれた。

当然、その様子を隣で見ていた私の恋人は美乃梨様がとても可愛らしいと騒いでいらっしゃる。


「やはり音さん以上に気の合う方は居ませんね。ですが、美乃梨様が少し困っていらっしゃるようですので程々にお願いします。」


「すみません、つい!」


少しして、千秋様と景様と真央様がいらっしゃった。御三方とも慧星さんにお祝いの言葉とプレゼントを贈られた。それに続くように、茉莉花様と音様もプレゼントを渡された。


「美乃梨、おはよう。貴翠さん、京翠さん、おはようございます。」


「おはよう、千秋。もし良かったら、パーティーが終わった後、一緒に近くの公園に行かない?」


「ああ。パーティーの後、門の前で待っていたら良いか?」


「ええ、ありがとう。」


美乃梨様は幸せそうに微笑まれた。

私の隣にいらっしゃる音さんに少し小声で話しかけられた。


「美乃梨様が可愛らしいのは良いのですが……少し複雑ですね。」


「……そうですね。」


私が共感した事に対して驚いたのだろう。音さんは少し目を大きく開き、口に手を当てていた。


「貴翠さん、最近少し変わりましたね。少し前は何もかもを隠しているような感じでしたが、最近は本音に近い言葉を聞けるようになった気がします。」


「そうですか?音さん相手だからですかね。」


「嬉しい事を言ってくれますね。私も貴翠さん相手には本音で話せます。私、美乃梨さんの次に貴翠さんの事好きですから。」


「ありがとうございます。私も、美乃梨様と煌様の次には音さんの事が好きです。」


私達が話していると、慧星さんに声をかけられた。


「貴翠と音って変な関係だな。それに、2人して美乃梨が一番って変わってるよな。」


慧星さんが突然訳のわからない事を仰った為、私と音さんで美乃梨様の良さをパーティーの終わり際まで延々と語ることになりました。


「私から慧星さんへのプレゼントは美乃梨様の良さについて纏めた論文に致しましょう。」


私がそう申すと慧星さんは迷惑そうな顔で


「遠慮する!」


と仰ったが、音さんは興奮したような顔で


「見てみたいです!」


と仰った。


「では音さん、後日お渡しいたしますね。慧星さんもご安心下さい。特別に美乃梨様の御写真付きでお渡しいたしますから。美乃梨様から自由にして良いと頂いた貴重な御写真です。」


「貴重なんだろ?俺は別に……茉莉花にでも渡してやれば喜ぶと思うぞ?」


「茉莉花さんは同じ写真を既に3枚ほどお持ちですから。」


「いや、それでも俺はいらないから。美乃梨の良さはすでに十分知ってるし。」


慧星さんが堂々と仰った為、私は引き下がった。


「では、何をプレゼント致しましょうか?」


「そうだな。涼香が遠慮しなさそうなデート場所を教えて欲しい。その周辺にカフェがあったらその情報も頼む。貴翠はそういうの得意だろ?」


「分かりました。調べ次第、兄さんを通して情報を送ります。」


「よろしく頼む。」


そう笑う慧星さんの表情は、先程の美乃梨様と同じように幸せそうだった。

慧星の誕生祭の筈が、貴翠と音がメインの話になってしまいました。



次回もお楽しみに!

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