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王子様は1人じゃないっ!  作者: 華咲果恋
本編2年生
106/123

慧星くんの誕生祭 前編

「姉さん、煌と架は後から来るそうなので先にいきましょう。」


「ええ。稔は煌達と一緒じゃなくても良いの?」


「はい。久しぶりに姉さんや京翠とゆっくりお話ししたいですから。」


今日は慧星くんの誕生祭だ。

煌と架は聡兄様と花央さんと一緒に後から向かうらしいので、私は京駕さんの運転して下さる車に乗り、京翠と稔と共に二条家本宅へと向かった。


今回、貴翠は音さんの恋人として招待を受けている為、音さんと一緒に会場へ向かうそうだ。


「稔、お仕事の方はどう?」


「今の所、まだまだ慣れていない事ばかりで、スタッフさんや先輩方に色々アドバイスを頂いています。」


「そう。お仕事は楽しい?」


「はい!とてもやり甲斐ある仕事です!」


「あ、そう言えば凪くんから聞いたんだけど……稔と泉ちゃんって知り合いだったの?」


私の質問に、稔は元気良く答えた。


「はい!スイミングに通ってた頃、休憩時間によく一緒に遊んでいました。まあ、スイミングに通っていたのが6歳の頃でしたから、忘れられていると思っていましたが。」


「良かったわね。ふふ、将来は可愛い妹が出来るのかしら?」


私が揶揄うようにそう言うと、稔は笑顔で頷いた。


「はい。きっと泉ちゃんは姉さんの妹になりますよ。それに、紗奈だって架と結婚するでしょうし、賑やかになると思いますよ。」


「あら、稔は泉ちゃんの事を本当に好きなのね。それなら来年、私達と同じ学校に通えたら良いのに。泉ちゃんも入学してくるわけだし。」


「それ、良いですね。泉ちゃんと一緒に学校に通えるなんて楽しそうです。……それに、姉さんとも一緒に学校に行ける。」


稔は少し考えた後、私の方を見て言った。


「お父様とお母様に相談してみます。」


「稔と同じ学校なんて、考えるだけで楽しそうね!」


「はい!あ、そう言えば姉さんと京翠は星兄(しょうにい)へのプレゼント、何にしたんですか?」


「私は慧星くんに頼まれていたスイーツコンテストの関係者パスよ。茅聡(ちさと)大伯父様に頼んで特別に用意してもらったの。」


「そうなんですか?僕も久々に茅聡大伯父様にお会いしたいです。京翠は何を用意したんですか?」


「私はハンドクリームと化粧水を。慧星が最近、肌が乾燥すると言っておりましたので。」


京翠はプレゼント選びのセンスが良い。

特に化粧品には詳しいため、よく相談させて貰っている。


「姉さんも京翠もちゃんとしてますよね。僕はギリギリまで迷ってしまって、昨日ノリで選んでしまったんです。これなんですけど……」


自信なさそうに稔はプレゼントを見せてくれた。

稔が手に持っていたのは《俺は大人です》《俺は素敵なお兄様だ》《俺の彼女が可愛すぎる》と書かれた3枚のTシャツだった。


「星兄が最近変なメッセージばかり送って来るので、ついイタズラ心で。流石にダメですかね?」


「いえ、慧星なら逆に喜びそうですよ。」


「そうね、慧星くんはこういうプレゼントの方が嬉しいんじゃないかしら?」


京翠と私の言葉に稔は少し複雑そうな顔をした。


「喜んで貰えるのは何よりなんですが、いたずらしようとしたのも本当なので少し複雑です。……最近星兄の惚気多過ぎるんだよ。」


「そろそろ着くわね。私は茉莉花ちゃんと先に合流する予定だけれど、稔はどうする?煌達を待つ?」


「いえ、姉さんと一緒に茉莉と合流します。」


二条家本宅に着くと、茉莉花ちゃんと涼都くんと柏木さんが揃って出迎えて下さった。


「おはよう茉莉。今日は1人で迎えに来なかったんだね。」


「稔、おはよう。もう柏木の説教は懲り懲りよ。美乃梨お姉様!お久しぶりです!煌と架と聡お兄様と花央お姉様はいらっしゃらないんですか?」


「茉莉花ちゃん、久しぶりね。煌達は聡兄様と花央さんと一緒に後から来るわ。」


「では、先に会場に向かいましょう!」


茉莉花ちゃんは私と稔の手を引いて会場へと向かった。

会場に着くとそれなりの人数が集まっていた。

慧星くんは成人という事もあり、パーティーの規模は大きいらしい。


「お兄様ったら凄く浮かれてるんです。」


「どうして?」


「お付き合いしている方がいらっしゃるそうです。何でも、一目惚れしてアピールし続けていたそうで、先日やっと両想いになったそうです。私もまだ一度もお会いしていないのでどんな方かは分かりませんが。」


茉莉花ちゃんは呆れたように言った。


「なら、会えるのは楽しみね!」


「まあ、少しは楽しみですけど……」


「茉莉、本当は星兄が取られるのが嫌なんじゃないの?」


稔の発言に茉莉花ちゃんはすぐさま否定した。


「そんな訳ないじゃない!ただ、お兄様の学校の特待生と聞いたから気になっているだけでっ!」


「星兄の学校って名門校だよね?そこの特待生って事はかなり聡明な方なんだね。僕もお話を伺いたいよ。」


「ええ。だから会うのが楽しみなの。まあ、私はお兄様と同じ学校には行かないけれどね。」


「じゃあ、茉莉は今の学校の中等部に進学するの?」


「いいえ。私は美乃梨お姉様みたいに普通の学校に行くのよ!お父様とお母様には認めて貰えたし、お祖母様にもお祖父様から説得して頂いたの!」


茉莉花ちゃんは嬉しそうにそう言った。


「あ、美乃梨お姉様!音お姉様とお知り合いなんですよね?」


「ええ。同じクラスのお友達よ。」


「お父様から聞きました。音お姉様もお付き合いしている方を連れてくるんですって!音お姉様は昔から少し難しい立場に居ますので、お祖母様が少し面倒臭いようです。」


茉莉花ちゃんは眉を八の字にして言った。


「音さんが難しい立場?」


「はい。美乃梨お姉様がどこまで知っているのかは分かりませんが、音お姉様のお母様、奏歌(そうか)叔母様は当時の当主であったお祖母様が認めていない相手とご結婚なさったんです。お相手の方は作家の方で売れっ子というわけではなかったそうです。」


実質、音さんのお母様、奏歌さんが支えていたそう。

音さんのお祖母様は奏歌さんの負担を心配し、2人の結婚を反対したそうだ。しかし、奏歌さんは二条家と縁を切り、結婚をした。

結婚後、すぐに音さんを授かり、金銭面的に余裕の無かった音さんのご両親は娘の為、一度は縁を切った二条家に、金銭面的な援助を求めたそう。

音さんのお祖母様は援助の代わりに、中学卒業後、音さんを二条家の養子に取る事を約束したようだ。

二条家の中にはそんな複雑な立場の音さんをよく思わない方も多いらしい。


「そう。そんな事が……」


「でも、私は音お姉様なら大丈夫だと思います。音お姉様は誰よりも強いですから。」


「そうね。それに、音さんには貴翠も居るわけだし。」


「貴翠さんと音お姉様に何か関わりが……もしかして、音お姉様のお付き合いしている方って、!」


「ええ。本堂貴翠、私のボディーガードよ。」


私がそう言うと、茉莉花ちゃんは驚いたように目を見張った。


「音お姉様が、貴翠さんと……!でも、案外お似合いかもしれませんね。あの2人、似た雰囲気がありますし。」


「そうね。よく電話で話しているらしいし。」


茉莉花ちゃんと話しているうちに煌達が到着した。


「聡お兄様!花央お姉様!お久しぶりです!早くお会いしたかったです!」


「久しぶり、茉莉花。」


「お久しぶりです、茉莉花ちゃん。私も早く会いたかったです。」


茉莉花ちゃんが挨拶を交わすと2人共笑顔で返した。そして、本日の主役である慧星くんがやって来て誕生祭が始まった。


「皆様、本日は私の誕生祭にお集まり頂き誠に有難うございます。私は本日を持ちまして成人しましたので、皆様とより、仕事でお会いする事が増えると思います。精一杯努めますが、まだまだ未熟者の為、皆様にご迷惑をかけることもあるかもしれません。その時は、社長の息子だからと贔屓せず、接して下さると嬉しいです。では、本日は楽しんで行って下さい。」


慧星くんは挨拶を終えると私達の方へ向かって来た。


「美乃梨、稔、煌、架!紹介する、俺の彼女だ!」


慧星くんの後ろに立っていた方にはとても見覚えがあった。


「涼香さん、ですよね?」


「はい。律さんの妹さん、でしたっけ?」


慧星くんの付き合っている方はこの間行った海の近くのカフェでお会いした高橋(たかはし)涼香(りょうか)さんだった。


「すみません。自己紹介をしていませんでしたね。恋咲律の姪の恋咲美乃梨です。」


「涼香と美乃梨は知り合いなのか?」


話し始めた私と涼香さんに、慧星くんは怪訝そうな顔をした。


「はい。この間、美乃梨さん達がうちの店に来たんです。」


涼香さんが事情を説明すると慧星くんは「ああ〜」と納得したように言った。


「俺が律に涼香の家の店を紹介したからか。あ、美乃梨。今日、律は?」


「来ていないわよ?慧星くんからの招待状に律ちゃん宛てのものは無かったし。」


「あ!出し忘れたかも。じゃあ、律に『ありがとう』って言っといてくれ。」


「分かったわ。それよりも、慧星くんの彼女が涼香さんだったなんて、驚いたわ。」


私がそう言うと、慧星くんは言った。


「俺自身も驚いてる。涼香が俺の事を好きになってくれた事に。」


「お兄様、それ、惚気ですか?」


隣で話を聞いていた茉莉花ちゃんがそう言った。


「惚気じゃねえよ!本気で実感ないんだよ!俺、5回以上は振られてるし。」


私は思わず涼香さんの方を見た。


「出会ったばかりの頃は二条先輩は学校の有名人くらいにしか思っていなくて、そんな先輩に私が釣り合うわけないと思って……」


「そうなんですね。」


「でも、話してみると、有名人とかお金持ちとか関係ない普通の男子で、元気過ぎるところはあると思いますけど優しくて素敵な人だと思います。」


涼香さんは少し照れたように微笑みながらそう言った。見ているこちらが照れてしまう。


「涼香さん、お兄様で良いんですか?」


茉莉花ちゃんはすかさずそう言った。


「茉莉花、変なこと言うなよ!」


「だって、こんな素敵な方がお兄様の彼女だなんて信じられなくて!」


茉莉花ちゃんの意見に、稔も頷いた。


「確かに、星兄の彼女がこんなにしっかりした人なんて信じられない。涼香さんはさっき釣り合わないかもって言ってましたけど、逆ですね。星兄に涼香さんは勿体無い。」


「流石稔〜!私も全く同じ事考えてたわ!」


慧星くんは2人の意見に反論した。


「2人揃って酷すぎるだろ!確かに巫山戯る時もあるけどさ、俺だって、一応今日で大人の仲間入りなわけだし!」


「あ、そうだ!星兄、これプレゼント!」


稔は慧星くんにプレゼントを渡した。


「Tシャツ?面白いな!このTシャツ!稔ってやっぱりセンスいいな!」


慧星くんがはしゃいだようにTシャツを広げて言った。そこに後ろから声がかけられた。


「慧星さん、いくら誕生日と言っても浮かれすぎないようにして下さい。」


慧星くんは一度ビクッと肩を揺らした。


「お祖母様、すみません。」


声を掛けて来た女性は慧星くん達のおばあさまだそう。慧星くんにつられて茉莉花ちゃんも少し姿勢を正した。


「……」


「いつまで黙っているんです?そちらの方は貴方の彼女じゃ無いんですか?ただでさえ知り合いがおらず、不安な場でしょうに、貴方のせいで更に不安にさせているんじゃないですか?」


厳粛な雰囲気を持つおばあさまに諭され、慧星くんは涼香さんの事を紹介した。


「こちらはお付き合いさせて頂いている高橋涼香さんです。私の学校に特待生で入っていて、とても優秀な方です。」


「は、初めまして。高橋涼香です。」


「涼香さん、貴方、こういう場は初めてかしら?」


慧星くんのおばあさまは涼香さんに優しく尋ねた。


「はい。」


「そう。慧星さんとお付き合いしているならこれからもっと大きな会に参加する事も増えて来るでしょう。それに、二条家と関わる事で貴方の身も安全では無くなってしまうかもしれない。例えば身代金目当ての誘拐とかもあるかもしれないわ。」


「……」


涼香さんはおばあさまの言葉に驚いたような顔をした。普通は誘拐なんてそう頻繁に起こることでは無いのだろう。驚くのも無理はない、と思う。


「慧星さん。」


「はい。」


「貴方に、涼香さんを想う気持ちがあるのなら、お別れした方が2人の為になると思いますよ。特に、涼香さんの身は安全になります。貴方の結婚相手を強制するつもりはありませんが、涼香さんには負担が大きすぎると思います。」


慧星くんのおばあさまの言葉からは慧星くんと涼香さん、2人の事を心配している事がひしひしと伝わって来た。


「私なら、大丈夫です。一生懸命、二条先輩に釣り合う彼女になれるよう、頑張ります。」


「涼香……」


慧星くんは驚いたように目を見張った。


「本当に?きっと、心無い言葉を五万と浴びることになると思いますよ?」


「それでも平気です。二条先輩はこんな勉強しか取り柄の無い私を好きだと言ってくれました。何度も何度も!私はそんな直向きな二条先輩を好きになりました。その人に釣り合えるように努力するのは、当たり前です。」


「そうですか。……慧星さん、彼女にここまで言わせて黙っているのは格好悪いですよ。貴方が支え、守ってあげなさい。こんなに素敵な子、もう一生現れませんよ。」


「はい!あの、お祖母様。認めて下さったという事ですよね?」


慧星くんがおずおずと尋ねるとおばあさまは優しい顔で仰った。


「認めるも何も、私は彼女の負担を心配しただけです。こんなに素敵な子に思われるなんて、私の知らないうちに立派になりましたね。」


慧星くんと話した後、おばあさまは私達の方を向いた。


「初めまして。二条文乃(あやの)です。恋咲家の皆さんですね、飛鷹さんから聞いています。薫さんはお元気ですか?」


「初めまして、恋咲美乃梨です。父は元気ですよ。今日はお仕事の関係で来られませんが飛鷹さんとは頻繁に連絡を取っているそうです。」


「そうなんですか。皆さん、これからも私の孫達と仲良くしてあげて下さい。」


「はい。」


そして文乃さんはパーティーの参加者に呼ばれこの場を離れて行った。


「緊張しました……」


文乃さんが離れた後、涼香さんがはあ、と息を吐いた。


「涼香、お祖母様に認められたという事は、これから二条家の人間として接される事が多くなってくる。今更だが、俺の家の事情に巻き込んでしまって本当に悪い。」


「いえ、気にしてません!二条先輩の彼女として周りの人に認めて貰えるよう頑張ります!」


「周りの目なんて、別に気にしなくて良い。」


慧星くんの言葉に、茉莉花ちゃんと稔が揃って溜息をついた。聡兄様も少し呆れたような顔をした。


「星兄、全然分かってないな。付き合ってるだけならまだしも、将来結婚するなら多少は周りの目を気にしていないと結婚後、涼香さんの立場が悪くなるでしょ?」


稔の言葉に慧星くんは驚いたような顔をした。


「まさか涼香がそこまで考えてくれてるとは思わなかった。稔、よく分かったな。」


「星兄以外、皆んな気付いてるけどね。星兄が自分で言ったんでしょ?涼香さんは聡明な人だって。だからちゃんと先の事まで考えてるんだよ。」


稔の言葉に頷きながら、茉莉花ちゃんも言った。


「やっぱりお兄様に涼香さんは勿体無いです!涼香さん、今からでも他のお相手を探しましょう?私で良ければお手伝いしますよ?」


「大丈夫です!二条先輩は本当に優しい人なので。」


涼香さんはそう言って微笑んだ。

その時、少し会場にざわつきを感じた。

茉莉花ちゃんと慧星くんは知っていたかのような顔をして同じ方向を見た。


「美乃梨お姉様、音お姉様が到着したようです。」


「上手く行くと良いけど……」


慧星くんは心配そうに会場に入って来たばかりの音さんと貴翠を見つめた。

二条慧星 誕生日6/29


長くなりそうなので前編と後編に分けます。

後編は貴翠目線の予定です。

次回もお楽しみに!

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