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「へぇ、撃てたんだ」
ベンさんと感動を分かち合っていると、後ろからレオンさんの声がする。
振り向くと無表情のレオンさんとルイスさんが立っていた。
「レオン!女性にその態度はいけないよ」
ルイスさんに怒られ、表面上は謝るレオンさんだが、顔は全然謝ってない。
レオンさんから感じる敵対心に心がざわつく。
「レオンさん、彼女だって頑張ってるんです。女性嫌いもそこまでくると病気ですよ」
ベンさんも彼に怒ってくれるが、レオンさんって女性嫌いなんだね。
めっちゃ女性にもてそうだけど。・・・だから嫌いなのかな? 過去に何かあった的な。
敵対心の理由がわかり溜飲が下がる。
「一応、女性が屯所で1週間暮らすことになるとは、みんなに伝えてる。緊急事態だからないと思いたいが、女性だからと襲ってくる野郎がいるかもしれないから十分に注意してくれ」
「わかりました」
ルイスさんの言葉に私は背筋が伸びる。男社会に女がいるって大変だな。
「移動するときは俺と一緒にすれば安全だから。基本、君は俺の班と行動することになると思うし」
「そうだな。ベンに守ってもらうといい。 夕方になる前にシャワーを済ませて、食事の準備を頼む」
夕食後は男性たちが順番にシャワーを浴びるそうで、先にシャワーを浴びておけということだった。
ベンさんと一緒にルイスさんとレオンさんと別れ、シャワールームへと連れていってもらう。
「そういえば、急にこんなことになったから、替えの服とかないよね? 俺のシャツと短パンでよければ貸すよ?寝るのにその格好は苦しくない?」
タイトスカートのリクルートスーツを指差しベンさんは小首を傾げる。
まあ、その通りであるが、妙齢の男性に服を借りるというのはなんか気恥ずかしい。
かといって1週間ずっとこの服を着続けるのも衛生的によくないのも事実である。
「お願いできますか?」
羞恥心より清潔感を優先した私は、ベンさんから洋服一式を借り、シャワールームにいる。
ベンさんはシャワー室前の廊下で待機していてくれるそうだ。
・・・なんかVIP対応だな。
「さて、どうするか」
シャワールームで全裸になり、迷っているのは、下着を洗濯するかどうかである。
ブラとショーツは借りれるわけもなく一式のみしかない。
スーツは洗濯が難しいが、シャツとタイツは洗面器で洗おうと思っている。
ブラとショーツも同じく洗いたいが、ノーブラノーパンという訳にもいかない。
先ほどルイスさんに注意するように言われたばかりなのだ。
私はその二つを諦め、シャツとタイツのみを持ち、シャワーを浴びた。
「上がりました」
貸してもらったバスタオルで、髪を拭きながら廊下にいるベンさんに声をかける。
ベンさんは壁にもたれて腕を組んで待っていた。
椅子がないからずっと立ちっぱだったのか。申し訳ない。
「一度部屋に戻った方がいいね」
ベンさんは私の手元の荷物を見て、先導して部屋へと戻って行く。
私の持ち物とは、先ほど脱いだ洗濯に、バックパック、アサルトライフルである。
アサルトライフルの存在感に苦笑いしながら私もベンさんの後に続き歩き出す。
「やっぱりサイズ大きかったね。短パンなのに7分丈くらいあるし」
「いえ、借りれるだけありがたいです」
本当に切実に。 スーツで寝るのは大変ですので。
シャツはオーバーシャツと思えば全然大丈夫な範囲だ。
短パンに関しては、ウエストに紐が付いているタイプでよかったと心から思っている。
じゃないとウエスト周りを抑えながら歩くこととなり、ふとしたタイミングでラッキー助平が起こるかもしれない。
部屋に着き、荷物を置いて身一つになるとベンさんと一緒に食堂へと向かった。
ちなみにスーツや洗った洗濯物はベンさんに見られないように、椅子の背もたれなどに干してきた。