3
淡い光につつまれたゾンビは、肌の色が人間のその色に近づき、確実に人間に戻ろうとしていた。
「本当に治るんですか?」
ドキドキする展開に私は思わず東さんに尋ねてします。
「未完成の商品を客に提供するわけがないだろう」
東さんのその言葉の通り、淡い光が消えた場所には気絶した『人間』が倒れていた。
その光景に、激戦を繰り広げながらも見守っていた人々からどよめきが起こる。
4人も驚きを隠せない表情を見せ、示し合わせたように動き出した。
「戻ってくるな」
東さんが隣で呟く。私は訳もなく視線を彷徨わせてしまう。
「あの、この後どうなるんですか?」
「間違いなく注文が入るだろうな。商談が始まるぞ」
東さんの言葉通り、戻って来た4人と東さんは椅子に座って話し合いを始めた。
私ですか? 東さんの後ろで突っ立ています。 せめて座らせてよ。
ちなみに4人は特殊部隊の精鋭メンバーらしく、ルイスさん、レオンさん、ノアさん、ベンさんという名前らしい。
ちなみに初対面で見つめあったのがベンさんである。
東さんから軽くこの世界について説明してもらった内容を精査しながら、私は5人の話し合いに耳を傾ける。
この世界、文明的には私がいた世界とほぼ変わらないらしい。
この場所はフェニ王国という国の第一竜騎兵の屯所があった場所で、ルイスさんが指揮官でじつはこの国の王太子らしい。
まあ王様含め、ここにいるこの屯所にいるメンバー以外の安否がわからない以上、王位継承して王となっているかもしれないが、それは不謹慎ということで考えないでおこう。
プラチナブロンドのショートヘアーにタレ目で彫りの深い顔をした爽やか青年で、溌剌とした印象がある。
ちまにみこのメンバーで一番声が大きいと思う。 もう少し声量を考えてくれ。
レオンさんはルイスさんの護衛で第一竜騎兵のメンバーではないらしい。
長めのアッシュグレーヘアーをローテールにしており、ルイスさんをつり目にした系統の似た青年だ。実は従兄弟らしい。
言葉のチョイスがおかしいランキング暫定一位である。
ノアさんは第一竜騎兵の師団長。4人の中で断トツに背が低く、童顔である。・・・が、メンバー1の射撃の名人らしい。
ルイスさんに次ぐ権力を持っているらしいが、あまり迫力はない。
クリクリお目目にミルキーブロンドの前下がりボブ、タレ目がちな瞳がキュートな少年に見える青年だ。
ちなみに彼はツンデレである。だれがなんと言おうとツンデレ属性である。
ベンさんは第一竜騎兵の副団長。
艶やかな黒髪の長めのアシンメトリーに、憂いを帯びた切れ長の目が印象的な青年である。
警戒心が強く、慎重派な性格がルイスさんとは真逆である。
だが、メンバー1の常識人で苦労人と思われる。
そんな4人と東さんの商談は、直近で1千万ほどの治癒弾。その後4千万の追加の治癒弾。保険として治癒ポーション1千万本らしい。
王国の人口が6千万ほどらしいので、その数値から計算しているらしい。
しかし、これはフェニ王国の人口なだけで、隣国にまでゾンビ化が起こっていた場合には付け焼き刃でしかないのである。
その判断をするためにも第一竜騎兵は中屯所から王宮まで治癒弾をぶっぱなしながら勇往邁進するらしい。
最初の1千万はすぐに用意できる個数。つまり、在庫がすでにある個数である。
4千万は納品までに1週間ほどかかるようだ。
今はすぐに進軍するか、納品後に進軍するかを検討しているらしい。