その79、ミスリルの行き先
そういうわけで。
すぐさま、力士をマイア山にテレポートさせた。
タベルナと映像通信で語り合い、ことを説明する。
<……なんじゃとーーーーーーーーー!?>
「だから、悪いけどミスリルは抜き出すから」
<ううむ……。果樹園や酒のほうを保証できるなら……しょうがあるまい>
「そ、下手すりゃ今度こそ永遠に追い出されるか、殺されるわけだから」
<しかし、本当に果樹園は大丈夫じゃろうのう?>
<そのへんは何とかするデス>
と、力士が胸を叩いてうけおった。
「じゃあ、そういうことだから……」
<ホントにちゃんとしてくれよ?>
かくして。
マイア山の秘密改造は進められたのだった。
地下からミスリルだけを抽出して、その分を他の土で埋めていく。
力士はそれを日夜完徹で続けるのだった。
「しかし、抜き取ったミスリルはどうするのさ」
わたしはドラコに言った。
「考えてなかったな」
あっさりと、公爵家令嬢は言ったものである。
「おいおい……。お金にしたらえらい額になるで?」
「うん。だからこそ、厄介なんだなあ」
「おうちの復興に当てたら?」
「額が額だよ。それにあぶく銭だからね……」
と、ドラコの反応は悪かった。
「色々面倒だから、ユウにあげる」
「はあ!? 何考えてんの!?」
「そもそもミスリル鉱脈なんて、騒ぎのもとにしかならないよ」
「しかしなあ……」
「下手すると、内戦になっちゃうかもしれない。ちょっと影響が大きすぎるんだ」
「けど、わたしがもらったって……」
あまり使い道はないのだ。
「ミスリルで武器作ったら?」
「調べたけど、貴金属としての価値は高いけど、武器にするにゃ技術がいるみたいじゃん」
それこそ、伝説級のドワーフにでも頼まないと、うまく加工できんみたい。
厄介な金属だ。
だったら、竜骨鋼のほうがよっぽど使い勝手がいい。
大体、今持ってる鉄塊で十分満足してるしな。
こういったことを述べると、
「じゃあ、なおさらユウが預かっててよ。永久に」
「簡単に言ってくれるなあ。おうちはどうすんのさ」
「それはヘッダがうまくやるでしょう。元もと、私よりずっと才覚はあるんだ」
「武術の腕も?」
「かもね」
と、肩をすくめるドラコ。
「それで、全部人におっつけて、あんたはどうするのさ」
「冒険者としてやってくよ。地道にね」
「困った人だこと……」
「よく言われる」
「開き直るなっての」
わたしは軽くチョップの真似をして、大きくため息……。
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