その65、マイア山の様子
サブ連載も近々更新します。
「ここも廃村だねえ……」
「何としたこと――」
マイア山へと近づくほどに、人の姿は減っていった。
ふもとは、どこもかしかも人がいない。
廃墟ばかりが虚しく風に吹かれていた。
まあ、廃墟というほど建物は壊れてないが……。
あちこち見て回ったが、人はいない。
「山から流れる水も変だし、もうここにゃいられないかもなあ」
途中の村でも、そんなこと聞いた。
「ここらの領主様は何してるんです?」
ドラコはどこか怒った顔で言っていたが、
「こんな辺鄙なところまで、気を利かすもんか」
と、笑う始末。
「冒険者ギルドに依頼を出してるけど、金だけ取ってまるで音沙汰無しだ」
「すいません。わたしらがそれなんですわ」
「え? あんたが!? ああ、うん、なるほど……」
依頼書を見せると、納得したようである。
「でも、何とかなるのかい?」
「さあ。棲みついてるモンスターをどうにかするくらいは、いけるかなと」
「ありゃあ、ちょっと手に負えないと思うけどねえ」
「……気の萎えること言いますねえ?」
「ああ、ごめんよ。しかし、山みたいにでっかくて、鉄みたいに硬いんだよ」
大ムカデは、事前情報通りの怪物らしい。
「もう、あちこちの村も逃げ出してるよ……」
「山には誰も近づかない」
「酒が造れなくなって、散々だ」
あれこれ愚痴を聞かされた後、わたしたちは廃村を通っていったわけだが。
「生き物の気配がない……」
山に近づきながら、ドラコは不審そうに言った。
「っていうか、地面というか山そのものが削られてない?」
「ホントだ……」
チラッと見えたが、木も土も掘り返され、岩だけが見えている個所がいくつか。
「なんじゃと!? わらわが作った果樹園をようも……!」
タベルナは、地団太を踏んで悔しがる。
「ムカデってのは、あんなことするもんなのかな?」
「さあ。鉱夫はよくムカデのお守りを持ってたりするらしいけど……」
「なんで?」
「昔から、鉱山とか鍛冶の神様はムカデを使いにしてたりするって聞いたかな」
「ふーん。じゃあ、ここの大ムカデもそういうお使いかね」
「……うーん」
「何でも、良いわ! 早く大ムカデを退治してくれい!」
「わかった、わかった」
しかし、まずは敵情視察だ。
わたしはポポバワを呼び出して、空から偵察させた。
その結果――
「何かでっかいトンネルみたいなのを掘ってるわ。ホントに鉱山? みたいな」
「大ムカデは?」
「いなかったみたい。というか……」
なんか、ズングリした赤いモンスターがトンネルを出入りしていたとの報告。
「まさか他にもいるとはなあ」
どうやら、敵も複数だと分かり、わたしはゲンナリした。
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