その45、妖精は秘密の道を使うそうだ
怪しいうわさ
「またやられた!」
ギルドをのぞいてみると、受付では騒ぎになっていた。
「だらしない……! HRが複数いて……!!」
見ていると、ギルドは対応に追われて大忙しのようである。
「あ、これはマッスルの……」
わたしに気づいた受付は、ちょいちょいと手招きをした。
その呼び名はやめてほしいんだ――
「噂になってる酒飲み妖精ですか?」
「そうなんです。みんなアルコールでグニャグニャになっちゃって……」
「隊商の護衛が、ですか」
「はい」
「アルコールって、お酒でも飲まされたんですか?」
「どうもそれと同じような状態にされたようなんです」
聞くところによると。
王都を目指して出発した隊商は、途中でクルラホーンに襲われた。
戦闘になるかと思われたが、護衛も含めて隊商はみんな、
「深酒でもしたみたいにグデングデン、らしいです」
と、ため息の受付。
そして運んでいた酒は奪われ、隊商はその場でストップ。
街道を巡回していた警備員がこれを発見したそうな。
「中にはゲロ吐いているヤツもいて、道はえらいことになってたそうですよ」
「ふーん。良くは知りませんけど、クルラホーンってのはそんな厄介な能力を……」
「いや、そんな記録はありません。酒を好むことは知られてますけど」
「え? じゃあ、クルラホーンの仕業じゃないんですか?」
「襲撃してきたのがクルラホーンだってのはわかってます。ただ……」
「誰かがみんなをアルコール漬けにしたのかはわかんないと」
「そうなんですよ!」
「うーん!」
すると、敵は酒飲み妖精だけではないかもしれんのか。
いや、使い魔にされることも多いそうだから、黒幕がいる可能性が高そうだ。
「しかし、そういう搦め手となると厄介ですね。戦いようがない」
「ええ、今回は魔法に長けたメンバー構成だったんですけど、無駄でした」
ゲームで言うなら、一種の状態異常ってやつかな。
こういうのは、あの巫女姉妹も弱そうだ。
わたしはベロンベロンになって、エロひどいことされる姉妹を想像してしまった。
「襲われてるのは、どのあたりですか?」
「はあ、それが……場所は一定してないんですが、あちこちの街道で」
「するってえと、やっぱり相手は大規模なんですかねえ……」
「そうとばかり言えません」
後ろできれいな声がした。
振り返ると、褐色美女のタフトが歩いてくる。
「妖精の道を使えば、遠い距離を短時間で移動できると聞きます」
「それって、魔法ですか?」
「ええ。正確には道というより異空間移動ですが。妖精族が使える魔法です」
「そりゃ便利だ。スキル習得できれば、さぞ」
「ああ。それは、無理ですね」
「無理なんですか」
「妖精族だけにできる。まあ、体質に依存した魔法なので」
「それでも、世界中どこでもというほど便利でもないようですが。範囲はある程度限定されるようですけれども。しかし、便利であることに変わりはないね。ある国では、戦争の時にこれを利用して大勝した記録もあります」
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