自己紹介
翌日を迎え、沙織と誠は待ち合わせ場所の喫茶店に来ていた。
店員に窓際の席に案内されたが、まだ座らずに立っている。
「どうやって座る?」
誠が沙織に話しかける。
「そうね……私が初めましてになるから、石田君と楓さんと向かい合うように座った方が良いんじゃないかな?」
「じゃあ、俺達は椅子側に座るか」
「そうね」
二人は横並びに座り、石田と楓を待つ。
会話もなく静かに数分待っていると、二人が現れた。
「ごめん。お待たせ」
楓はそう言って、沙織と向かい合うように、奥のソファー席に座る。
石田は緊張しているようで、楓と少し距離を取り、ぎこちなく楓の隣に座った。
「大丈夫ですよ。俺達もいま来たばかりですから」
「良かった。二人は飲み物か何か頼んだの?」
楓はパステルカラーのピンクのハンドバッグをソファーに置き、質問する。
「いえ、まだです」
「そう。じゃあ先に決めてしまいましょうか」
楓はそう言うと、テーブルの上に置いてあったメニューを手に取った。
「そうですね」
誠もメニューを手に取り、パラパラと捲っていく。
「石田君は何にする?」
楓はメニューを開いて、石田にも見えるように近づけた。
「えっと……コーラで」
石田は最初から決めていたのか、それとも今の状況が恥ずかしかったのか、すぐに飲み物を決めた。
「じゃあ私は、紅茶にしようかな」
楓はそう言って、メニューを閉じ、メニュー立てに置いた。
「御二人さんは?」
「俺もコーラにする?」
「私はオレンジジュースにするわ」
「他はとりあえず、いいわよね?」
「はい、大丈夫です」
誠が返事をすると、楓は呼び出しボタンを押した。
少しして店員が来ると、飲み物を注文する。
店員は注文を聞くと、調理場へと戻って行った。
「さて、誠君の彼女さんとは初めましてだし、自己紹介でもしましょうかね。私は誠君と一緒の会社に勤めている高梨です。よろしくお願いします」
楓は挨拶が終わるとペコリと会釈をする。
沙織もそれをみて、会釈を返した。
「こちらこそ、宜しくお願いします」
「俺も同じ会社に勤めている石田です。宜しくお願いします」
「こちらこそ、宜しくお願いします」
沙織は返事すると、会釈をする。
石田も会釈を返した。
「最後に私ですね。初めまして、誠がいつもお世話になっております。私の名前は沙織と言います。宜しくお願いします」
「あら、沙織さんって……」
「どうかしましたか?」
沙織が尋ねると、店員が飲み物を運んでくる。
店員は誰の飲み物か聞きながら、テーブルに飲み物を置いて行った。
「ごゆっくり、どうぞ」
店員はそう言うと、ペコリと頭を下げて、戻っていく。
「あ、ごめんなさい。この前、私達と遊んだ女の子と同じ名前だったから、ちょっと驚いてしまって」
「そうだったんですね。沙織って名前、珍しくないので、たまにありますし、大丈夫ですよ」
「それなら、良かったです。それにしても、誠君が付き合っている人って、あの子の事じゃなかったのね」
「楓さん、それは無いですよ。だってあの子、年下が好きって言ってましたから」
「あら、そうなの?」
石田が会話に参加すると、誠がその言葉に反応し、沙織の方に視線を向ける。
沙織は誠の視線に気付いたのか、ストローでオレンジジュースを飲みながら、誠にチラッと視線を向けた。
ストローから唇を離し、オレンジジュースをゴクリッと飲み込む。
「何よ。ニヤニヤして」
沙織は恥ずかしくて腹が立ったのか、誠をジト目で見つめる。
「別に」
誠は満足そうに笑顔を浮かべ、視線をサッと逸らした。
「ところで、石田。今日はこの後、どうする予定なんだ?」
「駅前の服屋に行こうと思って」
「分かった」




