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提案

 日曜日。

 誠と沙織は、車に乗るため、玄関を出ていた。

 誠の恰好は黒色の襟付き半袖シャツに、パンツはジーンズのベージュを履いている。


 沙織は残暑で日差しが気になるのか、白色のツバの広いハットを被っている。

 白くて襟のある半袖のブラウスに、紺色のロングスカートを履いていた。


「さて、行こうか」


 誠が運転席のドアを開ける。


「うん」


 沙織は返事をすると、助手席のドアを開けた。

 二人は車に乗ると、シートベルトをする。

 誠は沙織がシートベルトをしているのを確認すると、エンジンをかけた。


「行くよ?」

「うん」


 車を数分走らせる。

 沙織は帽子で表情が見えないが、外の景色を眺めながら、黙っていた。

 信号待ちの間、誠は沙織をチラチラと見て、気にしている様子だった。


 30分が経ち、目的地の駐車場に到着する。

 誠達が車を降りると、先に着いていた楓と石田が笑顔で近づいていく。


 石田はこの日のために髪の毛を切ったのか、ナチュラルショートだった髪型がツーブロックになっていた。

 恰好は半袖の灰色と黒の柄シャツに、カーキ色のズボンを履いている。


 楓は黒のタンクトップに、デニムのショートパンツとラフな格好をしているが、肌の露出が多く、どこか色気を感じさせる恰好をしていた。


「待たせてしまって、すみません」


 誠は謝って楓と石田に近づく。

 沙織もペコリと頭を下げ、後に続いた。


「大丈夫、大丈夫」


 楓はよほど楽しみにしていたのか、テンションが高く、いつもより明るく返事をする。


「俺達も今、来たところ」

「そうか、それなら良かった」


 沙織が一歩前に出て、石田と楓に向かって、軽く会釈をする。


「初めまして。沙織と申します。いつも誠がお世話になっております。今日は宜しくお願いします」

「あら、若い子なのに礼義正しい子ね。中学生?」


「いえ、高校生です」

「ごめんなさい。可愛らしいから、間違えちゃった」

「いえ、大丈夫ですよ」


 沙織は返事をしてニコッと笑う。


「誠、車から椅子とか降ろすの、手伝ってくれ」

「分かった」


 誠は石田に呼ばれ、石田の車の方へと歩いていく。


「じゃあ、私達は料理の準備をしましょうか?」


 楓が沙織に話しかける。


「はい」

「じゃあ、付いてきて」


 二人は楓の車の方へと歩いて行った。

 石田は川から少し離れた砂利の少ない場所を見つけると、折りたたみのテーブルを持っていき、広げる。


「この辺でいいかな?」

「大丈夫だと思うよ」


 誠は折り畳みの椅子を抱えながら、答えた。

 そこへビニール袋を持った楓と沙織が到着する。


「楓さん。ここで良いですよね?」


 石田が質問すると、楓は砂利に袋を下ろした。


「うん、大丈夫。私達はこれから、使い捨てバーベキューコンロで食材を焼いていくから、男二人はお皿とか並べていってくれる?」

「はい、分かりました」


「使い捨てのコンロは二つ用意したから、沙織ちゃんは野菜を焼いてくれない? もうカットはされているから」


 楓はビニール袋から使い捨てコンロを二つ取り出すと、テーブルの上に置いた。


「分かりました」


 続いてビニール袋から着火ライターを取り出す。


「着火は私がやるわね」


 楓はそう言うと、使い捨てコンロに火を点ける。


「炭に火が点くまで、少し待ってね。その間、開封しましょう」

「はい」


 楓がテキパキと沙織に指示を出すと、沙織は返事し、言われた通りに動いた。

 楓はビニール袋からお肉を取り出し、ラップを外すと机に置いていく。


「今日、晴れて良かったわね」

「そうですね」

「誠君が連れてくるの、男の子だと思っていた」


 楓は顔色を変えずに、沙織に向かってそう言った。


「突然ごめんなさい。楽しそうだったから、私も行きたくなってしまって」


沙織も野菜のラップを外しながら、顔色変えずに、答える。

 

「大丈夫よ。今日は楽しんでいってね」

「ありがとうございます」


 楓がニコッと笑うと、沙織もニコッと返した。

 本当にそう思っていのか、それとも建前なのか。

 二人の表情からは、読み取ることは出来なかった。


 下準備が終わり、20分が経過する。

 

「そろそろ大丈夫そうね。焼いていきまーす」


 楓がトングを片手に声を掛ける。


「お願いします」


 誠は紙コップにウーロン茶を注ぎながら答えた。


 金網の上に、肉が置かれ煙と共にジュー……っと、音がする。

 肉の香ばしい匂いが漂い、皆はお腹を鳴らしていた。


「美味そうな匂いだな」

 

 石田は待てないような様子で紙の皿と、割り箸を持って、楓の隣で待っていた。


「まだ焼いたばかりよ」


 子供みたいな石田を見て、楓はクスッと笑う。

 誠は野菜を焼いている沙織に近づく。


「何か手伝う?」

「うぅん、手伝ってもらう程、焼いてないから大丈夫」

「そう。お茶、ここに置いておくね」


 誠はそう言うと、沙織の近くにあった椅子に、ウーロン茶を置いた。


「ありがとう」


「焼けてきたわよー。適当に皿に置いていくから、持って行って」

「はーい、待っていました」


 石田が真っ先に、肉を持って行く。


「野菜の方も、お皿に置いていくので、持って行ってくださいね」


 沙織は玉ねぎをヒックリ返しながら、そう言った。


「はーい」

 と、三人が返事をする。


「沙織さんの肉、俺が取っておくね。あの調子だと石田が全部、食べちゃいそうだから」


 沙織はガッツリと箸で肉を掴み、自分の皿に乗せている石田をみて、クスッと笑う。


「本当ね。お願いします」

「うん」


 明るい雰囲気の中、4人は会話を交わし、食べ進めていく。

 石田と誠と楓はビールを飲んでいた。

 

 1時間程して、会話が止まる。

 使い捨てコンロの火は消え、焼くものはもうない。

 焼き終わった肉と野菜も、ほとんど食べ終えていた。

 

「さて、そろそろ片づけをしましょうか?」

「そうですね。お腹いっぱい」


 楓が皆に話しかけると、石田が答える。


「ビニール袋に、燃えるゴミと燃えないゴミを分けて入れていってくれる。処分は私がするから」

「分かりました」


 4人はテキパキと片付けを済ませ、椅子やテーブルも車に運んだ。

 楓がジーッと、腕時計を見ている。


「まだ13時ちょい過ぎか……帰るのは少し早くない?」

「そうですね」


 楓と石田が名残惜しそうな顔をしている。


「――ねぇ、ちょっと提案なんだけど、せっかく男女が2人いるから、デートしてみない? 相手は1時間で交代。どうかしら?」


 最初から計画していたかのようにサラッと楓が提案をすると、三人は顔を見合わせた。


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