さてはこいつモン娘フェチだな?
なにこれぇ。
万事うまく行ってると思ってたら王様がやって来て全部ひっくり返されてしまった。
アヤムちゃんは解放されたけれどサルガタナスはあっさり隷属してしまった。
どうしよう、戦うべきか逃げるべきか。
いや逃げ道は無い。
奥に逃げてもいずれは捕まる事になるし、外へ出るには勇者とエゼル王と取り巻きを突破しないといけない。
外に出た所でそこは目の前の王が治める街だ、右往左往してる間に捕まってしまうかもしれない。
それにクルムちゃんが無事かも分からないし、アヤムちゃんもこのまま置いてはいけないし、サルガタナスも助けてやらなければ。
戦うしかない!
「エゼル王、何はともあれまずはそこのハーピーを捕らえるべきだ」
俺が戦う決意を決めた途端にサルガタナスの裏切り発言が飛んできた。
サルガタナスが腕を振ると俺はいつの間にかサルガタナスに引き寄せられていた。
転移の力を使われたんだと気が付いた時には逆さ釣りにされてしまっていた。
足には鎖がぐるぐると巻き付いていて先端をサルガタナスが握っている、あ、これさっき俺が握りつぶしたミスリルだ、加工するのはやーい。
何だよ!
さっきまで一緒に戦ってたのにもう裏切り!?
「サルガタナ……モガァ!」
「黙ってろ」
抗議の声を上げようとすると口の中に何かを突っ込まれた。
なにコレあまーぃ、飴玉かな?
「エゼル王、このハーピーは大変希少価値の高い種だ、貴方に献上する」
「献上する必要はない、既にお前の持ち物は全て俺の物だ。しかしハーピーと言うのは卵だけ残して全て滅んだのではなかったか……ん?」
ジャイ〇ンも真っ青な台詞を吐きながらエゼルが俺の顔を覗き込んできた。
うわぁ! 何その目怖ぁ!
エゼルの眼球には様々な文字列が蠢いていた。
「何だこいつの魂は? まるで今日生まれたかのような真っ白ではないか」
「確かに、この子は今日生まれたばかりです。エゼル王、貴方は相手の魂を見る事が出来るのですか?」
「貴様の質問には答えん、俺の質問にはすべて答えてもらうがな。それにしても、中々の上玉だな」
そう言うとエゼルは俺の唇を奪って舌を入れて来た。
「???ッ~~ッッ!?!?!?」
何をされているのか訳が分からない。
何で俺今初めて会った奴にキスされて舌まで入れられてんの?
あ、飴玉とられた。
「ッッ~~ップァッ」
俺から飴玉を奪い取ったエゼルはカラコロと飴を舐め始めた。
「ふむ、甘いな」
俺の顔を覗き込みながらエゼルが言う。
「~~ッ!」
ああ、泣くな。
恐怖に染まりながら、悔しくて目じりに涙が浮かぶ。
その表情を見たエゼルの顔がニヤリと嫌な笑いを浮かべている。
多分こいつは俺にキスしてどんな顔をするか見たかったのだろう。
その為だけに俺は今唇を奪われたのだ。
その事に気が付くとはらわたが煮えくり返った。
「ふっざっけんなテメェ! 何初対面で初キス奪ってくれてんだコラァ!」
「何だ口汚い、鳥の癖にもっと美しくさえずれんのか」
「誰がテメェなんぞにさえずるか! 俺の飴ちゃん返しやがれ!」
「良いだろう、返してやる」
「あ、止めて、やっぱいらな、もがぁ!」
俺の唇は再び塞がれた。
◇ ◇ ◇
俺とサルガタナスとアヤムちゃんはダンジョンから連れ出されて王宮の様な場所に連れて行かれた。
魔王の魂と勇者との交換で解放されたアヤムちゃんも再び捕らわれてしまった。
俺が抗議すると「落ちている物を拾って何が悪い?」と来たもんだ、俺こいつマジで嫌い。
王宮に入ると入口付近で待っていた様子の少年が話しかけて来る。
「お帰りなさいませ父上、ご無事でしたか」
「クルトか」
息子らしい少年が近づいて来るとエゼルは笑った。
「見ろ。サルガタナスを隷属させた、これでアルテウスは周辺諸国の中で頭一つ抜きん出た存在になるぞ」
「お見事です父上。こちらの少女たちは?」
「ん? これか? ダンジョンで拾ったのさ。そうだお前、こいつを引き取らないか? お前もそろそろ色を知っても良い頃だ。俺がお前くらいの時にはもう何人も側女が居たぞ」
俺の目の前に居るクルトは今の俺の身体より頭一つ分以上でかい。
しかしその顔には何処かあどけなさが残り、まだまだ子供だ。
このくらいの時にはもう側室が何人も居たとかどんだけぇ。
「ではこちらの少女を」
げぇ、こいつ俺を指名してきやがった。
「ん? そいつは止めておけ、最初に飼う女が亜人では変な癖が付くかもしれんぞ。まぁ、こっちの女も悪魔だがな、フハハハハハハハ」
何がおかしいんだこいつ、頭踏みつぶしてぇ。
「ですが父上、こちらの少女がいいのです」
こいつはこいつで何で俺に固執してんだよ。
もし俺が選ぶ立場だったら今の俺より絶対アヤムちゃんを選ぶよ。
幼いツルペタボディの俺と、出る所が出ているアヤムちゃんでは勝負にならない。
にも拘らずクルトが俺を指名して来る理由、ははーん、さてはこいつモン娘フェチだな?
「クルト、本当に止めておけ、何故そいつを選ぶ? どう見てもこっちの方が良いだろう?」
そう言うとエゼルはアヤムちゃんの胸に手を回し揉みしだいた。
ちょっ、おまえ何してくれとんじゃごるぁ! 俺のアヤムちゃんに勝手に触ってんじゃねーぞごるぁ!
心の中で絶叫するが声には出ない。
俺とアヤムちゃんもサルガタナスと同じ隷属の首輪を嵌められてしまっているからだ。
エゼルに「下品な言葉使いを禁ずる」とか言う範囲の広い禁止設定をされたせいで咄嗟に出る暴言が悉く引っかかる。
「父上、僕はこの子が良いのです、一目で気に入りました」
「一目で気に入った……か、全く、誰に似たのやら」
え、何その目。
何でこいつ名残惜しそうなの。
え、怖い、こいつにこのまま連れて行かれたら俺どうなる訳?
いや、どうなるもこうなるもそうなるよな。
え? そうなの? 俺が今連行されてるのってつまりそういう事なの?
うわあああああああやばいやばいやばい何てこったそんな事もっと前に気付け馬鹿か俺は!
「よろしいですか? 父上?」
「はぁ、……構わん。持って行け、ただし隷属の首輪と足の鎖は外すな、こいつはそこそこ危険だぞ」
「ありがとうございます父上♡」
「う、うむ、壊すなよ?」
クルトに俺を預けたエゼルはアヤムちゃんとサルガタナスと従者達を連れて奥へと去って行った。




