一石二鳥の手
ねぇ、マルフミーラ。
ハーピーの羽に人を生き返らせる力なんて有るの?
(そんな力が本当に有ったらハーピーは乱獲されて滅んじゃうわね……あっ、殆ど滅んでたわね)
それな。
(んー、まぁ、正確に言えばハーピーの羽に人を生き返らせる力は無いわ。でも錬金術の素材としてはとても価値のある物だし、女王個体の羽とかになるとそれこそ人の命が買えるくらいの値段で取引される事も有るわよ)
まじかよ、さっきの奴に結構取られちゃった!
(そんな事より、早く此処を離れましょう)
え?
まだ勇者が出て来てないよ?
(だから、出てくる前に逃げないと。もしかしたらアンタ殺されちゃうかもしれないのよ)
んー、俺の中に魔王が居るから?
(っ! アンタ気づいてたの!?)
流れで気が付いちゃいました。
テヘ。
(はぁ、まぁそう言う事よ。勇者は魂の状態の私を追って此処まで来たのよ。意識体がアンタに憑り付いてるって気づかれたら間違いなく殺されるわよ)
うへぇ、もっと早く言ってよ。
そもそもなんで魔王って事隠してたの?
(だってアタシ、アンタの卵に憑り付いて乗っ取ろうとしてたんでしょう? じゃあ私の正体が魔王ってバレたら怖がられちゃうかなって思って。でも勇者は助けないと私の魂とぶつけられちゃうし。本当は私の魂を回収出来れば良いんだけど今は探知出来ないし)
マルフミーラは何で卵の俺を乗っ取ろうとしたの?
(魂の状態で漂流してる時の記憶は私には無いから分からないわ)
マルフミーラは何で今俺の中に居るの?
(アンタ昨日の夢の中での出来事は覚えてないのよね?)
夢?
(ああもう、説明してたら時間が無くなるわ! 兎に角今は此処から離れなさい!)
分かったよ。
ああ、でもオフャムにお別れ言いたかったな……
◇ ◇ ◇
逃げると言っても何処に逃げたものか。
オフャムに逃がして貰う予定だったからなぁ。
あれ?
こんな所に分かれ道あったっけ?
……あれ?
どっちだっけ?
進んでる時はほとんど一本道に見たんだけど。
あ、脱出しにくいように複雑に作ってあるって事?
やべぇ、どうしよう。
(そんなに焦らなくても、いざとなったら壁をぶち抜いて出ればいいのよ)
……お、おぅ。
それにしても囚人の数多いな。
その割に看守を全然見かけない、さっき眠らせた奴らで全部だったのかな。
(此処の囚人達、もしかして……)
「やっと見つけたぞ」
!!
突然の声に振り替えるとサティリが立って居た。
げぇ、よりによってこいつかよ。
「全く、出口で張っていたら猫娘と勇者殿だけが出てきたから焦ったぞ。まぁ、逃げられはしないがな」
そう言うとサティリは俺に付いて来いと命令してつかつか歩いていく。
隷属の首輪をしている俺は勿論逆らえない。
「何で、此処にいるって分かったの?」
「あれだ」
サティリが指をさした天井には丸い水晶があった。
「あれで囚人の様子を見張る事ができる、ダンジョンから産出される特殊な宝玉だ。この人数の囚人達を効率良く見張れる」
異世界の癖に技術進んでんなー。
じゃあオフャムも勇者も捕まっちゃったのか。
「勇者殿と猫娘は逃げたぞ。お前、あの娘が誰の手引きもなくこの宮殿に潜入して歩き回れたとでも思っていたのか? 俺が手を回して看守や見回りの数を減らしたんだ、宝玉の映像も今は切り替えられている」
何それスパイ映画みたい。
何でそんなにオフャムを助けてるの?
「勇者殿を亡き者にしようなどとんでもない事だ、父上は乱心されている。あの悪魔に早くも拐されているのかもしれん」
何だこいつ。
ひょっとして良い奴なのか?
最初に会った時の印象悪かったから警戒しちゃったよ。
「猫娘に勇者殿を助け出させ、俺はハーピーを手に入れる、一石二鳥の手だ」
……
どうやら俺のピンチはまだまだ続きそうだった。




