サルガタナスの奴、次合ったらぶっ殺す!
俺とオフャムはこそこそと隠れながら宮殿内を進んでいた。
人が居る時は回り込んだり、オフャムが付けてる隠蔽効果のある魔法のマントでやり過ごしていた。
「そう言えばオヒャムは」
「オフャム」
「……オフィャム」
「オフャム」
発音し辛い。
「ふん、ケットシー族以外には発音し辛いのは分かってるニャ。アルヴィン達も最初は呼べなかったし」
「何か、あだ名付けても良い?」
「は? そんな仲じゃニャイだろ」
「だって呼び辛いし」
「……ふん、まぁいいけど」
「じゃあオヒャム」
「却下」
「じゃあニャムで」
俺があだ名を決めるとオフャムは胡乱げな目で俺を見た。
「それ、どう言う付け方したニャ?」
「語尾のニャに名前の最後のムをくっ付けた」
「……まぁ、良いニャ」
「ニャムは何でお……私が昨日のハーピーだって分かったの? ちょっと成長しちゃってるのに」
「あー、やっぱでかくなってるニャ? ま、髪や羽の色が変わった訳じゃニャいし見違える事なんて無いニャ。」
「驚いたりしないの?」
「そんな事で一々驚いてたら勇者様御一行なんてやってられニャイニャ」
「でも背丈がこれだけ違ったら別人だと思わない?」
「……そもそもハーピーはこの街にお前以外居ニャイし」
「他の街には居るの?」
「あたしの知ってる限りではお前以外のハーピーは居ニャイニャ。現存するハーピーは卵だけって聞いた事が有るニャ」
「…………」
「まぁ、お前が此処にこうしてる以上、他のハーピーも案外どっかに居るんじゃニャイか? あ、セイレーンって言う魔物なら見た事あるニャ」
「それってどんな――」
俺はオフャムと小声で雑談しながら宮殿の中を進んでいった。
◇ ◇ ◇
(ねぇアスカ)
……何?
(アンタ騙されて無い?)
騙される?
(アンタがそこの猫を手伝って脱出しても首輪をしたままじゃ結局捕まっちゃうわよ?)
それな。
でも時間をかけて柔軟すれば首輪は足で壊せると思う。
(そうねぇ、最悪骨を折って無理やり届かせても回復魔法で直せるし)
回復魔法存在するのか!
でも骨折するのは嫌だなぁ……。
(……そもそも何で勇者が国王に捕らわれてるのか聞いた方が良いんじゃない?)
あー、そう言えばそれを聞いてなかった。
「ねぇニャム」
「んー?」
「何で勇者は捕まったの?」
「……悪徳国王はアルヴィンの魂と魔王の魂をぶつかり合わせて対消滅させる気らしいニャ」
「っ、なん――」
(なんですって!?)
うわぁ、うるさい!
頭の中で叫ばないで。
(それどころじゃないわよ! 何よ魂の対消滅って! 何で人間がそんな発想するのよ!)
「あたしは最初魂なんて物が本当に存在するのか疑問に感じてたニャ、見た事ニャいし。でもアルヴィンは魔王の魂の気配を追ってこの街に来たニャ。アルヴィンの言う事だから今は魂の存在も信じてるニャ」
「魂は目に見えないの?」
「当たり前ニャ、あー、でも悪徳国王は魂が見える魔眼を持ってるって噂が有るニャ。嘘くさいけどニャ」
俺が見た魔王の魂は宝玉に封印されてる状態だったから見えたのかな?
「魂の対消滅ってどう言う事?」
「魔王は極大の闇の魂だから光の魂をぶつけて相殺するって聞いたニャ。ほんとにそんな事出来るのか疑問だけど」
「誰が言ってたの?」
「昨日捕まえたサルガタナスニャ」
(くそぅ、サルガタナスの奴……)
魔王と勇者の魂を相殺させるって可能なの?
(流石に相殺はされないと思うわ、でも多分すっごいダメージは負うはずよ)
一つ確信したことが有る。
マルフミーラは多分魔王だわ。
薄々そうじゃないかなーとは思ってたけど今確定した。
問題はマルフミーラが俺の思考をどれくらい読み取れるのかって所なんだよなー。
本人に聞いてみても嘘付かれたら検証しようがないし、もしも俺の考え全部筒抜けとかだとその……困るんだが。
「悪徳国王は何でこんな馬鹿げた計画を採用するニャ」
(サルガタナスの奴、よっぽど私のやり方が気に入らないみたいね。私を何とか完全消滅させて混沌の海に還す気なんだわ)
「サルガタナスの奴、魔王を完全に消し去る為にはこれしかないとか言ってたけど、てい良くアルヴィンを殺す気ニャ」
サルガタナスのヘイトが凄く上がってんなー。
って他人事じゃねーな、俺が捕まって純潔散らされそうになってるのあいつがあっさり裏切ったせいだし。
サルガタナスの奴、次合ったらぶっ殺す!
(サルガタナスの奴、次合ったらぶっ殺す!)
「サルガタナスの奴、次合ったらぶっ殺すニャ!」




