確かにアヤムちゃんに比べたら俺の方がチョロそうだよね
「それで、何がどうなっているのです?」
部屋につくと早速クルトに詰問された。
でも俺に答えられる事ってあんまりないな。
朝起きたら何故か身体がでかくなってたから外に出て飛んでみたらエゼルに見つかって犯されそうになっちゃいました(テヘペロ
くらいな事しか答えられない。
「自分の身体が成長した理由も分からないんですか?」
「えっと、たくさん食べて、いっぱい寝た、から?」
「それだけで1日で僕と同じ身長になるなら明日には追い越されてますよ」
そう言えばクルトと同じくらいの背の高さになってるな。
クルトって自分と同じ身長の人間(人間?)を自室まで抱えて運んだんだよな、結構力強いよなー。
「……成長した理由は本当に分からないようですね。ではどうやって隷属の首輪をはめているのに部屋から出られたんですか?」
(身体が成長して首輪の呪縛に抵抗できるようになったのかもって答えなさい)
「身体が成長したから、かな?」
「……ではさらに強い隷属の首輪を用意させましょう」
げぇ、声の人の言う通りに言ったら首輪のランクが上がってしまった。
(呪縛を一回破ってるんだからどの道同じ結果になってたわよ)
「全く、アスカのせいで朝から父上に大目玉を貰いましたよ。どう落とし前を付けてくれるんですか?」
「…………」
あれー?
やばくない?
奴隷が逃げたせいで主人が叱責されるって、もしかして俺打ち首コースなのでは?
「アスカは確か歌や踊りも習っていましたね?」
「はい、一応」
「では踊ってみて下さい」
「…………」
まじかー。
足に巻き付いた鎖や翼になった両腕に四苦八苦しながらステップを踏む。
昔モテたくてyoutubeに歌ってみたやら踊ってみた投稿してたのがこんな所で役に立つとは思わなかった。
再生数? 聞くな。
歌いやすくて踊りやすい曲を選んで踊っていると途中でクルトに止められた。
「変わった歌と踊りですね、ハーピー独自の文化ですか?」
「分からない」
「折角羽が綺麗なんですから、もっと映える手振りをした方が良いのではないですか?」
そんなこと言われましても。
「まぁ良いです、朝食にしましょう」
◇ ◇ ◇
昨日の夕食も美味しかったけど今日の朝食も美味しかった。
昨晩と同じように俺に食事を与え終わるとクルトは自分の分を食べだした。
昨日も思ったけど何で召使いとかにやらせずに自分で俺の世話するんだろうね?
クルトは朝食を食べながらも俺に話しかけて来る。
「アスカは自分がどういう立場か分かっていますか?」
「奴隷?」
「そうです、奴隷が逃げて捕まったらどうなるか知っていますか?」
「……死刑?」
「そうですね、大体は首を跳ねられます」
「ピェ」
やっぱ打ち首獄門コースだったあああああ。
「しかし今回は先程の歌と踊りで許します」
「どうして?」
「アスカが父上から下賜された物だからです」
「下賜?」
「そうです、アスカはダンジョンから連れて来られた亜人が王子に下賜されるのはおかしいと思いませんか?」
思う。
いくら首輪してても危ないよね、普通に考えて。
「父上は僕がダンジョンから連れて来られたアスカを上手く手懐けられるかを見ているんです」
「でも最初はアヤムちゃんをあげようとしてたよ」
「ええ、正直あちらの子は僕の手に余ると感じたのでアスカを選びました」
はー。
成程ねー。
確かにアヤムちゃんに比べたら俺の方がチョロそうだよね。
「父上は自分の子供達を振るいにかけるのが趣味の様な物ですから。ディーツも父上から与えられた護衛でした」
「王子様は沢山いるの?」
「ええ、それはもう。父上は魂を見通す魔眼を使って気に入った魂の女性を次々側室にするのです」
「魔眼を使って?」
「美しい魂を持つ女性なら手当たり次第と言った感じですね、昨日のアスカは流石に幼すぎましたが」
「魂が美しいとどうなるの?」
「さぁ? 僕は魂を見た事が無いので何とも言えませんね。ただ、父上は手当たり次第に女性を孕ませて自分の子を産ませているのに、母親同士の諍いの様な物は起こって居ません、そう言う部分を見分けているのかもしれませんね」
(見魂眼で都合の良い女だけ選別してるって事でしょ、鬼畜ねぇ)
「ただ、側室達の間での諍いは殆どありませんが、父上の子供の多くは成人する前に死んでしまっています。父上は沢山の子供達の中から選りすぐる為に色々な試練を出すのですが、試練に失敗すると最悪死ぬんです。今回アスカを僕に下賜したのもその一貫と言う訳です」
王子様も大変なんだね。
◇ ◇ ◇
朝食を食べ終わるとクルトは午前の勉強と訓練が有るとか言って部屋を出て行った。
出て行く前に部屋から出られないように強めに命令されてしまった。
今付けてる隷属の首輪より強い首輪はアヤムちゃんやサルガタナスに使われているらしく、在庫を取り寄せるのにも少し時間が掛かるらしいのは助かった。
新しい首輪が来る前に逃げないと詰むかもなー。
(ねぇアンタ)
これからどうしようかと考えていたら声の人が話しかけて来た。
(エゼルの事なんだけど、アンタがすり寄った時は袖にされたじゃない?)
すり寄ったとか言うな気色悪い。
あの時の俺はどうかしてた。
(でもその後煽った時はヤられそうになったでしょう?)
確かに。
ぼーっとした意識の中で、声の人の台詞が思わず口から出てしまって危うくエゼルにヤられそうになってしまった。
あれ? 俺がピンチになったのって声の人のせいじゃね?
(私のせいじゃないわよ。それよりも、エゼルってもしかしてそう言う趣味なんじゃない?)
趣味?
(煽られたら逆に萌えちゃうと言うか、反抗して来る相手を踏みにじる癖って事よ)
あー。
そう言えばダンジョンの中でも悪態付いたら逆にうれしそうにしてたし。
さっきもざーこって言ったらベットに放り込まれたな。
(次の機会が有ったら試してみる価値アリね)
次の機会なんてねーよ!?




