何服の中に潜り込んでんだ
「胸、おっきくなって…………って……ん?」
モゾッ
おっぱいが動いたー!
「母様……」
キェエエアアアおっぱいがシャベッタアアアアーー!
って違う!
クルトの頭だこれ!
何服の中に潜り込んでんだ!
出ろや!
ペイッ! とクルトを服の中から追い出してベッドを降りる。
胸の先端がジンジンする、あいつマジふざけんなよ。
ベッドから降りてもクルトは起きる気配が無い。
どうしよう、他に人も居ないしこのまま逃げれないかなー。
鎖で足が開かないようにされてるからあんまり遠くまで歩けないけど、取り合えず外に出れれば飛んで逃げるとか出来ない? 無理?
とてとてと、部屋から出ようとドアの近くまで歩いて行く。
んー、何かやっぱり等身が昨日より大分高い。
髪も癖っ毛ショートボブくらいだったのに肩口くらいまで伸びてるよコレ。
姿見の前に立って見ると昨日まで小学校の低学年くらいの見た目だったのが明らかに高学年になっている。
なんでさ?
一日でこんなに育つとかタケノコかな?
成長期ってレベルじゃねーぞ!
胸もそれなりに大きくなっているけど幸い服はまだそんなにきつくは無……いや違った、これクルトが潜り込んだから伸びてるだけだわ。
童貞を殺すセーターの伸縮性ヤバイ。
でも横には伸びてるけど縦の長さは足りていないのでワカメちゃん状態である。
パンツはいてないワカメちゃんであるが幸いワカメはまだ存在してなくてよかった、いや良くねーよ。
何とか縦に伸ばそうとするけど手が無いから無理だし。
って、おお!
羽もちょっとぽわぽわだったのが少しシャキーンってしてるぞ!
シャキーンじゃ分からない? 考えるな、感じるんだ
ん?昨日と違って意識して羽を動かせるな。
翼の先端部分の大きめの羽。風切り羽を開く、閉じる、開く、閉じる。
うん、動く動く。これなら行けるか?
風切り羽でセーターの裾を掴んで引っ張ってみる。
うんしょっうんしょっ。
うっし、伸びた。
この服縦にも横にもめっちゃ伸びるな、素材何なんだろう。
おっと、こんな事してる間にクルトが起きちゃうかもしれない。
急いで外に出ないと。
でも外に出ようとすると隷属の首輪のせいか身体が動かなくなってしまった。
駄目か―。
そりゃそうだよなー。
こう言う機能無かったらこんな風に見張りも付けずに一緒に寝てる訳ないか。
多分クルトに危害を加えようとしても身体が動かなくなるんだろうな。
どーしよ。
(ねぇアンタ、手伝ってあげようか?)
「ピェ!?」
急に脳内で声が聞こえた、何これ!?
(馬鹿ねぇ、声出すんじゃないわよ)
ああ、そうだね。
クルトが起きると不味い。
(そうよ、黙って聞きなさい? アンタ此処から出たいのよね?)
うん、出たい。
ってん? これ会話出来てんな、テレパシー的な奴?
アンタ誰?
(遮らないでまずは聞きなさいよ。此処から出たいなら私と取引しなさい)
取引?
(そ、此処から出るのに協力してあげるから、私の望みも叶えて欲しいの)
アンタの望みって?
(私を助けて欲しいの)
何処かに捕まっちゃってるとか?
(そうね、捕まってる私を探し出して解放して欲しいの)
うーん……
(ねぇ、お願いよ。アンタだって今のままじゃ此処から逃げ出せないでしょう?)
それもそうか。
どうせアヤムちゃんも助けなきゃいけなかったし、良いよ。
(ありがと。じゃあ、首輪の拘束力を弱めるわね)
声の主曰く、隷属の首輪を外す事は不可能だが、ある程度の拘束力や強制力を抑える事は出来るらしい。
これでやっと外に出れた。
◇ ◇ ◇
うーん……
(どうしたのよ?)
いやー、外に出たはいいけど本当に飛べるのかなーって。
実は俺まだ一度も飛んだ事無いのよね。
(そんな事、やってみなきゃ分かんないじゃない。悩む前にまず羽ばたいたら?)
まぁ、そりゃそうか。
パタパタパタパタ
(アンタやる気あんの? もっと気合い入れて羽ばたきなさいよ!)
うおおおおおおおおおお!!
バッサバッサバッサバッサ
おおおおおおおお!!
ちょっと浮いたああああああ。
って駄目だああああああああ。
あー、しんど。
こりゃ飛ぶのは無理じゃね?
(初めてにしては中々悪くなかったわよ、でも風を捕まえる練習も必要ね)
風?
あー、そう言えば鳥とか飛行機って翼に浮力を産んで飛んでるって聞いたな。
何かテレビで見たような、いや科学の実験だったっけ?
えー、めんどくさーい。
折角異世界ファンタジーの世界なんだし、風の魔法とかで楽して飛べないの?
(アンタ、自分の翼も満足に扱えてないのに風魔法で楽したいとか舐め腐ってるわね)
サーセンw
(でもまぁ出来なくはないわよ)
え、まじで?
(ちょっとアンタの魔力使うけど良いわよね?)
どーぞどーぞ
(いくわよ、それっ!)
おおおおおおおおおお!!!
飛んだ!!
めっちゃ飛んでる!
翼広げてるだけなのに凄い推進力!
翼の下にジェットエンジンでも積んだみたいな感覚だ。
うぇ~い、これめっちゃ楽しい、ちょっと上まで飛んでみよ。
身体を左右に倒して旋回したり上に起こして上昇、下に倒して下降。
ふむふむ、だんだん慣れて来たぞ。
飛ぶのに慣れて来たら周りを見る余裕も出て来た。
街は日干し煉瓦で作られた建物が並んでいる。
アラビア様式?
うーん、ドラクエの砂漠地帯の街っぽい感じかな。
街は半分がぐるりと城壁に囲まれていて、もう半分が港になっているようだ。
城壁の外はどうなってるんだろう、壁が邪魔で見えないなー。
ぐぇ。
隷属の首輪に引っ張られる。
あー、これクルトに脱走がばれたかな?
助けてテレパシーの人ー。
(無理ね、ある程度の強制力なら抗えるけど、これは強すぎるわ)
まじかー。
俺の身体は王宮の方に引っ張られて行く。
うーん、やっぱりこの首輪を外さないと脱走は無理だな。
何とかして外す方法を見つけないと。
(首輪を外すにはエゼルに外して貰うかエゼルを殺すしかないわねー)
ええー、人を殺すのはちょっとハードル高いなぁ。
(何甘い事言ってるのよ、やらなきゃ逃げらんないわよ?)
うーん……。
あれ?
クルトの部屋に呼び戻されてるのかと思ったら違うなこれ。
あれ? あれ? あー……。
「貴様、何を自由に飛び回っておるのだ?」
俺を呼び戻したのはクルトではなくエゼルだった。




