3話 兆し
初めましての方はこんにちは。既知の方は忘れましょう。
みーくんです。1作目になります。(4回目)
これを投稿する数時間前、誤って原稿を削除してしまいました。なので、今日は改めてこの3話と向き合うことになったのですが、正直全然覚えていなくてとても焦りました。これまでの流れを汲み取りつつ、これからの流れと嚙み合わせつつ……とても大変でした。これからはバックアップをしっかり取ろうと思いました。良い勉強。
よろしくお願いします。
人は、何もかもが思い通りに運んでいるとき、思い通りに運ばない物事には不安を感じるようになる。まるで得体の知れないものののように感じ、それを何とかしようと試みる。
今の僕はそれだ。”台本”によって何もかもが思い通りに運んでいる。だから、家族や友だちが僕の言動を無視するという現象は、ただただ不安でしかなかった。だから、僕はその不安を解消することに専念することにした。
初めは小さなことから、次第に大きなことを。
そして、何回か検証をした結果、分かったことがある。それは、基本的に僕たちは”台本”に沿って生きている、ということだ。元々分かってはいたことだけれど、それがより明確になった。
”台本”に沿って生きているから、”台本”にない言葉を言っても反応をして貰えない。まるで時が止まったかのように、固まる。正しく舞台だ。余計なことは言えない。言っても、反応を貰えない。そして、しばらく固まったあと、何事もなかったかのように”台本”通りの台詞を言われる。
ただ、進行上問題が無いものに関しては反応を貰えることがある。例えば、頷きとか相槌とか。それは言おうが言うまいが関係ないから、良しとされているらしい。
つまり、僕の中にある疑問を解決するためには、解決に向かう為には、”台本”上の僕が問題を解決しようと動かなければならない。そのときが来るまで、僕はひたすら一人で考えるしかない。そのときが来たときの為に。
「……………………」
ある、恐ろしい考えが生まれた。
もし仮に、僕の望まないことが起こると”台本”に書かれていたら、そのとき、僕は一体どうすれば良いんだろう。
バタフライ効果というものがある。僅かな変化を与えると、与えられなかった場合とは、その後の状態が大きく異なってしまうという現象のことだ。蝶が羽を動かすだけで遠くの気象が変化するという意味の気象学の用語らしい。
もし、”台本”にない未来へと進もうと思ったとき、”台本”にある未来とは大きく変化した未来を目指したとき、そのとき、僕はどうなってしまうのだろうか。
”台本”のある……明るい未来が見える生活が僕にとっての当たり前になってしまった今、これが何の役にも立たない冊子になってしまうのではないかという考えは、とても恐ろしいものだった。
変なことをして”台本”の力がなくなってしまったら――そんなリスクは、今の僕には到底犯すことの出来ないものだった。
そして、数日後。
いつものように”台本”を確認していると、そこには〈【僕】と【あいつ】で無駄話をする〉と書かれていた。
「授業中……これだ」
これは”台本”。つまり、この世界は舞台だ。そして、授業中という設定では先生が話しているときはあくまで先生がメインになる。僕たち生徒は背景へと変わる。
先生の台詞を邪魔しないように、けれど、授業を真面目に聞かずにいる生徒を演出する為に、僕たちは何かを喋らなくてはいけない。本当の舞台であれば、喋っていたとしても口をパクパクと動かすだけで、実際に言葉を発する訳じゃない。でも、これは現実だ。そんな意味の分からないことはしない。それこそ違和感を生んでしまう。実際、クラスメイトの何人かは喋っているが”台本”には何も書かれていない。
一筋の光明が見えた気がした。
これまでにも何度か書かれていたことだけど、”台本”を信じ切っていた僕は何の疑問も抱かず、雑談をしていただけだった。勿体ないことをしてたと後悔する。
幸い、あいつは演劇部に所属してる。僕の聞きたいことに応えてくれるだろう。あとは、どのくらいの時間が稼げるかだ。
そして、授業が始まった。”台本”には先生の台詞が書かれている。改めて見てみると、一時間分の台詞だ、凄い量に驚かされる。
………………来た。
「……なあ」
「……ん? どうした?」
「演劇部ってことはさ、台本って、あるじゃん?」
「何? 急に」
「まあ良いから、聞けよ」
「……うん」
「その台本に書いてあることって、絶対な訳?」
一瞬、顔がこわばったように見えた。目つきが鋭くなり、思わずたじろぐ。
「どういうこと?」
「いや……役者にそれ以外の行動は許されていないのか? って思って」
「絶対だ。だけど、必ずしも絶対って訳じゃない」
「……どういうこと?」
「…………俺たち役者っていうのはさ、台本を渡されて、そこに書いてある台詞を喋る訳。それは分かるよな?」
「うん」
「そこには、何でこんなことを言うんだろうな? って台詞もあったりするんだよ。え、ここでこんなこと言うの? みたいな」
「へえ」
「まあ、作者……ストーリーテラーって奴が居て、その物語の世界ではそいつが神様な訳。だから、登場人物が変なことを言ってても、それは神様の意思だったりするんだよ」
「神様の意思……」
「そう。それに、変なことを言ってたとしても、その変なことは物語の後半で活きて来ることがある。伏線ってやつ。だから、俺たちの『ここでこんなこと言うの?』で伏線を潰したりは出来ないだろ? だから、書いてあることは絶対」
「でもさ、アドリブってあるでしょ? よくドラマの未公開シーンとかで見るけど」
「ある。それが絶対って訳じゃないってこと。お前が言ったアドリブだけど、そはあくまで物語に沿ったものじゃないとボツになる」
「ボツ?」
「未公開シーンになっちゃうってこと」
「ああ」
少しずつ、パズルのピースがはまっていく感覚だ。
「物語に沿ってないと、その後の進行が出来なくなっちゃうだろ? 例えば、勇者が最初の村で死んだら、その物語はどうなる?」
「……なるほど」
「そう、成り立たなくなるんだよ。……だから、結局はその神様の意思が重要ってこと」
「…………」
「うん、絶対だけど、絶対って訳じゃない。それが答えかな。そういうことを考えてくと、役者って結構自由な行動は許されてないんだよなって思うよな。アドリブをするとしても、それはあくまで役としての自由な訳だ。役者としての自由って、ないよな」
「……絶対だけど、絶対って訳じゃない……結局は、”台本”を書いた何かの意思が重要……」
「……ん? どうかしたか?」
「…………いや、役者って大変なんだねって」
「まあ、演じること自体は楽しいけどな。でも、やっぱり大変だよ。台本通りに進めるのって」
「……」
……もし、”台本”とは異なる未来に行こうとしたとき。そのときに僕は、どうなるんだろう。”台本”を書いた何かの意思に背いたら、僕は、どうなるんだろう。
「そこ、授業中に何を喋ってるんだ? ……そうだな、じゃあ、喋りたいなら前に出てこの問題、解いて貰おうか」
”台本”にあった通り、先生が僕たちを注意した。タイムアップだ。僕は”台本”の通りに答える。
「……『すいません、分からないです』」
「全く……授業はしっかり聞くように」
「『はあい』」
………………。
今の会話で、分かったこと。
僕たちは、何かによって作られた”台本”の中に生きている役で、決められた道筋を歩むべく決められた台詞を言い、演じている。だから、”台本”にない台詞を喋っても返事を得ることは出来ない。物語の道筋から逸れてしまうからだ。僕の中に在る一番大きな疑問は、これで消えた。
しかし、代わりにひとつ大きな疑問が出来た。
僕は”台本”を手にした。だから、誰が何を言うのかを知っている。僕自身が何を言うべきかを知っている。けれど、他の人たちはどうなんだ? これは……この”台本”は、僕が主人公の物語だ。つまり…………他の人たちに自我はない? ただ、僕の持つ”台本”通りに言葉を言わされているだけなのか?
……”台本”って、一体何なんだ? 誰が書いた? 何の為に?
初めて”台本”を手にしたときに思ったこと。”人間以外の、何か得体の知れないものが作ったもので、僕たちの未来で起こることが書かれている。それさえ分かれば十分で、それ以上は考えてはいけないものだ”。とんでもない。僕はただ、無視をしていただけだ。一番厄介な問題から、目を逸らしていただけだ。
僕が人形なのではなく、僕以外が人形なのか……?
ふと横を見ると、あいつが僕の方を見ていた。目が合うと、あいつは口だけを動かした。
「…………」
がんばれよ。
そう、言っていた。見間違いだろうか、正直確証はない。けれど、そう言っていたような気がした。
頑張る? 何を? ……何で?
”台本”にはない行動。僕にとって、初めての体験。それが余計に不安を募らせる。
理解して来たと思ったのに、実は、僕は全く理解出来ていないのかもしれない。
そして、その日はやって来る。
この物語も、いよいよ明日が最後となります。0話と1話を同時に投稿したように、4話と5話を同時に投稿します。月を跨いでしまったので、それだけが悔やまれる……どうせなら今日で完結をさせたかった……。まあ、次回作から気を付ければ良いでしょう。良い勉強。勉強してばかり。一生勉強。……あ、それと。Happy Halloween!
有難うございました。
みーくん
2019/10/31/22:00 … 改訂




