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storyteller  作者: みーくん
2/6

1話 ”台本”

初めましての方はこんにちは。既知の方は忘れましょう。

みーくんです。1作目になります。(2回目)


5分前に0話で”前書き”を書いたので、省略。


よろしくお願いします。

「……あれ、鍵閉めてなかったんだ」

 その日も、ごくごく普通の何の変哲もない”いつも通り”を僕は送っていた。

 他の日と何も変わらない……同じように朝起きて、同じように学校へ行き、同じように友だちと当たり障りのない会話をして、同じように退屈な授業を受けて……そんな、"いつも通り"の日を送っていた。

 強いて言うなら、翌日にテストが控えていたから授業は午前中だけで終わりだったということくらいだろうか。

 僕は友だちとハンバーガーを食べ、カラオケの誘いを断ってから家へと帰った。

「ただいま」

「……あら? 今日は随分と早いじゃない。どうしたの? 学校は?」

 母さんだ。正当な理由があって帰って来たんだけれど、一瞬だけ戸惑う。僕はズル休みをしたことがないけれど、きっと問い詰められている人というのはこんな気持ちなんだろう。我ながら罪悪感には弱い人間なので、ズル休みはしないようにしようと固く心に誓う。

「あれ、言わなかったっけ? 明日からテストが始まるから、今日は午前中だけで終わりなんだよ」

「そういうことはちゃんと伝えなさいっていつも言ってるでしょ?」

「いいや、僕はちゃんと言いました。母さん、ちゃんと返事もしてたし。どうせ、家事してたから適当に聞いてたんでしょ」

「……そうだったかしら?」

「……」

 わざと大きなため息を吐く。

「……あ、そうだ。お昼ご飯、どうする?」

「わざと話題変えたでしょ。いいや、大丈夫。帰りに友だちと食べて来たから」

「外食は程々にね、太るから」

「心配ありがと。でも大丈夫だよ、僕は母さんと違って運動してるから」

「生意気な。……そんなに太ってる?」

「太ってない太ってない。……え、外食してるの?」

「……てへ☆」一体何歳だ。

「『てへ☆』じゃないよ」

「今、”一体何歳だ”って思ったでしょ」何で分かった。

「何で分かったの?」

「星マークが付いているように見えたから」

「母さんの真似をしただけなんだけどな。外食のし過ぎで父さんに飽きられても、僕は知らないからね。程々に。……それじゃあ、勉強するから邪魔はしないようにお願いします」

「はいはい、分かってるわよ。頑張ってね」

「程々にね」

「そうね、程々に」

 僕は話もそこそこに自分の部屋へと向かった。

 そして、部屋に入った僕はあるものを見付ける。

「……? 何だ、これ」

 それは、一冊の本だった。本というよりかは、冊子の方が近いだろうか。映画のパンフレットのような、B5サイズの冊子。黒一色の表紙には、何も書かれていない。

 朝、部屋を出るときに確認したときには何も置かれていなかった。それは間違いない。つまり、僕が学校へ行っている間に誰かが僕の部屋に入り、机の上にこれを置いたということだ。

「母さん! 僕の部屋に入った?」

「部屋? 入ってないわよ」

「マユは?」

 マユは僕の妹だ。何か面白いものでもないか、時々僕の目を盗んでは部屋に入る。だから、何かを持っていくことはあっても何かを置いていくだなんて考えにくいけど、一応。

「マユも入ってないと思うけど……どうかしたの?」

「……いや、何でもない。ごめんね、大丈夫」

 冊子を開きページを何枚かめくってみたところ、どうやらこれは舞台か何かの台本のようだった。

 演劇部に所属している友だちは居るけれど、しばらく家には入れていないし、何かのミスでうっかり僕のバッグに入ったなんてこともないだろうから、恐らく関係はないだろう。当然、僕もこんなものは知らない。

 要するに、全く心当たりがない。のだが。

「……っ! 嘘だろ……?」

 その台本には、僕の名前が書かれていた。それも、登場人物として。僕だけじゃない、そこに書かれている……その台本のようなものに登場している人物は、全て僕の知る人たちだ。

 しかし、僕がそれ以上に驚いたのはその内容だ。何の変哲もない、ごく普通の日常の風景が書かれている。同じような、当たり障りのない、退屈な、”いつも通り”。

 僕が過ごした、今日の出来事だ。

「…… 『ただいま』……『あれ、言わなかったっけ? 明日から期末テストだから、今日は午前中だけで終わりなんだよ』……ちょっと待ってよ」

 そのページには、つい先程の僕と母さんとの会話が書かれていた。まるであの会話を文字に起こしたかのように、一言一句違わずに。

 読み進めてみると、自室に戻りこの冊子を手にする僕の姿もあった。そしてそこには〈【僕】が”台本”を手にする〉と書かれていた。

「”台本”? ってこれか? ……っ!」

 うっかり口に出してしまった言葉も、”台本”には台詞としてしっかりと書かれていた。

 つまり、”台本”と呼ばれてたこの冊子には、僕の全ての行動が書かれている。

 間違いない。これは、僕の”台本”だ。全てが、僕を中心に書かれている。僕が主人公の、僕の人生の”台本”だ。

「……『母さん』……『今日の晩ご飯なんだけどさ、唐揚げにしてくれないかな?』……まさか、嘘だろ?」

 本当に馬鹿馬鹿しいと思う。だけど、試さずにはいられない。

 もし、これが本当に僕の”台本”ならば、本当に僕の行動と周りの行動が書かれているのならば、きっと母さんは……そして、僕は。

「……『母さん』!」

「どうしたの?」

 同じだ。でも、まだ分からない。

「『今日の晩ご飯なんだけどさ、唐揚げにしてくれないかな?』」

「あら、リクエストなんて珍しいじゃない。でも、唐揚げなんて急に言われても困るんだけど? それに、ご飯は要らないってさっき……」

 同じ。”台本”を持つ手に汗が滲むのが分かる。

「『晩ご飯って言ってるでしょ。今日はもう食べないとでも思ってるの?」

「え? ……ああ、そうね。晩ご飯晩ご飯」

「『それと、買い物に行くならレモンも買って来てくれる?』」

「ええ、分かったわ。……レモン、嫌いじゃなかった?」

「『良いから。お願いね』」

「はあい」

 …………………………。

 少しだけ、眩暈がした。

 全て、”台本”と同じだった。

 決まりだ。この”台本”に書かれていることは、未来に起こることで間違いない。

 未来だけじゃない、過去もだ。僕の今日して来た行動、これからする行動が書かれている。

 ただ、これは予知能力とは違う。上手く言葉に出来ないけれど、予め決められていた出来事……と表現した方が近いような気がする。それこそ、舞台のような。登場人物はこれから起こることを知っている。予め決められていた言葉を言い、予め決められていた行動をとる。だから、この冊子に書かれている通り、これは”台本”だ。

 ……この”台本”は、一体誰が書いたのだろうか。誰であれ、その誰かは僕たちの性格を熟知している。僕たち以上に、僕たちのことを知っている。

 僕はレモンが嫌いだ。だから、母さんが僕のお願いに対して疑問を抱くことは何らおかしくない。ただ、”台本”にはそれが書かれていた。それが問題だ。この”台本”は、その人が言いそうなこと、言わなさそうなことをきちんと理解した上で書かれている。

 ……だ、なんて。

 誰が書いた、だって? 僕たちのことを、僕たち以上に熟知した誰かが? そんなことを考える方が馬鹿馬鹿しい。普通に考えて、僕たちがするであろう行動を完璧に把握出来る人間なんて居る訳がない。

 これは、間違いなく人間以外の”何か”が作ったものだ。そうでなければ説明がつかない。

 むしろ、それで良い。人間以外の、何か得体の知れないものが作ったもので、僕たちの未来で起こることが書かれている。それさえ分かれば十分で、それ以上は考えてはいけないものだろう。誰が、何の為に書いたかなんて、この際どうでも良いことだ。

 つまり、僕が考えるべきはこの”台本”そのもののことではなく、これをどう使うかだ。これは今、僕の手の中にある。

 ……もし、これを上手く使うことが出来たら?

 未来で起こることが分かる人間なんて、どこを探したって見付からない。世界中で僕だけが、未来を見ることが出来る。

 宝くじでも買おうか? どのくじを買えば一等が当たるのかが分かるんだ、すぐに大金持ちになれる。何だって思いのままだ。ただ――。

「…………気持ち悪い、よな」

 不気味。普通に考えて、不気味以外の何物でもない。

 未来で起こることが分かるという魅力はとても大きい。さっきは違うと言ったが、最も簡単に表現するとすればこの”台本”を持つということはイコール”予知能力”を手に入れたということだ。そして、未来を知るということは、誰よりも有利に生きることが出来るということだ。

 けれど、自分以外の何者かに行動を決められているということ自体は気に食わない。予め決められていた言葉を言い、予め決められていた行動をとるだなんて、そんなのはただの人形だ。僕は、人形じゃない。

「……捨てるか?」

 僕は”いつも通り”が続きさえすれば、それで良い。何も特別なことなんて望んでいない。捨てて、夢だったと思うか。

 僕は”台本”を見る。そこには、”台本”を捨てようとする僕の姿が書かれていた。しかも、その後台本にそれが書かれていることに気付いて捨てることを躊躇う僕の姿も書かれていた。正に今の僕だ。

 大きくため息を吐く。

「……母さん!」

 …………………………返事はない。

 検証その一。僕は”台本”にない台詞も言うことが出来る。

 人形であれば、余計な台詞を言うことは出来ない。”台本”を作った何かは、僕の行動を完璧に支配している訳じゃない。意図的に”台本”とは違う行動をとることも出来る。僕は、選択をすることが出来る。今の行動でそれが分かった。証明が出来た。

 だったら、捨てる必要なんてない。僕にとって良い未来が書いてあるならば”台本”に従い、悪い未来が書いてあるならば”台本”とは違うことをすれば良い。


 僕は、未来を手に入れた。

 これさえあれば、僕は人生を一変させることが出来る。

有難うございました。


5分前に0話で”後書き”を書いたので、こちらも省略。



みーくん

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