満月
平成最後の春の明け方の満月を見て、君を想う。
春の明け方の薄墨色の空に、ぽっかりと仄白い満月が浮かんでいる。
僕はぼんやりとその白い顔を眺めて、ふっと短い吐息をついた。
今日、君は旅立つ。
僕の気持ちに気付くことなく。
ずっと君を見ていた。
僕はいつでも君のそばに居たけど
僕はいつまで経っても、君の気の置けない幼なじみのまま。
昨日、君と最後に歩いた帰り道。
もしも、君を抱き締めていたら、
何か変わっていたのだろうか。
否、それでも君は行くのだろう。
胸一杯の希望をトランクに詰め込んで
僕の居ない新しい世界へ。
さようなら、君。
いつの間にか春の夜は明けて、淡い青空が、君の前途を祝福するように広がっていた。
春の明け方に部屋の窓から満月を見て喚起された小品です。
春の切ない別れを感じてもらえたらと思います。
作者 石田 幸