5幕:鬼面の男と海の調査1
サブタイトル修正
少し早めにお昼を済ませたラズは業務を兼務していた先輩のグミと受付を交代した。
昼時は訪れる冒険者も少なく一人でも処理できるくらいなので、各自順番に一人ずつ交代しながら代わり番子していくのが、この所員の習わしだった。
異業種な上に違う組織なのだが、少ない人員を助け合いということでお互いに支えあっている。
それに行政の方でもほかの部署でも同じように入れ替わっているの。
だから実質のところ今の時間帯はほぼ半分くらいの席が空いていた。
ちなみに多忙でお昼を取れないこともあったりするのだが、そんな日は月に数回あればいいくらいだ。
片方だけ閉じた席の休止中の立て札を取り下げるとラズは振り向きざまに声をかけた。
「先輩、今日のお昼すごーく美味しかったですよ。早く行かないと無くなっちゃいますから」
「ほんとに?凄く楽しみにしてたのよね。じゃあ後はラズに任せようかしら」
「はい、任されました。ごゆっくり」
「ラズありがと」
最近ギルドの入口向かい側にある屋台で販売されている軽食がとても美味しいと評判で町の人たちまでもが挙って買い求めるようになった。
仕事をしながらでも気軽に食べることができる軽食と舌が蕩けるような美味しいデザートの組み合わせ。
ボリュームが足りないからだろうか、男性よりも女性がすごく多い。でもそれは間違いで実は腹持ちはすごくいいし美味しい。外国の料理というのも案外良いものだ。
それに一つ一つがすごくオシャレで可愛らしい感じで女子受けがいい。
この時間ならまだ豊富にあるはずなので買えないことはないだろう。
それにしても最近、先輩が仕事中でも柔らかくなった。
滅多なことでは怒らなくなったし、言動も何もかもが優しく感じられた。
やはり恋人の存在は人を変えるらしい。
先輩の持つ雰囲気は以前よりもすごく柔らかく、そして甘いのだ。
だからそろそろ結ばれるのかなとラズは予見している。
もちろんお相手はあの方だ。
それにしてもグミ先輩がとても羨ましい。
最初はお互いに非常に無口だったし顔を合わせても挙動不審で、正直見ていてこっちも赤面しそうになるくらいの状態だった。
でも今では素知らぬ顔でいつも通りの表情で当たり前を貫いている。
でもそれがとても羨ましかった。
自分もそのうち白馬に乗った王子様に連れられて一夜を過ごしたり、、、
負けないくらいの甘い時間を過ごしたり、、、
大勢の人たちの前で花束を贈られてプロポーズされたり、、、
純白のドレスを着て町中の人たちにお祝いされて、、、
公衆の面前で近いのキスを、、、
そのうち先輩のような顔をして受付に立つのかな。
そういつものように妄想が膨らみかけている時だった。
知らない間に受付デスクをドカドカと叩いてしまったようで音が施設内に響いてしまった。
でもそれが原因じゃないらしい。
静寂に包まれていたギルド内が突如騒がしくなった。
「おい!!あれ『鬼面』だろ。Bランクだぜ!!」
「相変わらずクソでかいな!!身長どのくらいだよ」
「あんな体格ないとBには昇進できないのか、、、」
それからガタンと音がしてラズの目の前に大柄の大男が出現した。
ラズの何倍も逞しい腕に体つき。
向けられる目つきは鋭く思わず心臓を鷲掴みにされたかのようだ。
それに装備している武器も相まってその怖さは尋常じゃない。
まさにオーガである。
そんな鬼のような怖い顔をした大男がこちらを静かに眺めていた。
「あっ!?いけない、、、また私ったら、、、こんにちは」
「・・・」
「もぉーっ相変わらず可愛いねって、私が可愛いのは当たり前だとしてもそういうことは先輩だけにしないと怒られますよ」
「・・・」
「そんなことないって、、、お腹いっぱいです、もう二人が甘すぎて胸焼けしそうです。それで今日はどうされました?」
「、、、、」
「なるほど。海の方で普段見ないアンデッド系の魔物が沸いてる?、、、いえそれでしたら、改めてこちらから調査クエストを依頼します」
「・・・」
「はい、ギルド長には私から伝えておきますので。それにしても『竜の祠』絡みでしょうか。それとも、、、」
「・・・」
「なるほど。それでその報告と臨時のパーティーメンバーが必要なんですね。そりゃ危ないからソロはダメです!!」
「おい!!あれでラズちゃんとの会話が成り立っているんだが」
「やっぱり俺たちのラズちゃんはすげぇな」
「あぁ流石は俺たちのアイドルだ」
「まな板だけが残念だけどな」
「「「「!?」」」」
一瞬、何か聞こえたような気がしたけど、押し黙った。
今はそれどころじゃない。
調査といっても今回はそんなに簡単に済むかは分からない。
『竜の祠』近くに普段見られないアンデッド系の魔物が出現している。
しかしあそこは決まった日時にしか入ることはできないし、誰かが入れば魔道具が感知して異常を検出してしまうはず、、、ということは人以外のものか、もしくは全く関係がないかだ。
それに現在進行系であるのならば、『魔力溜まり』が新しくできたとも考えられる。
それなら下手をすれば、難敵だったりと鉢会うかもしれない。
ならばそれなりの実力者でなければ対応できないのは間違いない。
魔物類の最悪想定される規模と相性を考えても、、、神職系もしくは魔導士が必須案件である。
あとは斥候系の技術を持つ冒険者も一人は確実に欲しいところ。
普段の妄想のおかげだろうか。
次々と頭に浮かぶ案件から必要事項を抜き出し精査していく。
Bestは無理だがBetterには違いない。
「1日だけ時間を頂けますか?」
「・・・」
「たまたま町に滞在している魔道士がいないんです。ほかの方は出かけて数日は戻る予定はないですし、、、」
「・・・」
「いえダメです。いくらBクラスの人間といえども先輩の恋人を一人で向かわせるようなことはできません」
「・・・」
「ダメです!!最低でも神官かどっちか必須です!!」
これは緊急通達を出した方が早いか、もしくは隣町の支部に応援を頼んだ方がいいか。いやその前にギルド長に指示を伺ってから指示を受けるべきかと再考しようと考えた時だった。
ガチャリと開く扉の下側から小さくて可愛い二人が顔を覗かせたのだ。
「魔道士いたーっ!!」
ラズは我を忘れて叫んでしまった。
そんな彼女に施設内の人たちがまたいつものかと当惑した顔を向けるのだった。
ラズ(๑• ̀д•́ ):人材確保!!




