表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
まじかるココナッツ。  作者: いろいろ
1章
97/162

4話:ココアとココナ1

 

 建物奥に人影は見当たらない。

 左を見ても右を見ても後ろを見ても誰もいないらしい。

 通路の手前にも一望できる死角にも見張りを立てているしバレる恐れはない。

 もし誰かに見つかっても迷子になったふりをして誤魔化せばいい。

 それまでは問題ない。

 それにこの時間帯は職員は多忙でこちらまで来る人はいない。

 本当はほぼ毎日建物の中を冒険しているので中にどのような部屋があるかは大まかに把握している。

 でもそれは秘密である。


 だから今日も少しずつ少しずつ既成事実を作っていく。

 すぐには分からないように少しずつ。


 色を少しずつ濃ゆくしていく。

 塗り合わせる線の太さを大きくしていく。

 そしてその線の数を増やしていく。


 窓から差し込む少し遅めのお日さまのおかげで今までの成果がはっきりと見て取れる。


 手に取ったペンの種類を変えながら二人は試行錯誤した。

 そしてついにこの日、二人の最高傑作がもう少しで完成する予定なのだ。


 鈍くくすんでいたギルド長の銅像はもっと立派になるのである。


 あまりの完成度ゆえにすごく自慢したくなるが、ちゃんと我慢する。

 まだ未完成なのだ。

 完成前にバレたら大問題なのだ。

 もしこれがバレたら間違いなくおやつを抜きにされることだろう。

 それは一大事である。

 命より大切な三度のご飯と同じくらい大切なおやつである。

 だからこそ二人は真剣だった。

 本気だった。

 間違いなく日々の練習よりも力が入っているかもしれなかった。


 これは二人の大切な日課である。

 これが終わるとラズとグミの二人の元へ駆けつけお菓子を貰うのである。

 タイミングが良ければ他のお姉さんやお兄さん、おじさんやおばさんからも美味しいものを貰うことができる。

 その後、ギルド長のおじさんのところへ行き大きなソファに座って時間を過ごす。


 そしてそこで手にしたお菓子の山を二人と2匹で分けて口いっぱいに頬張るのが楽しみなのだ。

 そしてその頃には掲示板に張り出された依頼のリストとほかに紹介される依頼などの吟味が終わり兄がホッとした顔で二人を出迎えてくれる。

 そのちょうどいいタイミングで受付あたりに足を運べばいいのである。

 何食わぬ顔をして。

 最近では外で他のお仕事をしたりしているので少し遅くなったりもするのだが気にしない。


 今日は何のお菓子かな、甘いのかな、しょっぱいのかな。

 ペンを走らせながら胸を膨らませていた時だった。


【【!!】】


 見張り役の共犯者マロンから合図が送られてきた。

 誰かがこちらに向かっているという。


【【!!】】


 そしてもう1匹の共犯者ヤキニクからも続けて合図が届いた。

 やはり誰かがこちらに向かっているらしい。

 どうやら二人には時間がないようだった。


 お互いに視線を向け合い、そして同時に頷いだ。


 片手で宙に小さな魔法陣を浮かべると二人は手持ちのペンを全て収納した。

 そしてすぐに消失。

 もちろん残留魔素でバレないように隠蔽工作済みである。


 あと少しで完成という時に横槍が入るのは仕方ないが、これ以上はどうすることもできない。

 そのことを確信すると二人はその未完成の大傑作から離れその場から離脱した。

 あとは遠回りしていつも通りに受付に顔を出せば完璧である。





「マロンもヤキニクも見張りご苦労様。はい分け前ね」


 ココアはラズやグミたちから頂いたお菓子を4頭分し2匹の前に差し出した。

 両手いっぱいに載せても、まだたくさんある。

 だからココアは自分の分から一掴みだけ摘むとそれを2匹の分に付け加えた。

 心ばかりのお礼である。


 さらに嬉しそうになる2匹の姿を見て自分も何だか嬉しくなる気がした。

 横を見るとココナも笑顔になりながら2匹の頭を撫でている。


 後ろが透けて見える小さな黒い体のスライムであるマロン。

 ココアとココナの二人を乗せてもビクともしない仔牛のヤキニク。

 どちらともココナが最初に契約した使い魔である。


 マロンは森の近くで暴れまわっていたところをお兄とココナと戦ったらしい。

 その際、とにかく逃げ回らなければいけなかったほどすごく凶暴だったそうだ。でもその後、魔法で懲らしめてから友達になって使い魔の契約をしたのだとココナから聞いている。

 頭もいいし色々な耐性があるみたいだし変身もできるし面白い子である。

 よくお兄の頭に乗ったりココナや自分の頭の上に飛び乗って来る。

 ぴょんぴょんと頭の上から自分よりも高いところで一望できるマロンがちょっと羨ましかったりする。


 一方のヤキニクは山の中の祠か何かで唸り声を上げていたところを魔法の力で宥めてから友達になって契約したらしい。本当の姿はとても立派で強い牛さんとのことだった。

 実際、魔力を込めてから変身した姿を見たらびっくりした。


 とても立派な魔牛の姿だったのだ。


 太くて大きなツノが生え体は自分の何倍も大きくとても強うそうな使い魔だった。大きな背中に二人で乗ってから、ついつい町中を大爆走したらお兄にめちゃくちゃ怒られた。


 当然ながらその日はおやつはなかった。


 流石にヤキニクもその日はしょんぼりしてたけど、一晩経ったら元気になってくれた。普段はとても穏やかで可愛い仔牛、すごく甘えん坊な子である。


 そんな2匹との契約はすでに終えている。

 ココナに促されて自分も使い魔契約を終えたのだ。

 でも、、、


 -----自分だけの使い魔が欲しい


 それは切実な想いだった。


 数ヶ月前、ココアはこっそりと大規模な魔法陣を使って使い魔を召喚しようとした。

 使い魔は魔道士にとって最低限の技能の一つだった。

 ドラゴンでもユニコーンでも、、、とにかく使い魔がいればそれだけ魔道士に近づくのだ。

 一人じゃできないことがやれるようになるのだ。

 大魔道士の書籍にも書いてある通りに描き自分のアレンジを加えて魔法陣を起動させた。


 でもその最中に事件は起きた。

 そのことがママにバレたのだ。


 とても優しいママ。

 魔法も魔術も使える超一流の魔道士。

 長い金色の髪がさらさらで綺麗でとても羨ましいママ。

 いつも優しく頭を撫でて微笑んでくれるママ。

 髪の色はなぜか同じじゃなかったけどそれでも自慢のママに認めて貰いたくて、、、


 隠蔽魔術を同時に駆使したにも関わらず母は居場所を突き止め彼女の儀式を妨害し中断させた。


「ママ邪魔しないで!!私は使い魔を召喚して本物になるの!!本物の大魔導士になるの!!」


 でも母はそれを許さなかった。

 負けじと私は魔法陣を消させないように魔力を込めやらせないようにした。

 でも、、、


「ココ、あなたにはまだ早すぎるわ、、、大切なことを分かっていないの」


 母の魔法が全てを打ち消すとそのまま私の体を包み込んだ。

 途端に身体中に渦巻いた魔力が乱れ魔法陣を制御できなくなった。


「光の詞、弾ける鎖、求める声、応じる叫び、、、できない!!どうして!?なんで魔法も魔術も言うこと聞かないの!!」

「それは足枷、制限。今のあなたには絶対に打ち破ることはできません」

「ママどうしてそんなことするの!?私は使い魔を召喚しようとしただけじゃない!!」

「そうね、、、あなたは使い魔を召喚しようとしただけね」

「なら、、、どうして!?どうして邪魔をするの!!」

「この場を見てもそれが分からない?」


 その場を見渡しても吹き飛んだ瓦礫の山だけだった。

 魔導実験を繰り返して失敗したいつもの光景だった。

 今更そんなことを言われても、、、


「全く分からないわ!!言ってることが分からない!!」

「そう、、、ならあなたが私の言ってることを理解できるまであなたの力を封じます」


 光が溢れ包んでいた母の魔力が私の体の中に入ってきた。

 それはいつも優しかった母の温かい魔力とは違うとても怖さを感じる魔力だった。

 それは一つとなり体の中に入り込みやがて感じなくなった。

 そして異変はすぐに起きた。


「魔力が上手く練れない、、、制御できない!!」

「これ以上、言うことを聞かないのなら、、、このまま魔力そのものを封じます」

「ふざけないで!!そんなの受け入れられないわ!!」

「そう、、、それからあなたをこの国から追放します」

「!?」

「ええ」

「、、、出ていけってこと?」


 私は恐る恐るママの顔を見た。

 今まで見たことがないほどの冷たい瞳が私を見つめていた。


「そう言うことです。再び魔導の力が目覚めてその足枷が溶けるまで、あなたが本当の意味を知るまでこの国に帰ってきてはいけません」

「、、、私は大魔道士になるの。なんで分かってくれないの、、、ママの分からず屋、、、」

「何とでも言いなさい」

「ならいいわ。そんなこと言われなくても、、、こんなところなんか二度と帰ってこないわ!!!」


 そして私は空から飛び降りた。

 その日以降、空を見上げたことはなかった。



 それから数ヶ月、一人で必死に生きた。

 食べられるものを食べ飲めるものを飲み、、、

 一人で生きた。

 一人で生き抜いた。


 そんなある日、どこかの草原で魔力の光の本流を見た。

 見たことがないほどの洗練された魔素の本流が規則正しく渦を巻き、、、そして突如乱れた。

 中から赤い血のような変わった魔力も感じたけど、すぐに別のことが気になった。

 中心地の中から自分と同じくらいの背丈と年齢の子が突如現れたから。


 よく目を凝らすとその子は何かを握りしめているようだった。

 真っ赤に染まった大きな手を力いっぱいに握りしめて、、、


 泣いていた。



様変わりしていくギルド長の銅像( ゜д゜):、、、。

ココナとココア(๑• ̀д•́ )(๑• ̀д•́ )✧:完璧!!

知らないふりをする予定の2匹(゜ε゜(゜ε゜):オヤツが大事。




恐れ入りますが、、、、ココナとココアのイタズラがどうなったかきになる方、二人にほっこりされたい方、もしよろしければ評価やブックマーク等いただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


●新作です。 ロリコンドMの人形使いは幼女に顎で使われる!!

●続きを読みたいと思った方は、よろしければ下のランキングのリンクバナーのクリックをお願いいたします。

小説家になろう 勝手にランキング
cont_access.php?citi_cont_id=410288874&s
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ