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まじかるココナッツ。  作者: いろいろ
1章
93/162

2幕:新しい町と新たな冒険2

 

 少しだけ開かれた窓から吹き込む風は朝方よりも勢いが増していた。

 普段なら天気に関係なく気温が上昇するはずなのだが、この日の上がり幅は小さいようだ。


 すでに昼休憩の時間に差し掛かるくらいの時間だろうか。

 あの試合からすでに数時間経っている。

 にも関わらず施設内外にはまだ詰めかけた人々が居残り混雑していた。


「いやぁー凄かったなぁギルド長の動きは、、、バケモンだよ」

「ギルド長カッコいいわ、、、渋くて素敵」

「まさかあの女の子の猛攻をいとも簡単に捌けるなんて二つ名持ちは凄いもんだ」

「あの子も馬鹿でかい大剣を振り回して凄かったな。よく分からない魔術も扱えてありゃ相当の使い手になれるぞ」

「ついにラクスラスク初のAクラス誕生かもな」

「しばらくはこの話題が肴でいけそうだな」

「最近の子供は凄いのねー」


 それもそのはず、、、ギルド長の獅子奮迅な姿と挑戦者の小さな女の子の健気な頑張りが詰めかけた人々を魅了したのだ。 

 普段から刺激のないラクスラスクで行われた久々のギルド長の双宴劇。

 街で一番名の知れた実力者の相手はとてもとても可愛らしい小さな女の子。

 一方的な内容を予測した人々の期待を裏切り、目の前で繰り広げられた激闘の数々。

 盛り上がらないわけがなかった。


 久々のお祭り騒ぎを満喫した人々はあちらこちらで件の話で盛り上がっている。

 そのため施設内外がいつもより騒がしいのである。

 そんな場所にもしあの場で活躍した女の子が現れたらどうなるだろうか。

 結果など話すまでもない。


 興奮止まぬ人目を避けてギルド職員数名により個室に案内された後、冒険者登録の事後処理が行われていた。

 すでに登録証代わりのペンダントは手渡されており小さな胸の中に大切に仕舞われている。

 他に残すは面倒な事務処理であり、そこでは胸の膨らみがない受付の職員とキリリとした表情のギルド長が二人に向け確認を行なっていた。


「じゃあ最後だけどパーティ名はそれで大丈夫?」(ラズ)

「うん!!」(金髪の女の子)


 これでほとんどの案件を終えたことになる。

 緊張するかけらも微塵も見当たらない状態から解放されココは目の前に置かれたお菓子を頬張りながら勢いよく頷いた。一方、隣ではもう一人の黒い髪をしたココが飴玉を舐めながら二人のやりとりを眺めていた。


 今、蒼葉お兄ちゃんはこの場にはいない。

 雑務処理に伴う受け答えをココたちだけで対応している。


 つまりお兄ちゃんに後のことは全て任されているのである。

 仕事ができる偉いココに任せているのだ。

 だから二人で相談しながら色々と決め事を決めているのである。


 つまりココは偉いのだ。

 えっへん。


「ココアちゃんもおーけー?」

「良いに決まってるじゃない。私たちのパーティーなんだから」


 黒髪の女の子はツンとした表情で答えた。

 しかし内心は嬉しいようで頬が若干赤みがかっている。


 二人で決めたのは新しいパーティの名前である。

 ココたち二人に蒼葉お兄ちゃん。

 そしてマロンたち使い魔を加えた新たなパーティがこの日発足した。


 今日はその第一歩、新たな門出である。

 嬉しくないわけがない。

 しかもこの後、特別なご馳走が待っているのだ。


 だから二人の心持ちは最高潮だった。

 二人の表情だけは終始真逆だったが、、、表情以外のあちこちにその兆候を捉えることはできた。


 そんな子供たちにラズは心から和みながらとあることに念を押した。

 彼らの保護者がいない場で勝手に決めていいのか、、、やはり疑念に駆られたからだ。


 上司が首を振ることはなかったため二人には大丈夫だということで理解している。ちなみに時折、懐疑的な目で静観していたグミは二人の保護者の青年を引き連れ幾分前に他の仕事のため退席している。

 だからラズはそれぞれの意思が交錯していることをあえて気づかないふりをして事務処理を続けた。


「それでクエストはこれがいいのね?」

「それがいいわ」

「えらいえらい。これはお手軽な初心者クエストだけど大事なノウハウが込められてるの。だからちゃんと達成していけば必要技能が身につくからね。大事だからね。間違っても海の方に行っちゃダメだよ」

「わかったわ。ラズさん、、、ありがと」

「いいえ、どういたしまして」

「ねぇ大事なのよね、、、ギルド長?」(ココアのジト目)

「あーはああっははは、、、まずはこっちのランクの依頼からだな。郊外のクエストは早すぎる」

「そうそう、、、全力で頑張るけど、、、依頼は何だっけ?」

「いやーあーっはっははっは、おじさんの勘違いだったようだ。すまんすまん。実力的に考えて、、、ならばこっちの洞窟周辺の調査依頼からでも大丈夫だな」(内心焦りまくるギルド長)

「!?」(ココナのはっとした目)

「なら他の奴だと、、、そっちも同時でいいかしらラズさん?これとこれとあれをやれば飛び級でランクが上がるんだろうけど兄もいることだし実力的にも大丈夫だと思うわ」(ココア)

「はっはは仕方ないがそのクエストなら保護者同伴で許そう。あとはこっちのクエストなら子供だけでも大丈夫だな。ただし難しいぞ」(ギルド長)

「そうね。ギルド長が言うのなら大丈夫だと思うわ、、、、そしたら全部依頼しようかな」(ラズ)

「望むところだわ。では改めまして、、、よろしくお願いします」(ぺこりとするココア)

「おねがいします」(ココナ)

「はい、畏まりました。ではお兄さんが戻るまでしばらくそこで待っててね」(ラズ)

「大人しくしとくんだぞ」(ギルド長)


 ラズとしては子供達を危険な地に送りたくはないのだが、ひょっとしたらという思いを隠しきれず、また己の野心や願望を御しきれずついつい言葉の中にヒントを与えてしまっていた。これが後にとんでもないことが引き起こされるとも知らずに。


 一方、ギルド長は己の保身のために普段は聡明な頭脳の回転にブレーキが掛かっていた。

 意図しているのか天然なのか何とかしてランク以上のクエストにありつこうとする女の子との鬩ぎ合いとその手腕に舌を巻きつつも落とし所の着地点を何とか抑えたところだった。

 それでも遠ざけることには成功したつもりだった。


 ラズの目的と野心もギルド長の不安と疑念も二人の希望も偶然ではあるが、、、同じ道、同じ方角へと向かいつつあったのだが、誰も知る由はなかった。



 さてこの時、幼子二人は大人組とのやり取りを行いながら同時に意思疎通の魔術により会話をしていた。

 その内容はとんでもないもので目の前の大人たちはもちろんのこと。

 蒼葉でさへその内容を知ったらその場で卒倒しそうなほどのことであるのだが誰も感づく者

 はいなかった。


 二人の魔術『意思疎通』中、、、


『あっ!?ココアちゃんがわるいことしてるー!!』

『ココナ、これは恐喝じゃないわ。さっきの件をバラされたくなかったら要求を飲みなさいってお願いしてるの。手加減されたなんて知ったら町の人たちどう思うかしらね、元Bクラスの冒険者なのにね?っていうお願いよ」

「うわぁココアちゃんあくじょだもん」

「それ褒め言葉、それよりドラゴンを使い魔にするわよ!!調査クエストのどさくさに紛れて会いに行くわよココナ』

『なになに?ほんとー?ドラゴさんあえるのー?』

『今日見学に来た人たちが言ってたの。近くにドラゴンがいるんだって。だから私の使い魔にするわ』

『でもあおばおにいちゃんはとうばつクエストはいかないからねって』

『もうココアったらドラゴンと戦う訳ないじゃないの。ちゃんとお願いするのよ、拒否ったらぶちのめすけど。だから話し合いに行くの危なくないの』

『ほんと?』

『嫌なら私だけの使い魔にするわ。ココナはしなくていいから』

『あーっ!?ココアちゃんだけずるいー!!ココもつかいまにするもん!!』

『ココナだって一人だけ使い魔いてずるいじゃない!!私も使い魔欲しいの!!』

『ココアちゃんだってとうろくしたくせにずるいもん!!ちゃんとふたりでつかいまにするの!!』

『もうココナったら子供なんだから、、、わかったから二人の使い魔にするわよ!!』

『もーっココアちゃんもこどもだもん!!』

『うっ、、、子供だもん。それより、、、』


 ぷんすと内心頬を膨らませるココにすぐにニヤニヤと心の中で笑みを浮かべらココアはこっそりと囁いた。

「ねぇココア、お兄が帰って来るまでに私たちの冒険者ランクが上がってたらビックリすると思わない?」

「はっ!?」

「お兄どんな顔するかしら、、、」


 だからココは想像してみた。

 ランクの上がったペンダントを目の前でさりげなく見せるのである。

 そこには今までに見たことないほどの驚きを浮かべる顔が想像できた。

 きっとココが以前に魔法を使って見せた時のような驚愕した顔が見れることだろう。


 それはつまり、、、


「ココアちゃんがきせいじじつつくろうとしてるもん!!」

「ふふふ、、、気づいた?お兄の選択肢をこっちで作っちゃうの。そしたらドラゴンしばきにじゃなかった、、、使い魔にできるわよ」

「おー!?ココアちゃんあたまいいー!!」

「じゃあお兄が帰ってくるまでにこの町のお使いクエスト片っ端から行くわよ」

「うん、それとココアちゃんまちのぼうけんもするし、やたいみてから、あとはおなかいっぱいへらす」

「わかったわ、今日はお兄のご馳走食べられるもんね。じゃあせーの!!」

「「『ココ軍団』しゅっぱーつ!!」


 二人の女の子は保護者の言いつけも忘れ町中へと全力で飛び出した。

 ()()()()()()()()()()新たなパーティである。


 その日の夕方、彼女たちの保護者が用事を終えやっと解放された頃、幼子たちはタイミングよく彼の前に顔を出すことに無事成功した。


 色の変わったペンダントを小さな胸の中に隠しながら。



ランクが上がった二人(o*´∇`)o*´∇`)o:やったー♫


狙い通りだったラズ  ̄ー ̄)ニヤリ:私の見る目は間違いなかった♪

目が点になるギルト長( ゜д゜):え?まさか二人だけでクエスト行ってきてないよね、、、?


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