1幕:プロローグ2
そーっと扉が左右に開かれた。
隙間から差し入る光の白線が来訪者を歓迎するように降り注いでいる。
その白線の光の中で一人の青年が若干不安そうにこちらを見つめていた。
この辺りでは大変珍しい黒髪の青年だった。
線は細いが引き締まってはいるらしい。
身長はラズより高いが高身長ではない、でも低いわけでもない。
ただ身につけている服は冒険者にあるまじき格好だ。
上から白のブラウス、黒のベストに黒のパンツスタイルと革靴。
見た目からしてそれなりのお店に見られるような清潔感と醸し出す誠実さや都会っぽさが感じられる。
珍しい、、、久しぶりの若い男性。
どこかのお店の方かな?
少なくとも都会の方からかしら?
格好からして冒険者じゃないし、、、これは先輩の案件かな。
そうラズは判断して隣の先輩の席に案内しようと判断した時だった。
突如、白線の中に二つの小さな影がすーっと浮かんだ。
ラズは何事かと思いつつ逆光の中を観察するように注視した。
女の子?
それも5、6歳なるか、ならないかくらいの子供?
片方は金色のふわふわサラサラした髪を両脇にお下げのように携えた小さな女の子だった。
もう片方は黒色の絹のように品やかな髪を1本にまとめて横に流した髪型をした小さな女の子である。
どちらもお人形のようにとても綺麗で可愛らしい小さな小さな女の子二人であり青年の前に躍り出たのだ。
そのまま金髪の女の子はニコニコと小さな手を大きく振り黒髪の女の子はツンとした表情でぺこりとお辞儀した。
「きゃーーっ!!かわいいい!!」
「ラズ!!」
二人のあまりの可愛さに思わず口にしてしまった。
しかし時すでに遅し。
先輩からの一言が飛んできてしまった。
しまった、、、これは後で確実に叱られる。
私の輝かしい人生に小さくない傷が、、、
でも私はできる女。
王子様に手を引かれるまで私は純白のままで、、、
「ラズ!!仕事しなさい」
「はぁーい、、、先輩」
竜の一声で現実に引き戻された彼女は自身の席へと三人を案内した。
忙しくない限り初期対応の全ては現在ラズが一人で請け負っている。
商業ギルド案件だろうと冒険者ギルド案件だろうと行政案件だろうと、、、
これは新人に経験を積ませるためであるらしい。
今年唯一の新人であるラズにとってそれは試練の連続だった。
何度も失敗したし間違えまくった。
その度に先輩やほか上司、また別部署の同僚たちに助けられながらラズは頑張ってきたのだ。
しかし数ヶ月も経てばラズといえど慣れてしまう。
その数々の失敗のおかげで最近では卒なく対応できるようにはなった。
今ではどんな案件でも全然関係ないことでも余裕で振り分けることができている。
ラズは青年を真ん中に女の子二人が彼を挟む位置取りで案内し椅子に案内した。
それから子供達にお菓子を差し出しつつ青年に用件を伺った。
「ようこそラクスラスクへ。ご用件を伺えますか?」
「ありがとうございます。えーっとこの町の滞在許可とギルド登録とそれからこっちの子の順登録?の申請をお願いします」
「はい、承りました。滞在申請、登録と準登録ですね。ってえぇーーっ!?冒険者なんですかっ!?しかもこの子たちも準登録!?」
「えっ!?そうなんですけど、、、準登録はこっちの子だけですよ」
「は、はい。失礼しました。でも準登録にも試験がありますけど大丈夫でしょうか?」
「筆記と実技ですか?」
「いえ実技だけですね。ほかは講習などなど継続して段階的にありますが、、、」
こんな小さな女の子が準登録なんて!?
ん?ちょっと待って私。
こっちの子だけってあっちの子は登録終わってるの!?
嘘でしょ!?
普通最低でも12、3くらいじゃないと通さないでしょ。
それも特例扱いなのに、、、
それをこんな小さな子供が!?
どういうこと!?
「すみません、これいいですか?それと手頃なクエストの依頼もお願いします。もちろん安全なやつで食事付き。寝床ついてると尚良しだし、あとお風呂も」
「お預かりします。少しお時間いただけますか」
心中悩めるラズに青年は二つの魔石付きのペンダントを差し出した。
まずはそれを手に取り確認する。
どちらも本物だった。
このペンダントはある魔術が刻印された魔道具である。
昔からあるもので個人情報が詰め込まれた大変重要なものだ。
これをとあるやり方で魔力を込めれば開示することができ個人情報を閲覧できる。
他にも大まかな滞在場所を把握できたりブラックリスト化したり生存中かが確認できる。他にも給金を貯金できたり貸付できたり他ギルドや行政機能と連携が取れたりと色々と要素がある。
もちろんこれらは誰もが実行できるわけではない。
ギルド内でもそれなりの権限がある人間でなければ実行することができないのだそうだ。
当然のことだが、一職員のラズにとってできることは限られていた。
だからラズは魔石ペンダントを預かり先輩に渡してから先にできることを処理することにした。
書類とその他諸々。
少し時間がかかりそうなので新しいお菓子を引出しから取り出し二人に差し出した。
満面の笑みを浮かべる女の子と内心すごく嬉しそうな顔を少しだけ覗かせるツンとした女の子。それを見かねて青年は軽く頭を下げながら二人に順番に手渡しながら頭を軽く撫でている。時折口元を拭いてあげたり飲み物をとってあげたり、、、子供たちを常に気にかける年上の好青年。
彼の浮かべる眼差しからはとても柔らかく包み込むような優しさが感じられた。
そんな目の前の光景に癒されながらラズは芽生えた好奇心を必死に隠し通すのだった。
お菓子に夢中になる二人(o゜▽゜)o゜▽゜):~♩
ほっとする蒼葉(*´ω`*)ニヤリ:これからはお菓子で大人しくさせよう
恐れ入りますが、、、、子供たちの無垢な笑顔が見たい方、これからのラズの冥想と活躍っぷりに期待したい方、もしよろしければ評価やブックマーク等いただけると嬉しいです。




