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まじかるココナッツ。  作者: いろいろ
第0章 ホルクスの街と英雄街
80/162

48幕:大魔導士と魔法の言葉3

加筆修正分を載せ直しを忘れていたので再修正しました。

 

 とある町に小さな女の子がいました。

 その女の子は誰からも好かれる子で友達がたくさんいました。

 町の大人たちも女の子を大変可愛がりました。

 とても優しく気遣いができる笑顔がかわいい子だったのです。


 ある日、彼女は川の浅瀬の中で一つの石を見つけました。


 それはとてもとても綺麗な小石で黒く深みのある色をしていました。

 無性に嬉しくなった女の子はお腹の大きくなった母親にそのことを教えたくてすぐに帰宅しました。


 それから一緒に見て欲しかった友達にもその石を教えました。

 少しだけ自慢したかったのでしょうか。

 それとも一緒に分かち合いたかったのでしょうか。


 しかしそれから数日の間にその石は無くなってしまいました。

 ある友人か彼女の拾った石を盗んでしまったのです。

 その友人は羨ましかったのでしょう。


 そしてそのまま消えていなくなりました。

 数日するとその石はまた彼女の手に戻りました。


 しかしその後に同じようなことが何度も起こります。

 その度に彼女の友人たちは消えてしまいました。

 大人たちは懸命に探しましたが見つかることはありませんでした。


 不安になった女の子は大人たちに黒い石のことを話しました。

 でも信じてくれる大人たちは誰もいませんでした。


 女の子は気味が悪くなってその石を元あった場所に捨てることにしました。

 それから遅くなるまで何度も町中を歩き回りました。

 大切な友人たちのことが心配だっだのです。


 やがて石が現れなくなってから女の子には妹ができました。

 その日は町中が空が様々な色で光り輝き花たちが咲き乱れました。


 世界から祝福されたかのようなそんな光景と大切な妹の笑顔、、、

 いっぱいいっぱいの宝物が暗い顔をした女の子を笑顔にさせてくれました。


 しかし次の日、女の子は恐怖にかられました。

 捨てた黒い石が戻って来たのです。

 その石はなぜか少しだけ大きくなり重くなっていました。


 嫌な予感がした女の子はその石を捨てることにしました。

 普段近づくことはない大きい川の中ほどに放り投げようとするときでした。


 黒い石から黒い手が這い出て女の子の足を掴み川に引きずり込もうとしたのです。

 この時、女の子は気づいたのです。


 この黒い石が友人たちを食べてしまったことに。

 そして自分を食べた後で大切な妹を食べてしまうだろうことに。


 しかし小さな女の子には抗う術がありませんでした。

 徐々に川の中に引きずり込まれていきます。



「たすけて!!」


 でも近くの大人たちは誰も気づきません。

 女の子はもう一度叫びました。


 しかし誰も気づいてくれません。


 諦めかけたその時でした。


「もう大丈夫だ」


 そこには優しく微笑みかける優しそうなお兄さんがいました。

 その手はとても大きくとても温かい手でした。



『英雄賛歌 ~英雄の物語~ 上 』 より一部抜粋







 無数の黒い手がブルーベルを飲み込み、そしてココを取り込んだ。

 さらに彼女に手を伸ばしたローロが一緒に取り込まれた。


 そのまま黒い手は一度、空に戻るもすぐに半壊した地下室へと舞い戻ってきた。


「ちびすけぇーーっ!!!チビ子ーーーっ!!」

「シドっ!!!今ならまだ間に合う!!」


 完全な異常事態。

 このままでは全ての人たちが間違いなく喰われてしまうことは明白だった。


 だからアイスラの掛声とともにシドは内なる力を内なる存在を解き放つために己の中の真力を解放した。

 この事態を打開するための彼の最後の切札だ。


 だがその行為はすぐに無駄に終わる。


「そんなバカなっ!?竜化できん!!」

「シド下がって!!せめて子供達だけでも!!」


 そんなシドの不手際を責めることなくアイスラが次の手を打つ。

 レールナを救おうとして集まった子供達や大人達全てが入口近くに集合していることが幸いだった。

 一同が近くに密集しており魔術を行使するのには都合が良かったのだ。


「させるもんですか!!」


 咄嗟に放つ風の防御魔術。

 それも彼女のエルフの血の力を使った精霊術を上乗せし有りったけの魔力を込めた特別性。

 しかしそんな時間を与えまいと大きな黒い手が一網打尽だと言わんばかりに風の防御魔術ごと次々と喰いついてくる。


 その勢いは止まることがなかった。


「うそっ!?魔術ごと喰いついてきてる!?こんなの長くは、、、保たないわ!!」

「アイスラ!!ちびすけたちがこのままでは、、、くそっ!!どういうことだ?」


 アイスラは苦し紛れに顔見知りの人間に声をかけた。

 それはただの偶然だったのだが。


「どうすればいいの!?」

「もう無理、、、今の私達じゃ何もできない」

「ソフィアはなぜそんなことが言えるの!?」

「それは、、、、私たちが15年前の生き残りだからよ」


 動かないレールナを抱いたまま彼女は呟いた。

 その一言だけで十分だったのだ。


 その真意をアイスラもシドも瞬時に悟ることができた。

 それは15年前、この地方を襲った大事件。


 町の半数以上の人間が死滅したというとんでもない大惨劇の悲劇だった。

 二人には噂でしか耳にしたことがない御伽話のようは話である。


 絵本にまでなったほどのあの話があの大惨劇が現実だったということを改めて理解したのだ。

 二人とも成人したばかりでありそのことは人伝い、もしくは絵本ぐらいでしか聞いていない。


 だからこそもう一つの事実も現実だったということになる。

 この話は悲劇だが悲劇のままで語り継がれていないのだ。


 そのことを思い出しシドは尋ねた。


「じゃあ英雄が、英雄がこの町にいるんじゃないのか!?」


 しかしソフィアは首を静かに振った。

 最近のおかしな事件、誘導されたと思わしき言動や行動、など思い当たる他の事件も含め全てがこのときのためだったのだ。


 完全に首謀者たちの手のひらの上での犯行であり、それも内部犯による長期的な計画犯。

 おばあちゃんも、町を救った英雄も、その相棒たちも障害になるものは全てこの場にいなかった。

 いやこの場から無理やり追い出されたんだ。

 自分は何てバカなんだ、、、知らず知らずに踊らされていたなんて。

 こうならないようにするためにやってきたつもりだったのに。


「私は何のためにここでギルドの職員になったの、、、」


 頭を下げたままのソフィアを横目で見ながらもアイスラはひたすら耐えていた。

 次々と迫り来る黒い手に魔力が吸われていくのだ。


「くっ!!もう限界、、、」


 パリンとガラスが割れたような音が響いた。

 風の防御魔術が黒い手に削り飛ばされ砕かれたのだ。

 そして眼前に迫る黒い闇はあっという間に一同を取り囲んだ。


 瞬時の光景に静まり返る人々の誰が気づいただろうか。


【eins!】と静かな声が響いたことに。


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