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まじかるココナッツ。  作者: いろいろ
第0章 ホルクスの街と英雄街
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48幕:大魔導士と魔法の言葉1

 


 星一つない闇夜だった。

 いつもは光り輝く星たちも青色に染まる月もこの日はなぜか見ることができなかった。


 すでに深夜に差し掛かる頃だろうか。

 猫通りと冒険者ギルド近くで少々騒ぎがあったくらいで街はなお静寂に包まれていた。


 もし普段通りに人々が生活していたのならばきっと誰かが気づいたことだろう。

 街中に張り巡らせている魔石の街灯は今夜はなぜかほとんどが消灯してた。

 そして残された一部の灯も一つ一つが消えていくのである。


 ギルド地下室が阿鼻叫喚な状況となっている頃、警備隊員たちが死力で街中を巡り人形化を解除しようと奮闘していた。

 だが思っていた以上に改善していない。

 当然のことである。

 現状、動ける警備隊員たちは少数であり動かなくなった人たちはホルクスの大多数に及ぶ。

 いやこの状況ではほとんどと言えるのかもしれない。

 とにかく人手が足りなかった。

 それに人形化が解けたとしてもすぐに動ける訳ではない。

 それもかなりの時間がかかるのだ。

 その時だった。

 ふと気がつくと止まった人形たちが一斉にある場所へと移動を開始したのだ。

 隊員たちの必死の努力も虚しく人々は自然と通り過ぎて行く。


 子連れの二人組の冒険者たちと別れてどのくらいの時間が経ったのだろうか。

 突如、事態が変化した。

 とてつもない光が町中を覆い尽くした後、人々が一斉に倒れたのだ。


 そのあまりの異様さに隊員たちが目を疑った。

 やがて闇夜の時間が戻る頃、一人の隊員が声をあげた。


「何かが浮かんでなかったか?」


 指を指したのは空の彼方、、、はるか上空だった。

 そこには目を凝らさなければ分からないほどの闇夜に溶け込んだ何か。

 そこには得体の知れない何かが浮かんでいた。

 暗黒の空の彼方に浮かんでいたのである。

 それはとてもとても深い黒い色をしていた。

 まるで全てを飲み込むかのような黒い何かだった。


 その闇夜に浮かぶ黒い何かは霧状に変化しながら少しずつ収束しドロドロとしたものへと変わっていく。

 それは触手のようなもの、、、人の手の形に変わり少しずつ数を増やしながら伸びていく。

 まるで何かを探しているかのような光景だった。


「あの辺りは嬢ちゃんたちが行った方向、、、冒険者ギルドの方なのか?」


 数多に伸びる黒い手の全てがギルドへと殺到した。

 そして町中のいたるところから手が出現した。


「じょ、冗談じゃねぇ、、、」


 警備隊員は引きつった顔を浮かべながら後ずさりしようとして、、、、



 ーー黒い手が立ちふさがった。







 なぜだろうか。

 体から力が抜けていく。

 全身の感覚が消えていくような気がした。


 突如、口から何かが溢れ出した。

 鉄のような味がする。

 変な味だ。


 上手く呼吸ができない、、、視界もあまり動かせない。

 でも苦しさは感じない。


 力は入らない。

 手が足が動かない。


 何も聞こえない。

 いや声がする、、、嫌な声だ。とても耳障りな声だ。

 でも声は出せない。



【よぉ~ブルーベルその顔最高だ。ヴァネッサ、、、最高のタイミングでこいつらを寄越すなんてあいつに任せて良かったぜ。どうだ?最高の舞台だろブルーベルぅ?】


 くそ野郎がキャラ違いすぎだろ、、、さっき仕留めたはずなのに?


【あぁお前にだけしか聞こえていねぇよ。残念だったなぁ俺はあの程度じゃ死なねぇよ。本当に随分と楽しませてもらったよお前にはよぉ。だからこれはお前に対する俺の精一杯の感謝と贈り物だぁ】


 意識疎通?魔術か、、、贈り物?


【あぁ贈り物だ。これからあのガキを生贄に魔喰いを完全復活させる】


 ココを生贄?魔喰い?復活?


【世界を滅ぼしかけた史上最悪の魔物だ。あのガキはそいつのための最高の人柱だ。そしてその瞬間から俺の手駒と成り果て俺の意のままに全てを蹂躙する】


 人柱?手駒?


【これから俺の人形として生きるんだよ。魔喰いを取り込んだ人形としてな。生涯、俺の奴隷人形、、、まぁ死ぬことはねぇだろうがなぁ。もちろんあの女も俺の人形だからなぁ】


 イカれてる、、、、何のため?それに、、、そんなことさせるわけがない。


【させるわけがないってお前に出来ることはねぇよ。下を見てみろよぉ】


 胸の真ん中、、、あたりに、、、赤い、、、剣?燃、、えてる?


【お前はとっくに終わってんだ。このおかしな町ともどももう死ぬんだよ。っつたく苦労したぜ、わざわざこの異常なほど戦力が集まったこの街を無力化するのによ】


 もうすぐ、、、死、、、、ぬ?戦力集まった?


【あぁ可哀想に何も知らないんだな、、、、残念だがお前は死ぬ。だから先のないお前に感謝の贈り物だ。何もできずに苦しみながら目の前の絶望に目を向けながらくたばるお前への最後の贈り物だ】


 おくり、、、もの、、?


【あの顔を見てみろ。恐怖で絶望したあの顔、、、最高だろ。みんなお前を見てくれてるぜ。体から剣を生やしたお前が珍しいんだとよ】


 おまえ、、、あたま、、、イカれ、、、てるよ、、、。


【そりゃ最高の褒め言葉だ。ほら見てみろよ魔喰いがきやがったぁ】


 天井が、、、、崩れ、、、闇夜、、、空から、、、黒い手、、、


【ほらちゃんと見ろよ。ガキどもの顔がぐちゃぐちゃだ、汚ねぇだろ、、、ったくお兄ちゃんお兄ちゃんって煩せぇなぁ】


 ろ、、、ちゃ、、ん。


【邪魔されると面倒だな、炎で拘束しとくか】


 こ、、、、、こ、、、、、、、。


【やっと闇の手が這い出てきやがった。あれで取り込まれて全てを喰われると復活だな】


 こ、、、、。


【あ~あ~ブルーベル!?これからが最高の終劇なのに勿体ねぇ。クソガキの絶望で染まった顔とかよ、おっとそれでもあのクソジャリを助ける気か!?】


 、、、。


【おっ!?まずはお前を先に喰らう気か、、、良かったなぁ。お前も肥やしには選ばれるそうだぜ】


 、、。


【あぁ~つまんねぇな、どうせこの後は全員喰われるんだろうになぁ】



【はぁーもっと遊びたかったぜ、せめてそのツラ殴りかえしたかったぜ】





【じゃあなニセモノ】





 そして炎の剣ごと黒い何かは蒼葉を包み込んだ。



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