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まじかるココナッツ。  作者: いろいろ
第0章 ホルクスの街と英雄街
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45幕:人形師と舞台の幕開け1−1

 


 昨日に続く晴れ模様。

 清々しい朝は牛の泣く声から始まった。

 まるで牧場にいるかのような鳴き声が轟いた。


 ココのおかげで回復した蒼葉は最高の気分で1日を過ごすことができそうだと早くに体を起こし活動を始めた。なぜ早朝に部屋の中で牛の声が聞こえたのか、なぜ自分はベッドに寝ているのか、なぜ隣に美人のお姉さん二人が添い寝しているのか原因は良くわからないのだが。



 今日はレールナさんのお願いによりお店は亜麻猫亭に予定どおり吸収合併されスタッフ総出で縁日に訪れたお客を出迎えている。


 二日目ともなると、全員が手慣れた動きに代わった。だいぶ余裕が出てきたようだ。

 準備もすぐに終わり予想よりも早く出店を開けることができた。そのため引っ切り無しに通りかかる人たちから昨日のライブに関する賞賛に応対するぐらいには余裕がある。


 大まかに分けると子供達を褒める声、そして蒼葉の最後の魔法を賞賛する声とに二分された。もちろん演奏のことや大合唱のこともある。


 だが飲みすぎて途中から記憶がない蒼葉は愛想笑いを浮かべつつ場をやり過ごしている。


 花の大魔法?街中が花だらけ?新世界?、、、何のこっちゃ?である。


 きっと昨日は飲みすぎて彼らは頭が残念なことになったのだろうと蒼葉は理解した。

 このご時世生きることは楽なことばかりではない。自分も少し前までは生きるか死ぬかの大問題を抱えていたのである。蒼葉も先日まで事あるごとに年上のオーガの説教と年下の上司のプレッシャーとの間で生きてきた。それが今ではこうして子供達からピッタリと抱きつかれて毎日を過ごすことができるまでになった。似たようなことがきっと街の人たちにもあるのだろうと推測し今日はいつもよりサービスすることに決めた。


 それにしても街中は花だらけだ。

 誰がこんなことをやったのだろうか。

 こんなに花を用意するなんてきっととんでもないお金持ちなのだろう。


 蒼葉はそう思いながら視線を子供達に下げた。

 両足には可愛いケモミミの二人がピッタリとくっついている。視線が会うたびに見せる目の輝き様と尻尾の振り様は可愛いものだ。


 昨夜早くに帰ってきていたというこの子たちはずーっと蒼葉に磁石のようにくっついて離れない。二人の頭がちょうどいい位置にあるため朝からふわふわの耳の感触を楽しんでいる。


 どうやら二人ともライブを見ることができ、ココたちと合流して縁日の出店を片っ端から覗いたらしく縁日をとことん楽しむことができたようだ。聞けば蒼葉の最後の演奏なども見ることができたらしい。


「「おにいちゃ、おにいちゃおにいちゃー♫」」

「?」


 ヂュオがとても微笑ましいので、足にドッキングしたままで午前中を過ごした。

 二人に見せる簡単なマジックは常日頃披露してるのでこんなに喜んでもらえるのはこそばゆい。

 それよりも飲みすぎて途中から記憶が抜け落ちているのかと、、、内心腑に落ちない感じが若干引きずっている。

 ちょっと吹っ切れないまま蒼葉は試作の仕込みを再開しようかと調理スペースで準備をしていると、、、


 近くから羨ましそうに見つめる女性が視界に入った。

 優しくて甘いが若干失望した眼差しは午前中からずーっと蒼葉の足に突き刺さっている。

 このまま気づかないふりは心が締め付けられるようだが仕方ない。

 銀色の髪の友人の変態とはいかないまでもこの美人の羨望に満ちた視線も悪くない。

 それにこのもふもふは今日は誰にも渡せない。

 今日のモフモフ権は蒼葉にあるのだ。


 こんな時、例えば自分にも素敵な尻尾とケモミミがあったらどうなったことだろうか。

 いけない、何を血迷ったことを、、、

 子供だから可愛いのである。

 大人に尻尾と耳がついた程度少しくくらい見た目がよくなるだけであり、大の男から生えていればそれはただの情けないコスプレである。そんな情けないコスプレとバカにされるのがオチである。


 ただどうせならキツネのようなフサフサの尻尾や耳を自分でつけてみたいと思うが、、、


「くしゅん!!」


 誰かの長い髪の毛が蒼葉の鼻当たりを刺激した。

 その拍子に仕込んでいた鍋の蓋がガシャンとずれ落ちた。


「「「!?」」」


 スタッフたちの視線が蒼葉に突き刺さる。

 まずい、やはりこれを仕込むのがまだ早かっただろうか。

 今までもったいぶって一度も表には出していない禁断のメニューである。

 年下上司の甘言を躱しお祭りのための切り札としてこの日までこの正式版を人前に出すことを躊躇したというのに。その上司がいない今こそどういう反応が出るかを見る絶好の機会なのだ。

 もちろん誰にも味見させていないし許可すらとってもいない。


 食欲を刺激する香りが辺り一面に爆発的に広がった。

 数々のスパイスと野菜やお肉、お酒に、果物、厳選した素材が溶け込んだ傑作である。

 トミ、アミが掴んだ足をちょいちょいと揺らしアピールを欠かさない。そんな二人の耳と尻尾の動きは今日一番激しかった。


 くっ、、、そんな目で見つめられると餌付けしたくなるじゃないか。


 蒼葉は小さじを取り出し二人の小さなお口に差し出した。そしてすぐに釣り上げられるちびっ子二人。

 そんな中、全員を代表して羨望の眼差しを向けていたレールナが勢い良く蒼葉に声をかけてきた。


「蒼葉くん?それはなに?」(ジトーっ)

「今日の切り札です」(キリッ)

「蒼葉くん正直におっしゃい。私たちいえ私を今日まで騙してたのね?」

「いやこれはその隠してただけで、、、」

「隠してた?もぉーっ蒼葉くんには失望したわ、、、まさかそんなこと私に教えてくれないなんて、、、」

「いや以前一回だけ出しましたよ?」

「嘘はだめよ、私たちの誓いを忘れたの?」

「えっと、、、何の誓いでしたっけ?」

「私たちだけの大切な誓いでしょ!!」


 呆れた顔のレールナさんを見ても蒼葉には何のことだかわからなかった。

 何かが食い違っており絶妙に噛み合わない。

 お互いにまだ昨日の酔いが残っているのかもしれない。

 そんな彼を見て近くにいた古参のスタッフのリナが声をかける。


「蒼葉くん蒼葉くん、、、あのね鏡見て見て」

「リナさん?、、、ふぁっ!?えっ!?リナさん何これ!?」


 自分の頭に頭に大きなケモミミが生えている!?


 黒色のとても柔らかそうな耳である。

 そして思わず自分のお尻を振り返った。

 そこにはとてももふもふした尻尾がお尻の上あたりから生えている。


「ね?蒼葉くん私に黙っとくなんて許されないわ、、、トミちゃん、アミちゃん、蒼葉くんをそのまま捕獲!!」

「「あい!!」」

「さぁそのまま大人しくしときなさい!!尻尾も振り回さない!!耳もぴくぴくさせない!!蒼葉くんは罰として夕方までそのまま!!」


 動揺する蒼葉にレールナがじわりじわりと忍び寄る。

 彼女は可愛らしいケモミミと尻尾には目がない。万人の舌を虜にし調理にお店に人望にどんなことをやらせても際立った腕を持つ彼女の弱点の一つが可愛いものには目がないということであった。それは可愛い笑顔の子供だとか、ケモミミと尻尾を持つ獣人族の子供たちとか、可愛いものなら関係ないのだが、、、そんな彼女の目の前には年下の弟のような存在がふさふさの尻尾とぴょこぴょこと動く耳を隠し持っていたのだ。

 あれだけ二人でケモミミっ子たち+αをもふもふしてきたのにまさか自分のだけは黙って隠していたなど許せるはずがなかった。


 彼女の目はまさに狩人のように鋭く獲物を見つめている。


 そんな騒々しいやり取りを側で呆れた顔をしたミナが追い打ちをかけた。


「あらら、、、最近ずーっと忙しかったからね。蒼葉くんお店はこっちで回すからしばらくはレールナちゃんのストレス発散に付き合ってあげてね」

「ちょ!?ミナさん、何が何だかわからないんですけど!?」

「だいじょうぶ、こっちも全くわからないから♩」

「ちょっ!?誰か助けてーーー!!主任どこーー!?あっ!?ちょ!?レールナさんそこはだめぇーーー!!」


 ひっ捕らえられた蒼葉はその後、長女にこれでもかと執拗にもふもふ漬けにされ、その後、駆けつけた子供達とスタッフたちにより集中攻撃を浴び続けた。


 その最中、彼が用意した特別な料理はすぐに売り切れデータ採取は全くできなかったそうである。



ミナ:次は私の番(`・ω´・) キリッ

リナ:じゃあ私は先に味見しよっかな(`・ω´・) ジュルリ

ほかのスタッフ:早くモフモフしたいし味見したい (o *゜ー゜)o) *゜ー゜)oワクワク




恐れ入りますが、、、、レールナのもふもふな笑顔が見たい方、蒼葉のもふもふに賛同していただける方、もしよろしければ評価やブックマーク等いただけると嬉しいです。

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