まじかるココナッツすうぃーと3−2
ルーリは自身の中で自画自賛を送った。
そしてミナさんリナさんに目でお辞儀をしてからルーリは残りの議題に取り掛かった。
「あとはお祭り出店の件なんだけど、、、蒼葉くん考えてくれた?」
「えーとね悩んだんだけどね、、、」
「それじゃあ!?」
「言われたとおり頑張ってみるよ。ちゃんと書類も代筆してもらって提出したしスタッフも揃えたし道具とかお金とかその辺りもバッチリ。あとはどのメニューを出すかだけど今候補で悩んでるとこ」
「蒼葉くん仕事早いね、じゃあその新作のメニュー教えてよ」
「え?教えるわけないでしょ」
一体どういうことだろうか。今更もったいぶるなんて。
困り顔の彼にルーリは変な引っかかりを覚え率直に疑問を蒼葉にぶつけた。
「え?だってお店手伝ってくれるんでしょ?」
「いやいや休日にやるわけないじゃん。ルーリさんたちとは別に出店出すんだよ」
「えーーーー!?だって最近ずーっとココとコソコソしてたじゃん。何か色々と買い込んでは実験したり練習してたでしょ」
事実、彼は一人で街中、いや隣町や隣村含めて至るところから何かを買い入れては誰にもバレないように何かをし続けていた。そのことはルーリの耳にすぐに入ったし何かやっていることもすぐに気づいたのだが、てっきり亜麻猫亭で出場するお祭り用のお店のためだと思っていたのだ。
だが彼が言うことは違うらしい。
「そりゃ今度の縁日とかで披露するためのものもあるし他に調理用の道具とかも作らなきゃいけないし。冒険用の装備品とかも一緒に作ってたでしょ。それに異国料理はまだまだ種類豊富だからその準備もね。まぁお祭り用のメニューの一つや二つどころかたくさん用意できますので心配なきよう。あー楽しみだなぁ売り上げ楽しみだなぁ、独り占め最高。全部入賞したら何もらえるのかなぁ。終わったらちゃんと何か買ってあげるから」
「あーおーばーくんまさか賞を独占するつもり!?ココ、蒼葉くんは何隠してるの?」
「ココはひみつのやくそくをしてるのではなせないもん」
「まさかローロは?」
「、、、」
ぷいっと顔を逸らす末妹の素ぶりにルーリは確信した。
すでに手を回していたのだと、、、
「ほらルーリさんそれより早く続きお願いしますよ」
蒼葉くんが澄ました顔で分かりやすいほどに煽る煽る。
腕を頭の後ろに組んであさっての方を向いて目すらもこちらを見ていない。
自然とこめかみがピキピキとなるのだが今はまだ我慢である。
彼は貴重な戦力となるからだ。
「あらーこれはすごいライバル店ができたわねぇ、ルーリこっちも負けずに頑張らないとね」
「蒼葉くんがお店出すんだったら子供達と毎日通おうかしら、それにちょっとくらいお手伝いしないとね」
「そうねぇ子供たちと顔を出しましょうかね、楽しみだわ」
大人組は気づいていないのだろうか、、、このままでは亜麻猫亭の6年連続総合トップの座が怪しいのである。入賞のボーナスが、臨時のボーナスが消えるかもしれないのだ。
「お姉ちゃんはそもそも参加できないでしょ。ミナさんリナさんは亜麻猫亭スタッフだから家族同伴でこっちです。ちびっ子たちもこっちね。それからケモモモちゃんはもちろん大丈夫だよね?」
可愛らしいケモミミと素敵な尻尾を持つ彼女はルーリから目を背け地面を見つめている。
年齢も近いのでルーリとケモモモはすでに姉妹のようである。
「ルーリちゃん残念ながら随分前に蒼葉きゅんのお店を手伝うことを約束しちゃったんですぅ」
「な!?」
「まぁそういうわけだからルーリさんお互いに正々堂々と頑張ろうよ。正々堂々と。まぁそもそも休日なんだから何しようと当人の勝手だしね」
してやったりの顔をする目の前の部下の顔に苛立ちを覚えながらルーリは高ぶった精神を落ち着かせる。
まだだ。まだこのタイミングではない。
今は少しでも頭に乗らせるときである。
まだ足りない。
最高潮に達したところからどん底叩き起こしてこそ苦渋を味あわせてこそというものである。
蒼葉くんのことだからまさかとは思っていた。
しかしまさか本当にやるとは、、、
一応こんなことになるかもしれないと考えたりもした。ただ彼に対してあまりにも失礼だと思いその考えを捨て去った。
だが静かになった敏腕上司に追い打ちをかけるように彼はトドメを刺しにいく。
よほどこの前のことに根を持っているのだろうか。
試作で出した季節限定メニューを全て採用した件を。それとも取り寄せ限定スウィーツの件だろうか。
「じゃあルーリさんお互い頑張ろうね、まぁ全ての賞はいただくけどね。じゃあ議題はもう終わりかな?」
だがそんな分かりやすい挑発に乗るルーリではない。
彼女はもう大人なのだ。
成人を迎えた大人なのだ。
できる大人は相手と同じ土俵では戦わない。
自分の土俵に相手を引きずり込んで、そして相手を打ち負かす。タコ殴りにするのだ。そして上から目線で藁を一本の藁という名の助けを与えるのだ。
「うん蒼葉くん会議は終わりだよ、じゃあお互い頑張ろね。それから謝るなら今のうちだからね、何か忘れてることない?」
「え?」
不気味な笑みを浮かべ出した彼女に蒼葉は戸惑いを隠せないようだ。
だからこそこのタイミングで彼女は一つの封筒を取り出した。
それはそれは分厚い封筒であり、そして彼女の切り札でもある。
街中の男たちが振り向くほどの素敵な笑顔を浮かべながらルーリは目前の年上の部下に甘えるように語りかけた。
「蒼葉くんこれなーーんだ?」
その笑顔はとても眩しく、そして振りほどけないほどの闇を帯びていた。
ルーリ:これぞ奥の手(`・ω´・)ドヤッ
●登場人物
レールナ:亜麻猫亭の長女。凄腕の料理人であり亜麻猫亭のオーナーでありとびきりの美人さん。本人も料理も街の人たちに大人気。
ルーリ:亜麻猫亭の経営を預かるできる次女。
ミナさん:亜麻猫亭スタッフの一人。綺麗なママさん。
リナさん:亜麻猫亭スタッフの一人。可愛らしいママさん。
涼宮蒼葉:亜麻猫亭の新入り調理スタッフ。異国料理とスウィーツ作りが得意でありルーリ直属の部下。
ココ:亜麻猫亭スタッフの新入りの一人。亜麻猫亭末っ子のローロの親友であり摘み食い仲間の女の子。
ローロ:亜麻猫亭末っ子。ココとは大親友であり摘み食い仲間。最近蒼葉くんに懐きまくり。
トミミ:小さな猫耳の男の子。可愛らしいお耳としっぽの持ち主。
アミミ:小さな犬耳の女の子。可愛らしいお耳としっぽの持ち主。
ケモモモ:獣人族の神官でありトミミ、アミミの保護者。素敵な尻尾と可愛らしいお耳の持ち主。




