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まじかるココナッツ。  作者: いろいろ
第0章 ホルクスの街と英雄街
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42幕:お祝いと打ち上げ2

 



 部屋に戻り子供達を寝かしつけた後、調理場で蒼葉はあの時のことを振り返った。



 突如、ズドーンという轟音とともに爆炎が吹き飛んだ。

 爆炎の中心地には一人の男が佇んでおり静かに笑っている。


 男はオーラのようなものを纏い少しだけ輝いていた。


 蒼葉は目を凝らし静かに観察した。

 どこをどう見ても傷一つなかった。

 身につけている革の鎧も靴、燃えやすそうな服にさへ焼けた痕すら見られない。

 シルクお婆ちゃんと同格レベルだと観覧席で聞き予測はしていたが、、、


 全くの無傷。


 これがマークスさんの実力。


 その姿を見て絶望的なほどの力の差を蒼葉は痛感してしまった。

 結局、あの後は何もなく終わってしまった。


「合格だ、、、青年」


 笑いながら蒼葉に伝える彼はとても嬉しそうだった。


 始めは自分の身を守るだけの力を手に入れることが目標だった。

 だがなぜだか危機感が胸騒ぎが出始め彼の心は揺らいでいる。


 このままでは自分の身すら守れないのではないだろうか。


 蒼葉はグラスに氷を入れそれから秘蔵のお酒を注ぎ、じんわりと喉を潤した。

 鍋の中の煮具合を確認し魔石コンロの火加減を調整する。


 亜麻猫亭の調理員としてこのまま続ければそんな腕は必要ない。

 でも冒険者としても活動していくのであれば今のままではまだ物足りない。


 今日参加した冒険者のほとんどが自身よりも格上だったように見える。

 少なくとも直接選定試合を見ることができた竜人とエルフの冒険者は自分よりもはるかに強いと思う。


 彼らにあって自身にない魔力が羨ましかった。

 どちらもその魔力を利用した魔術を巧みに使用し挑んでいた。

 結果は残念だったがその二人の試合運びは蒼葉の心に刻まれている。

 マークスさんの爆炎を吹き飛ばしたやり方といい、纏っていたオーラのようなものといいそれも魔力なのもしれない。


 だが蒼葉には魔力が使えない。

 ココには魔力のような何かを蒼葉から感じると聞いている。

 その魔力が扱えないのならば魔法や魔術はもちろんのこと身体能力強化なども無理だ。

 ならばあの人形、、、身代わり人形も使えないのではないだろうか。

 あれはギルドからもらってすぐにココにあげたので検証すらできていない不確定要素の一つである。

 そーいえば最近人形マジック全く練習してないや、、、


 残りの材料を確認してから直感でほかに何を作るかを決める。

 そして材料を食べやすい大きさにカットしていく。


 今日のことは全て自身の経験や知識によるものだ。

 奇術やピアノの演奏で得た経験、そして漫画やアニメといったものから抜粋したもの、科学や心理学医学それらを巧みに利用しマロンの補助を受けて搦め手として考えたものである。

 投げナイフは昔、ある奇術のパフォーマンスの際に必要になり猛練習の末扱えるようになった。


 人体の構造状の死角を突く戦術は今後も使えるかもしれないが限定される。

 頭が薄い人の弱点である髪の毛を狙って使ったら見事に半分を根絶やしにした。


 その後、泡を吹いて倒れたので選定合格だとドヤ顔で報告に行ったらギルド職員にめちゃくちゃ怒られたのだが、、、隙を見て使う分には有効だろうか。調理としての包丁類はともかくダガーや剣などの武器の扱いは心もとない。剣道部じゃないのだから仕方ない。


 だから蒼葉は上手くいくように何度も練習を重ねた。

 マロンの触手攻撃とココの魔法などを組み合わせ多くのパターンからの訓練という名の遊びを利用して。

 結果は知る通りである。


 やばい、、そろそろ切断マジック用の道具いい加減作らないと、、、


 鍋がコトコトと揺れている。

 少し火力を落としてアクを丁寧に取り除く。


 選定後、顔を合わせた友人知人、そして竜人や職員さんたちから変な眼差しを受けたし幾度となくココのこと蒼葉のことなどを数多の質問を受けた。

 中には「あなたまさか風月の人間なの?あの術は風月の?」と聞いてきた美人のエルフっ娘もいれば、「貴様は何をするつもりだ?まさか?」と聞いてくるしつこい竜人もいたのだが相手にしなかった。

 蒼葉は冒険者の暗黙のルール(冒険者は個人情報は詮索しない、知ったことは口外しない)を理由に全てを突っぱねたのだ。


 風月?は知らないが、忍者は子供のころ将来なりたかったことやりたかったこと堂々の1位だった。特に口寄せの術など人前で披露するなんて全身の震えが止まらなかった。内心めちゃくちゃ嬉しかったのだが、、、


 ただ今回で最後、一度きりの予定である。


 蒼葉としてはココにシャドーを名乗ったのには訳がある。

 子供の頃からの忍者になるという夢を叶えたかったのが一つ。

 魔術か魔法が使えれば苦労しなかったのだが、この一ヶ月頑張って装備を整え練習しまくった。そしてその期間の間にこれでもかとシャドーの話を子供達に聞かせた。それは可笑しく面白くとても興味が出るように脚色して。


 ちょうど選定というギルドからのお達しがあったので上手に利用させてもらった。まさかあそこまでガチの選定だとは思いもしなかったし正直完全に甘く見ていたのだが。


 ただその甲斐あって子供達がとても喜んでくれたようだ。

 あれから蒼葉に向ける眼差しが今までとは全く違う。

 これでシャドーブームが起こるだろう。それに乗っかって次は魔法少女とその先生の物語を迅速に広める予定である。次は魔道士ブームを起こすつもりだ。


 以前から少しずつココを通じて話済みであり下準備はすでに終わっている。あとは脚色した物語を。

 そして舞台を整えてから本物の魔術師になる予定である。

 まぁ魔法や魔術は使えないのは変わらないが、、、普段やるやつよりもっと派手なものを用意して。

 とにかくパフォーマーはその状況やあるものを何でも臨機応変に利用してしまうのだ。いやこれは音楽もやっていたせいだろうか、、、


 おー閃いた!?今度忍術マジックも追加してみようっと、、、


 おっとどうやら焼き加減が足りないみたいだ。

 少しだけ火力を抑えながら焦げないようにフライパンを上下に揺する。


 結局、仕方ないとはいえココとマロンのことを露呈させてしまった。

 まさかあんなことになるとは、、、

 とんでもない魔道の使い手の女の子、そして異色の存在のマロン。

 念のためシルクお婆ちゃんにギルド内にいた全員とそのうち観覧したもの全員に二重の魔術トラップを秘匿して仕掛けてもらった。

 外部には話せないし知らない人には話せない、、、などなど。

 外に情報が漏れ出さないように以前から彼女に相談していたのであるがそれにも限界があるだろう。こちらも2、3手先のことを考えておかなければならない。

 賄賂と根回しは需要である。


 ほかに問題や疑問点はたくさんある。

 出来た料理を器に盛りながらテーブルに並べてから胸元の首飾りを取り出した。


 そのギルドからもらった証を目の前で掲げる。

 この魔石の中に個人情報が詰め込まれており、これが正式な身分証明書として利用できるようになるらしい。この中には商人ギルドの登録情報等も含まれておりその全てが魔術的な仕掛けによるものだそうだ。


 これも念入りに調べなければ。

 パソコンとかと同じで情報の抜取りや情報漏れが仕掛けられているかもしれないし、、、これはシルクお婆ちゃんに教えてもらってココにも調べてもらうとしよう。

 それからシルクお婆ちゃんに音響系の魔術のこと確認しなきゃだった、、、

 賄賂は、、、いやお土産はキャラメル焼きプリンにしよう。


 もう一つは塩気はもう少し強い方がいいか。

 あとは辛味を付け加えて、、、


 そーいえばココは使い魔召喚のために家出して転移してきたそうだが、彼女の本当の目的は秘密みたいでまだ聞いていない。


 秘密といえばルーリさんである。

 何を隠してるのやら、、、それとも知る必要がないことかな。

 頭が良い彼女のことだから秘密にしているみたいだで索されたくないかもしれない。時がくれば教えてくれるかもしれない。でも正直バレバレだと思うのだが。


 マロンは、、、情報が少なすぎて分からないから保留だろう。


 それからケモミたちのことだろうか。何を調査しているのか真意をそのうち教えてくれるかもしれないから今はその時じゃないだろう。


 ほとんど先延ばしだなと蒼葉は考察しつつ、めちゃめちゃな自分の思考に呆れた。

 料理に集中できていないみたいだ。

 あやうく分量を間違えるところだった。


 あとは向こうへ戻る方法だろうか。

 現状全て含めて一番難関な問題だろう。

 正直な話、、、覚悟しといた方がいいかもしれない。

 二度と元の世界に戻れないかもしれないということを。


 ステージでいつもノリノリで立ってくれたり手伝ってくれたり本当に笑顔が素敵な年上の女性。

 休憩の後になぜかいつも蒼葉の膝の上に座って不思議そうな顔で見つめてくる小さな女の子。

 ほぼ毎日顔を合わせながら色々と料理や人生のことを教えてくれたオーナー。


 以前は毎日のように顔を合わせていたのに、、、

 よくリアさんのお尻をサーベルで突き刺したよなぁ、、、月華ちゃんがやったら変なところクリーンヒットしたんだっけ。


 最後に香りづけのハーブを添えて完成っと。

 味はレールナさんに近くなるようにしたが蒼葉らしさも加えており、間違いなくいい出来だと自負する。つまりお酒が進むはずである。


 あり合わせの材料で4品の料理を完成させてからテーブルに全て並べ蒼葉はその場を後にした。

 あり合わせの具材たっぷり食べるスープ。あり合わせの野菜サラダ。あり合わせのパスタ。あり合わせオーブン焼き。

 残った材料で拵えたものばかりである。

 前の方に並べたフルーツのパンナコッタは、、、たぶん気づくから放っておいていいだろう。


 これ以上この場にいたくない。正直、、、空気が悪い。


 蒼葉は現実から目を背けることにした。


 1時間前まで開かれていた宴会に参加できなかった亜麻猫亭の次女やその友人、それから恩人とギルドの担当官などの一部の人間たちは全員憔悴した顔をしており何と言葉をかけていいかは分からない。

 目の周りを赤く腫らした者、涙目の者もいれば顔が上がらない者からテーブルに伏せたままの者まで。


 ただ自業自得な割合が大きいため仕方のないことである。昼間あれだけムカついたのだが、この光景を見て哀れささへを感じるようになった。


 改めて蒼葉は目を背けることにした。


 目の前の光景は全て亜麻猫亭の女主人を怒らせたことが原因である。

 選定の内容等をローロちゃんやココから話を聞いた彼女の怒りは内心頂点に達したそうだ。

 蒼葉とココの件、とくに蒼葉が理不尽に怒られた件と蒼葉の選定の内容を耳にした途端、彼女は宴会からしばらく消えた。

 どうやらその時に別室で数多の雷が炸裂したらしい。


 あとでミナさんリナさんに絶対あの部屋行っちゃダメよってこそっと教えてくれたので蒼葉は察した。


 何も食べることができなかった人たちに出来立ての温かな料理を残し蒼葉は部屋で飲み直すことにした。そして考えることを放棄した。


 どうせ考えたところで事態が好転するわけでもない。

 しがない調理員の蒼葉には全て荷が重すぎるのだ。


 だから今日は子供達の可愛い寝顔を肴に以前手に入れたお酒を味わおう。


 そう心に決め蒼葉は食堂からこっそりと逃げ出した。







月華:今度はお兄ちゃんにもサーベルマジックやりたーい ( ´ ▽ ` )ノ 


リア:ついに蒼くんのお尻も傷ものに、、、、 (*´∀`*) 


蒼葉:えっ!? Σr(‘Д‘n)

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