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まじかるココナッツ。  作者: いろいろ
第0章 ホルクスの街と英雄街
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2幕:ココと不思議な出会い2

 

「マークスさん、何から何まで本当にありがとうございます。」


 何度目か分からないけど、何度も頭を下げたと思う。宿場兼飲み屋での出来事。


 もちろんあの事件の後のこと。

 女の子を抱えて林から飛び出した後、偶然にも行商人の一隊に拾われた。全部で6人に荷馬車が2台、馬が4頭の行商隊。

 その行商人のリーダーに事情を説明すると、すぐに隊員に指示を出してくれた。

 隊員に初歩的な回復の魔術と医療に見識のある方がいたのだ。


 応急処置してからは近くの街まで荷馬車に同乗させてもらえた。

 宿場町についてからはすぐに医者に女の子をみせてくれて、、、今は宿場兼飲み屋で、またまたお世話になっている。

 本当に至れり尽くせりだ。


 暴漢に無一文にされ暴行され拉致された、、、というあること無いことを最初に話したから心底同情されたのだと思う。特に行商隊のリーダーであるマークスさんは目尻に涙を浮かべていたから。


 今はラフな格好をしているため冴えないおっさんにも見られかねないが、ぼさぼさした白髪混じりの長い赤髪、そして額に何かに切られたような傷痕がトレードマークが渋い。体格もすごく良いし腕っ節もものすごく強そうだ。飲み屋のママさんとかに絶対好かれるようなタイプだと思う。

 彼は正直、行商人には見えない格好だったのだが、、、いま思い出せば冒険者とかそういう格好だったような気がする。気が動転していたから仕方がないか。


 なお今は二人で食事という名の飲み会中だった。お金がないと伝えたのだが、心配ないと一蹴されたのだ。


「気にするな。商人ってのはな、縁というものを大事にするんだ。青年と出会ったのも縁。嬢ちゃんが青年に救われたのも縁だ。それに良い縁ってのはな宝だ。巡り巡って後で帰ってくるのさ。」


 マークスさん格好良すぎます。


「だから青年よ飲め。寝る場所は嬢ちゃんと一緒だから心配するな。若いもんが遠慮するんじゃない。」


 そう言いながらエールをしこたま飲ませようとしてくる。自分がお店でよく出していたエールとは違うけど全体的に荒いがすごく飲みやすくて、、、あとアルコールが強い。


「青年ジョッキが空いてるぞ。ほらさっさと飲め。」


 マークスさんパワハラです。


 ちなみにほかの隊員たちは誰も近づいては来なかった。視線を向けると皆さん両手を合わせて申し訳なさそうな顔をしていた。

 なるほど。身代わりか、、、


「マークス、うちの臨時従業員に無理させんな。ちゃんと食べさせなよ。」


 お店の奥の厨房から誰かが追加の料理を両手に抱えてきた。

 宿場兼飲み屋『亜麻猫亭』の女将さんだ。綺麗な亜麻色の髪を後ろで束ねた大人の女性で、出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいて魅力的な身体をお持ちだ。地味な色のワンピースに白いエプロン姿が腰を引き締めていて、実によく似合っている。

 一度じっくり料理されてみたい。


「レールナ、男はな大切な時にはこいつで乾杯するものさ。」

「だから乾杯する前にいつも食べろって言ってんでしょ。介抱するの私なんだから。」


 腰に両手を当ててプンプンしている仕草がギャップがあって可愛らしい人だ。


 マークスさん、、、。


「マークスはともかく、ゆっくり食べなよ。手伝いは明日からでいいから。」

「レールナさんありがとうございます。料理もすごく美味しいしレールナさんみたいな美人で綺麗な人に出会えて本当に良かったです。」

「、、、、。」


 面と向かって伝えたものだから真っ赤になってトレイで顔を隠されてしまった。


「はははっ。レールナちょろいな。」


 マークスさん、それ禁句です。


 レールナさんのスマッシュが決まり動かなくなったマークスさんを放っといてちゃんとした夕食に手をつけた。

 鶏肉と野菜のゴロゴロシチュー、とろけたチーズが爛れて落ちている焼きたてのパン、香味野菜と何かの肉の香草焼き。


 どれも何度もお代わりしたくなる美味しさだ。それにエールがめちゃくちゃ進むよ。

 マークスさんのおかげでこの宿場町に簡単に入ることができて、仕事と住むところも確保できた。

 あの女の子も助けることができた。

 ちなみにあの子は『亜麻猫亭』の空部屋に寝かせてある。

 医者が言うには命に別状はないそうで。ただ殴られた際に負った衝撃や怪我のせいで体が思うようには動かないはずなのでしばらく安静にしなさいとのこと。

 回復魔術?を使用したらしいし、少しはマシになったのだろうか。

 だけどしばらくは看護する必要がありそうだ。


 ただ現状において致命的な問題があった。

 お金がない。だから宿に泊まれるほどお金がない。二人ぶんの宿と食費などどうしようもない。

 身分を証明できない。何も分からない世界なのにそんなものがあるわけもない。

 頼れる人もいない。どこにいるのかもなぜ言葉が通じるのかも分からない。

 、、、etc


 それもレールナさんのおかげでほとんど解決できた。

 お店の手伝いをしながらでよければ空部屋の一つを三食ご飯給金付きで貸していただけるとのこと。当然あの子も一緒でいいからと。それに従業員としてここで働けば、身分証明になるのだそうだ。

 もちろん口をきいてくれたのはマークスさんだ。


 行商人らしからぬ出で立ちだが損得顧みず助けてくれたマークスさん。

 宿場街で人気の『亜麻猫亭』を切り盛りする美人女将のレールナさん。


 二人に出会わなければ自分は人としての最低限の生活はおろかまともな食事にすらありつけなかったと思う。あの女の子も助けることができなかったはず。どこか分からないこの世界での偶然の出会いのおかげだ。明日から頑張ろう。あとはあの子が元気な姿を見せてくれたら嬉しいな。


 慕ってくれた女の子のことを思い出した。

 元気にしてるかな、、、


 懐かしい顔をもっと思い出そうとしたが、、、まぶたがそれを許さなかった。








マークス:飲みすぎた、、、、み、水 ( ´д`ll)ゲッソリ


レールナ:だから言わんこっちゃない、、、(´・ω・)




●登場人物


マークス:小さな商隊のリーダー。お酒とレールナの料理が大好き。

レールナ:亜麻猫亭の美人女将。料理が自慢。

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― 新着の感想 ―
[一言] 小さな女の子を必死に守る主人公は良いですね。チートではなく、自分の肉体で戦う姿がとてもカッコよかったです。
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