1幕:ココと不思議な出会い1
見たことがない場所に来て1週間が経つ。
リアさんと月華ちゃんとマジックの練習中だったのに、、、気がついたら森の中だった。
黒のジーパン、長袖のカジュアルシャツに動きやすいランニングシューズ、あのときの姿のまま。
持ち物も食料もなし。
何とか食いつないできた。
太陽の位置は分からないので、植物の生え方などを考慮して方角を大雑把に把握。森を抜けるべく散策した。途中、食べられそうな果実等を手にいれた。それから使えそうな枯れた木の棒を念のために確保した。
本当に奇跡的に森を出ることができたのが二日後だった。
それから心地よい林のそばの通りの川沿いにある程度整備された道を見つけたので、その辺りで数日を過ごした。近くにはびわっぽい果実やみかんっぽい果実やらの木がたくさんあったので食料には困らなかったし、天候も崩れることがなかったので野宿には最適だった。ある程度その辺りで何とか安心して生活できることが分かってから、さらに数日はその辺りでのんびり過ごした。
、、、というより動けなくなった。本当は雨よけできる場所を探したかったのだけれど、疲労が溜まりすぎて動きたくなかったからだ。
ただしそれももう流石に限界だ。
まず着替える服がない。落ち着ける家がない。そしてお金がないし、生活道具がない。
長袖のカジュアルシャツも黒ジーパンも毎日洗濯しているとはいえだいぶ汚れてしまった。外での野宿なので気が休まらない。持ち物も何もない。精神的に参ってしまった。
だから人がいる場所を見つけなければいけなかった。今は整備された道を歩いている。
目的地は知らないけど。
「違うもん!!!」
誰かの絶叫が聞こえてきた。
「ふざけんなクソガキがぁ!!魔法使ってただろーが!!!」
「魔法なんか使えないもん!!いやあああぁぁ!!」
女の子の叫び声が響いた。
男は少女を殴り倒して足蹴にしていた。
心地よかった林の中で異常なほどの空気が辺り一面を支配していた。間違いなく異常だった。
あまりもの異常な状態に自然と足が動いてしまった。
そこでは少女が殴られ蹴り飛ばされていた。額や口から出血していた。
だが倒れ込んだ少女に構いもせず男は右手を振りかぶる。
まずい。
全力で女の子とクソ野郎の間に身体をいれた。構わず女の子に身体をかぶせた。
次の瞬間、身体に鈍い衝撃が走った。
「誰だてめぇは?邪魔すんなや!!ふざけんなやーー!!!!」
クソ野郎はさらに激昂して何度も蹴りを入れてきた。
このクズ野郎が、、、。
殴られ蹴られても我慢した。
大の大人が何度も子供に手をあげているのだ。どう考えてもやりすぎだ、これ以上は手遅れになる。理由は知らないが子供に全力で手をあげるなんて許せなかった。
だから自分もブチ切れた。息がつまるほどの衝撃を感じたが何故か気にならなかった。
女の子は全く動かなくなった。気を失ったのかもしれない。
抵抗もできないこんな小さな女の子に対し加減もせずに暴力を振るうなんて許せなかった。
クソ野郎が右手を振りかっぶった瞬間、体を起こして半身の姿勢をとる。ぶん殴ろうとした右手の勢いに逆らわずに流して腕を取り、そのまま地面に強く引き倒した。
間違いなく右肩が脱臼したはずだ。
すかさず蹴り飛ばして鳩尾を蹴り飛ばして、顎を蹴り飛ばした。それから動かなくなった男の両手を後ろに回し近く生えていた植物の蔓で雁字搦めにした。両手両足を縛ったので自分では解けないはず。
念のため刃物等持ってないか確認、武器になるものは全て見えない場所に隠した。
それにしても見た目からして柄の悪い男だけど、大柄な男じゃなくて良かった。間違いなく自分も殺されてるだろうから。
安全を確認するとすぐに女の子の状況を確認する。
意識はないけど呼吸はしてる。出血は、、、額は少し、口はだいぶ切ってるみたい。いや気絶してるんだから順番が違うか。頭部殴られたか、地面に叩きつけられたか、過呼吸とかか、、、。
全身を大まかに触診して骨が折れていないか確認する。肋は折れてないから呼吸器系じゃない?
分からない。
やっぱり頭部を打ってるのかもしれない。動かさない方が良かったはずなんだけど、、、
知識がない自分じゃ判断できない。せめて誰か人がいれば、、、
身動き一つ取らない女の子を丁寧に抱きかかえると林から外へ飛び出した。