6幕:役立たずの丘と眠るモノ 2
辺り一面が緑色の光の世界に包まれた。
何が起きたかなんて分かる訳がない。
光が落ち着き目を再び開けることが可能になったことに気づいた時には世界が変わっていた。
目の前では緑色に輝く生命力に満ちた草原の絨毯が一部だけ広がっていた。
視界の端まで、いや見渡す限りの世界は白いだけの世界の中でそこだけが異様に映し出されている。
「変な世界、、、しまった!?チェリリ?ロズン?ガドナース?いない、、、子豚くんもいないか」
どうやら自分だけが世界から取り残されたようだ。
いやこれは自分だけがどこかに飛ばされたと見るべきか、転移、もしくは死んでしまったか。
だが足裏から感じる大地の感覚は変わらず、また心地よい風の感触が肌を流れるように撫でていく。五感はまだ働いている。幻覚や幻想でもない限り現実であることは間違いはないだろう。
ということは、、、
これはまさかの立派な迷子かな。ちびたちに顔向けできないなぁ。
現実を見ないように意識しながら少しずつ足を進めていく。
それから30分弱。どこまでも続く白色と緑色の世界は変わることはないようだ。
軽く推測するに、ここは異次元空間なのだろうか。
石柱に秘められた力?魔術?により自分だけが、この地に飛ばされた?
それともよくある話で自分の精神だけがここに閉じ込められた?
もし結界とかのような空間の中だったら手持ちの道具を投げてみてはどうだろうか?
糸付きのダガーを周囲に投げ感触を確かめる。
それから間髪入れず7枚のカードを取り出して等間隔に投げつけた。
こんな時、一家に一人いれば大助かりな小人の美少女シャドーは不在である。
彼女にはここ数日、要人たちの来訪で浮足だっている町を調査してもらっている。特に自分に言いがかりを付けてきた冒険者ギルド内部を徹底的に洗いざらいにするべく。どうせこの異常都市のことだから内部に絶対、外国の調査員やスパイといった模じゃない者がいるだろうし、大盗賊も関わっているだろうから裏世界の人間に誰かさんのように情報を売りさばいて、この前の借りを返そうなんて思っていたりはしないし外国の治外法権なギルドに同業者含む裏情報を横流しして倍返ししてやろうなんて全く思っていない訳ではあるが。
そんなことを考えつつ20分後、糸を辿った先で信じられないことに遭遇した。
この世界での第一住民を発見したのである。
ただし大きな大きな問題があった。
野原に咲く花畑の中央に少女が倒れ込んでいたのだった。
胸にまっすぐとダガーが刺さったままで、、、
綺麗な彫刻で造型されたかのような人形像。
まるで美術館に飾られた彫刻のようにも見える可憐な美少女だった。
起伏に薄い肢体はまるで幼い子供のようにも見える。
そんな彼女の胸のど真ん中に誰かが投稿したであろうナイフが突き刺さっていた。
ぺたーんとした平野な少女のど真ん中にナイフが綺麗に真っ直ぐに突き刺さっている。
自分じゃない、誰かが投げたであろうナイフが綺麗にど真ん中に、、、。
・・・・。
さてと見なかったことにしようかな。
踵を返して歩みを速めながらその場を離脱する。
馴染みのシャドーばりの早さを意識しながら、摘み食いしてバレないようにその場から駆け出す子供達を意識しながら、そして亜麻猫亭の直属の上司のパワハラから一目散に逃亡するかのように後ろを振り替えずに。来た道は必ず元の世界に繋がっているはず、、、
でも現実は残酷だった。
「嘘でしょ、、、これって脱出不可能空間?」
駆け足で駆け抜けたにも関わらず辿り着いた矢先はさっきと同じ空間。
そして目の前に広がるのは野原の中で可憐に眠る一人の美少女と誰かが投げ突き刺さったナイフ。
くどいことだが第三者である外部の誰かが投げたであろう凶器。
ただし先ほどと違うのはその傍らに同じ顔をした誰かが傍で漂っていることだろうか。
目尻に涙を浮かべ頬を膨らませナイフを指差したままこちらを睨みつける一人の透けた可憐な少女の姿を。
謎の美少女:(;¬_¬)ジーッ,,,