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まじかるココナッツ。  作者: いろいろ
2章 
160/162

6幕:役立たずの丘と眠るモノ 1

 島内には《役立たずの丘》と呼ばれる場所がある。


 その周辺では旧文明の遺跡群だと思われる様々な紋様が刻まれた石碑が数多く存在した。そこで見つかった石碑や出土品は偶然、高名な考古学者の目に止まりすぐに学会に報告されたという。その後、彼の必死の高弁のためか、それとも欲に目が眩んだ国の官僚たちの出世欲のためか、すぐに探索隊が派遣され、結果、島内に歴史ブームを引き起こした。


 ちなみに彼はとある高名な魔法学校の教授だったというが今では定かではない。


 今から数十年前のことである。それ以来、世界中から考古学者を始め歴史研究家や歴史マニア、トレジャーハンターや盗賊に至るまで数多くの人々が集まった。まだ公国が国としての力を誇っており難癖つけて領土問題に発展させようとした諸外国を有無を言わさずに黙らせていたほどに外交の力を発揮させていた時代だった。


 そのためその時代には今の何倍もの人々が集まり完全管理された大都市が建設されたという。昔を知る高齢者は今日各国の要人たちが来訪した際に見られた人々の軽く十数倍にも及んだと語るほどに栄えたそうだ。


 だが長くは続かなかった。


 発掘された調度品が比較的現代のものであることが分かると訪れる人々は途端に途絶え足を運ぶものは島民と夢を諦めきれない者以外はいなくなった。その後、執念深く探索した人たちも消え去り、手付かずに放置された人間たちの住居群や道路といった人工物は荒れ果ててしまい、今ではその跡地には人一人住んでいる者はいない。


 そして現在は、遺跡群周辺が島内では最大の危険地帯、つまり魔物たちの巣窟となっている。そのため冒険者ギルドではその繁殖した魔物たちを間引こうと定期的に討伐依頼を出している。魔物の素材や落とす魔石は冒険者ならいざ知らず、直接被害を被る島民たちには害でしかない。集まる冒険者たちも血気盛んな者が多いためあまり好れる訳もない。やがて公国が力を落とすと共に治安も悪化し島内は廃れるあまり価値がなくなった元凶の理想の島。ここ数年は比較的治安が改善しているとはいえ聞こえてくるのは黒い話ばかり。


 だが全てはこの遺跡から始まったのだ。


 そのため島民はかつて見た一大ドリームを見たその跡地に皮肉を込めて《役立たずの丘》と呼んでいる。だがこんな噂も静かに囁かれたそうだ。一説では値段が付けられないようなお宝が発見されたとか、そのお宝が同時に秘密裏に国外に持ち出されたなんてことも耳にされ、、、当然そんなことを信じる者は一人としていなかった。


 そしてその《役立たずの丘》で依頼を受けた冒険者たちが巣食う魔物たちと鎬を削っていた。


「『薔薇園結界(ローズガーデン))』」


 緑力しい太い棘を生やす薔薇が魔物たちの動きを阻害した。

 そこに成人男性の大きさはあろうかという大盾を抱える男がその盾ごと全身で体当たりを食らわす。


 薔薇の隙間から逃げ出そうとした魔物の動きを封じたのである。


 しかしその行為は少し蛇足だったかもしれない。


 薔薇が織りなす薔薇の結界の密度は時間経過とともに隙間なく縮み魔物たちが抜け出すには至難の技だ。そして僅か数秒後には手足が身体が締め付けられ屍になったようだ。決して薔薇園で見られるような脆弱な植物ではない。これは魔術で解き放たれた薔薇が生やす荊の結界である。しかも性質が悪いことに傷ついた身体から流れ出す血から魔力を取り込み結界を成長させながら相手を弱体化させ死に至らしめる。そして最後にはその薔薇には真っ赤な薔薇の花が咲くのだという。


風矢(ウィンドアロー)!!」


 そこに風の矢が上空から唯一結界の空いた中心へと次々に打ち込まれた。

 数にして10本ほどだろうか。どうやら荊から逃れた魔物もいたようだ。


 それでも今の攻撃で魔物たちは全て息を絶えたらしい。

 荊から咲く蕾がその数だけ赤く輝くように咲き乱れたからだ。


 男はその中から一輪の薔薇を掴み取ると魔術を唱えた少女の栗毛色の髪に飾り付けた。

 そして気品に満ちた表情で微笑んだ。


「君にこそこの華やかさは似合う。もちろん君の美しさは世界一さ」


「き、気持ちー悪いでーすーこの方はー!!ブルーベルさーんどうにかーしてくださーいよー!!」


「ぐわあはっはははは、、、、面白れぇなぁ!!」


 自然と少女の髪に触れる様は文字通り彼の性格を物語っているようだ。

 だが長髪の紳士の好意を煙たがったおっとりゆるふわな雰囲気の彼女は顔が強張っていた。まさにドン引きだった。

 さらにその光景を見た焦げ茶色の短髪をした中年入りたての男は腹を抱えて笑っていた。背負った大きな盾を地面に落とすほどに。


 腕に中々の大きさの膨らみを感じながらパーティを組んだことを後悔した。

 危険なものには決して相手しないし関わるべきじゃない。


 今は他にやるべきことがある。


「ブルーベル!?貴様、、、幼気な少女を誑かす気か!?彼女は野原に咲く絶対の女神、コスモの華。この私が愛して止まない女性だ。それを貴様は調子に乗りおって、、、決して許さんぞ!!」

「確か今日の夜には分かるって言ってたけどキャロたちは何企んでんだか」

「し、知りまーせんよー。この人は頭がーいっちゃってますー。何で私の話をー聞いてくれないんですかー!?それとーコスモの花ってーどうせ私は地ー味ですよー」

「大丈夫ですよ愛しの君。この私がいる限りあなたにこれ以上の恐怖も心配もさせません。私こそあなたの守護者なのです。こんな素性の知れぬ冒険者風情などに気を許すべきではない」

「ぐわははっはあh、、、腹、腹がいてぇ、、、」

「聞いてるのかブルーベル?このロリコン風情が!!」

「盗賊の夜明けって何を指してるのか全く分かんないし、、、でも今は遺跡探検しないともったいないか」

「この人ブーメランってー言葉知ってませんよー。ブルーベルさーん助けてくださーいー!!」

「や、やべkぇkぇぇ腹が腹がいてぇ!!!」


 混沌だった。どこまでも混沌だった。

 おかげでこれから、何が起きるかなんて誰も知る由はなかっただろう。

 隣で進行するコントを無視しながら考古学について示唆してみる。


「ほんとロマン溢れる遺跡に魔物ばかりって風情ないよね。元は白かっただろう石の柱が今じゃ6本そこら、、、ゲームだったらこれがキーポイントってところだけどすでに試行済みかな。でも本当に何かあるんだったら嬉しいんだけどなぁ。おっと?」


「そうですねー。普通、ダンジョンや遺跡なんかだとそうなんですが、思いつくほとんどのことは過去の人たちがやったーはずじゃないですかー、あーれブルーベルさん?どうしましたー?」


「聞いているのかブルーベル!?貴様はこの可憐な少女の目を誑かした罪を償うべきだと女神様なら確実に宣告するだろう!!そして今は私が断罪してやる!!」


「えっとこの柱に刻まれた文字って、、、読めるわけないか。おっとこの窪みのようなものって絶対アイテム嵌め込む奴に似てるかな。おっとここの穴に繋がってたのか、、、おっとこれはこれはこの前も会った小さな手乗りの子豚さん。ほんと小さくて可愛らしいことで、、、この辺危険だから危ないからね」


「無視するなブルーベル!!いや待て!!今何と言った!?」


「えっ!?手乗りーサイズってーまーさかー、、、」


「よしよしおいでおいで、、、遅くなってごめんね、今日はこの甘いお菓子でもお食べ」


「ブ、ブルーベルさーん!?絶対ーにーダメですよー!!絶対にー関わっちゃいけまーせんからねー!!」


「ブルーベル!!貴様乙女の言うことを無視する気か!?彼女のいうことは本当のことだぞ!!」


「もしかして、、、?ちょっと待て!!ブルーベルそれだけは早まるな!!」


「皆揃ってそんなこと言って大丈夫だって。この子最近よく見る子だから。言葉理解できるみたいで頭良いし可愛いしで最近よく会うんだよね。親御さんとも揃って会う度に餌付けしてるんだけど今回は迷子になったのかな?危ないところだったよね、さっきも魔物に襲われそうになってたしこの前もゴブリンに襲われてたし一人で彷徨いちゃダメだよ。もう大丈夫だからおいでー」


「「「ピグミンブー!?」」」


「どうかしたの?さっき倒した魔物の狙いはたぶんこの子だけど、そこの小さな穴が結構細長いし狭くて救い出すのに苦労したんだよね。この柱案外硬いから苦労するかなと思ったけどダガーで傷つける分には問題なかったし、おかげで簡単に穴空いたし遺跡じゃないんだから助かったよ」


 手のひらに小さく包まれた小さな小さな子豚をそっと包み込みながら切り刻まれた柱の隅から抱き上げる。見た目は子豚がさらに小さく小さくなったような、、、まるで手のひらの上に鎮座する子豚だった。


 うちのチビたちが見たら絶対に喜ぶだろう子だった。先日は小さいヒトを見つけたとかでコアンさんをどこかで生け捕りにしてはしゃいでたし、この子もきっとちびたちに掛かればすぐに仲良しになること間違いない。それにこんな愛くるしい姿はウチの可愛げないシャドーにだって出せないはずだ。彼を指で優しく擽ぐるように撫でると気持ち良さそうに顔浮かべながら、、、ぶーぶーと鳴き始めた。


 しかし目の前の三人はぞっとした顔のまま周囲を見渡している。


 全く、、、これだから動物愛護のない連中は。


 そんなことを思った時だ。

 柱の一つが緑色に輝き出し満ち溢れたのだった。






チェリリ:素朴な美少女の魔術師。

ロズン:《薔薇之騎士》(ローズナイト)を名乗る若手の剣士。

ガドナース:ベテランの男性盾士。既婚。


小さい小さいピグミンブー:手のひらサイズの子豚。最弱クラスにクラス分けされる魔物。非常に頭が良く人語も理解する。成長すると馬車の何倍もの大きさになるものもいるとの報告が上がっている。ピグミンブー自体に危険はない。


マフィアンブー:体が大きく頭が良く魔術を操る豚の魔物でありピグミンブーの成長体。危険度Bクラス以上に位置付けされており非常に危険。その個体に子供がいることが分かった場合、討伐禁止指定種となる。理由は子供を襲おうとした魔物、乱獲しようとした人間たちは全て親たちにより絶対に返り討ちにされ死ぬまで報復されるため。過去、群れを率いて城一つを潰したとの謂れがある。


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