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まじかるココナッツ。  作者: いろいろ
2章 
158/162

5幕:小さき者と大きな者 5−1

 



 色によって身分が違うらしい。


 そんなことを町中の人たちの会話から小耳で聞き取りながらココアは一人項垂れた。

 ぼけーっと眺めていた、いや消沈していたと言った方がいい。


 あれは失敗だった。完全に失敗だった。どう考えてみても失敗だった。


 お昼前、大勢の人が行き来する広場で様々な芸を披露している芸人たちと知り合った。


 とても気さくな人たちで話をしてみると昔から誰かがこの広場で毎日パフォーマンスしているのだと教えてくれた。彼らは笑劇を主体に活動しているそうでほぼ毎日、ここで活動しているそうだ。彼らのように活動している人は多いらしく他にも音楽や演劇から紙芝居、ありとあらゆる芸がこの場で見られるという。この日は彼らの笑劇から始まり、次は紙芝居と何らかの展示会が開かれるそうである。


 大勢が通りかかる場なため人の目に触れる機会が多いため、もし受けが良ければ、とても実入りが良いらしく多いときではものすごい額になるらしい。それに軽食やお菓子を分けてくれたり差し入れてくれたりする人たちも多く、その日、食べるものに困らない日もあるのだとか。


 旅に掛かるお金、途中途中で必要な経費、昨日の書籍代やらおやつ代やら考えると全く余裕がない自分たちにはとても羨ましく思えた。


 会話を続けるうちに自分たちも蒼兄と一緒に《笑顔の魔法》(ぱふぉーまんす)を披露していると伝えると知らない間に急遽、披露する話になり、そして、、、、大失敗した。


 初めの入りは良かったと思う。掴みもバッチリだった。でもその後は事前に決めていた通りにはいかなかった。特に緊張した黒桃が失敗してからが酷かった。釣られてティーが失敗して、それをカバーしようとした自分も失敗して、、、ココナが何とかしようとして持ち直したものの空回り気味で、、、結果、散々だったのである。


 でも最後の熱のない拍手が答えであり自分たちへのトドメだった。


 魔物に襲われた後で披露した時は問題なかったはずだ。あの時は多少失敗してもそれをネタにして盛り上げるだけの余裕があった。ご飯の後で披露した際は皆が自分たちを見てくれたし笑顔や驚愕した顔、明るい掛け声に野次、それに温かい拍手で誰もが迎えてくれた。ラクスで見渡す限りの人たちの前でやったときなんか町中が熱狂してくれて人生の中でとても興奮した一夜だった。


 でも今回は違う。


 皆、あの時とは違う目だった。見たことがない目だった。


 痛いモノを見るような目。哀れむような目。掛け声は少なかったし拍手も冷たかったような気がした。それに何より自分たちが、、、いや自分が人の目を気にして慌てふためいたような感じだった。それに負けじとココナは一人立ち向かった。早々と負けた自分にはあの時は滑稽に思えたが、その根性や姿勢が今はとても凄いもののように思えた。


 もし自分だったら絶対にここまでできなかっただろう。


 これが自分と今のココナとの差。蒼兄の下で経験した自分との差。


 そのココナもマロンを抱きかかえながらヤキニクのお腹に顔を埋めていた。何を考えているなんて語るまでもない。ココナも、自分も悔しさと不甲斐なさで胸がいっぱいだったのだから。


 かわいいマロンやヤキニクがいてくれたのは幸いだった。一緒にいてくれるだけで悲壮感漂う雰囲気が消えていく気がした。肌を通して体温を感じるだけで心の中の黒くなったものが少しずつ白くなっていくように。


 ヤキニクに抱きつくように体を預けながらココナの隣に腰を下ろした。

 途端に真っ赤な目で抱きついてきたココナを抱きしめながらココアは今はいない蒼兄のことを考えた。


 蒼兄がいる時だけは、、、ここまでの失敗をしてない、、、だけど考えても分からない。

 何が違うんだろう。


 もちろん沈んでいたのは二人だけじゃない。


 自分たち以外にティーも落ち込んでいた。そして黒桃は壊れていた。ティーはティーでひどく落ち込んでいたし、黒桃は人前で男の娘を披露してからは、、、まるで人が違うようになってた。けど、あれはあれで可愛いと思うしありだと思う。すごく体の大きな漢の人に声かけられて人気だったしティーなんか黒桃の乙女っぷりを見て凄く弄りたくなってたようだし、、、、ただそれが失敗のきっかけの始まりだったのかも。もしも蒼兄が女装してたらノリノリで披露していたかもしれないし、むしろ積極的に有効活用しそうな気がする。


 小さな帽子の中に入れられたお金は、贅沢を我慢すればあと数日は暮らせるだけの金額になった。

 おかげで今日は宿で少しは美味しいものが食べられるはずだ。あの時の悔しさと恥ずかしさを思い出さなければ。


 でも本当に何が違うんだろう。


 次々と浮かんでくる雑音と自分たちとの違いを考えている時だった。


「た、大変です!!ココアちゃん、ココナちゃん大変です!!」


 凄く慌てたティーが駆け込んできた。


 必死になって全力疾走してきたのだろうか。もしくは途中で転倒でもしたのだろうか。

 息も上がり呼吸が全く追いついていない。それに衣服のあちこちが汚れ特に膝あたりは服から若干血が滲んでいる。そんなティーの様子に変な違和感を感じたのかココナも顔を傾げている。


「黒桃くんが、黒桃くんが、、、いえ黒桃ちゃんが!!」

「てぃー?」


「落ち着いてティー、どうしたの?」


「黒桃くんが、、、黒桃くんが、、、攫われちゃいました!!」



「「えぇえぇぇーーっ!?」」


「「「「!??!?!?!?!」」」」


 小さな二人の大絶叫が広がった。


 何か何かとその声の重なりに異常事態だと思ったのだろうか。もしくは事案ではないかと考えたのだろうか。

 近くにいた人々が一斉に子供たちに視線を向けたのだ。


 そしてさらに悪いことは巡るらしい。

 子供達の後ろから何者かがひっそりと近づいてきて、、、



 子供達の小さな手を強引に掴み取ったのだった。



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