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まじかるココナッツ。  作者: いろいろ
2章 
157/162

5幕:小さき者と大きな者 4

 

「時代は『変身』なんだから!!」


 ココアちゃんのいつもの一言である。

 両手を腰に揃えながら浮かべるドヤ顔は最近では見たことがない程である。


 そんな様子を見せるココアの目の前では二人の少年少女が相対していた。


 実にしおらしくもじもじとし内股な感じの少年は一人履きなれないスカートの裾を抑え銀色の髪を仕切りに弄りながらなぜか悲壮な顔を浮かべていた。一方、その隣には黒色の髪を纏った少女が己の男装姿を立派に披露し、もじもじとした乙女風な少年の様子を見ては度々顔をうっすらと赤く染め上げている。


 その二人を眺めながら『ふんす!!』とドヤ顔を浮かべているココアちゃんはしてやったりの顔である。


 黒桃は男の娘?になりティーは女の男の子になり、、、

 ココアちゃんが言うには、「《男の娘》は時代の流行りなんだから!!」と言うことらしい。

 ココは聞いたことがなかったが、ココアちゃんが言うならきっと流行っているのだろうと思うことにした。


 でもどうしてこうなったのだろうか。


 ココは少しだけここ数日のことを思い出すことにした。





 とりあえず昨日のことである。


「じゃああいつ(ブルーベル)がどこに行ったのかわかるのかよ」


 そんな問いにココナもココアも黙って行き先を指で差し出した。

 当然、自信満々である。ココは自信満々に指を差し出したのである。


 ココの感が、ココのお兄ちゃんレーダーが告げているのだ。


 蒼葉お兄ちゃんはこっちにいるのだと。

 でもそれはどうやらココアちゃんも同じらしい。


 ただ指差す方角は全く自分とは違うのだが、、、


 むうっ、、、これは間違いなくココの方が正しい場面である。


「絶対こっちなんだから!!」

「むぅ、、、ぜったいこっちだもん!!」


 不毛な戦いの始まりはすぐに第三者によって否定された。

 ティーの衣装を着飾った黒桃ちゃんの出現である。


「いやいやいや、、、ちげーよ。こっちの方角だって」


「絶対違うんだから!!」

「ぜったいちがうもん!!」


「ふっ、、、、」(呆れたドヤ顔を浮かべる黒桃)


 ティーに負けない女の子となった黒桃ちゃんは自信満々の笑みを浮かべながら一枚の護符を取り出した。つい先日も大活躍した黒桃の魔道具である。本人曰くそれなりに希少な品だということらしい。ただ魔道具と言うのではなく宝具と呼ぶのだそうだ。つまり、、、魔道具である。


 それにしても何て勝気に満ちたドヤ顔だろうか。勝ち誇った笑みが何だかとても憎たらしいようなムカつくような、、、心からいじめたくなる気分である。


「これをこっそりと忍ばせてるから、、、、俺にはどこにいるかわかるんだよ」


「黒桃くん、いえ黒桃ちゃん、、、ぷぷっ、、、もう少しお淑やかにしないと、、、くすっ、、、いけませんよ」


「あのなティー良い加減に元に戻りてぇんだけど、、、」


「もぉーっそれは、、、」

「「ダメダメです!!」」


 黒桃の提案は速攻で否決されたのだった。







 さらに一昨日である。


 ココたちは店頭に飾られていた新刊の絵本を手に入れた。結局、高すぎる魔道書は諦めて他の道を探すことになったのである。旅の途中、新たに訪れた町々の魔法屋や本屋さんに顔を出してはその値段に驚かされ続けた。結局、心残りのためか色取り取りの透けたケープのようなものを着飾る大きな都市の一番大きな本屋さんでも探したものの結果はそぐわなかった。


 ただその代わり思わず胸が高鳴るほどのお宝をココは見つけたのだ。


 一目見て胸がドキドキして、手が震えた。まるで蒼葉お兄ちゃんがこっそりとお菓子を作っているのを見つけた時ぐらいの衝撃度である。そして帽子の中にこっそりとケーキを隠している時の興奮度である。


『魔法使いの大先生』『ダークシャドー物語 ~闇に生きる者~』


 ココたちが大好きな大好きな物語の本だ。

 しかも見たことがない表紙の絵柄である。

 たぶん、、、まさかである。これはまさかの新しい続編!?新刊である。


 それから隣に見たことがない一冊が異様な装飾で披露されていた。


 次世代期待の新人作家の新たな新作。

 今話題の新しいダークファンタジー。

 共通言語書板初版発行。初回限定。

 人種を乗り越えた愛と友情と冒険の物語。

 女神様も大絶賛!!

 女神様イチオシ!!


 と書いてあるらしい様々なキャッチフレーズのノボリや装飾で飾られココたちの身長の3倍くらいの高さで積み上げられている。まるでここだけが異世界のような異様な雰囲気である。当然、ココから見ても自然と手を伸ばしたくなるような、、、そんな空気が漂っている。


 でも無駄使いは禁止、お金大事というお兄ちゃんと約束をしているのでどうしようか、、、、ココがすごくすごーく頭を悩ませているとそんな小さな悩みをぶち壊すように小さな女の子が声を高らかに響き渡ったのである。


「全部即買いよ!!」


 ココナが新刊コーナーで悩んでいる数分前、ココアが新作の1冊を手に取るとすぐにティーに話しかけた。その声は多少上ずっており、まるで何かの真実に気づいたかのように手足が震えていた。


「ティー、ここ何て書いてあるの?こ、これってもしかして、、、」

「あっ!?ココアちゃんこれってそのコーナーと同じ作家さんの新作ですよ。あのシャドーの作家さんのです」

「『ダークシャドー物語』のやつ!?『魔法使いの大先生』と同じの!?さっきの人だかりが出来てた広場にもあったやつ!?」

「ですです。こっちが絵本版、こっちが小説版ですね。それからあっちが初回限定版で、、、そ、それも全部揃ってますよっ!!広場よりここのコーナーの方が凄いです!!こ、これはスゴスゴですよ!!」

「ほ、本当!?」

「前回、前々回の初回限定版はラクスだと売り切れで買えなかったからここで全部、買えちゃいますよ!!」

「やったー!!これで全巻持ちのクラムにバカにされないで済むんだから、、、ティー宿に帰ったら読んでね。でも絶対一人で先に読んじゃダメなんだから!!」

「もちもちですよ、ココアちゃん。宿で一緒に楽しみましょうね。でも残りのお金があまりありません」

「ティー大丈夫よ。これは必要経費ってやつなんだから!!」

「流石はココアちゃんです!!必要経費なら仕方ありませんね」


 その時、笑顔で盛り上がっている二人に一人相手にされない少年がタイミングを計るように詰め掛けてきた。その輝く瞳は二人が手にしている新作に注がれている。


「おぉ!?それって『月夜の剣』だろ!?すっげー面白いんだよな。俺は当然、主人公推しだぜ。ピンチの時の変身シーンがかっけぇんだよ。やっぱり時代は名刀深淵三日月丸だよな」

「こーくーとーっ!!!!!!!?」(ガチギレココア)

「もぉーっ!?黒桃くんったらネタバレはダメダメですよ!!」

「ご、ごめんって二人とも、、、」

「そうじゃない黒桃!?何で一人だけ先に読んでるのよ!?」

「そうですよ黒桃くん!!一人だけズルイです!!ズルズルです!!」

「何だよココア!?ティーも悪かったよ、、、二人ともそんな怖い顔すんなって。3つ前の町で魔道書探してる時に偶然見つけたんだよ。だから暇つぶしに立ち読みしてたんだ。ちなみにシャドーも大先生の新作も最高だったぜ」

「あぁん!?何で教えてくれなかったのって言ってるのよっ!?」

「そうですよっ!!黒桃くん!!ファンは心待ちにしてたんですよ!!」

「いやだってお前ら魔術書がどこも高いってブーたれてただろ!?それに魔闘気の初歩身につけるので精一杯だったじゃねぇか!!おかげで詠唱できなくなってもティーはともかく、ココアは少しはマシになってるから問題ねぇだろ」


「「黒桃くん、、、」」


「後で覚えときなさいよっ!!」

「そうですよ黒桃くん!!」


「いや何でだよ!?」


 ぷんすか状態の二人は、各々が初回限定版、小説版、絵本版、そして手に入れられなかった書籍を手に取ると残り少ないお金を握りしめ奥へと駆け足で向かった。


「むぅ、、、、、」(ココナ)


 そんな二人を見てココは思ったのである。


 これは無駄遣いではないのだと。大切な使用目的なのだと。お兄ちゃんがよく言う『必要経費』というやつである。そうココは一人納得したのだ。


 だからそれぞれを大事に手に取ると二人の後を追いかけたのだった。


 すっかりと薄く少なった財布の中身を見ないふりをして、、、



 そして翌日、ココアちゃんが言い出したことをきっかけに、ティーは男の子に、黒桃は女の子に変身したのであった。




とある女神様(๑• ̀д•́ )✧キリッ:男の娘も良いと思います!!


『ダークシャドー物語』『魔法使いの大先生』:巷で噂の新人作家が手がけた本。子供たちの間で瞬く間に大ヒット。小説版、絵本版あり。最近では演劇の定番にもなり世代を超えて流行中。初回限定版はレア中のレア。転売不可能の魔術印処理済み。


『月夜の剣』:世界で注目されている作家の新作ダークファンタジー。話題作から興奮が終わらぬ間にタイミングを計るように発表された。女神様も大注目の新作。転売不可能の魔術印処理済み。


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