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まじかるココナッツ。  作者: いろいろ
2章 
153/162

4幕:動き出す者たちと始まりの宴 2

 

「師匠飲み過ぎです」


 温灯が室内を薄暗く照らす中、一人の青年が呆れたようにひっそりと口を開いた。

 キャロは傍で横になる女性に薄手のブランケットを纏わせると冷たい水入りのグラスを突っ伏したままの御仁に差し出した。


 あれからすでに数時間以上。

 もう少しすれば日の出が拝める頃だろうか。


「ああぁ、、、すまない。お前たちの顔が見れてついつい嬉しくてな、、、アイラは寝てしまったか。ケモミもフラフラでノックアウト寸前だが、くくくっこりゃダメだな。お前はもう少し私に付き合え」

「あと一杯だけですよ、師匠」

「お前は全く、いつから私の母親になったんだ、、、」

「潰れる皆を最後に介抱するのが私の役目です」

「お前が私より強いんだから仕方のないことだな。本当良い男になったもんだ、、、、それでどうだった?」


 踵を返したように淑女が放つ眼光は様変わりした。

 この鋭い眼差しこそ嘗てキャロが憧れた人物そのものであり世界に名を轟かす一人なのだ。

 ただし先ほどまでは只の砕けた酔っ払いであり、今も突っ伏したままであることに代わりはないのだが。出会って10年と少しくらいだろうか、その眼光は今だに衰えることはない。


 そんなことを感じながらキャロは本題を切り出した。


「仲間に届けさせた映像魔石のロックは解除できましたか?」

「いやアレの解除は私を持ってしても無理だ」

「師匠でも無理?それほどのモノなのですか?」

「あぁ、あれはな《始まりの魔女》の特注品だからな。彼女以外に扱える者は世界広しと言えどもほぼいないだろう、、、内臓魔力切れになると少なくとも本来の持ち主以外の操作は受け付けないようになっていてな。つまりあの中にお前が見つけたモノの全てが記録されているんだろう。キャロお前は今回の旅で何を見た?」


「そうでしたか。あの連邦国家の大魔導師なら仕方のないことですが、小さなレディたちに悪いことをしてしまったか」


 少しの間を置いてキャロは目を閉じた。

 無理矢理にも自身を抑制するかのように、拳を握りしめ故意にゆっくりと口を開く。その様子が今の彼の興奮冷めない状態を物語っているのだろうか。


 僅かに震える拳は力を込めたままだ。

 それだけキャロにとって衝撃的なことだった。


「師匠、、、《最後の鍵》を見つけました」


「そうか。ついに見つけたのか」


「はい、そして今から話すことが世界を動かす一歩となることでしょう」


「だろうな。こちらはすでに舞台を整えている。始まりはいつでも良いが、、、どうするキャロ?」


 キャロへ問いながら彼女は横になったままの愛弟子の頭を優しく撫でた。

 透き通るような水色の長い髪はこの世のものとは思えないほどの上質な肌触りだ。いつまでも愛でていたい、、、そんな気持ちにさせてくれる。


「アイラは犠牲を出すことを望まないだろう。優しすぎるからな、、、お前は身を犠牲にしても突き進むつもりだろうが、確実に犠牲になる者が出てくるだろう。もう後戻りはできないぞ」


「、、、、」


「それとお前はいつまで知らないフリをしているつもりだ?」


「、、、、」


 無言を肯定と捉えた彼女は静かに彼の言葉を待つことにした。

 傍に佇む愛弟子の気持ちなどとうの昔に悟っているだろうことを確信しつつもこれ以上は口に出すことはない。弟子の成長に嬉しさと寂しさを感じながらも静かにグラスの水をゆっくりと飲み明かした。


 束の間でフラフラしながら静止している少女を優しく抱きかかえながら介抱する。

 もふもふした感触が今の彼女の胸に開いた何かを埋めるには丁度いいだろう。


「師匠もこの名前を耳にしたことがあるのでは?」


「名前、、、か?」


「はい、、、、《七之刻印(セブンス レギック)》という名をご存知で?」




「先生、オバサンくさいですぅ、、、」


 突如、漏れ出した戯言に愛おしさを感じながら淑女はコメカミに筋を並べた。

 そしてその数秒後、小さな魔法陣と淡い光を解き放ちながら少女は勢いよく背筋を伸ばしたのだった。


 しかしどこで誰に抱きかかえられたままなのかを正しくは自覚できていないようだ。


「ふぅーこれでもう大丈夫ですよぉ。それでどこまで話しましたかぁ」

「今からだよケモミ。まだ障りも話せていないさ」

「アイラは寝てますしぃ随分と時間掛かったんですねぇ、、、あれぇ先生ちょっと待ってくださいぃ」


「ケモミ~?女の子はお口が災いの元だからな」

「先生!?さ、騒ぐと起きちゃいますよぉ。わざわざ聞かせないようにしたんでしょぉ!?ぐふっ、、、、、、、、、、」(・・・・。)


 再び抱かれたままのヌイグルミと化した少女に苦笑いしたキャロは静かに口を開き始めた。


 そして數十分ほど経ったころだろうか。

 キャロの口から出た事実は彼女の心に火をつけてしまったのかもしれない。それとも開いた穴に何かがすっぽりと入り込んだのだろうか。足りないものは見つかったのだろうか。


 鋭かっただけの眼光に今まさに光が灯った瞬間を彼は垣間見たのだから。


「生まれて初めて胸が踊るような気分だよキャロ、さぁこれから何を見せてくれるんだ?」


「《暗部》が動いています。そして《花鳥》もまた何かを企んでいるようです。それに組織の連中も間違いなく出入りしているでしょう。他に上位クラスの者達の噂も耳にしています。だからこちらは表立って動くことはできません」


「分かっている。そうなるように私が適度に情報を流したからな、数日中に各国の機関が入り乱れてここは騒がしくなるだろうさ。何せ世界をここに注目させるために起こしたとびきりのネタだからな。ただ厄介ごとが一つ、どこかのバカが《フラッディパウダー》を横流ししたなんて情報が上がっている」


「今更、前世代の薬物を?ということは誰かがあの研究を引き継いでいたということですか。これだから師匠のお祭り好きはやり過ぎです、、、、これでは余計なものまで露呈しそうですが」

「それもお前の計画内だろ?わざわざお膳立てはしてやったんだ。最後まで楽しませてみせろキャロ?」

「当然。見れますよ、世界中が震撼する様、そして本当の夜明けの素晴らしさが」

「わざわざ頑張って生きた甲斐があったもんだ。それとほかにケモミも何か面白いものを引っ張ってきたらしいな」

「それは見てのお楽しみですよ、師匠」


 微笑漂う師の笑みに何故か悪い予感しかしないことを感じながらキャロは己に聞かせるように宣言した。


「では始めましょうか。あの組織を表舞台に引きずり出す計画を」


 その震える拳に無理矢理にでも握りしめながら、、、、、





怖いもの知らずの弟子1(゜Д゜):カレイシュウ、、、ガクッ、、、



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