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まじかるココナッツ。  作者: いろいろ
第0章 ホルクスの街と英雄街
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11幕:ココと魔導の才能 『気持ちいい休日の過ごし方』

 街を探索してから家に戻った後、ルーリはすぐに夕食の準備に取り掛かっている。

 彼女の手料理を食べさせてくれる約束である。

 少し年下くらいの美少女が作ってくれる料理。

 蒼葉もココもとても楽しみにしている。


 彼女の妹のローロちゃんだけは気乗りしないみたいだった。

 友達の家にお呼ばれしてますとか姉に伝えたらしいのだが、今日はお留守番しなきゃだめって言われたでしょとルーリさんに叱られて涙目である。

 その後、諦めて朝干していた乾いた洗濯物を回収している。いつもの元気さは見られない。


 そんな二人を差し置いてココと蒼葉は洗濯をしている。

 ベットリとソースまみれの服を4着分と他多数。

 人気がない、人に見られる恐れがないよう死角と視覚を確認してから洗濯の準備を始める。

 もちろんココの魔法を確認するために。


 この街は井戸式じゃなくて水道設備があるのだが、日本のような蛇口をひねって水が出てくるような感じではない。

 水資源が豊富なこの街は近くの川とその上流の湧き水地帯から水を街まで入れているのだそうだ。

 使用後の浄水設備も整っているとのこと。上下水道設備以外にもインフラは整っているらしくそのおかげで宿場町として大人気なのだそうだ。他にも色々とあるそうなのだが、これから知ることになるだろう。


 だが今回はその設備は利用せずにココに魔法で洗濯してもらう。

 もちろんそれには理由があり、蒼葉自身で彼女の力を確認するためなのだ。


「ココ隊長、このタライの中を水でいっぱいにしてください。」

「りょうかいであります。」


 ココ隊長は、魔力を練って空気中に水を出現。

 わずか1秒にも満たないその速さで大きなタライの中を水でいっぱいにさせた。


「隊長、次に水を少し温めてください。体温よりも少し緩いくらいであります。」

「りょうかいであります。」


 ちょんと右手の人差し指をタライの中につけ蒼葉の方へ向いた。

 水を適温にし終わったのだろう。


「隊長、続いて洗濯の魔法をお願いするであります。」

「りょうかいであります。」


 ココは顔をちょこんと傾けた。

 きょとんとした幼顔がとても可愛らいしいのだが、どうしたのだろうかと蒼葉も疑問に思う。


「おにいちゃん、せんたくのまほうはわかりません。」

「では服の汚れが落ちる魔法はわかりまするか?」

「それならだいじょうぶであります。」


 タライの中の水がどんどん濁り出した。あっという間の出来事で、ここまでまだ数分も経ってない。

 だが関心している場合じゃない。


「ココ隊長、もう一回、同じ作業を繰り返して水を捨てるであります。」

「りょうかいであります。」


 水に溶け出した汚れで服が汚れるかもしれないのでもう一度お願いし、その後、風魔法で絞り直し火魔法と風魔法で乾燥させ服を綺麗にする。それからクリーニングも魔法で瞬時に終わらせてしまった。

 ソースまみれだった服があっという間に新品同様に早変わり。

 魔法が凄すぎる。


「ココ凄いね。服が綺麗になったね。」


 心から出た言葉だった。

 ココは褒められてすごくいいニコニコしている。

 蒼葉はそんなココにふと思ったことを聞いてみた。


「ココは洗濯はやったことある?」

「おにいちゃんないよー。」

「あれ?今まで服が汚れたらどうしてたの?」

「じょうかのまほうでじょうかしてたよ。ピカピカだったよー。」


 あれ?

 余計なことしちゃった?

 ということはさっき言ったことは無駄じゃん、、、、。

 ココはさっき言われたことをその場で簡単にこなしたのか。

 今までやったことがないことを、、、。

 その場で?

 ん?

 初めてなのに?

 えーっとこれって凄いことじゃ、、、。

 ちょっと待て、、、。


 蒼葉は何か考え違いをしていたのだろうかと思考を巡らせる。


 魔法は凄い。

 ほぼなんでもやれそうだ。

 本当に凄い。

 だけど、、、、ココ?

 いやちょっと待てよ。

 そーいえばあれだけ殴られたか蹴られたかしてたのに数日でこんな小さな子供が動けるのか?

 初級の回復魔術とはいえしばらくは安静だと言われたよな。

 ココに甘えられてとても嬉しくて頭のネジが飛んでたけど、これってヤバい?

 さっきの市民雷撃魔法事件も、加減して光魔法と雷魔法を同時に使ったとか言ってなかったか?

 これ細かく確認した方がいいかもしれない。

 できることできないこと。

 いや秘密にするべきこと、しないこと。

 それからその範囲。

 ココから魔法を教えてもらう、、、そんなこと後回しじゃないだろうか。マークスさんか、レールナさんかに相談しなきゃいけないのではないか。自分一人じゃこの子を守れないかもしれない? 

 ほかに知っておくべきこと、、、。

 いやそもそも二人には秘密にして、、、。

 下手に情報開示したら関係ない人たちを危険に巻き込む?

 ちょっと待て、魔法と魔術、その凡庸性と応用力を考えたら情報を知るとか抜き取るとか普通にできる?

 自白剤のような魔法や勝手に人の頭覗くとか、なんでもありじゃ!?

 どう考えてもやばい。やばい、完全にやばい。相談なんかできるわけがない。自分一人だと絶対見落とす。とにかく価値観がわからない。自分自身がこの知らない世界に全く適応できていない現状で、

 情報を取捨選択できるほどの知恵も知識もない。だけど人に相談すると完全に巻き込んでしまう。

 いやもう巻き込んでいる?

 いやそもそも世話になってる時点で周囲の人間はやばい立ち位置なのでは!?漫画とかアニメとかだとどうなるんだっけ!?


 蒼葉の思考がどんどん深みにはまっていく。それはまるで底なし沼のように次から次へと。


「おにいちゃん、つぎはなにするー?まほうのれんしゅうするの?まじゅつにするの?」


 目の前で深みにはまった蒼葉にココは次の仕事を催促した。

 キョトンとしている小さな顔はとても可愛らしかったのだが、そんな彼女を愛でる余裕は瞬時に消えてしまった。

 どう考えても選択しても危なすぎるとしか思えなかったからだ。

 自分やこの子だけではない。自分やココを含む周りの全てが天国にも地獄にもなるのではないだろうか。

 そんな疑念が生まれてしまったから。


 マークスさんが以前、こっそりと蒼葉に伝えたことがある。

 この子は魔力が桁違いに強いに違いない。うちの初級回復魔術だけではここまで対応できない。

 確かにココはあっという間に傷が癒えてしまっていた。

 そのことをマークスは蒼葉に伝えたのである。

 それは言い換えれば、この子の魔力の素養が並々ならない。つまり魔導の才能がズバ抜けていると。


 マークスさんもまさかここまでココが魔導の力を使いこなせているなんて思いもしないだろう。

 大きな火の玉で山を吹き飛ばしたとか、氷の魔法で湖を全て凍らせたとかではない。そんな分かりやすいことではない。でもこの小さな女の子はいとも簡単に魔法を生み出してしまうのである。

 見る人が見れば確実にわかるだろう。

 それにココが魔法や魔術を使えること事態は誰にも話していない。


 あの時点でこの子は隠していたつもりだった。本人に自覚はなくても何かの表紙にバレる可能性が高い。


 蒼葉は今になって確信した。

 どう考えてもやばい。


 子供が魔法や魔術を使えるのは少ないが世界を探せばそれなりにいるらしい。そして子供だからこそ力加減ができなかった事故や事件が世界各地に残っているのだそうだ。

 このまま放置すればココもその仲間入り確実ではないだろうか。


 そんな子供を周りが放っておくのだろうか。

 この世界を、いやこの小さな街ですらまだ知らないことだらけなのだ。


 どうすればいいのだろうか。


 蒼葉は深みから抜け出せそうにはなかった。








 洗濯が終わってからお兄ちゃんがアワアワして動かなくなった。


 体を揺すっても何を言ってもお兄ちゃんは微動だにしない。


 相手にしてくれないので座っているお兄ちゃんのお膝の上にちょこんと座った。


 今からあれを試そうと思う。


 お兄ちゃんの手と手を合わせてその両手を自身の小さな手で包み込む。


 大きな手だがお兄ちゃんは両手をちゃんと自身の胸の前まで上げてくれた。


 でもお兄ちゃんは地面のどこかを見つめたままだ。


 とにかく準備完了だ。


 お兄ちゃんは魔道士(マジシャン)なのに魔法も魔術も知らないのだそうだ。


 だから魔力を練るということも知らないんだって。


 そんな世界の普通の人だよ、と教えてくれた。


 でも何もないところから可愛いお人形を出したり、綺麗な花を出してくれたりとてもすごい。


 朝はお金を消してみせたし、それをローロちゃんのポッケから取り出してたりしてとてもビックリした。


 可愛いぬいぐるみを召喚したりしてたし。


 汚れて帰ってきてからはコップに入った水を一瞬にしてコップごと出したり消したりとても凄いのに。


 どうやってるかは分からないがすごい魔法だ。


 それとも魔術かな。


 魔力は誰もが持っている。


 ただその使い方を知らないだけ。


 祖父さま(ババさま)はそう話してくれた。


 だからお兄ちゃんにも魔力はあるに違いないのだ。


 魔道士(マジシャン)だから。


 魔道士(マジシャン)とは魔法も魔術も使える魔導のエキスパートだ。


 とてもすごい職業なのだ。


 だからお兄ちゃんはきっと隠しているに違いないのだ。


 だからあのすごい魔法も教えてくれないに違いない。


 もしくはお兄ちゃんは魔導を知らないから自分がいかに凄いことをやっているのかを知らないのかもしれないのだ。


 いやひょっとしたら知らずに大魔法を使っているのかも、、


 だから、、、


 ココは両手から全身を巡るように魔力を操作する。


 そしてその魔力は自身の両手と体を通じて蒼葉の全身を巡っていく。


 細くて柔い波動が少しずつ少しずつ二人の体を包んでいく。


 以前、祖母さま(ババさま)が自身にやってくれたとある魔導の洗礼である。


 とても大切な儀式なのだそうだ。


 ただし普通の人には絶対に使ってはいけないとのこと。


 もちろん大丈夫。


 お兄ちゃんはものすごく凄い魔道士(マジシャン)なので問題はない。


 最初は少しずつ、最後あたりは遠慮せずに魔力を全力で循環させてみた。


 あれからどのくらい時間が経ったのだろうか、、、


 儀式の全てを終わらせた時、お兄ちゃんは泡を吹いて全く動かなくなっていた。


 さっきまではうんうんとうなされていたのに、、、。


 今日はポカポカしてすごく気持ちがいい日。


 きっと眠くなってしまったのだ。


 彼女自身も先ほどから睡魔に囚われつつある。


 気づけば横になったお兄ちゃんに抱きついていた。


 もちろんお兄ちゃんのお口から吐き出した泡はきれいに拭いてあげた。


 今度はちゃんと綺麗になったハンカチを使って。


 お日様の光と動かなくなったお兄ちゃんのベッドがとても心地よかった。




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