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まじかるココナッツ。  作者: いろいろ
1章
138/162

11幕:閉話3−2

 簡易ステージの上では立て続けに何人かの人たちが手短な挨拶と祝言をあげた。

 それなりの広さがあるステージである。

 少なくとも先日、ライブしたお店のよりは遥かに大きなサイズだ。

 ココたちがオーガごっこしても泥棒と門番の遊びをしても動け回れる広さだ。


 そのステージと同じ高さでちょうど良く見れる位置に用意されたのは当然、今日の主役が座る特等席だ。その席にはすでに見慣れた二人が着席しておりステージ上に視線を這わせている。ステージ外を見渡してもお祝いに駆けつけてきた人だらけである。


 赤く染まったお日様が去り星たちの静寂には終わらない時間が始まろうとしていた。

 そして水平線に収まった瞬間、謎の爆発的に広がる光とともに大きな魔法陣がステージ上に広がったのである。


 刹那、人々は目を背けその光を視野から外そうとしたことだろう。

 もしくは必死に目を逸らしながら中央を見つめただろうか。


 そして誰もが驚嘆した。

 一瞬にしてステージ中央に二人の《小さな小さな魔法使い》が出現したのである。


 一人は、金色の髪を二つのおさげ風にし、もう一人は黒色の髪を横に纏めたような髪型にした小さな小さな女の子たちだった。

 どちらも赤白青のリボンのついた小さなシルクハットを右に左の頭にちょこんと乗せておりとても可愛らしい。

 しかしそれだけではない。

 一人の女の子がフリルのついた白いブラウスに若干大きめな赤い蝶ネクタイ、光沢のある黒のブレザーと細身のパンツスタイルに黒の革靴でくるりと優雅にお辞儀をすれば、もう一人はスカートの端をちょこっとつまみながら軽く会釈を行なった。

 白いフリル付きのブラウスに白色のベストから覗かせる赤く細長いタイ。ティアードスカートの下にもまた白色のタイツとハイヒール。


 白と黒、そのコントラストが冴え渡り、お互いを引きたてている。

 そしてどちらも素晴らしいほどに似合っており、繊細な所作一つ一つが二人の可愛さをこれまでもかというほどに演出していた。


 どうやら最初の掴みは成功であるらしい。


 途端に大歓声が湧き上がった。

 それを合図にコミカルな曲が星たちのもとで広がり始めた。

 二人を見守る大切な人の音である。


 その舞台脇から奏でるピアノの音が二人と舞台と世界とを鍋の中身のように包み込んでいくように鳴り響く。


【ココアちゃんいくよー!!】

【いいわよ!!いつでもオッケーなんだから!!】


 メロディに乗りながら二人は踊り出した。

 同じステップ、でも左右対称に見えるように手足を広げながら仕草を取りながら、そして決めポーズをとる。3拍子のリズムは優雅な舞踏会のように振る舞うときもあれば、サンバのように激しくなるときもある。その合間合間には必ずといっていいほど決めがあり、二人はその都度ユニゾンしながら決めポーズを行なった。


 その度に客席から周囲から感嘆な声と失笑する声が漏れ出すのである。

 子供達の踊りもさることながら実は二人が決めポーズを取るたびハイタッチを終始行うのだが、その都度二人の衣装が色が入れ替わるのである。時には二人とも同じ衣装同じ色になったようになったりと決まったオチも忘れない。二人の衣装だけではない。なぜかいきなり仔牛やさらに小さな女の子が出現することもあり、その度にピアノがチャンチャンとまるで喜劇のような音を奏で失笑を買っているのだ。


 またなぜか女装した男の子が数人出現しておりこれも一役買っていた。


 短い踊りの時間が終わり一旦区切りが付くと溢れんばかりの歓声と拍手が二人を出迎えた。

 それを二人は軽いお辞儀をしながら受け入れると、、、


【つぎはココアちゃんのソロだよー】

【分かってる!!任せて】

【たのしみにしてるもん!!】


 ぱふんという軽い爆発音とともにココナは姿を消した。


 それを合図にココアは軽くお辞儀をし直すと新たに黒いマントを出現させながら身に纏いふわりふわりと身を翻した。そしてその死角から何かが飛び出ては空に立ち上り地を駆け出した。


 なんと炎の花が出現したかと思えば、花弁を散らし、それらが集まり、やがて氷の結晶となり、そこから小さな小人たちが宙に消えていくのである。それだけではない。


 静かなメロディとともにココアは歌を紡いだ。

 この日のためだけに作った歌だ。


 その歌に合わせて歌詞の言葉通りの現象が舞台のステージ上で展開されるのだ。

 誰しもが固唾を飲んでその歌声に聞き入り目の前の少女とその光景を見守っている。


「炎の花が咲き乱れ氷の精霊たちが空に立ち上る。二人の門出の祝福に光の奇跡を授けよう。空の頂きから降り注ぐ星たちの歌声に今日という日を受け取ろう」


 そして主賓である二人の前に小さな魔法陣が出現し輝く何かが出現したのである。

 光り輝く星の光が弱まりながらその形状をはっきりと写していく。


 それは太くて大きく、、、何と立派な。


 それはなんとブラクが愛用している大きな大きな金棒だったのだ。


「グミさん、ブラクが粗相したらそれでぶん殴ると無事解決するんだから!!夫婦円満は恐妻が大切なんだからね!!」


「・・・・」(ブラク)

「ココアちゃんありがとー!!これから毎日使うわね!!」(グミ)


 えっへんという仕草とともにココアは大声で叫んだ。

 そして会場が笑いに包まれた。中には飲み物を吹き出す者やお腹を抱えて笑い出す者、二人に黄色いヤジを飛ばす者もおり盛況な賑わいで止まることがない。何せその獲物に気づいた人から順に、そして二人を知る者は全て。


 そのまま軽いお辞儀をするとココアは黒いマントを翻し姿をその場から消失した。

 流石はココアちゃんである。


 少しだけハラハラしながら見守っていたココナが安堵しながらほっと息を吐いた。

 そして次はココナの番である。


【じゃあつぎはココのばんだもん、ティーもコクトーもすたんばい!!クラムたちもだもん!!】


 軽い爆発とともに出現したのは花嫁姿のティア、そして花婿姿の黒桃だった。


 一体何が始まるのだろうか。

 誰しもがわくわくとした感情を覗かせながら舞台の行末に注目している。


 どうやらこの日、誕生した《小さな小さな二人の魔法使い》が唱える《笑顔の魔法》に誰しもが目を離せないようである。


【じゃあはじめるよー!!】


 その掛け声とともに舞台はさらなる盛り上がりを見せたのだった。





 時間にして15分弱。

 あっという間だった。

 最後は出演者全員でステージに出現し一同が一糸乱れぬお辞儀で締めくくった。

 ステージ中に響く拍手と歓声はココたちの頑張りへの最高の結果である。


 はぁはぁと息をしながらココは静かに相方を仲間を見つめた。

 ココアちゃんだけじゃない。誰もが目を輝かせ充実した笑顔をしておりこれ以上言葉を語る必要はないようだ。いつものようにこの嬉しさを身体中で表現しようとすると、、、ココアちゃんとリチェに手を勢いよく引っ張られてしまった。


 むぅっ、、、


 無念である。


 興奮冷めやらぬ中、ココたちはそのまま舞台を掛け降り、すぐに別の興奮に出迎えられたのである。


 なんと目の前にはご馳走の山がある。

 お肉にお魚にデザートに、、、ありとあらゆるものが大きな皿に並んでおり取り放題なのだそうだ。

 いわゆるびゅっふぇ?というらしい。特に中央にはココよりも大きなエビのようなものがどーんと飾られており目を見張るものがある。流石は港町、海の町である。


 そのお目当の近くに立ち寄ると感嘆な賛辞とともにココたちは大歓迎された。


【ココナ、これが出演者特権よ!!ちなみにあの大きなのは私が一番先に食べるんだから!!】


 これぞしゅつえんしゃとっけん?であるらしい。

 でもそれはダメダメである。ココもあの大きなエビさんに最初に飛びつきたいのだ。


 ココたちは食べたいものを指差すと給仕してくれる人たちがニコニコしながら皿に盛ってくれた。これは何だかとても得した気分である。


 上機嫌な空気を味わいながら美味しいものを頬張りつつステージを見守る。

 ステージ上ではココたち以外にも様々な人たちが出演しており色々な催し物を披露しているようだ。


 ある程度、お腹も膨らんでからブラクとグミお姉ちゃんへ顔を見せに行った後、ココはふと気になったことがあった。


 蒼葉お兄ちゃんはいったい何をしているのだろうかと。

 だからココは改めてステージの近くに一人向かったのである。


 どうやらピアノのとこにはいないらしい。

 ステージの上にもいないし側にもいないようだ。


 確か少し前まで赤いお酒を飲みながらラズお姉ちゃんとお話ししてたはずである。

 りゅうごろし?というお酒で作った自慢の高い度数の赤いカクテルだとか話していたしメインの料理と特大のケーキをこれからお披露目するんだだとか何とか聞いた覚えがある。それに孫の手、老師の手が欲しいとか人形の手が欲しいとかなんとか。


 とにかくあの時はこっそりそろりと味見するにはしづらい状況だったのだ。


 だからココはお兄ちゃんの料理を水竜のように首を長くして待っていたのである。


 あとはリチェに強請られて帽子の中からお菓子を取り出したり動く人形を取り出したり、、、あとは猫を取り出してたはずである。特にねこさんは小さな魔導士の帽子を被ったこねこさんであり、もふもふで可愛いので後から触らせてもらおうと思っていたのだ。


 むぅっ、、、みつからないもん。


 そんな時である。


 !?


 何かがステージの下で動いたのだ。

 日が落ちてから数時間。すでに辺り一面は魔石灯が活躍する時間だ。それにキャンドルが照らす範囲は狭く陰影ははっきりしており光が当たらない場所はそのままでは視認することは難しく隠れんぼをするには最高の環境である。


 だから目をばっちりと凝らしてみた。

 途中、小さな種?木の実?のような輝くものと光る物を見つけたのでポッケに入れながら周囲を確認する。

 やはり何かが動いておりこの場から遠ざかろうとしているようだ。


 小さな何かの動きを把握すると行動を予測し偶然出くわすように近づき、、、そして後ろから両手でむんずと掴んでみた。念のため逃さないよう魔力も併用している。


 指と指との間から垣間見える姿はまさに、、、


「ちいさなおんなのひと?」


 動き出す人形やぬいぐるみだけが不思議ではない。

 今日のココたちのライブを見た人たちの笑顔や始まる前や終わった後の胸から湧き上がる何か、そして目の前にこれでもかと並べられたご馳走だけじゃない。

 どうやら世の中にはココの知らないことがいっぱいいっぱいあるらしい。


 にっこりと笑みを浮かべるとココはそのまま走り出した。

 これはココアちゃんに自慢しなければならない。お兄ちゃんにも教えなければならない。

 それとクラムたちにも見せてあげたい。


 これこそ正に大切な『ほうれんそう』である。


 だから逃げられないように、でも潰さないようにしっかりと『小さな人』をがしっと握りながら風のように走り出したのだった。



誰かの花嫁姿を見た黒桃 ドキュ-( ⸝⸝⸝°◽︎°⸝⸝⸝)→ン:、、、、。

呆れるティー(´・ω・`):黒桃くん出番ですよ?もぉーダメダメです。


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