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まじかるココナッツ。  作者: いろいろ
1章
136/162

11幕:閉話2

 


 小さな教会での式はとても穏やかで温かな空気に包まれていた。

 白い純白のドレスを着たギルドの人気受付嬢グミ。

 慣れないタキシードを着こなすラクスラスク界隈で有名なBランクの冒険者《鬼面》ブラク。

 まさに美女と野獣と噂されし二人は、ついにこの日夫婦の契りを結んだのである。


 黒いタキシード姿のBランク冒険者は見たことがないほどの強面顔を浮かべ、その伴侶の顔なじみのギルド職員は誰よりも美しく綺麗に、そして幸せそうに見えた。


 くっ美人人妻、、、ブラクさん羨ましすぎる。


 そして僅か数刻後には公園の方で立食しながらのお披露目会が開かれる。

 広場中に等間隔にテーブルが敷き詰められ全てが色とりどりの綺麗な花々や輝く装飾品で飾られておりこのパーティに掛けられる意気込みが心底伝わってくるようだった。その中にうまい具合に小さな炎が灯されたキャンドルが等間隔で並べられており、白蓮な乙女たちがついうっとりするような幻想的な世界が構築されている。


 よくあるホテルなどでの披露宴などとは比べ物にならないほどの規模であり、とてもとても盛大な披露宴であった。


 この町では結婚を迎える夫婦には町を通して大々的に祭事ごとが開かれる。

 そのため二人による契りのための宣誓式は教会でひっそりと静かに、またほぼ身内だけでやることがいつの間にか恒例になったらしい。ただ今回は二人の希望で自分たちも隅っこの方で参加でき、二人の幸せそうな光景を眺めることができたのは幸運だったと思う。


 それに色々と面白い体験ができたことでやっといつもの日常が戻ってきたって思えたような気がした。


 感激したラズさんが泣きまくったり、投げられたブーケやハンカチをラズさんが光のごとく強奪したり、ラズさんだけが終始一人だけ浮いており、、、パプリアくんがその行動に引き摺り回されたり、、、。うん、そんなラズさんと一緒に振り回されたパプリアくんとの二人のやり取りを見ていると次はあの二人の番だよね、とつい微笑んでしまう。


 美少女に慕われるパプリアくんか。

 くっ、、、羨ましすぎる。

 それにしてもラズさんは今日も相変わらずだったなぁ。


 教会を誰よりも先に抜けた蒼葉は一息つきながら思い出し笑いした。

 なぜかちょっとだけお腹の辺りに違和感を感じるのはきっとここ数日はまともな睡眠が取れていないせいだろう。まだ痛みが残るため深くは考えないようにしている。


 チビたちの退院から数日後とはいえ、この日を迎えるに辺り色々と準備するのはとても大変だった。

 よく覚えていない体調不良による入院で数日潰れてしまったこともあって、その後は多忙に駈られたのだから。


 ブラクさんとグミさんからはパーティの余興、そしてパーティでの料理の件を相談されたのだ。だから町中で材料を探し、ブラクさんの親父さんとの料理の調整から子供たちの監督といったことを続けながら独身最後の日々を過ごす新郎予定者と共に夜の町に連日連夜出かけ、、、おっとこれは極秘の機密事項だ。情報漏洩した場合、確実に被害者が生まれてしまう。


 もちろん全てギルド長の奢りでキャロとパプリアくんと共に最高な夜が持て囃された。

 ほんと人の金で飲む酒と遊ぶ酒は最高で、そ綺麗なお姉さんや可愛い女の娘は最高である。

 男性とは違う柔らかさと温かさが黒く絶望した己の心を浄化し天国へと誘う、、、まさに夢のような日々である。


 さてとある人物により被害者、いや折檻により動かなくなったギルド長とパプリアくんを置き去りにし、また正座させられ壊れたゴーレムのようになったブラクさんをその場に放置、隣でアイラさんに精神から痛ぶられるキャロを見捨ててから一人だけキッチンにたどり着く日々。


 一人だけ取り残された何か。心に突き刺さる何かに気づかないふりをして。

 くっ、、、、何で羨ましいんだろうか。


 そして、、、


 ついに完成した。

 これも新たな仲間のおかげである。

 大鍋に滾る黄金のスープは透き通るほどの無職透明に見える。そして薫る香りには一点の臭みも感じることはなく鼻腔を刺激し思わずゴクリと喉を鳴らしそうなほどの香りを感じる。

 これに少しばかり別のものを追加して完成である。


 それとあと1品は大きな大きなあれを完成させなければならない。

 自分が割り振られた料理の分はすでに試作済みであり、後はほぼメインのあれを作るだけである。

 この辺りは入刀という文化がないらしいので、これだけは今後に広めるキッカケになればと考えている。あえて下心を見せれば、今後の商売のための機会作りということでもある。もちろんお世話になった二人に込める気持ちは大前提な訳だが。


 ただその前にちゃんと労いの言葉を掛けるのが人としての礼儀である。

 さてと、、、


「ご苦労さま()()()()

「・・・・」

「長風呂気持ちよかった?」

「・・・・」

「火加減は?体におかしいところはない?ハーブとか染みてない?お酒もっと入れる?」

「・・・・」

「あおばおにいちゃん、、、トンコツだいじょうぶきもちよかったー、だって!!まだいーっぱいおふろにつかりたいっていってるもん」

「ふむふむ、、、なるほどなるほど。じゃあもっと長ーいお風呂にしようか」

「なんか蒼兄が黒い笑みを浮かべてるような、、、」

「ないない。あ!?そうだ!!二人とも約束はどうしたのかな?」

「「うっ!?」」

「ほら約束はちゃんと守らないとね、『嘘つきは盗賊の始まり』って言うでしょ?」

「もぉーっ蒼兄ずるいんだからっ!!」

「あおばおにいちゃんそれはひきょうだもん!!」

「まぁお兄ちゃんは悪い魔法使いだからね。それに約束を忘れたとは言わせないよ?()()()()()()()()()()()って言ったのは誰だったっけ?あれそれとも一生のお願いだったっけ?どっちだったかなー?ほらほら何だったっけ?」


「むぅっ、、、」

「くぅっ、、、」


「「いっ、いってきまーす!!」」

「はい、いってらっしゃーい!!気をつけてね!!練習がんばってーあとで試作のおやつ持っていくからね」

「「わーい」」

「それと明日は特設ステージでリハーサルやるからね、今日中に事前準備はしとくんだよ」

「うん、わかったー!!ちゃんときれいなひとさがしてくるもん!!あいじん!!」

「蒼兄の好みの女捕まえてくるわ!!八方美人!!」


「いやそっちじゃないんだけど一体どこでそんなことを覚えたんだか、、、」


 トタトタと忙しなく出かける二人を見つめながら、子供の成長が早いことを実感させられた。

 多少変な語彙や知識が増えているのは果てしなく疑問だけど嬉しい変化である。


 だからだろうか、ついつい先日起こったことを思い出したのだ。

 心から溢れ出すようにじーんと胸の辺りがなるような、、、そんなとても嬉しくて喜ばしい出来事が起こったからだ。


 ココアと出会って1ヶ月ちょい。

 そしてココナと過ごした数ヶ月。

 ついに二人がめいいっぱいの駄々を捏ねたのである。


 そう実に年齢相応の子供らしい我儘を蒼葉にやっとぶつけるようになったのだ。

 実年齢は全くわからないけど。


 壁に掛かった読めない魔時計の数字を指す二つの指針を見つめながら、あの微笑ましいやり取りを思い出した。

 今でも思い出すだけで可笑しさと可愛さが、どこからとなく込み上げてくる。

 そんな光景が脳裏に浮かんだ。


「ダメったらダメ。うちにはそんな余裕ありません。うちは貧乏だから他所様のところとは違うんだよ」

「おねがいだもん!!もうトンコツはココたちのつかいまだもん!!」

「そうよそうよ!!蒼兄が何と言おうと使い魔になってるんだから!!」


「へぇーそうなんだ?でもどうしようかなぁ?じゃあしばらくオヤツはないだろうしお菓子も食べれなくなるけど、、、ほかに二人から何か言うことはないのかなぁ?」


「あおばおにいちゃんおねがいだもん!!ココなんでもいうこときくもん!!」

「お願い蒼兄っ!!お願いだから!!トンコツは大切な使い魔なの!!」

「あおばおにいちゃんココたちのココたちのいっしょうのおねがいだもん!!」


【ココナ、ちょっと待って!!一生のお願いは最後の奥の手なんだからね。それに一生のお願いは一生に一回しか使えないのよ!!】(二人による秘匿通信呪文中)

【むぅっ!?それはまずいもん!!どうしよう!?】

【大丈夫よ!!大人な私に任せなさい!!】

【おぉぉっ!?さすがココアちゃん。でもこどもだもん】

【・・・・】


「ちゃんとお兄のお手伝いするからお願い!!蒼兄~!!」

「うーん、、、どうしようかなぁ?」

「蒼兄~!!お願い!!()()()()()()から~ちゃんと聞くから〜」

「そうだなぁ、、、」


【ココナ、ここが攻め時よ!!いくわよ!!】

【はっ!?しょうぶどき、、、わかったー!!】


「蒼兄、、、今度可愛い女の子がいたら蒼兄と仲良くなれるようにセッティングするから!!」


【ほら、ココナも早く援護するのよ!!今よ】


「はっ!?ココもココもきれいなおねえさんいたらあおばおにいちゃんしょうかいするー!!」

「ちゃんと蒼兄の恋人探し手伝いするんだからね!!まずは()()()()()()よ!!」

「じゃあココはココは()()()()()()()()()()()()()()みつけてくるー!!」

「・・・・」


 いったいどこでこんなことを教わったんだか、、、、


 結局、最後まで二人の小さな女の子が右手左手に飛びつきながら上下左右に大きな手を振り回した。

 成すすべなく二人にその両手を委ねるも大人の体までとはいかない。

 でも必死な二人の顔を見るとついつい意地悪したくなるのは、親バカいや兄馬鹿なせいなのだろうか。それとも二人が子供らしいことをやっとぶつけてくれたことの嬉しさのせいだろうか。


「もぉ仕方ないなぁ。じゃあお兄ちゃんの言うことをちゃんと聞くんだよ。それと後からケーキ試作するからね」


「「やったー!!」」


「そうそう、、、もちろん()()()()じゃダメだからね?()()()()じゃね?」


「「うっ、、、」」


「まぁその場合は人質のおやつがどうなるかは言うまでもないかな」


「蒼兄それは卑怯!!」

「ひきょう!!」


「ふふふふふっ、、、実はお兄ちゃんの本当の正体はとっても真っ黒な大魔導士なのです」

「「ぶーぶー!!」」


 そんなことを思い出しながら借りた厨房に材料を並べていく。

 窓を全開にして空気を入れ替えながら魔冷庫の中を確認し終えると素早くその扉を締め終えた。


 どうやら今日も一段と暑くなるようだ。

 幸いなことに窓から吹き込む風が止みそうにないことだけが非常にありがたい。

 あれから益々日差しが強くなってきて過ごし難い日々が続いている。


 だから式の開催が夕方頃なのはきっとそれゆえだろう。


 頭の中での長い試行錯誤の後、どんな風にするのかと構想を決めると駄々を捏ねたチビたちの表情を思い出した。この後はきっと満面の笑みを浮かべながら顔中をクリームだらけにして嬉しがることだろう。


 ココナもココアもマロンもヤキニクも、、、

 ひょっとしたらいつもの友人たちや新しくできた友達たちの手をとってホームパーティになったりするのかもしれない。


 さてと、、、


「トンコツは暫く放置するとして、、、まずはこの材料で特大ケーキを試作してみますかっと」



 そう呟くと蒼葉はまた厨房に一人篭るのだった。





気持ち良さそうにお湯に浸かるトンコツ( ゜ ρ ゜) :ポケー


何かを思案する蒼葉(。-`ω´-).:もう少し煮込むか、、、



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